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スーパーヒーロー戦記

作者:sibugaki
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第70話 復活!マジンガーZ

 
前書き
 それは小さな出会いと大きな戦いの物語。
 心を奪われた騎士を救う為に、太陽の子は王の光を放ち、少女の叫びは騎士の心を呼び戻す。
 それでも、敵との力の差は歴然としつつある、でも……微かに、ほんの微かに希望の兆しが見えた。


 スーパーヒーロー戦記……はじまります。 

 
「申し訳ありませんでした! 主よ」
 喫茶アミーゴ店内にて、今烈火の騎士シグナムが平身低頭していた。俗に言う土下座である。普段凛とした態度を取り絶対に誰にも媚び諂う事など無い筈の騎士であるシグナムが今、アミーゴ店内に居る皆の前で頭を下げていたのだ。
 それ程までに今のシグナムは頭を下げねばならない心境だったのだ。そしてそれを見ていた皆はどうしたら良いのかと困惑するばかりなのであった。シグナムの特徴とも言えるピンク色のポニーテールが何時もよりも萎んで見えていた。
「まぁシグナム~、そないに頭下げる事あらへんでぇ。皆もこうしてシグナムの事許してるんやしさぁ」
 未だに平身低頭しているシグナムの前で彼女の言う主であるはやてがそう言っていた。無論、其処に居るのははやてだけではない。先の戦闘から無事戻ってきたメンバーが皆揃っている。
 光太郎、なのは、そしてフェイトもその中に加わっていた。無論、留守番していたゲンやジンの兄弟も其処に居た。
 但し、その中にロム・ストールの姿は見当たらなかった。また次なる悪を求めて何処かへ去ってしまったのだろう。
「シグナムさん、もう過ぎた事なんですし良いじゃないですかぁ」
「嫌、駄目だ! 私が主と定めたお方に刃を向けるなど騎士失格! この上はいかな罰でも喜んでお受け致します!」
 もうこれ以上何を言っても駄目そうだった。仕舞いには困り果てていた一同ではあったが、そんな中、只一人だけ、不気味に微笑んでいる者が居た。その者はシグナムの前に居り、平身低頭しているシグナムをじっと見下ろしていた。
「ホンマやなぁ? どんなのでも受けるんやなぁ?」
「騎士に二言はありませぬ!」
 頭を下げながらシグナムは言う。だが、その際にシグナムは見るべきであった。自分の主がとてつもなく不気味な笑みを浮かべていたと言う事実を知る唯一の機会であったからだ。




     ***




 遥か地底に作られし古代ミケーネ人達が作りし帝国、ミケーネ帝国が其処にあった。その中で暗黒大将軍は只ひたすらに不機嫌であった。玉座に座り剣を持つ手が小刻みに震えている。嫌、震わせているのだ。自分自身の不機嫌さを見せ付ける為に。
 その不機嫌さをまじまじと見せ付けられる七大将軍とゴーゴン大公は焦っていた。彼等は分かっていたのだ。暗黒大将軍は怒っている。と……
「何故、未だに侵略が進まぬのだ?」
 暗黒大将軍の不満のネタはそれであった。スーパーヒーロー達を退けて既に幾日が経つ。邪魔者が居なくなったのだから侵略も容易な筈。にも関わらず今日まで全く進展がないのに苛立ちを感じている始末なのだ。
「申し訳有りません。何分侵略同盟の動きを気にする余り進軍が遅れてしまって……」
「言い訳は聞きたくない!」
 部下の進言を一蹴する。怒号が将軍達の言葉を黙らせてしまった。
「最早我慢の限界だ! こうなれば我等の力を見せ付けて他の奴等の進軍を止めるのが得策であろう! 何を尻込みしている! 貴様等それでも7大将軍か?」
「はっ、ごもっともに御座います!」
 最早頭を下げるしかなかった。暗黒大将軍はお怒りだ。何とかしなければ次に首が飛ぶのは自分達かも知れないのだから。




     ***




「あ、主……これは……」
 声の主であろうシグナムははにかんだ様子ではやてに問い掛けていた。それに対しはやてはと言うととてもにやけた顔をしてシグナムをまじまじと見つめている。
 その様子を見てなのはは少々呆れた感じになっておりフェイトはこれがどう言った状況なのかついていけず置いてけぼりになってしまい、そして光太郎はと言うと必死に目を背ける始末であった。心なしか光太郎の頬が赤くなって見える。
「えぇなぁ。やっぱパーツが揃っとるとこう言った服装が良く似合うわぁ」
「は、はぁ……」
 はやてのにやけが止まらない。もう大満足と言わんばかりであった。そんなシグナムだが、今の彼女が身につけている服装と言えば、黒いタイツに赤い薄手のスーツ。そして頭にはウサ耳をつけたと言う、言うなればこれは”バニースーツ”であった。そしてそれを着せられたシグナムは恥ずかしさの余りはにかんでしまったと言える。
「あ、主……幾ら何でもこの格好は……」
「騎士に二言はないんやろ?」
「ぐっ……」
 はやてのその一言によりシグナムは黙り込んでしまった。言いだしっぺは自分だ。即ち、何を言われても手遅れと言う事だ。今更ながら自分の言った言葉に後悔を覚えるシグナムであった。
「どやどやぁ光太郎兄ちゃん? シグナムのこの格好似合っとるやろぉ?」
「う、うん……そ、そうだね……」
 相槌をうちながらも光太郎は必死に見ないように努めている。シグナムのボディラインがクッキリと見えるスーツな上に彼女の魅力的な体つきは光太郎にとっては目に毒だったのだ。幾ら世紀王として改造されたとしてもその点は人間のままらしい。
「ねぇ、なのは……はやてって何時もこんな事してたの?」
 一人ついていけてないフェイトは彼女と関係の深いなのはに聞いた。それに対しなのはは呆れながらも頷いている。
「うん、はやてちゃんってあぁなっちゃうと歯止め利かなくなっちゃうから」
 どうやらなのは自身も呆れ果ててる始末らしい。それはそれで迷惑この上ないとフェイトは思うしかなかった。恐らく今下手に止めようとしたら自分もあの格好をさせられる危険性があるからだ。正直あんな恥ずかしい格好は嫌だ。
「うんうん、何時見てもシグナムはえぇ体しとるわ~。ほんまに羨ましいなぁ~」
「き、恐縮です」
 明らかに親父発言をしているはやて。目つきもいやらしく正しく親父そのものである。
「うっし、そなら今日一日はずっとその格好で居てな。それが主である私がシグナムに課す罰やでぇ」
「うえええええええええええええええええええええ!」
 あんまりな発言にシグナムが絶叫しだす。幾らなんでもそれはあんまりであった。が、其処へ助け舟がやってきた。
「おいおい、俺としちゃそれは有り難いかも知れないが店の中でその格好は止めてくれないか」
 言ってきたのは勿論この店アミーゴのマスターである立花籐兵衛であった。彼としては男としてそれはOKなのだろうが店の雰囲気としては大いにNGだ。此処は健全な喫茶店だ。そんな喫茶店にこんな魅力的な女性がそれもバニースーツで立っていたらそれこそ疑いを持たれる。
 下手したら此処をバーかクラブと誤解されかねないのだ。そんな事したら常連が逃げてしまう。
「しゃぁないなぁ。立花のおっちゃんがそう言うんやったら出来へんなぁ」
 流石におやっさんが相手でははやても後退せざるを得ない。それを聞いたシグナムはホッとする。だが……
「それならメイド服はOKやろか?」
「ん? まぁ、それ位なら大丈夫だな。但し、あんまり派手じゃないの頼むぞ」
「OK! 任してぇな」
 どうやら、シグナムに対する罰はまだ終わってないようだ。立花とはやての暗黙の了解を聞き大いに青ざめるシグナム。だが、バニースーツよりはマシなのは確実だ。それでもメイド服など着たくはない。
「う~ん、やっぱシグナムはメイド服でもよぅ似合うなぁ~。こないな所をもし甲児兄ちゃんが見たらきっと鼻の下伸ばして喜ぶでぇ~」
「ぜ、絶対あの様な破廉恥な男に見られたくありません!」
(甲児さんかぁ……今頃何処で何してるんだろう?)
 はやてとシグナムの二人の馴れ合いから視線を背け、なのははふと、此処に居ない甲児の事を思い出した。
 二人にとっての良き兄貴分でもある甲児。彼は今何処で何をしているのか?
 勿論、彼だけではない。他の仲間達の身の安否も気になるのが現状だ。一刻も早く全員と合流したい。そうしなければ、侵略同盟を打ち破る事は出来ないのだから。




     ***




 富士山麓にある白い建物。此処光子力研究所は来るべき一大決戦に向けある準備が進められていた。それは、今から半年前に起こったジュエルシード事件に置いて機械獣軍団と壮絶な死闘を演じ、見事勝利を収めた鋼鉄の巨人の復活であった。
 その巨人の名前は鉄の城”マジンガーZ”
 しかし、そんな光子力研究所に宇宙から迫る脅威があった。それは、かつてマジンガーZに戦いを挑んだ宇宙人の集団である。
 その集団が雪辱を晴らすべく地球に迫ってきていたのだ。そして、その宇宙の集団が研究所に迫り来る日はもう間近となっていたのであった。
 だが、それに対し鉄の城は、未だ目覚める兆しを見せなかった。




     ***




「どうですか? 状況は―――」
光子力研究所所長である弓教授が格納庫に訪れていた。
 其処では所員一同が急ピッチで作業を行っていた。過去にミケーネ帝国の誇る戦闘獣軍団との戦闘で大破してしまったマジンガーZ。それの改修作業を行っていたのだ。
 来るべき戦いの為には今ある戦力では足り無すぎる。その為にも一刻も早く鉄の城を復活させねばならないのだ。
 そして、弓教授の目の前には、既に改修作業を終え、元通りの姿になったマジンガーZの姿があった。もう何時でも戦いに戻る事が出来る。
 だが、それを操縦する筈のパイロットの姿が見られなかった。そう、今この研究所にマジンガーZのパイロットである兜甲児の姿は何処にも見られなかった。以下にマジンガーZが完全に蘇ったとしても、パイロットが居なければマジンガーZは真価を発揮出来ないのだ。
「弓教授、マジンガーの改修作業は完了してあります。後は甲児君の到着を待つばかりです」
「そうか……」
 弓教授の顔は重く沈んでいた。その肝心の兜甲児と全く連絡が取れないで居るのだ。このままではマジンガーZは戦線に復帰する事が出来ない。そして、そんな研究所に突如けたたましいアラートが鳴り響く。
 そのアラートを誰もが鳴って欲しくないと思っていた物でもあった。
「何事だ?」
「ゆ、弓教授! 緊急事態です! この研究所に向って……」
 所員のその言葉は後半では聞き取れない内容であった。これでは一体何が起こったのか分からない。
「落ち着いてくれ! 一体何があったんだね?」
「それが、この研究所に向って、ペダン星人の大艦隊が接近しています!」
「なんだと!」
 ペダン星人。それは今より半年近く前、一度光子力研究所へ襲撃してきた侵略者である。以前はペダン星人の誇るスーパーロボット”キングジョー”とマジンガーZが激戦を繰り広げたのは記憶に新しい。そして、かつてマジンガーZはそのキングジョー一体に苦戦を強いられていた。だが、今回訪れていた大艦隊は恐らくキングジョー10体分に相等する。
 それらが一斉に此処光子力研究所に迫って来ていると言うのだ。
「いかん、今のマジンガーZは戦えない。至急救援を要請してくれ給え!」
「駄目です! 各研究所とも、ウルトラ警備隊やMATとも連絡が取れません! 強力な妨害電波が発せられているようです」
「ペダン星人め、以前の雪辱を晴らすつもりか……」
 最悪の状況であった。各施設とも連絡が取れない上にマジンガーは戦えない。その上迫り来るのは10体ものキングジョー軍団。状況としてはかなり危険な状況でもあった。
「弓教授! 現在ダイアナンAとボスボロットの二体が迎撃に出ました!」
「だが、ダイアナンAとボスボロットでは保って数分だろう……やはり、マジンガーZが居なければ奴等を倒すのは難しい」
 厳しい言い方だがそれは正論であった。戦闘用ロボットであるマジンガーZを除くとダイアナンAやボスボロットではとてもキングジョーと渡り合うのは難しい。今は一刻も早くマジンガーZの復活を急がなければならない。




     ***




 迎撃に出ていたダイアナンAとボスボロットの前には総勢10体のキングジョーがその姿を現していた。その光景は正しく圧巻であった。
 40メートル級の巨大ロボットが10体もこちらに向って歩みを進めているのだ。
「おいおい、幾らボロット様でもコレだけ相手だとかなり厳しいわよ~」
「弱音を吐いちゃ駄目よボス! 甲児君が来るまで私達で研究所を守り抜くのよ!」
 さやかが激を送る。だが、それでもこれだけの軍勢は悲観的になれる状況であった。例え一体でもキングジョーは強敵だ。それが10体も現れたとなればそれは脅威以外の何者でもない。
【フン、黒い巨人は居ないようだな。我が軍勢に恐れをなして引っ込んだのだろう?】
【ならばあの忌々しい建物ごと黒い巨人を破壊するまでだ。奴等に最強のスーパーロボットの力を見せ付けてやれば良い!】
 キングジョー軍団が歩みを進める。目の前に立つ二体のロボットのことなど眼中にない。あるのはあの研究所内に治められたマジンガーZのみ。そしてそれを邪魔する物は虫けらの様に踏み潰すだけの事だ。
「待ちやがれ! この俺の留守中に喧嘩を吹っ掛けるたぁ良い度胸じゃねぇか!」
【あの声は、記録にあるぞ!】
 キングジョー軍団の視線が声のした場所に集まる。其処には一基の小型円盤が飛行していた。所々破損し、飛行するのがやっとの状態だが、それでもその円盤は飛行していたのだ。
 そして、その円盤からは聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「その声、甲児君!」
「さやかさん、ボス、久しぶりだな!」
「兜ぉぉぉぉぉ! お前はやっぱ良い奴だぜぇぇぇぇ!」
 さやかとボスの歓喜の声が響く。その声は甲児にとって何よりも嬉しい事であった。
【来たか兜甲児! 貴様を倒し雪辱を晴らす! 全機一斉攻撃! あの円盤を叩き落せ!】
 キングジョー全軍の一斉攻撃が開始される。それがボロボロのTFOへと降り注ぐのだ。
「くそぉっ! 応急修理しただけのTFOじゃこれ以上は無理か! せめて、せめてマジンガーZが使えりゃ……だけど、マジンガーは……」
 甲児の脳裏に浮かぶ光景。それはミケーネの誇る戦闘獣軍団により大破させられたマジンガーZの痛ましい姿だった。
 そう、マジンガーZは破壊されたのだ。もうマジンガーZは戦えない。甲児はそう思っていた。
『甲児君、聞こえるか?』
「弓教授!」
『すぐに研究所に来るんだ! 君を待っている物が居る!』
「俺を待っている? それって、一体……」
 何はともあれ行くしかない。行けば答えは分かるのだから。
「甲児君、甲児君は研究所に行って! その間時間は稼ぐから!」
「その変わり戻ってきたらこいつらを全部纏めて叩きのめしてくれよぉ!」
「さやかさん、ボス……待ってろよ! すぐに戻ってあいつらを叩きのめすからな!」
 目元に滲んだ涙を強引に拭い去りながら甲児は操縦桿を握り締めて研究所へ急ぐ。それを阻もうとするキングジョー軍団に対しダイアナンAとボスボロットが捨て身の覚悟で挑んでいく。急がねばならない。大切な仲間を見捨てるわけにはいかない。何より、あんな奴等に負けたくないのだ。
 研究所内に入るなりTFOを乗り捨て甲児は急いだ。自然と足が向う。それは、かつて自分の愛機が収められていた場所だ。其処へ自然と足が向うのだ。そして、其処にはあった。真紅の色を持つパイルダーが其処に聳え立っていたのだ。
「パイルダー……あのボロボロだったパイルダーが……」
「その通りだ、甲児君。パイルダーだけじゃない。鉄の城は今、君を待っているんだ!」
「弓教授!」
 パイルダーと一緒に居たのは弓教授であった。その教授の手には懐かしい赤いパイロットスーツと白いヘルメットが持たれていた。懐かしい。その一言に尽きる。
 かつて自分はこれを身に纏って戦っていたんだ。それら一式を受け取る。
「甲児君、今こそ再び、超人兜甲児となってくれ!」
「分かりました。見てて下さい! 俺とマジンガーZの復活する瞬間を!」
 そう言い、甲児はパイルダーに飛び乗る。エンジンを点火させ、パイルダーに命を灯させる。パイルダーの全身が震えだし、エンジンが震えていくのが分かる。パイルダーは生きている。生き返ったんだ。
「振るえだけで分かる。こいつは以前のそれよりも数段パワーが上がってやがる。これでドッキングしたら一体どうなっちまうんだ? 今から待ち遠しいぜ!」
 操縦桿を握り締める甲児の鼓動が高鳴っていくのが分かる。早くマジンガーと合体したい。早くまた超人になりたい。その思いが甲児の鼓動を早めているのだ。天井の扉が開き、青空が照らし出される。其処へ一気にパイルダーは浮上する。見えるのはキングジョー軍団に苦戦を強いられているダイアナンとボロットであった。二体とも既に傷だらけになっている。もう余り長くはもちそうにない。
「さやかさん、ボス、待ってろよ! 今助けに行くからなぁ!」
 パイルダーは移動する。黒い魔神の待つ場所へ。それは水の溜まった用水路であった。此処も何の変わっていない。昔のままだ。
「マジーンGO!」
 甲児が叫ぶ。それに呼応し、用水路が真っ二つに開かれる。水が流れて行き、其処から黒い巨人が姿を現した。あれだ、あれこそ俺のもう一つの体。俺の相棒。俺の愛機! 俺の手足となって動き、俺の意思どおりに戦い、そして勝つ。神にも悪魔にもなれる無敵の鉄の城。
 その巨人こそ、兜甲児を超人になしえる鋼鉄の巨人なのだ。
「パイルダーON!」
 再び甲児が叫んだ。巨人と一体化する為の言葉を。巨人の手足を自分の手足にする為の言葉を。その言葉に呼応し、パイルダーは巨人の頭部とドッキングする。巨人の両目が輝いた。巨人の腕が、巨人の足が、巨人の体全てが、今兜甲児の意思と連動した。今、この鋼鉄の巨人は兜甲児の意志と一体化したのだ。今、此処に再び蘇ったのだ。
 機械獣軍団を叩きのめし、人類に救いと未来を与える鉄の城。無敵のスーパーロボットが復活した。
 その名は”マジンガーZ”鉄の城の異名を持つ戦闘用ロボットであり、地球製のスーパーロボットだ。
「行くぜペダン星人! てめぇらのリターンマッチ、この兜甲児とマジンガーZが受けて立つぜぇぇ!」
 甲児とマジンガーZが走る。再び戦場へと舞い戻ったのだ。そして、今再びマジンガーZの戦いが始まるのだ。




     ***





 合体した甲児には分かる。合体した瞬間に分かった。マジンガーのパワーが、かつての時より数段以上にアップしている事が分かったのだ。
 しかし、目の前にはかつてマジンガーZが苦戦を強いられたペダン星の誇るスーパーロボット”キングジョー”が立ち塞がっている。それも一体ではない。見るからにその総数は十体は居る。40メートルを超える巨体を持つキングジョーが聳え立っている。だが、苦戦したのはかつてのマジンガーZの時の事だ。今はマジンガーZはパワーアップしている。
 しかし、その力はいまだ未知数である。その真価を今此処で確かめる必要がある。
【現れたなマジンガーZ! 今度は我等ペダン星の総力を結集して貴様を叩きのめしてくれる! どちらが本当のスーパーロボットか、この一戦で分かる!】
「へっ、地球にはこんな言葉があるんだぜ。”量より質”ってなぁ!」
【馬鹿め、我等は質でも勝っているのだ。キングジョー軍団進撃だ! 今度こそあの忌々しい黒いロボットを叩き潰せ!】
 マジンガーZが大地を駆ける。マジンガーの足が大地を踏みしめる度に振動が伝わってくる。そして、それはキングジョー軍団も同様に大地を踏みしめる。十体ものキングジョー軍団の足踏みが大地を揺らしていく。双方の距離が殴れる距離へと近づく。
 最初に口火を切ったのはマジンガーであった。目の前に居た手近なキングジョーの顔面に鉄拳を叩き込んだ。堅く握りこんだ拳がキングジョーの顔面に深くめり込んでいく。鉄拳を受けたキングジョーが前のめりに倒れる。
 何だ? このパワーは!
 殴られたペダン星人は勿論の事、殴った甲児自身も驚かされた。恐るべきパワーだったのだ。40メートル以上の巨体を誇り数万トンの重さを持つと言うのにそれを20トンしかないマジンガーZが殴り倒したのだ。普通なら出来ない事だ。だが、それを成し遂げてしまったのだ。
【馬鹿な、たかが20トンしかない虚弱なロボットが我等のキングジョーを殴り倒すとは!】
 ペダン星人は驚かされた。だが、何より一番驚かされたのは殴った甲児本人だったのだ。明らかにパワーが段違いにアップしている。以前のマジンガーZの拳ではキングジョーの巨体を殴り倒す事は出来なかったのだから。しかし、今はそれをいとも容易く成し遂げている。それが甲児を驚かせる要因となっていたのだ。
「い、一体どうなってんだこりゃ? パワーが段違いに上がってやがる」
《その通りだ甲児君。マジンガーZは生まれ変わったんだ。装甲は科学要塞研究所から送られた超合金ニューZで身を固め、エネルギーは更に改良された光子力エンジンを搭載している。今のマジンガーZはかつてのマジンガーZの約数十倍のパワーを有しているんだ》
「す、数十倍ですって!」
 弓教授の言葉は何よりも驚かされた。装甲は以前自分を助けてくれたグレートマジンガーのと同じ装甲を用いており、エネルギーは更にアップしたエンジンを搭載した。これによりマジンガーZは従来以上のパワーを発揮出来るようになったのだ。
「よっしゃぁ! これでもうペダン星人のスーパーロボットと互角に戦えるんだなぁ!」
《互角ってもんじゃないわい! 今のマジンガーZは既にペダン星人のスーパーロボットを赤子の如く捻れる強さを持っとるんじゃ!》
 今度は三博士の声だった。その言葉には甲児は度肝を抜かれた。かつてマジンガーZや他のスーパーロボットでも怪獣や宇宙人と戦うのは苦戦を強いられていた。無論それはペダン星人のスーパーロボットも例外ではない。それが今あの博士達は赤子の手を捻ると言い出したのだ。
 もしそれが本当なら頼もしいと言うレベルじゃない。凄まじいレベルだ。となれば逆にペダン星人もたった10体で攻めて来た事を悔やまれる結果となる。
「さぁて、そんじゃ第二ラウンドと行こうぜペダン星人!」
【図に乗るな地球人が! 我等の科学力が貴様等下等な猿共の科学力に負ける筈がない!】
「だったら教えてやるぜ! 数を頼りに攻めて来るのはスーパーロボットとは言わねぇんだよ!」
 怒号と共に手近なキングジョーにZは鉄拳を叩き込んだ。グシャリと音を立ててキングジョーの胸部がひしゃげて、潰れて、破壊されていく。
 分厚い装甲を何枚も貫き内部の機械を破壊し、Zの拳はキングジョーの背中を突き抜けた。
 黄白色のボディの中央に似つかわしくない黒い腕が突き出ている光景が余りにも滑稽だった。
 その拳を引き抜くと、胴体に風穴の開いたキングジョーはそのまま地面に倒れこみ、そして爆発した。
 アッサリと倒してしまい、逆に味気なさが甲児には感じられた。最初にキングジョーに挑んだ時には全く効かなかった鉄拳が今では敵の胴体を貫く程の威力になっていたのだ。
 そして、その光景を目の当たりにしたペダン星人達は驚かされる。
【ば、馬鹿な! こんな事は有り得ない! 我等のスーパーロボットがこうも呆気なく倒されるなどと! 絶対あってはならない事だ!】
「何度も言わせるな! 数を頼りに来る奴等はスーパーロボットって言わねぇんだよ!」
 続けざまに攻撃を行った。今度はZの両目が輝く。
 光子力ビームだ! 光子力ビームを目の前に居たキングジョーに放つ。当然その攻撃は学習済みだ。即座にキングジョーは電磁バリアーを張りビームを無効化しようとする。だが、それも無駄に終わった。
 Zの放った光子力ビームはキングジョーの電磁バリアーを押しのけてそのボディを焼き切り切断し、貫き切り裂いた。
 電磁バリアーも無意味に終わった。バリアーを張ったキングジョー自身何が起こったのか分かる前に爆発し果てた。
 あっと言う間に二体のキングジョーが破壊されたのだ。これは由々しき事態だった。まさかマジンガーZが此処までパワーアップを果たしていたなどと想定外だったのだ。
「おいおい、幾ら何でもこりゃ強すぎじゃねぇのか? こりゃ凄すぎて俺自身もビビっちまうぜ」
【くそっ! 全機分散して空中から一斉攻撃しろ! 奴は飛べない筈だ! 空中から奴を破壊してやれ!】
 残っていた8体のキングジョーが一斉に分離して空中へと飛び上がる。甲児は舌打ちした。今のマジンガーZは空を飛ぶ能力がない。
「野郎、汚ぇぞ! 正々堂々地上で戦いやがれ!」
 地上からビームを放つも攻撃が全く当たらない。合体したキングジョーと違い分離状態のこいつらは機動性が上がっている。その上空中を自在に飛んでいる為に攻撃が当たらないのだ。しかも空中から分散したキングジョーが一斉にビームを放ってくる。幸い的のビームではマジンガーの装甲は貫く事はなさそうだがこのままでは勝負にならない。
《聞こえるか甲児君? ジェットスクランダーを発進させる。急発進だが何とかドッキングしてくれ》
「待ってました!」
 正しく絶好のタイミングだ。見れば研究所近くの崖から紅の翼が上空へと飛び立つ。突然の発進の為にキングジョー達も驚き連携が乱れる。
「よし、行くぞ!」
 Zは大地を駆ける。その上をジェットスクランダーが飛行する。ペダン星人達が気づいた時には既に手遅れだった。Zとジェットスクランダーが空中でドッキングし、Zの巨体を広大な大空へと誘ってくれた。
【い、いかん! 直ちに合体しろ! 分散状態では勝ち目が……】
 命令を送るよりも前に分散状態のキングジョー達の身に猛烈な突風が吹きつけられた。只の突風か? そう思っていたがそれが間違いだと気づいた時にはその殆どが突風の餌食となっていた。
 風を放っていたのはZの口であった。正しくは顔に取り付けられた縦穴の溝からだ。其処から猛烈な突風が放たれているのだ。それも只の突風じゃない。強力な酸を含んだ突風であった。
 だが、その突風も威力が格段に上げられている。その為に分離状態であったキングジョーの殆どが装甲が腐食し、ズタボロにされ、風化して散ってしまった。後に残っていたのは四機の円盤だけだ。
「へっ、ざまあ見やがれ!」
【おのれぇ、再度合体だ!】
 残っていた四機の円盤が合体し、一体のロボットとなる。分離状態の小型円盤から再び40メートルの巨大なロボットとなる。その前にジェットスクランダーを装備したマジンガーZが降り立つ。
「さぁ行くぜ! どっちが最強のスーパーロボットか勝負だ」
 拳を突き出してキングジョーの前で構えるZ。それに対し今のキングジョーには既に戦意が喪失していた。圧倒的な力の差の前にペダン星人達も勝てない事を理解したようだ。
 だが、それでもキングジョーは挑んでいく。此処までやった以上ペダン星人にも意地があるのだ。此処で引き下がれば汚名を着る事になる。それは死に勝る屈辱なのだ。
【行くぞ! もう我々に帰る場所はない! こうなれば玉砕覚悟でせめて奴だけでも倒すんだ!】
「てめぇと心中だけは御免だぜ! これでくたばりやがれ!」
 マジンガーZがキングジョーの目の前で両手を天に掲げて仁王立ちする。胸の赤い放熱板が熱を帯びて発光しだす。発光した胸の光が熱線となって放たれた。その熱線はキングジョーの巨体を徐々にドロドロに溶かしていく。脱出する暇などなかった。分離も出来ず操縦していたペダン星人諸ともキングジョーを更に威力が上がったブレストファイヤーで溶かし尽くしていく。
 放熱のスイッチを切った。その頃にはキングジョーと言う存在はなくなっていた。目の前にあったのはかつてキングジョーであったであろうドロドロに溶けたゲル状の物体が其処にあった。
 もう奴が起き上がる事はないだろう。そして動く事も攻撃してくる事もない。
「ふぅ……」
 シートにもたれかかり、甲児は息を吐いた。久しい感覚だ。半年前のミケーネ帝国の襲来以来マジンガーZに乗る事がなかった。その為に久しくこの愛機との再会は甲児に嬉しさを感じさせてくれた。
「甲児君、遂に復活したのね……甲児君とマジンガーZが」
「あぁ、これで俺も戦いに参加出来るぜ」
 さやかの目に映るのはかつての強気な甲児だった。やはりそれでこそ甲児だ。何時もの甲児に戻りさやかも嬉しく思う。
「さやかさん、ボス、俺は行くぜ。皆が待ってる気がするんだ」
「分かったわ甲児君。気をつけてね」
「全部片付け終わったら戻って来いよ。そしたらまた皆で馬鹿騒ぎしようぜ」
 Zの後ろでダイアナンとボロットが見ている。二人が甲児にエールを送ってくれている。その声が甲児の心を燃え上がらせてくれる。闘志が漲ってくる。その炎を燃え滾らせて今までの借りを全て返してやる!
「さて、何処に行けば皆が居るかな? ま、良いさ。敵がうようよしてんなら一匹残らず叩きのめしてやる! 待ってろよ皆!」
 甲児とZは飛ぶ。かつて共に戦った仲間達の元へ。再び戦う力を手に甲児は飛ぶ。かつて共に戦った仲間達の元へ。そして、今度こそこの世界に平和をもたらすために。
 今、此処に再び鉄の城が復活したのだ。




     つづく 
 

 
後書き
次回予告

 復活したマジンガーZと共に甲児は向う。丁度その頃、再び侵攻を開始したミケーネの軍勢。
 今こそリベンジを果たす時だ。

次回「再戦! マジンガーZ対戦闘獣軍団」お楽しみに 
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