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スーパーヒーロー戦記

作者:sibugaki
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第71話 再戦!マジンガーZ対戦闘獣軍団

 
前書き
 それは、小さな出会いの大きな戦いの物語。
 蘇ったのは鉄の巨人。その巨人との再会が追い詰められた戦士達の兆しになってくれるのでしょうか?

 スーパーヒーロー戦記……始まります。
 

 
 キングジョー軍団を退けた後、甲児はマジンガーZと共に大空へと飛び立っていた。次に向うのはかつての仲間達の所だ。しかし、その皆が何処に居るのかはさっぱり分からない。
「考えてみたら俺目覚ましたのつい最近だしなぁ……こんな事なら携帯とか持っとくべきだったぜ」
 愚痴る甲児。グレンダイザーと共にベガ星連合軍の敵と激闘を繰り広げた甲児ではあったが、ベガ星連合軍の猛攻の前に甲児の乗っていたTFOは中破してしまい、不時着した際にそのまま意識を失ってしまったのだ。
 それから目を覚ました時、其処には甲児しか居らず、グレンダイザーもベガ星連合軍の姿も見られなかった。そして、TFOを応急修理している最中に流れてきたラジオには、かつて共に戦った仲間達、そして今は敵対していたヒーロー達が”侵略同盟”なる悪の組織に敗北したと言う事実が告げられた事だった。
 それを聞いた甲児は覚悟を決めた。もうこれ以上TFOでは戦えない。再びマジンガーZの力を借りなければならない。
 それを決めた甲児は急ぎTFOを飛べる位までに修理し、光子力研究所へと向ったのだ。そして、戻って来た甲児を出迎えたのが、大軍勢のペダン星人の攻撃と、パワーアップして蘇った鉄の城との再会であった。
 そして、これから甲児が向う場所を今考えていたのだ。皆が何処で何をしていて、どう言った状況に巻き込まれているのか?
 それらが一切分からないのだ。それに闇雲に探すにしてもそれは時間とエネルギーの無駄遣いになる。それは避けたかった。
「連絡を取ろうにもウルトラ警備隊やMATの連中とも繋がらないし。第一何でアースラと連絡が取れないんだよ!」
 甲児は仕切りに連絡を行っていたのだ。だが、帰って来たのは雑音ばかりだ。ウルトラ警備隊もMATにも繋がらない。
 それだけならばまだ考えようもある。だが、アースラとも繋がらないのは問題だった。一体何故?
 疑問と同時に不安も募ってくる。まさかアースラが鎮められたのでは?
「えぇい、何を変な事考えてるんだ俺は! あのリンディさん達がそう簡単にくたばる訳ねぇじゃねぇか!」
 頭を振りさっきまで過ぎっていた嫌な予感を振り払う。そんな縁起でもない考えを持っていては実際にそうなってしまうかも知れないからだ。
「しょうがねぇ。こうなったら試しにあそこに行って見るか」
 行き場所が分からない場合、甲児が行こうと思った場所が一箇所だけ浮かんだ。もしかしたら其処に行けば誰かしら居るかも知れない。そう思っていたのだ。その思いに従い操縦桿を動かす。Zの進路がその方向に向き飛んでいく。高度を徐々に上げていき、それに伴い速度も上げていく。この調子でなら目的地まで5分と掛からずに辿り着ける筈だ。
「へへっ、待ってろよなのはにはやて。今度こそお前等の度肝を抜かして驚かしてやるからなぁ」
 口元を吊り上げて嬉しそうににやける甲児。その笑みで甲児がこれから何処に向うと言うのかがこれで分かるだろう。分からない場合はもう少し後になれば分かる話しだ。




     ***




 喫茶店アミーゴ内では久しぶりに来客が訪れてそれなりの賑わいを取り戻していた。侵略同盟の動きが遅くなった事により人々が徐々にだが外に顔を出すようになったのだ。
 そして、馴染みの客がこの店のコーヒーを飲もうと訪れているのである。無論、そんな客だけじゃない。他にも落ち着ける場所を求めてやってきた客も居る。そんな客達にマスターである立花籐兵衛は分け隔てなくコーヒーを振る舞い料理を作った。それを口にした人々が安堵と安心の笑顔を浮かべる。
 こんな時だからこそ人々は安息を求めているのだ。そんな人達で店は一杯になり忽ちアミーゴは繁盛していた。
 店内は忙しくなり、とても立花一人では対応出来る領域ではなくなり、それを見兼ねたなのはは手伝いを進んで行う事となった。
「光太郎、サンドイッチ入ったから作ってくれ」
「分かりました」
「それとなのはちゃんとはやてちゃんとは3番テーブルと5番テーブルの片付け頼む。フェイトちゃんは4番テーブルのところにコーヒーを4つ持ってってくれ。ゲンは倉庫から豆持ってきてくれ。ジンは皿洗い頼む。そんでシグナムさんは客の対応だ」
 流石はマスターだ。てきぱきと指示を出して皆を動かす。それに応じて皆も忙しく店内を駆け回った。なのはとはやてとフェイトの三人が料理の運搬並びに机の片付け。光太郎が立花の補佐や料理を作り。ゲンが倉庫からの具材などの運搬。ジンが下請け。そしてシグナムが客の応対だった。皆がそれぞれ役割を分担して行ってくれるお陰で流れがスムーズになりどんどん客が捌けていく。それでも後から後から客が入ってくる為に休む暇がない。
 結果として客が居なくなったのは丁度昼過ぎ辺りになってからだった。その頃には皆がもうバテバテの状態になっており一歩も動ける状態ではなかったのであった。




「皆お疲れさん。お陰で助かったよ」
 ヘロヘロになっていた皆に立花が労いの思いを込めたコーヒーを振舞ってくれた。今回は珍しく砂糖とミルクが入っており甘めであった。
 疲れた体には何よりも嬉しいご褒美と言えた。
「あぁ、やっぱり立花さんのコーヒーは美味しい」
 久しぶりに味わうコーヒーを飲みながらフェイトがそう呟いていた。アースラ隊が敗北し、仲間が散り散りとなってしまってから、フェイトはずっと戦いと敗走の繰り返しであった。
 一人で怪人達と戦う事など出来ず、出来る事と言えば足止めや囮程度でしかななったのだ。それが何時しかフェイトの心を追い詰めていきやがては疲れさせてしまった。
 その精神的疲労が今こうして和らいでいくのを感じた。
「フェイトちゃん。他の皆と連絡がつかないって本当なの?」
「うん、皆に連絡が繋がらないし、母さん達とも全然……」
 話の途中でフェイトは俯いてしまった。依然としてアースラと交信が出来ないのだ。アースラとの交信を妨害するにはミッドチルダの知識が必要になる。だが、見るからに敵組織にそれを持った奴等が居るとは考えられない。となれば考えられる可能性は一つしかない。
 アースラが交信出来ない状態に陥っているか、もしくはアースラそのものが既にこの世からなくなったかのどちらかだ。
「大丈夫だよフェイトちゃん。リンディさん達だってきっと無事だよ」
「うん、そうだよね……きっと、皆無事だよね」
 頷くが相変わらずその顔には覇気がない。やはり落ち込んでいるようだ。
「そ、そうや! こないな時はお昼のバラエティ番組を見て気を紛らわすのがえぇよ」
 気を利かせたはやてがテレビの電源を入れてくれた。店内にテレビの軽快な番組音声を奏でてくれる。丁度つけた番組がバラエティ番組だったらしく場の空気を和ませてくれるには良い効果であった。
 テレビではサングラスを掛けた中年の男性がマイクを片手に大勢の視聴者達を笑わせてくれる。テレビ外で大声で笑ってくれているギャラリーに乗じてテレビを見ていたなのは達も自然と笑みを浮かべていた。
 視線を外せば光太郎や立花も笑っており、あのシグナムでさえうっすらと笑みを浮かべている。誰もがこうして笑える時間が如何に貴重かと言うのが分かっているのだ。
 だが、そんな時、突如バラエティ画面が切り替わり堅苦しいニュースの画面へと切り替わる。
【番組の途中ですが、此処で緊急速報をお伝えします。本日正午過ぎ、日本海付近に謎の機械獣軍団が出現しました。機械獣軍団は真っ直ぐ日本を目指しております。詳しい行き先は……只今予想が出ました。行き先は、東海地方だと推測されます。付近の皆様は至急避難して下さい! 繰り返します……】
 突然放送された速報はその場に居た一同に戦慄を覚えさせた。謎の機械獣軍団が今この日本を目指して進んで来ていると言うのだ。しかも東海地方。だが、何故敵は東海地方などを目指しているのだろうか?
「なのは、あれはきっと戦闘獣軍団だよ!」
「戦闘獣?」
 フェイトの言葉に首を傾げる。なのはは戦闘獣の類を知らないのだ。初めてそれに出会った際になのはは重症を負ってしまい意識不明の状態だった為に知らないのだ。そしてはやてもまた戦闘獣と会うのはこれが始めてになる。
 だが、フェイトは知っていた。彼女は以前戦闘に巻き込まれた事があったからだ。故にそいつらの強さ、恐ろしさを良く知っている。そして、今の自分達で果たしてその戦闘獣達に対抗出来るのか?
 今ウルトラマンが二人仲間に居るが敵は機械獣を遥かに凌ぐ戦闘力を持つ奴等だ。数分間しか戦えないウルトラマンだけでは正直心許ない。
 皆の表情が強張ってきた。そんな時、軽快な音声が鳴り響いた。音声からして携帯電話の音声だ。だが、フェイトは携帯を持っていない。はやてと光太郎は持っているがこの音声は使っていない。となれば予想されるのは後一人となる。
「あ、私の携帯だ!」
 そう言ってなのははポケットから自分の携帯電話を取り出して着信相手を見る。其処に書いてあったのは男性の名前だと一目で分かった。
 兜甲児。
 そう名前が書かれていたのだ。
「甲児さん……甲児さんだ!」
 なのはの目が輝き着信ボタンを押し、耳元に携帯を近づける。
「も、もしもし……」
《その声はなのはだな? 元気そうで安心したぜ》
 電話から聞こえてきたのは聞き覚えのある元気な青年の声だった。その声は間違いなく兜甲児の声だった。
「甲児さん! 甲児さんなんですね?」
《おう! にしてもお前今何処に居んだ? お前の家に行ったのに相変わらず誰も居ないし、はやての家も誰も居ないじゃねぇか》
 どうやら甲児は一足先に海鳴市に行ったようだ。其処でなのはとはやての家に行ったは良いが誰も居らず結果として無駄足を食らった事になる。
「今、私達は喫茶店アミーゴに集まってるんですよ」
《何! 俺を放っといてアミーゴに集まるなんざ許せねぇぞ! 俺も行くら全員其処で待って……うん?》
 会話の途中で甲児の言葉が途切れた。甲児自身が何かに気づいたかの様だ。一体どうしたのだろうか?
「どうしたんですか、甲児さん?」
《レーダーに反応がある。結構の数だな。こいつら此処目指して来てるみたいだ。悪いが到着は少し位遅れそうだぜ》
 その一言を言い終えた後に、向こうの方から乱暴に通信が切られた。聞こえてくるのはツー、ツー、と言う音声だけだ。
「なのは、どうしたの?」
 黙ったままのなのはを心配そうに見つめながらフェイトが尋ねる。他の皆の視線も集まっている。皆気になっているのだ。あの後甲児がどうなってしまったのか? 一体海鳴市に何が起こり出そうとしているのか?
「もしかして……」
 なのははふと、テレビのニュースを思い出した。日本に向かい謎の機械獣軍団が向った先はもしかしたら海鳴市なのかも知れない。
 だとしたら今其処に居る甲児が危険に晒されて居る事になる。




     ***




 一足先に海鳴市に来た甲児は見事なまでの無駄足を食らう羽目となった。復活し、尚且つパワーアップしたマジンガーZをなのはやはやて達に見せてやろうと息巻いて駆けつけたは良かったが当の二人や仲間達は皆アミーゴに集まっている為此処には居ない事が分かった。
 つまり此処に留まってても意味はないのである。その為さっさと移動を開始しようとした正にその時にであった。
 突如レーダーが反応を示したのだ。数は数えるのが正直面倒な位としか答えようがない。それだけの数が此処海鳴市を目指して来ている。
 外国からの応援かと当初は思ったがそれも稀有に終わった。全世界が侵略同盟の襲撃を受けた今、何処の国にこれだけの増援を回す余裕があるだろうか? 未だにミケーネ帝国の襲撃から立ち直っていない各国は自国の防衛で手一杯の筈だ。となればこのレーダーに映っている反応は十中八九敵と考えた方が正しい。
「そろそろ見える頃だな」
 レーダーの反応が徐々に近づいてきているのが分かる。もうすぐ肉眼で視認出来る距離に来る。それに呼応してZのボディが地上から空中に移り、更には沖へと移動する。
 この町は只の町じゃない。自分の大事な仲間達の帰るべき場所なのだ。それを無粋な奴等に荒らされる訳にはいかない。何としても此処は死守しなければならないのだ。
「来たな」
 いよいよ甲児の目にレーダーの反応の主達が映りだした。予想は的中した。
 其処に映っていたのはどれも醜悪な姿をした機械の獣達。ミケーネの戦力である戦闘獣軍団であった。
 そのどの敵も機械と生物のハイブリット体ではあったが、それと同じように様々な分類が成されていた。
 昆虫、鳥、果ては魚まで居る。どうやら戦闘獣も分類が分けられているらしい。
 そいつらが真っ直ぐ海鳴市へと迫って来ている。どうやら此処を火の海にしようとしているのだろう。そうはさせない!
「おっと、其処までだぜ!」
 進路上にZが立ち両手を大きく広げて前に突き出す。俗に言う「止まれ」の意思表示だ。それを見た戦闘獣軍団の殆どが動きを止めた。そして目の前で進路を妨害している無粋なロボットを見た。
【何だ貴様! また俺達にぶっ壊されたいのか? 今度はあのグレートマジンガーもゲッターロボも、ましてやウルトラマンも助けに来てくれないぞ】
「それがどうした! こちとらリベンジマッチを挑みたくてウズウズしていた所だ! 此処から先へ進みたいんだったらまず俺を倒してからにしな!」
 両腕を堅く握り締めたZが戦闘獣達を前に身構える。ファイティングポーズを取ったZから並々ならぬ闘志が溢れ出てくるのが見て取れた。
【面倒な奴だ。片付けろ! どうせ一度完膚なきまでに叩きのめした相手だ! 今度こそ地獄の底へ叩き落せ!】
 戦闘獣達はこの時、大いなる誤算をしていた事に未だ気づいていなかった。
 それは、マジンガーZの強さがかつて自分達が倒した頃のマジンガーZと同じだと思っていた事だ。
 今のマジンガーZの強さは以前のそれを遥かに凌駕している。それを戦闘獣達は全く計算に入れていなかったのだ。
「前の借りを返してやらぁ! これでも食らいやがれ!」
 先手必勝の名の如く、マジンガーZの両目から閃光が放たれた。
 光子力ビームだ。
 前と同じように全ての戦闘獣達が一斉に散らばってそれを回避する。しかし回避した戦闘獣の元へ飛んできたのは弾丸の如く飛んできたマジンガーZであった。それを避ける事など出来ず、目の前の一体の戦闘獣は胴体から真っ二つに引き裂かれてしまった。
 だが、その際に奇妙な色の液体が噴出され、Zの体を濡らしていく。
「うわっ! これってあの溶解液か?」
【馬鹿め! その溶解液は貴様の超合金Zのボディをドロドロに溶かしていくわ! 骨も残さず溶けるが良い!】
「へん、馬鹿なのはてめぇらだぜ!」
 笑みを返す甲児。ボディを纏っていた溶解液を一振りで跳ね除ける。
Zのボディは微塵も溶けてはいない。全くの無傷だ。
【ど、どうなっているんだ?】
「バーロィ! もうZのボディ超合金ニューZになってんだよ! そんな溶解液なんざ屁でもねぇぜ!」
 Zのボディに未だにへばりついている溶解液が空しくボディを滴り落ちていく。
 不気味な色をした溶解液本来の機能を果たす事なくZのボディから海へと落ちてしまった。Zのボディは微塵も溶けてはいない。
「へっ! ご自慢の溶解液もこの程度じゃ話にならねぇぜ!」
【馬鹿な! グレートマジンガーの劣化型の癖に何故我等の攻撃が通じないのだ! えぇい、形振り構ってなど居られるか! こうなれば総力を挙げてZを葬るだけだ!】
 戦闘獣軍団が総力を結集して襲い掛かってきた。それぞれ攻撃が乱射される。
 ビームが、ミサイルが、熱線砲が、ありとあらゆる武器がZに襲い掛かってくる。
 しかし、そのどの武器もZのボディに傷をつける事は出来なかった。どれもこれも空しく散っていくだけだ。それとは対照的にZの攻撃はどれも凄まじかった。
 腕を突き出せば戦闘獣の堅牢なボディを貫き、蹴りを放てばその体を切断する。
 武器も比べ物にならない程にパワーアップしており最早此処に居る戦闘獣では戦いになどならない。大人と子供の喧嘩よりも悲惨な光景が其処にあった。
 そして、その悲惨な戦いはあっと言う間に終結した。Zの圧倒的勝利に終わったのだ。
 辺りに立っている戦闘獣など居ない。あれほど居た戦闘獣軍団がZの前に呆気なく倒されてしまったのだ。
 かつての戦いを知っている者が見たらきっと信じられないと言えるだろう。だが、これは現実なのだ。現実に起こっている事なのだ。
 無論、それに一番驚いているのは操縦をしている甲児自身ではあるが。
「す、すげぇ……キングジョーを叩きのめした時にも感じたけどマジンガーZが前よりも遥かにパワーアップしてやがる」
 操縦桿から伝わってくる感触で分かる。このマジンガーZのパワーはまだまだ上がある事を。そして、その力を全て発揮した場合、戦闘獣など相手にならないと言う事も。
【な、何と言う事だ!】
「ん?」
 また別の声がした。まだ生き残りが居たのか?
 声がした方を見ると其処に居たのは三体の戦闘獣達だった。それぞれ昆虫、鳥、魚を模した戦闘獣達だった。
「なんだぁ? まだ生き残りが居たのかよ?」
【ほざけ! 我等こそミケーネ七大将軍よ!】
「ミケーネ七大将軍だと?」
 どうやらこいつらは只の戦闘獣じゃなさそうだ。そいつ等から放たれる気迫が桁違いに強い。
【貴様がマジンガーZと兜甲児か? 我等戦闘獣軍団を蹴散らすとは少々貴様を侮っていたようだ】
「へっ、やっと大将のご登場か? だったら今度はてめぇらを退場させてやるよ」
【見くびるなよ! 我等の力は貴様が先ほど倒した戦闘獣よりも遥かに上なのだ! 貴様が以下に力を増そうとも我等七大将軍を屠る事など不可能!】
「あぁそうかい! だったらてめぇらの言ってる事が本当かどうか見せて貰うぜ!」
 互いの啖呵が終わったのと同時に戦闘が開始された。まずは目の前の鳥型の将軍に向かい堅く握り締めた拳を振り放った。唸りを上げて飛んでくるマジンガーの鉄拳。それを鳥型の将軍は苦もなく回避してしまった。右回りに即座に回りこみマジンガーの背後に回りこんだ。
「は、速い!」
【それは違うなぁ。私が速いのは当然だがそれ以上に貴様が遅いのだ!】
 蔑むように笑い、背後からZに蹴りを叩き込んだ。後頭部に鳥型将軍の蹴りが入り頭から上空で半回転しながら高度が落ちていく。
「んなろぉ! 俺の頭に蹴り入れやがって!」
 高度を保つ為にバランスを取り姿勢を安定させ、鳥型将軍を睨み付ける。
 鳥型将軍はZよりも数メートル上で優雅に腕を組み笑みを浮かべていた。そんな仕草が甲児には余計に憎たらしく見えた。
 こいつ、笑ってやがる!
 何とも苛立ちを感じさせる仕草だった。このまま笑われっぱなしなのは甲児のプライドが許さない。
 再び鳥型将軍へ殴り掛かろうとした時、背後に何か異様な気配を感じた。
【敵はバーダラーだけではないのだぞぉ!】
「何!?」
 気づいた時には遅かった。背後から魚型の将軍がZを羽交い絞めにしたまま高度を落とした。真下にあるのは広大な海。その海の中へZごと魚型将軍は飛び込んでいった。
 海中へと飛び込んだ二体。そうすると魚型将軍はいきなりZを蹴り飛ばす。
【ハハハッ! 次は俺が相手だ。海の中で俺は無敵だ! この海で果てるが良い!】
 勝ち誇った声で言う魚型将軍。確かに奴の言う通りだった。魚型将軍であったが故に奴は海中では水を得た魚の如く猛スピードで泳ぎだす。
 まるで空中の鳥型将軍と同じだ。只鳥型と違う点と言えば今Zが海中に居る事だ。海中に居るZは空中の時に比べて動きが遅くなってしまう。それが相乗して魚型将軍の強さとなっていく。
【ハハハッ! 遅い遅い、それではカタツムリにすら追い抜かれるぞ!】
「ち、畜生! 海中じゃ勝ち目がねぇ―――」
 悔しいが海中でこいつを倒す事は無理だ。動きが鈍くなるし武器も一部が使用出来なくなってしまう。何より敵の得意な土俵で戦うのは余りにも愚作過ぎる。
 少し悔しいが此処は空中に逃げる他ない。
 迫り来る魚型将軍の猛攻をどうにか防ぎながらも海面を目指す。
【逃げる気か?】
「バーロィ! こんな寒い時期に泳ぐ気になんかなれっかよぉ!」
 売り言葉に買い言葉で応酬し、遂に念願の海上へと飛び出した。
 だが、そんなZを待っていたのは昆虫型の将軍であった。
「何!」
【おら、もう一度飛び込んで来い!】
 昆虫型将軍の外見はカブトムシを連想させる姿であった。そして、そのカブトムシの象徴とも言える雄雄しき角でZのボディに対し思い切り突っ込んできたのだ。
「ぐほっ!」
 甲児が呻く。幸いボディに亀裂やヒビは入っていない。入ったとしても傷程度だろう。だが、その威力は凄まじかった。折角海上に出たと言うのに再び海面へ叩き戻されてしまった。
 そして、そんなZを魚型将軍の猛攻が迎え入れてきた。
【ハハハッ! 死ね、死ねマジンガーZ! 以下に貴様が無敵でもパイロットが死ねば木偶の棒同然よ!】
「くそぉっ! こんなとこでくたばって溜まるかぁ!」
 強がっては見た物の状況は依然として悪い方に傾いている。
 海中に居れば魚型将軍の猛攻に遭い、かと言って海上へと飛び出せばその直後を狙って鳥型将軍と昆虫型将軍の襲撃を受けてしまう。逃げ場が全くないのだ。
 このままでは幾らパワーアップしたマジンガーとていずれ限界が来てしまう。それよりも前に甲児自身の体が保たない。
「このまま良い様にされて溜まるか! こうなったら一か八かだ!」
 甲児は賭けに出た。海中を自由に動き回る魚型将軍はどうやったって倒すのは無理だ。奴の土俵ではマジンガーは本領を発揮出来ないし何より分が悪い。まずは空中の敵をどうにかするのが先決だ。
 だが、海上に上がろうとすればその直後に襲撃を受ける。其処に甲児は目をつけたのだ。
 相手が奇襲で来るのならばこちらも奇襲で行くまでの事。それが甲児の考えであった。
 まずは同じように海上へと向う。そして、Zの体を海上へと上げるその直前に両腕を噴射したのだ。
 上空で待機していた両将軍はてっきりまたしてもZが浮上してくるものかと思い込んでいた為に思いも寄らない襲撃を受ける事となってしまった。
 海上から飛び出してきた二本の腕は何とも上手い具合に両将軍のドテッ腹に命中し二体を吹き飛ばしたのだ。
 思いも寄らない奇襲を受けた為に三将軍の連携は崩れてしまった。その隙にZは海上へと舞い上がる。
「見たか! 今度はこっちの番だぜ!」
 甲児が最初にターゲットに定めたのはバランスを崩した状態の鳥型将軍だった。
 空中で一番問題なのは鳥型将軍だ。奴がバランスを崩している今が最大のチャンスなのだ。奴が体制を建て直し再び空中を自在に飛べるようになっては手の付けようがない。
 チャンスを最大に生かすんだ!
 一直線に鳥型将軍へと突っ込んで行く。鳥型将軍はようやく体制を立て直そうとしていた時であった。そんな時に目の前に突如ミサイルの弾道速度並に突っ込んできたZの体当たりを食らいそのまま海岸へと叩きつけられた。
【お、おのれぇ……】
 憎憎しげに愚痴りながら鳥型将軍は立ち上がろうとする。だが、そんな鳥型将軍にZが蹴りを放ち仰向けだった体制を今度はうつ伏せへと変える。Zの目の前には鳥型将軍を連想させる二枚の翼が見えた。
 鳥型将軍の背中に太いZの足を押し付けて地面に押さえつける。
【どけ! 私の背中に足を乗せるな!】
「散々人の事弄びやがって! 鳥ってこたぁ空中でなけりゃ思うように動けねぇだろう?」
 今度は甲児がニヤリと笑みを浮かべる。Zの太い両腕が鳥型将軍の右羽を掴む。そしてそれを力任せに引き千切った。
 地面に倒れている鳥型将軍の絶叫が聞こえて来るが気にしない。今度は左羽を同じように引き千切った。これでもう鳥型将軍は空を飛ぶ事が出来ない。
【くそぉっ! 俺の羽をよくも……】
「悔しいか? 人の事をおちょくった報いだ!」
 地面に倒れていた鳥型将軍の細い体を両手で持ち上げて頭上まで持ち上げる。
【バーダラー! 今助けるぞ!】
 Zに向かい自慢の角を翳して突っ込んで来る昆虫型将軍。奴の武器はその自慢の角にある。が、それは同時に奴の弱点でもあった。
「馬鹿野郎! この兜甲児様に二度も同じ戦法が通用すると思ってんじゃねぇ!」
 持ち上げていた鳥型将軍を思い切り投げつける。突然投げつけられた鳥型将軍に驚き突進が停止してしまった昆虫将軍に向かい再びZが突っ込んで来る。
 また体当たりを行おうとしたのだろう。受けて立とうと昆虫型将軍は自慢の角をつき翳した。
 だが、Zの思惑は違った。昆虫型将軍の角を脇に固めて掴んだのだ。
【な、何をする!】
「カブトムシの角を連想してんだよなぁこいつは? 確かにあれは強いけど、反面こうするともげ易いんだぜぇ!」
 そう言い昆虫型将軍の右足に蹴りを叩き込む。蹴られた足が上空へと飛び上がりその拍子にバランスが崩れて昆虫型将軍のボディが地面に叩きつけられる。そのまま掴んでいた角を上へと捻り上げる。
 角の部位が軋む音がしだし、いともアッサリと自慢の角が千切られてしまった。
【ぎゃああぁぁぁ! 俺の角が、俺の角がぁぁぁ!】
「そんなに大事な角なら返してやるぜ!」
 地面でのた打ち回る昆虫型将軍。そのドテッ腹に引き千切った角を突き刺す。刺した角は昆虫型将軍のボディを貫通し地面に刺さり停止した。刺さった箇所からオイルが噴出し破壊された機械のパーツが飛び散る。
 数度痙攣を起こした後、昆虫型将軍は動かなくなってしまった。機能を停止したようだ。
 よし、まずは一体。
 海上から魚型将軍が飛び出す。そして、Zの前で亡骸となった昆虫型将軍を見て絶句した。
【おぉっ、スカラベス! おのれぇマジンガーZがぁぁ!】
 怒号を張り上げて魚型将軍が海岸へと上がりZ目掛けて走り出す。それこそが魚型将軍にとって命取りであった。
 海中であればマジンガーZに勝てる可能性があった。だが、陸上に上がってしまえば勝ち目は格段に薄くなる。それ位本来の魚型将軍なら安易に想像出来ただろう。だが、怒りに思考が狂った今の魚型将軍ではそんな考えは出来なくなっていた。それこそが魚型将軍の敗因にもなった。
 魚型将軍がヒレを思わせる腕を振り上げてZ目掛けて腕を振るう。
 だが、その動きに水中の時のような素早さは見られなかった。海中では無敵だろうが陸上では途端に弱体化してしまう。
「動きが鈍いぜ! 陸上でZに勝てる訳ねぇだろうが!」
 魚型将軍の腕をZの腕で払い除け、そのまま魚型将軍の頭部をZの腕で掴みヘッドロックの要領で拘束する。そして、ちょうちんアンコウの様な頭部の触覚をもう片方の腕で掴み引っ張る。
【や、止めろ! 何をするつもりだぁ!】
「薄気味悪い触覚だぜ! そしてそれがテメェ等の弱点なんだろうが!」
 先ほどの鳥型将軍と同じ要領でその頭部の触覚を力任せに引き千切った。千切った箇所から流血の如くオイルが噴出し魚型将軍がのたうち苦しみまわる。
 その苦しみ続ける魚型将軍の鱈子唇をした巨大な口にZは両腕を突っ込んだ。
 そして、上顎と下顎を掴み限界まで開かせる。
 昆虫型将軍の口がミチミチ音を立てて破壊されて行き、最終的に魚型将軍の顎を破壊し引き千切った。
【あがが……あががが……】
「水中じゃ世話になったな。これはお返しだ!」
 苦しむ魚型将軍に対しZの口から猛烈な突風が発せられた。
 強力な酸を含んだルストハリケーンを受けた魚型将軍は跡形も無く風化して消え去ってしまった。
 残ったのは空を飛べなくなった鳥型将軍只一人だ。
【ば、馬鹿な……我等無敵の七大将軍の内二人がこうも呆気なく倒されるなど……有り得ん! これは悪夢だ! 悪夢だとした考えられない!】
 狂ったように叫びだす鳥型将軍。そんな奴の前にZが歩み寄る。
【く、来るな! 来るな化け物ぉぉぉ!】
「何が化け物だ! 大勢の人達を虫けらの様に殺したてめぇらの方がよっぽど化け物だぜ!」
 そう言い戦闘意欲をなくした鳥型将軍の顔面を殴りつけた。再び地面に倒れた鳥型将軍に馬乗りし、左右の腕を交互に殴りつける。
 右で顔面を殴りつけたら今度は左で顔面を殴りつける。
 そうしている内に鳥型将軍の顔が徐々に歪に歪み始める。もうその顔は見る影もなくなっていた。
 やがて、殴り終えたZは再び鳥型将軍を両腕で持ち上げて頭上へ掲げる。
「そら、最期にもう一回大空へと飛ばしてやるよ!」
 最期の情けかの如く鳥型将軍を大空へと投げ飛ばす。遥か上空へ飛んだ後、羽を失った鳥型将軍は自由落下の状態に入りZの待つ地面へと真っ逆さまに降下していった。
 そして、鳥型将軍が見た最後の光景。それは地面で両腕を天に突き出し仁王立ちするZと、そのZの胸の赤い放熱板が発熱している光景であった。
「これでトドメだ! ブレストファイヤー!」
 マジンガーZ最強の武器であるブレストファイヤーが鳥型将軍の体を包み込んで行った。そのボディは高熱に溶け出し、あっと言う間にドロドロの液状になり地面へと再び着地した。
 目の前には大勢の戦闘獣達の亡骸と、三大将軍の無残な死に様が其処にあった。
 後に立っているのはマジンガーZしか居ない。
 戦闘は終わった。マジンガーZの圧倒的な勝利に終わったのだ。
「へへっ、リベンジマッチは俺の勝ちだな。さてと、此処には皆居ないし、さっさとアミーゴへと移動するか。」
 ヘルメットを脱ぎ、頭を掻き毟る甲児。気がつくと体中が汗ばんでいた。激戦を経たのだから緊張の為に汗ばんだのだろう。
 手の甲で強引に汗を拭いとり溜息を吐く。戦闘は終わったのだが当初の目的は全く果たせていない。
 結果として振り出しに戻ってしまった事になる。
「まぁ、皆の居る場所は分かった訳だし、リベンジマッチも勝てた訳だし、結果オーライって事で良いか」
 自分自身にそう言い聞かせて納得し、Zは再び大空へと舞い上がる。目指すは仲間達の待つ喫茶店アミーゴへ。




     つづく 
 

 
後書き
次回予告

 Zが復活し戦線へと加わった。だが、そんな時突如として現れる黒い怪獣と白い侵略者。
 彼等と戦っていたのは行方知れずとなっていたウルトラマンジャックであった。
 苦戦するジャック。だが、其処へ遂に彼等がやってくる。

次回「夕日の決戦」お楽しみに 
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