真似と開閉と世界旅行
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同盟会談~
前書き
ええと・・・申し訳ないのですが、トンキーのお話はカットしようかなと思っています。トンキー好きの方、申し訳ありません!ではどうぞ。
「うう、いてて・・・」
キリトがリーファに思いきり叩かれた頬を擦る。
「さっきのはパパが悪いです!」
「キリト、前にわたしにドロップキックされたの忘れた?」
「殺伐とした戦闘のあとの空気を和ませようというウィットに満ちたジョークじゃないか・・・」
「次やったらぶった斬るからね」
「スプリガンの生け作りか・・・不味そうだ」
なんて言いながら俺達はルグルーに入る。
「へええー、ここがルグルーかぁー」
リーファがあちこちを見る。
「リーファは初めてくるの?」
「へ?ああ、うん。今回は二人を案内してきたから」
「ふうん。ここって結構品揃え良さそうだね」
「見たところレプラコーンもいるみたいだし・・・掘り出し物とかありそうね」
「ガールズトーク・・・ね」
「コウハさんは見ないんですか?」
「うん。回復アイテムは充分だし、武器と防具は充分・・・」
「・・・あ、ごめん。ちょっとレコンと連絡を・・・一旦落ちるね」
どうやらゲーム内にはいないようだ。リーファが近くのベンチに座り、ログアウトした。・・・それを確認した咲の目付きが分かる。
「キリト、亮。大事な話がある」
「・・・大事な・・・」
「・・・話・・・?」
「ああ。リーファはこの件に関係ないみたいだし。・・・、お前達には今の内に話しておいた方がいいからな」
咲が話す内容とは・・・
「このゲームの製作会社、知ってる?」
「えーと・・・レクト・・・だよな」
キリトが言うと頷く。
「じゃあ製作者はわかる?」
「・・・いや」
俺は首を横に振る。
「製作者は・・・須郷伸之だよ」
「なんだって!?」
「・・・誰だ?」
『それはオイラが説明するッス』
リパルが須郷について説明してくれる。・・・分かったのはクズ野郎だということ。
「多分、このゲームの構造がSAOと似ているのは偶然じゃないと思う」
「須郷がSAOのデータを盗んだ・・・?」
「ボク達はそう思ってるわ。少なくともアイツが今回の件の主犯よ」
咲の肩に座りながら話す詠にキリトが聞く。
「なんでそこまで知ってるんだ?」
それには咲がため息を吐きながら答える。
「文字通り命懸けで情報を手に入れたんだよ。・・・つまり、お姉ちゃんを含め目覚めていない三百人も全部アイツの仕業だと思う」
「くそ・・・須郷の奴・・・」
「パパ・・・」
「・・・でも、平気なのか?」
「あ?何がさ」
「お前だよ。危ない橋渡ってるみたいだし、こうやってダイブしてて平気なのか?」
「う・・・まぁ、なんとかな」
一瞬だが咲が渋い顔をした。
「あ・・・そうだ」
咲が俺を見て何か言おうとするが・・・
「あー・・・悪い、やっぱり何でもない」
「は?変な奴」
「今のお前に悩み追加すんのもアレだしな・・・(ボソッ)」
その時だった。リーファが勢いよく立ち上がった。
「うわっ、びっくりした!」
「どうかしたの?」
「・・・みんな、ごめんなさい」
「え、ええ?」
「あたし、急いで行かなきゃいけない用事ができちゃった。説明してる時間もなさそうなの。たぶん、ここにも帰ってこられないかもしれない」
キリトは暫くリーファを見て、頷く。
「そうか。じゃあ、移動しながら話を聞こう」
リーファはキリトの言葉が意外だったのか驚いたが、すぐに切り替えた。そして走りながらリーファに話を聞く。レコンの情報らしいが、シグルドがシルフを裏切り、サラマンダーと内通していたらしい。それにより情報が漏れ、今サラマンダーの集団が極秘に同盟を組もうとしているシルフとケットシーの集まりに奇襲をかけようとしてるそうだ。当然、そこには両国の領主がいる・・・
「なるほどね・・・領主を討つと特典はあるのかしら?」
咲が聞くとリーファは答える。
「まず最初にシルフとケットシーの同盟を妨害できる。シルフ側の情報の漏洩ならケットシーが黙ってないし、ヘタしたら戦争になるかもしれない」
「はぁ、同盟国の争いねぇ・・・もううんざりよ」
『・・・』
詠の言葉に俺や咲達は沈黙する。
「それに、領主を討つだけで凄いボーナスがあるの。蓄えられた資金の三割を無条件で入手できるし、十日間街を占領状態にして自由に税金をかけられる・・・」
「じゃあ、もしこの奇襲が成功した場合、サラマンダーの戦力は・・・」
「たぶん、トップになるでしょうね」
「サラマンダーに対抗するための同盟でサラマンダーが勢いついたら意味がありません・・・」
「・・・だからね、みんな」
リーファがうつ向く。
「これはシルフのあたしの問題だから・・・君たちの目的が世界樹なら、むしろサラマンダーについた方がいいと思う。スプリガンなら傭兵として雇ってくれそうだし、コウハくんとサキもレネゲイドって言い張ればなんとかなると思う。だから、今あたしを切り捨てても・・・恨まないよ」
・・・それに対する返事は既に決まっていた。
「所詮ゲームだから何でもありだ。殺したければ殺すし、奪いたければ奪う」
キリトがそう言ってから・・・続けた。
「そんな風に言う奴には嫌って言うほど出くわしたよ。確かにそれも真実かもしれない。・・・けど違うんだ。仮想世界だからこそ、どんなに愚かしくても守らなきゃならないものがある。俺はそれをーーーー大切な人に教わった・・・」
「兄貴・・・」
「俺・・・リーファのこと、好きだよ。友達になりたいと思う。たとえどんな理由があっても、自分の利益のためにそういう相手を斬るようなことは、俺は絶対にしない」
「キリト君・・・」
「んで、リーファはさらっと俺をハブいたけど・・・これはシルフのリーファだけの問題じゃない。ケットシーの俺の問題でもあるんだ」
「・・・」
俺は口を開く。
「俺は誰であれ、主を討たせやしない。それに・・・恨み辛みはもう沢山なんだ」
そして咲が笑う。
「安心して、リーファ。ここはお人好しの集まりだから。・・・もちろんわたしも、ね。リーファを斬るくらいならサラマンダーを斬るよ」
「二人とも・・・」
リーファが立ち止まり、顔を上げる。
「・・・ありがとう」
キリトが照れたように頬を掻く。
「ごめん、偉そうなこと言って。悪い癖なんだ」
「それで何人落としたのかしらねぇ?」
「おい、サキ。人聞きの悪いこと言うなよ・・・」
「うふふ・・・じゃ、さっさと助けに行きますか!」
「え?」
リーファがきょとんとする。・・・あぁ、手伝ってくれるとは思わなかったのか。
「リパル、位置は?」
『サーチ済みッス。ここから北西の方向に多数の反応があるッス』
「ナイス、仕事早いね。・・・キリト、コウハ」
俺達は頷き、キリトがリーファの手を掴む。
「ちょっと手を拝借」
「え、あのーーー」
「亞莎、ポケットに隠れてな」
「はい、わかりました」
「じゃ、よーい・・・」
咲がクラウチングスタートの構えを取る。
「え、え・・・?」
「ドン!!」
次の瞬間、俺達は・・・全力で走り出した。そりゃもう絶叫マシン並のスピードで。
「わあああ!?」
キリトに掴まれたリーファが悲鳴を上げる。すると目の前にオークの群れが見える。
「あの、あの、モンスターが」
当然・・・全力で突っ切る。
「わぁーーーーーっ」
再びリーファの絶叫。モンスター達は雄叫びを上げながら迫って来る。そして・・・一気に洞窟から飛び出した。
「ゴール!」
俺たちは翼を広げ、羽ばたく。背後を見ると凄まじい量のモンスターがぎっしりと出口を埋めていた。
「・・・寿命が縮んだわよ!」
「わはは、時間短縮になったじゃないか」
リーファが何かブツブツと文句を言う。・・・あ。
「・・・あれは・・・」
遠くに見える巨大な樹木・・・あれが・・・
「世界樹・・・か」
「ぷはっ」
亞莎がポケットから顔を出す。
「お、大丈夫か?」
「はい。コウハさんは足が早いですね」
「猫だからね・・・」
さてと・・・急がないと・・・
サキ~
俺は若干みんなと離れた位置を飛んでいる。
『咲さん』
「ん?」
『良かったんスか?亮さんに今の状況を言わなくて・・・』
「・・・言ってもどうにもならないさ。ヘタしたら亮やキリトまで捲き込むことになる・・・」
「確かに、ここで亮たちまで妨害を喰らうのは良い案とは言えないわね・・・ごめん、咲。ボクが守れれば・・・」
「気にするなよ。どうしようもないことだってあるさ」
『・・・肝心な時、オイラたちは何もできないッス・・・』
「気にすんなってば。それに、二人には現在進行形で役に立ってもらってるしよ」
「え?」
「索敵&俺の精神安定役でな。二人がいなかったら弱い“わたし”のままだったから・・・二人がいれば“俺”でいられる」
「サキー!急ぐぞー!」
「りょーかーい!」
キリトに呼ばれ、俺は水色の翼を羽ばたかせる。間に合わせないと・・・
「それにしても、モンスターを見かけないないなぁ?」
「あ、このアルン高原にはフィールド型モンスターはいないの。だから会談をわざわざこっち側でするんじゃないかな」
「そっか。大事な話を邪魔されたくないもんね。・・・でも残念だなぁ」
「どういうこと?」
リーファが俺に聞いてくる。俺はニヤリと笑いながら・・・
「んー、さっきみたいにモンスターを引き連れてアタックしようかなって」
「・・・よくそんなこと考えるわねぇ」
「あ、プレイヤー反応です!」
ユイの声で前を見る。
「・・・いた!あそこだ!」
亮が指を指す。もう少しすると黒い影が見えた。アレがサラマンダー・・・更にその奥には白い長テーブルのようなものが見える。この距離は・・・
「・・・間に合わなかったね」
リーファが呟く。
「ありがとう、みんな。ここまででいいよ。キミたちは世界樹に行って・・・短い間だけど、楽しかった」
リーファが先に行こうとするが・・・キリトがその手を掴み、不敵な笑みを浮かべる。
「ここで逃げ出すのは性分じゃないんでね」
そう言ってキリトは最大全速でダイブする。
「ちょ・・・ちょっとぉ!?」
「キリトもしょうがないなぁ・・・じゃあわたしも!」
「兄貴は諦めって言葉を知らないからね・・・当然、俺もだけど!」
俺と亮も降下。リーファも何かを言いながらついてくる。そして襲撃に気付いたシルフたちとサラマンダーの間に・・・飛び込んだ。そしてキリトは大きく息を吸い・・・
「双方、剣を引け!!」
リーファが背後に来て、和服美人な女性と話をしている。アレがシルフの領主さん・・・?妖精なのに和服とは面白い組み合わせだ。
「指揮官に話がある!」
するとサラマンダーの中から大柄な男が現れた。一目で周りとは違うと把握できる装備と佇まいだ。
「・・・スプリガンがこんなところで何をしている。どちらにせよ殺すに変わりないが、その度胸に免じて話だけは聞いてやる」
「俺はキリト。スプリガン=ウンディーネ同盟の大使だ。この場を襲うからには我々四種族との全面戦争を望むと解釈していいんだな?」
「・・・はい?」
え、ウンディーネとスプリガン?・・・するとキリトがこちらを見て笑う。あ、あの野郎・・・捲き込みやがった・・・!
「ウンディーネとスプリガンが同盟だと・・・?」
だがすぐに指揮官は表情を戻す。
「・・・護衛の一人もいない貴様がその大使だと言うのか」
・・・これ、行かなきゃ駄目だよな。俺はキリトの横に立つ。
「どうも、わたしはウンディーネの代表であるサキと言います。この場にはシルフ・ケットシーとの簡易交渉に来ただけですので、護衛は必要ありませんでした」
俺は必死に頭の中で言葉を組み合わせる。
「・・・しかし、もし会談が襲われるというのなら、わたし達は四種族で同盟を結び、サラマンダーに対抗する所存です」
まだ・・・足りないか?するとキリトが助け船を出してくれた。
「我々が繋がりをもっているのは共に来たシルフとケットシーが物語っているだろう」
あ、リーファと亮も捲き込んだ。だが男は・・・
「大した装備ももたない貴様らの言葉をにわかに信じるわけにはいかないな」
「ーーーオレの攻撃を三十秒耐えきったら、大使と信じてやろう」
男は大剣を引き抜いた。赤い刀身が鮮やかに光る。
「じゃあ、わたしがお相手します」
ダークリパルサーを鞘から引き抜く。
「おい、サキ・・・」
「少しくらい役に立たせてよ。それに空中戦なら・・・誰よりも経験があるから・・・ね?」
そう言って俺は飛び上がる。
「詠、下がってて」
「・・・分かったわ。リパル、フォロー任せたわよ」
『了解ッス!』
「じゃあ・・・行きます!」
俺はまず一気に近付き、一閃。
ガキァン!
「ほう・・・」
アッサリと防がれ、一撃が迫る。
「よっ・・・!」
それを斜めに降下してかわす。
「馬鹿め。その角度では追撃を喰うだけだ!」
俺は・・・翅を素早く動かし、“直角”に曲がった。
「なに・・・!?」
「らぁぁぁ!!」
ガァン!
僅かに押された男が下がる。・・・逃がさない。再び直角飛行を行い追尾する。
「空中戦は十八番なのよ!」
連撃。しかし男は合間を縫って剣を振ってくる。
「っと・・・!」
それを弾こうと剣を構える・・・。
『駄目ッス、咲さん!回避を!!』
「っ!?」
剣と剣が当たる瞬間・・・男の刀身がこちらの刀身を“すり抜けた”そして迫る斬撃は俺の胸元を切り裂く。
「きゃあああ!?」
吹き飛ばされるが、なんとか空中で立て直す。
「どういうことなのよ・・・リパル、あれ何なんだ!?」
さっきから咲と早貴が安定しない・・・!
『データ取得したッス!あのサラマンダーの名前はユージーン。武器は魔剣グラムッス!』
「グラム?」
『このゲームにはレジェンダリーウェポンという武器の種類があるッス。その中の一本が魔剣グラム。能力は《エセリアルシフト》盾や剣をすり抜ける効果ッス』
「わお・・・素晴らしい公式チートだこと」
だったら全部避けなきゃ駄目か・・・
「てかそれより・・・」
俺は声を上げる。
「もう三十秒経ったんじゃないんですか!?」
「悪いな、やっぱり斬りたくなった。首を取るまでに変更だ」
「くっ・・・この変態!」
俺は高速軌道で再び斬りかかる。
「ふっ、せい!」
「腕はいいようだが・・・」
ビュン!
「っ、危な・・・」
身を捻り、そのまま回し蹴りを放つが、足を掴まれる。
「やばっ・・・」
「ぬん!」
投げられ、追撃される。
「ちぃ!」
片方の翅を動かし、一気にその場から離れる・・・が、振りきれない!
「こん・・・のぉ!」
斬られる前にこちらから斬りつける・・・が、ここでミスを犯した。咲だったのなら力で押しきれただろう。だが今は早貴・・・素早さが売りだったのだ。そう、今俺は・・・痛恨の人格ミスをしてしまったのだ。
ガキィン!
「っ・・・!」
鍔迫り合いの状況から弾かれ・・・無防備になったところを・・・斬られた。
ズシャア!
「あぁぁぁ!?」
『咲さん!』
亮~
「咲!」
咲が斬られ、回転しながら落下する。このままだと落下ダメージで咲のHPはゼロになる・・・!だが、キリトが素早く走り出し・・・咲を受け止めた。
「うぅ・・・」
「サキ!大丈夫か!?」
「キリ・・・ト?・・・ごめん・・・でも、まだ戦え・・・」
再び飛ぼうとした咲をキリトは抑える。
「いや、後は俺がやる。サキは無理しないでくれ」
「そんな・・・!途中で押し付けるなんて・・・」
「押し付けじゃないさ。それに・・・これ以上君を傷付けたら彼女に怒られるしな」
「・・・ズルいよ・・・お姉ちゃんを出したら・・・反論出来ないじゃん・・・」
サキは立ち上がり、キリトの背中をポンと叩く。
「じゃあ・・・任せるね」
「ああ」
「咲!」
詠が咲に向かって飛んでいく。
「咲、大丈夫なの!?」
「大丈夫だよ。この世界に痛覚とかないし。・・・斬られた感触はあるけどね」
『すみませんッス。もう少しアドバイス出来れば・・・』
「アイツの情報を教えてくれただけで充分さ。敗因は俺の判断ミスだしさ・・・」
咲がため息を吐く。
「くそ・・・この世界の俺のアドバンテージが“飛行”しかないじゃないか・・・」
咲がこっちに来る。
「わり、負けた。・・・キリト、勝てると思うか?」
俺は既に打ち合ってるキリトを見る。
「わからないけど・・・兄貴なら何とかできるさ」
「へぇ~、キミはケットシーなのにお兄さんはスプリガンなんだ?」
小柄な少女が話しかけて来た。見るからにケットシーで装備は三本爪のクロー。
「ええと、君は・・・」
するとリーファが説明してくれる。
「コウハくん、この人はケットシーの領主、アリシャ・ルーさんだよ」
「ふーん・・・領主・・・領主!?」
俺は慌てて少女・・・アリシャを二度見して、方膝をついて頭を下げる。
「す、すみません!!領主様だなんて知らなくて・・・」
「アハハ、気にしなくていいヨ、そういうの」
「そ、そうですか・・・」
・・・いや、何度も王に仕えた身としては結構ヒヤヒヤものなんだが・・・
「えっと・・・ほんとすみません。俺、始めたばかりなので・・・」
「だからいいってば~」
ガキィン!
「・・・っと」
振り返るとキリトは吹き飛ばされていた。
「やはり厳しいか・・・」
シルフの領主、サクヤが言う。
「おいおい・・・頼むぜ・・・」
咲の情報からアイツは相当なプレイヤーであることは分かった。・・・ていうかサクヤが言うにはALO最強らしいが・・・その時、吹き飛ばされたキリトが右手を突き出した。どうやら詠唱をしていたようで、辺りを黒い煙が覆った。
「うわ・・・!!」
あっという間に側にいた筈の面々も見えなくなる。
「リーファ、ちょっと借りるぜ」
「わっ!?」
キリトの声とリーファの声が聞こえた後、ユージーンが叫び、魔法で煙を吹き飛ばした。・・・しかし、そこにはキリトの姿はなかった。
「あれ・・・?」
背後のケットシーが呟く。
「まさか、あいつ、逃げ・・・」
「そんなわけない!!」
それを真っ先に否定したのはリーファだ。・・・ま、だろうね。だって・・・
「・・・」
俺は上を見上げる。ほら、やっぱり。
「・・・!!」
キリトが全速でユージーンに向かって突っ込んでいく。そしてユージーンもキリトに気づき、突進する。そこで気付いた。キリトの左手にはリーファの刀が握られていた。アレはキリトの使っていたスキル・・・二刀流だ。・・・だが、きっと通常は扱える訳がないとユージーンは踏んだのだろう。更に加速していく。そしてキリトより早く剣を振るい、防御に回した大剣をすり抜け、キリトに当たる瞬間・・・左手の刀が弾いた。
「お・・・おおおあああーーーー!!」
そこからはキリトの独壇場だ。左右の刃が鮮やかに光り、ユージーンを押していく。そして・・・遂に一撃が決まった。
「な・・・」
「ら・・・あぁぁぁぁ!!」
そしてそのまま連続斬りを放ち・・・ユージーンの体が爆発した。
「・・・」
誰も声を出さなかった。シルフもケットシーも、サラマンダーも・・・それほどの戦いだった。
「見事、見事!!」
その沈黙を破ったのはサクヤだ。両手を打ち鳴らしながら声を出す。
「すごーい!ナイスファイトだヨ!」
アリシャに続いてケットシーもシルフも・・・なんとサラマンダーも歓声を挙げていた。キリトは四方に一礼して、リメインライトを差し出した。
「誰か、蘇生魔法頼む!」
「解った」
サクヤが頷き、近づく。
「回復ならお前の方がいいんじゃないか?」
咲に聞くと咲は頬を掻く。
「いや・・・まだ蘇生魔法のスペル暗記してないんだよな・・・攻撃と回復なら覚えたんだけどよ・・・」
「あ、そう」
・・・まぁ、確かに俺もまだ全部暗記してないからどっこいどっこいか。
「・・・見事な腕だな。俺が今まで見た中で最強のプレイヤーだ、貴様は」
「そりゃどうも」
それを見て咲が前に出る。
「あの、わたし達の話を信じてくれますか?」
「・・・」
ユージーンは沈黙し・・・口を開いた。
「スプリガンとウンディーネか・・・ふ、そういうことにしておこう」
そう言ってキリトに向き直る。
「確かに現状で事を構えるつもりはない。この場は退こう。・・・だが貴様とはいずれもう一度戦うぞ」
「望むところだ」
「わたしも負けっぱなしじゃ終わりません。・・・いずれ再戦を」
「貴様の飛行能力には見るものがある。こちらとしても再戦願いたいものだ」
そう言ってユージーンたちサラマンダーは去っていった。残った俺達はサクヤたちに説明をし、かつシグルドについても聞いた。どうやら彼はサラマンダーに遅れを取っているシルフが嫌になり、そこでサラマンダーのプレイヤーに今度導入される転生システムでサラマンダーに転生させてやると言われ・・・口車に乗った訳だ。
「欲に目が眩むのは人間の性か・・・」
俺は呟き、ため息を吐く。
「・・・一生、そんな人間は消えないだろうな・・・」
なにせ欲を持たない人間はいないわけだから。
「それで・・・どうするの?サクヤ」
リーファに聞かれ、サクヤはアリシャを見る。
「ルー。たしか闇魔法スキルを上げてたな?」
アリシャは耳を動かし、肯定の意を表す。
「じゃあ、シグルドに《月光鏡》を頼む」
・・・なんだそれ?アリシャが詠唱すると、辺りが暗くなり、サクヤの目の前に鏡が現れた。そこに写っているのはシグルドだ。
「シグルド」
サクヤが声を出すとシグルドは跳び跳ね・・・こちらと目があった。
「さ・・・サクヤ・・・!?」
「ああ、そうだ。残念ながらまだ生きている」
「なぜ・・・いや・・・か、会談は・・・?」
「無事に終わりそうだ。条約の調印はこれからだがな。そうそう、予期せぬ来客があったぞ」
「き、客・・・?」
「ユージーン将軍が君によろしくと言っていた」
「な・・・」
そしてシグルドが俺達を見て・・・状況を理解したようだ。・・・サクヤがウィンドウを操作すると、シグルドの目の前にメッセージウィンドウが出現する。
「貴様ッ・・・!正気か!?俺を・・・この俺を追放するだと・・・!?」
「そうだ。レネゲイドとして中立域をさ迷え。いずれそこにも新たな楽しみが見つかることを祈っている」
「う・・・訴えるぞ!権利の不当行使でGMに訴えてやる!!」
「好きにしろ。・・・さらばだ、シグルド」
そして・・・シグルドは姿を消した。さてさて、アリシャとリーファがサクヤをフォローした後・・・話題はキリトに移った。
「ねェ、キミ、スプリガンとウンディーネの大使・・・ってほんとなの?」
それにキリトは自信満々に答える。
「勿論大嘘だ。ブラフ、ハッタリ、ネゴシエーション」
「なーーーー・・・」
絶句する二人。
「・・・ウンディーネのキミも知ってて嘘ついたの?」
それに咲はひきつった笑顔で答える。
「いいえ、事前の打ち合わせなしで捲き込まれました・・・!」
キリトを軽く睨む。しばらく様子を見ていると・・・アリシャがキリトにくっついた。
「フリーなら、キミ・・・ケットシー領で傭兵やらない?弟くんもいるし、三食おやつに昼寝つきだヨ」
「「なっ・・・」」
口元をひきつらせる女子二名。
「おいおいルー、抜け駆けはよくないぞ」
と、サクヤもキリトの反対側に絡み付く。
「彼はもともとシルフの救援に来たんだから優先交渉権はこっちにあると思うな。キリト君と言ったかな・・・どうかな、個人的興味もあるので礼も兼ねてこの後スイルベーンで酒でも・・・」
ぴきぴき。・・・と、更に音が聞こえた。やばい、胃が痛くなりそう。
「あーっ、ずるいヨサクヤちゃん。色仕掛けはんたーい」
「人のこと言えた義理か!密着しすぎだお前は!」
完全にキリトも困ってしまっているようだ。・・・先に動いたのは・・・リーファだった。
「だめです!キリト君はあたしの・・・」
三人がリーファを見る。
「ええと・・・あ、あたしの・・・」
その時、咲がいなくなってるのに気がついて振り替えったら・・・真横を突風が突き抜けた。
「この・・・アホォォォォォ!!」
「げはぁ!?」
咲の飛び蹴りがキリトに炸裂し、キリトは吹っ飛ぶ。
「(あれ、デジャヴ?)」
崖から落ちながら体制を立て直すが、咲が追撃の右ストレート。
「おいおい・・・」
キリトは必死に避け続けている。俺はため息を吐いて二人を追いかける。近づくと会話も聞こえてきた。
「この馬鹿!変態!たらし!女の敵!」
・・・あぁ、考えるまでもなく“早貴”で固定されてるよ、あれ。
「お姉ちゃんとリズならまだしも他の女にデレデレと・・・!」
「ちょっとまて!なんでリズが出てくる!?」
「うっさい!この浮気者ぉ!」
「そうです!浮気はダメですよ、パパ!」
「ちょ、ユイまで・・・!」
「あはは・・・」
もう笑うしかないね、この状況。とりあえずリパルと詠に咲を止めてもらい、戻ってからアリシャとサクヤに説明する。すると彼女たちも世界樹を目指しているらしく、今回の同盟もそのためらしい。しかしまだ資金が足りないそうなので・・・俺達のユルドを殆ど渡す。・・・その額に二人は固まったけど、協力を約束してくれた。さてと、先を急がないと。世界樹は目の前に近づいていた・・・・・・
後書き
亮
「なんか、二対一多くね?」
早貴
「勝てばよかろうなのだーー!!」
亮
「・・・あ、そう・・・さて、ソードアート・オンラインの世界もあと少しかな?」
早貴
「さてな。一波乱あるかもよ?・・・ではまた次回もよろしく!」
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