真似と開閉と世界旅行
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Yui-MHCP001~
前書き
修学旅行より帰還して初投稿です。・・・今回、説明も長くてしんどかったです。ではどうぞ!
・・・ユイの謎の現象から1日・・・
「ミナ、パンひとつ取って!」
「ほら、余所見してるとこぼすよ!」
「あーっ、先生ー!ジンが目玉焼き取ったー!」
「かわりにニンジンやったろー!」
・・・巨大な長テーブルの上で、食事と言う名の戦争を子供達は繰り広げていた。
「騒がしいけど・・・楽しそうだね・・・」
「毎日こんな感じなんですか?」
咲が聞くとサーシャさんは笑いながら答える。
「ええ。いくら静かにって言っても聞かなくて」
「子供、好きなんですね」
サーシャさんは照れながら微笑んだ。・・・それからサーシャさんは現実では教職課程を取っていたり、この世界で子供と過ごして色々違うことを知った・・・などと教えてくれた。
「ユイ、ゆっくり食べなよ?」
「うん、おにいちゃん」
・・・ユイはあの発作のあとすぐ目を覚ました。ただ、かすかに戻ったらしい記憶によれば、はじまりの街も、ましてや保護者と暮らしていた覚えもない・・・そんな時、索敵スキルに誰か引っ掛かった。
「誰か来るぞ。一人・・・」
サーシャさんと、念のため着いていったキリトに連れられて来たのは、長い銀髪をポニーテールに束ねた女性だった。・・・ただ、その装備は“軍”のユニフォームだったが。
「・・・」
「キリト、この人は・・・?」
警戒の色を見せる咲に代わり、おれが尋ねる。
「ええと、この人はユリエールさん。どうやら俺達に話があるらしいよ」
するとユリエールと言われた人は頭を下げて口を開いた。
「はじめまして、ユリエールです。ギルドALFに所属してます」
「ALF?」
アスナが聞くと、ユリエールは小さく首をすくめた。
「あ、すみません。アインクラッド解放軍、の略称です。正式名はどうも苦手で・・・」
ユリエールの声は、落ち着いた艶やかなアルトだった。・・・まるで誰かに似てるような・・・
「(楓、楓)」
「ああ・・・」
咲が咳払いをして口を開く。
「はじめまして、ユリエールさん。わたしは血盟騎士団のサキです」
「ええと・・・わたしは一時脱退中ですが、同じく血盟騎士団のアスナと言います。この子はユイ」
「・・・俺だけなんかやだな。ソロのコウハです、はじめまして」
「KoB・・・なるほど、道理で連中が軽くあしらわれるわけだ」
「・・・つまり、昨日の件で抗議に来たってことですか?」
「いやいや、とんでもない。その逆です。よくやってくれたとお礼を言いたいくらい」
「・・・」
ユリエールは姿勢を正し、こちらの目をまっすぐ見る。
「今日は、皆さんにお願いがあって来たのです」
「お、お願い・・・?」
アスナが聞き返すとユリエールは頷く。
「はい、最初から説明します。軍というのは、昔からそんな名前だったわけじゃないんです・・・軍ことALFが今の名前になったのは、かつてのサブリーダーで現在の実質的支配者、キバオウという男が実権を握ってからのことです」
「キバオウ・・・」
「“なんでや”・・・の人だったっけ?」
「?」
キリトと咲の会話の意味がよくわからないが、とにかく続きを聞こう。
「最初はギルドMTDという名前で・・・聞いたこと、ありませんか?」
「えーっと・・・」
「《MMOトゥデイ》の略だ、コウハ」
「あ・・・ああ。確か日本最大のネットゲーム総合情報サイトだっけ。ん・・・確か管理者がそのままギルドを結成して・・・名前が・・・」
「シンカー」
咲がその名を口にすると、ユリエールの顔がわずかに歪んだ。・・・それからユリエールは軍について色々話してくれた。元はただの生きるためのギルドだったのに、シンカーが放任主義なのをいいことに、ある日からキバオウが同調する幹部プレイヤーと共に様々な出来事を起こしていった。名前を変え、狩場を変え、そして徴税を行い出した。だがゲーム攻略をないがしろにしたことでキバオウ派に不満が起き出した。そこでキバオウは十数人近いプレイヤーによる攻略・・・そう、グリームアイズの一件で死んだコーバッツ達のことだ。当然結果は散々なもので、あと少しでキバオウを追放できると思ったのだが・・・
「三日前、キバオウがシンカーさんを騙し、回廊結晶を使って脱出不可能なダンジョンの最深部に取り残してきた・・・」
転移結晶も持っておらず、しかも非武装だ。一応生存しているので、ダンジョン内の安全地帯にはたどり着けたようだ。このままではシンカーが生きていようとギルド内で権利を持つキバオウにいいようにされてしまう。そこでユリエールはシンカーの副官として・・・助けに行くために、俺たちを頼ってきたのだろう。
「お会いしたばかりで厚顔きわまると思いでしょうが、どうか、私と一緒にシンカーを救出に行ってくださいませんか」
ユリエールの瞳には・・・焦りがあった。・・・ほんと、SAOのエフェクトはリアルだな。
「・・・」
だが、アスナもキリトも動けない。当然だ。これ自体が“罠”の可能性だってあるのだから。だが、咲は違った。
「わかりました。わたしの力で良ければ、お貸し致します」
「サキ!?」
アスナがガタッ、と椅子から立ち上がる。
「・・・ユリエールさん、あなたにとってシンカーさんは大切な人ですか?」
「・・・はい。今も、生命の碑にいつシンカーの名前に横線が刻まれるかと思うともうおかしくなりそうで・・・」
瞳を潤ませ、拳を握りしめたユリエールの手を咲が包んだ。
「その言葉が聞ければ充分です。大切な人と離ればなれになるなんて・・・あってはいけないんですから・・・」
俺も装備を身に付け、立ち上がる。
「一人で格好つけんなよ。・・・俺も行かせてもらう」
「コウハ・・・」
「それに、俺たちより早く信じてた子もいるしな?」
俺が首を振って咲に教える。
「ユイちゃん?」
ユイはにっこり笑う。
「だいじょうぶ、この人、うそついてないよ」
「ユイは人を見る目があるね」
そう言った後、キリトも立ち上がった。
「疑って後悔するよりは信じて後悔しようぜ。行こう、きっと何とかなるさ」
「相変わらずのんきな人ねぇ」
アスナはユイに一言謝り、食事を終えてから出発する。
「はあ、また亞莎に心配かけるなぁ・・・」
「まあ、話を聞く限り、俺達ならなんとかなるだろ」
『(・・・うーん)』
「・・・どした?リパル」
『(いえ・・・やっぱりユイさんのプロテクトが突破できなくて・・・)』
「・・・だから無理すんなって。下手にデリートされると俺が困る」
『(・・・ッス)』
ちなみにそのダンジョンはここ、はじまりの街の地下にある。キリト曰くベータテストの時にはなかったらしいが・・・そこはなんと60層相当のモンスターが出るそうだ。しかもボスもいるとか・・・さて、到着すると。
「ふーん・・・随分暗そうだな。ユイ、平気か?」
本当はユイを置いてきたかったのだが・・・それを素直に聞く子供ではあるまい。案の定ユイは着いてきた。
「ユイ、こわくないよ!」
ユリエールはそれでも心配そうだ。その不安を逃す為に、アスナが言う。
「大丈夫です、この子見た目よりずっとしっかりしてますから」
「うむ。きっと将来はいい剣士になる」
「こら、ユイちゃんを物騒な道に連れてかないでよ」
俺達は笑い、それを見てユリエールは大きく頷いた。
「では、行きましょう!」
ーーーーーさて、ダンジョンに潜り込んだのだが・・・
「ぬおおおお!!」
「やああああ!!」
ずぱーん、どかーん、と小気味がいいくらい敵が吹き飛んでいる。
「パパー、おねえちゃーん、がんばれー」
「仕事ないなあ・・・ね、アスナ?」
「うーん、でも、二人のストレス発散には丁度良いんじゃないかな?」
「・・・」
ユリエールは唖然としていた。合計三本の剣は敵をまったく討ち漏らさず、俺達はただ歩くだけだった。
「な・・・なんだか、すみません、任せっぱなしで・・・」
「いえ、あれはもう病気ですから・・・やらせときゃいいんですよ」
「確かに・・・」
「なんだよ、ひどいなあ」
「わたしをこれと同じにしないでよ」
「サキも“これ”はないだろ・・・」
「ふーんだ、キリトなんか知らないよーっだ」
「・・・なんだかんだ仲良いよね」
「そうね・・・」
「・・・」
「キリト、なんかレアアイテムとか出た?」
俺が聞くとキリトは頷き、何かの赤黒い肉を取り出した。・・・姉妹がそろって顔をひきつらせる。
「な・・・ナニソレ?」
「カエルの肉!ゲテモノなほど旨いって言うからな、あとで料理してくれよ」
「絶、対、嫌!!」
アスナが共通ストレージから肉を全て捨てる。
「あっ!あああぁぁぁ・・・」
「バッかじゃないの!?ほんとキリトって何考えてるのよ・・・!」
そんなやり取りを見て、ユリエールは腹を抱えて笑いを漏らす。それを見たユイは、
「お姉ちゃん、はじめて笑った!」
・・・そういや、ユイって笑顔に反応するな・・・
「さあ、先に進みましょう」
・・・ダンジョン初期は水中生物がメインだったが、階段を降りて奥に進むと、ゾンビとかゴーストとかの幽霊系統に変化した。姉妹揃ってそれ系が苦手なのは知ってたので、俺とキリトが前に出る。そして・・・僅かに通路の奥に光が見えた。
「あっ、安全地帯よ」
「奥にプレイヤーが一人いる。グリーンだ」
「シンカー!」
もう我慢の限界だったのか、ユリエールは名前を叫び、走り出す。
「ユリエールさん!」
俺達も後を追いかける。そして前方に大きな十字路がある、その先の小部屋に人影があった。
「ユリエーーーール!!」
男の声。つまりあれがシンカー・・・
「シンカーーー!!」
ユリエールが走る速度を速める。
「・・・?」
だが、何か嫌な予感がする。まさか・・・その時だった。
「来ちゃだめだーーーっ!!その通路は・・・っ!!」
その声を聞いて・・・咲の目付きが変わった。
「・・・ダメだ!」
咲がユリエールさんが通ろうとする十字路の右側の死角を見ながら走る。
「せめてタゲを・・・!?」
次の瞬間・・・咲の身体が吹っ飛んで、壁に叩き付けられた。
「かっ・・・はっ・・・」
「咲!?」
ユリエールは完全に止まってしまい、あのままでは次のターゲットになってしまう。
「・・・くっ!」
俺は走り、ユリエールさんを突き飛ばす。そして擬音を構え・・・
「(こいつ・・・!?)」
それは今までの敵とは違った。一言で言うなら・・・巨大な死神。その死神は大鎌を振り上げ。
「・・・!」
今からじゃ避けられない、せめて相殺を・・・!
「はぁぁぁ!!」
ソードスキルで対抗しようとした瞬間・・・視界が変わっていた。
「(え・・・)ぐぁっ!?」
衝撃。それでようやく自分が吹き飛ばされたのだと理解した。地面を転がり、勢いが衰えずに壁にぶち当たる。・・・危うく意識を持っていかれるところだった。HPは・・・危険、域・・・!?
「亮!!」
「早貴!!」
薄暗い視界から、誰かがユイを連れて安全地帯に行ったこと、俺と咲の目の前に二人の人間が立っているのを理解する。
「兄・・・貴・・・」
「うぐ・・・」
だが、次の瞬間には二人がかりでも防ぎきれず、キリトとアスナも吹き飛ばされた。
「く・・・そ・・・」
咲がゆっくりと、立ち上がる。
「お姉ちゃんは・・・絶対に守る・・・!キリト、時間を稼ぐから・・・結晶で、お姉ちゃんを・・・」
「何を言って・・・!?」
その時、足音が聞こえた。何とか目を見開き、見えたものは・・・咲よりもモンスターの近くに立っているユイの姿だった。
「ばかっ!!はやく、逃げろ!!」
俺達は急いで立ち上がろうとするが・・・
「だいじょうぶだよ、みんな」
次の瞬間・・・ユイの身体が“浮いた”文字通り、ふわりと・・・アスナが絶叫する。そしてその大鎌がユイを・・・・・・切り裂かなかった。
「え・・・」
表示されたのは、破壊不可オブジェクト・・・不死存在。プレイヤーが絶対に得られない能力。そして、更にユイの手を中心に炎が巻き起こった。その炎は凝縮し、長い刀身を作り出した。ユイが身に付けていた服が燃え落ち、白い質素なワンピースだけになる。だが、それ以外は炎による悪影響はないようだ。そしてユイはその剣を大きく振りかぶり・・・防御に回した大鎌ごと、モンスターを断ち切った。
「っ・・・」
思わず目を閉じ、次に開いた時には・・・そこにはユイだけがたっていた。
「ユイ・・・ちゃん・・・」
「ユイ・・・」
キリトとアスナの声にユイは振り返る。微笑んではいたが・・・その目には、涙があった。
「パパ・・・ママ・・・ぜんぶ、思い出したよ・・・」
・・・安全エリアは正方形で、真ん中に立方体の石机があるくらいだった。ユリエールとシンカーには先に戻ってもらった。取りあえず、聞かなければならないことは山程あった。
「ユイちゃん・・・思い出したの・・・?今までの、こと・・・」
ユイはしばらくしてから・・・頷いた。
「はい・・・全部、説明します・・・キリトさん、アスナさん、コウハさん、サキさん」
・・・その言葉を聞いて、俺は複雑な気持ちになった。
「・・・」
ユイが話したのは、この世界は《カーディナル》と呼ばれる巨大なシステムが制御しているということ。カーディナルは二つのコアプログラムが相互にエラー訂正を行い、人によるメンテナンスを不要とするらしく、ここの通貨やモンスター、NPCのAIも全てカーディナルが制御しているのだ。
ただ一つだけ、カーディナルは・・・人間の精神性によるトラブルだけは管理出来なかった。そこで・・・
「・・・カーディナルの開発者達は、プレイヤーのケアすらもシステムに委ねようと、あるプログラムを試作したのです。ナーヴギアの特性を利用して、プレイヤーの感情を詳細にモニタリングし、問題を抱えたプレイヤーのもとを訪れて話を聞く・・・《メンタルヘルス・カウンセリングプログラム》MHCP試作一号、コードネーム《Yui》それがわたしです」
「プログラム・・・?AIだっていうの・・・?」
アスナが掠れた声で言うと、ユイは悲しそうな笑顔のまま、頷いた。
「プレイヤーに違和感を与えないように、わたしには感情模倣機能が与えられています。・・・偽物なんです、全部・・・この涙も・・・ごめんなさい、アスナさん・・・」
・・・俺はソフィを思い出していた。彼女も、俺達とは違うと、自分は人間じゃないと・・・そう苦悩していた。
「AIに・・・記憶喪失なんて・・・あるの?」
咲が聞くと、ユイが説明していく。曰く、カーディナルがユイにプレイヤーに対する干渉を一切禁止したのだ。それによりユイはモニタリングだけを続けた。そこにあったのは恐怖、絶望、怒りといった負の感情・・・役割を果たせず、義務があるのに権利がない矛盾した中でエラーを起こしていき、ユイというプログラムは崩壊していった。そんな時だった。
「ある日、いつものようなモニターしていると、他のプレイヤーとは大きく異なるメンタルパラメータを持つ二人のプレイヤーに気づきました。喜び・・・安らぎ・・・でもそれだけじゃない・・・この感情はなんだろう、そう思ってわたしはその二人のモニターを続けました」
その二人がキリトとアスナ・・・そうだったのか。
「(俺や詠達にそう言ったのがなかったのは・・・)」
「(多分、亞莎達はプログラムだから・・・きっと)」
二人に何の脳波パターンがあったのかは既に理解していた。きっと俺らも感じたことのある感情だろうから。
「キリトさん、アスナさん・・・わたし、ずっとお二人に・・・会いたかった・・・森の中で、お二人の姿を見た時・・・すごく、嬉しかった・・・おかしいですよね、そんなこと思えるはずないのに・・・わたし、ただの、プログラムなのに・・・」
「違うよ・・・ユイちゃんはただのプログラムじゃない・・・」
「サキさん・・・」
咲は泣いていた。
「そうやって色んなことを考えて・・・感情があって・・・」
『咲さん・・・』
「ほら、聞こえるよね・・・?ここにもこうやって・・・作られたものだけど、立派に人間と同じ奴がいるんだよ・・・?」
『・・・自分じゃよく分からないッスけど・・・でも、オイラの考えや思いは本物ッス』
「・・・」
ユイがリパルを見て少しだけ頷いた気がした。
「とにかく・・・ユイはただのプログラムじゃない・・・もう俺達と同じだよ。自分の好きなように行動できるんだ・・・」
「コウハさん・・・」
そして・・・キリトがゆっくりと話し掛ける。
「ユイの望みはなんだい?」
「わたし・・・わたしは・・・」
ユイはその細い腕をキリトとアスナに向けて伸ばした。
「ずっと、一緒にいたいです・・・パパ・・・ママ・・・おにいちゃん・・・おねえちゃん・・・!」
・・・俺も、涙を抑えることは出来なかった。キリトとアスナはユイを抱き締め、咲はその場に泣き崩れてしまった。
「ずっと、一緒だよ、ユイちゃん」
「ああ・・・ユイは俺達の子供だ。家に帰ろう。みんなで暮らそう・・・いつまでも・・・」
・・・だが、ユイは・・・首を横に振った。
「え・・・」
「もう・・・遅いんです・・・」
「なんでだよ・・・遅いって・・・」
そもそもユイが記憶を取り戻したのは、この部屋にある石机に触れたからだそうだ。これはGMがシステムに緊急アクセスするためのコンソールだそうだ。実体化したさいのバクで記憶を無くしたユイが記憶を取り戻したのもコンソールからデータを受け取ったから・・・そしてさっきのはオブジェクトイレイサー・・・つまりは何でも消せるプログラムをモンスターに使った・・・それで破損した言語機能も復元できたのだが・・・カーディナルはユイを異物と捉えたのだ。
「酷い・・・なんで・・・」
「なんとか・・・ならないのか・・・!」
「・・・みんな、ありがとう。これでお別れです」
「嫌!そんなのいやよ!!」
「そうだよ!まだ・・・まだ思い出を作ってないよ・・・詠だって亞莎だって待ってるよ・・・」
「暗闇の中・・・いつ果てるとも知れない長い苦しみの中で、パパとママの存在だけがわたしを繋ぎとめてくれた・・・おにいちゃんやおねえちゃんにも詠お姉ちゃんやアーちゃんにも・・・色んな人と繋がれた・・・」
「ユイ、行くな!!」
「嫌だ・・・俺の目の前で・・・また・・・!ユイ・・・!」
「おにいちゃん・・・サチさんのことも・・・助けてあげて・・・」
「・・・!」
「サチさんは今・・・とても暗い場所にいる・・・けど、“光”もある・・・おにいちゃんがきっと光・・・」
「ユイ・・・」
「おにいちゃんならきっと助けられる・・・だっておにいちゃん優しいから・・・」
「う、あ・・・あぁぁ・・・!」
「おねえちゃんもありがとう・・・一緒に歩いたり、ご飯食べたり・・・楽しかった・・・」
「わたしもだよ・・・妹ができたみたいで・・・嬉しくて・・・楽しくて・・・う、うぅ・・・」
ユイの身体が光に包まれ、消えていく。
「パパたちの側にいると、みんなが笑顔になれた・・・わたし、それがとっても嬉しかった。お願いです、これからも・・・わたしの代わりに・・・みんなを助けて・・・喜びを分けてください・・・」
「やだ!やだよ!!ユイちゃんがいないと、わたし笑えないよ!!」
泣き叫ぶアスナにユイは笑顔を向け・・・
ーーーママ、わらって・・・
・・・その姿を光に変え・・・消えた。
「うわああああ!!」
アスナの泣き声が響く。
「まただ・・・!同じ過ちを、俺は・・・!」
耐えきれなくなり、俺は膝をついて泣く。
「・・・るな」
咲が何かを呟いた。
「ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなあっ!!何時も・・・何時も全てを奪えると・・・思うなぁ!!」
咲がコンソールに駆け寄り、リパルを真横に突き刺す。
「リパル!システムアシスト!キリト!手伝って!!」
「サキ・・・何を・・・」
「・・・そうか!それなら・・・!」
『・・・了解ッス!!』
俺は二人が何をしているのか解らなかった。ただ現れたホロキーボードのキーを叩き、流れる文字を読み取り・・・次の瞬間、二人は弾き飛ばされた。
「キリト君!?」
「咲!?」
咲はすぐに立ち上がり、キリトに駆け寄る。
「キリト!」
「・・・ああ、成功だ」
そう言ってキリトはアスナに涙の形をしたクリスタルを手渡した。
「こ、これは・・・」
「ユイが起動さた管理者権限が切れる前に、どうにかプログラム本体をシステムから切り離してオブジェクト化したんだ・・・」
「だから、それはユイちゃんだし、リアルに戻れれば時間はかかるけど・・・またユイちゃんはわたし達に会える」
「じゃあ、ユイは・・・無事なのか・・・?手を離しちゃ・・・いないのか・・・」
「ユイちゃん・・・そこに、いるんだね・・・わたしの・・・わたしたちの・・・ユイちゃん・・・」
俺は涙を拭い、明るく声を出す。
「・・・さあ、帰ろう!ユリエールさん達も心配してるだろうし、亞莎達にも伝えなきゃ!」
「ああ・・・そうだな」
「うん・・・」
「・・・リパル、行こう」
『分かったッス・・・』
また・・・またゲームをクリアしなくてはならない理由が増えた。その理由は俺に力を貸してくれる。蓮華との約束もある。俺は・・・負けるわけには、折れるわけにはいかないんだよな・・・
『みんな・・・頑張って・・・』
ユイの声が聞こえた気がした・・・
後書き
亮
「ユイ・・・」
早貴
「二度と会えない訳じゃないよ・・・それよりキバオウは?」
亮
「一応次回でも触れるけど、今回の件で完全にキバオウ派を壊滅できたらしい。これからは軍の資産ははじまりの街の住人と分け合うそうだよ」
早貴
「そっか・・・うん。SAOも大分クライマックス。これからもよろしく!」
亮
「それじゃ、また次回!」
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