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スーパーヒーロー戦記

作者:sibugaki
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第38話 更なる脅威

 
前書き
 次元世界を震撼させたPT(プレシア・テスタロッサ)事件、又の名をジュエルシード事件が無事に終結してから数日後。
 ヒーロー達は束の間の平和をその身で噛み締めていた。時空管理局所属であるアースラ隊と同行していったフェイトとアルフは揃って地球を離れミッドチルダで魔力の特訓を行い、更なる力をつけようと切磋琢磨に励んでおり。
 甲児達は束の間の平和を謳歌するかの用にのんびりと生活を送っていた。
 ゲッターチームの面々はゲッターの修理と併用し、ゲッター線の平和利用と本来の道であった宇宙開発の準備を進めていた。
 本郷猛と一文字隼人のダブルライダーは各地に点在しているであろうショッカーの支部を次々と破壊しながらショッカーの残党を始末する日々を送っていた。
 そして、高町なのはは未だに戦いの傷跡から抜け出せずに居た。手に入れた力は余りにも強大過ぎた。その為大切な仲間を守るどころか傷つけてしまった。その事実を知ってしまい自分の中にある魔法と言う力に恐怖を抱いてしまったのだ。
 各々がそれぞれの道を進む中、彼等の知らない裏で、今まで以上のかつてない”悪”の息吹が噴出していた。
 しかし、それに気づいた者は、この時誰も居なかった。




スーパーヒーロー戦記 As編序章    始まります。 

 
 PT事件、又の名を、ジュエルシード事件の終結から暫く経った後の暑い日。それは突然起こったのであった。それは、古い掘っ立て小屋がある海岸での出来事であった。
 その日、其処に居たボスと子分であるヌケとムチャの三人はボスボロットに乗り猛暑を凌ぐ為海岸に来ていた。ヌケとムチャの二人は涼しそうに泳いでいる。
 しかし、そんな中ボスだけはボロットの中で必死に団扇で体を扇いでいた。体中から汗を流してとても熱そうにして両手で必死に団扇を仰いでいる。しかし外はカンカン照りの真夏日より。そんな物など何の役にも立たない程に外は暑い。ましてボロットの中なので余計に蒸し暑さが増す次第なのだ。

「ボスゥ! 早く泳ごうぜぇ。気持ちいからよぉ!」
「うるせぇ! 俺は今コンテイションが悪いから泳がないんだよ!」

下の方で二人が誘うがボスは一向に泳ごうとしない。その理由は大体分かってはいるが逢えて言わないのが優しさと言う所でもある。しかし、それに気づいていないボスはある意味で哀れとしか言いようがない。

「あ~~、畜生。一雨降らないかなぁ!」

 呟きながらボスは空を見上げた。生憎空は雲ひとつない快晴の空。とても雨など降る素振りは見られない……
 筈だった。
 しかし、世間一般の天気は変わり易いらしく、夜になれば大雨の落雷と言った具合となっていた。
 雨のお陰で幾分か気温が下がり過ごしやすい環境が整ったのでボスとしては正に両手を挙げて大喜び出来る場面と言える。
 しかし、待望の雨だと言うのに、肝心のボスは布に包まりガクガクと震えている始末であった。

「ボシュ~。念願の雨じゃないですかぁ~。もうちょっと喜んだらどうなんですかぁ?」
「雨は嬉しいんだけど雷は駄目なんだよぉ~」

 どうやらボスは雷が駄目のようだ。それを聞いて子分の二人はクスクスと笑っている。いい年して雷が駄目と言うのは正に物笑いの種と言えた。しかし本来ならそんな笑っている二人を殴り倒す筈のボスが動かない。それ程までに彼は雷が怖いのだ。一体雷にどんな嫌な思い出があったのか。
 それを知らないヌケとムチャはこれは好機とばかりにボスの事を指差して笑う始末だった。

「ボスゥ、しっかり抑えて置けよぉ。ボスのヘソは特に大きいからさぁ」

 その時、突如噴いた風のせいで焚き火が消えてしまった。驚きながら三人が焚き火後を見る。おかしい。火の大きさはそれなりにあった筈だ。横風は吹いてきているが決して火を消す程じゃない。それがこうも一瞬で消えるのは不可思議と言えた。

「ありりっ、消えちゃった。どうなってんの?」

 火が消えてしまったので仕方なく次の火を焚こうとした時、突如盛大な雷鳴が鳴り響く。そのせいで稲光が盛大に発せられる。その中、巨大な巨人のシルエットが映し出される。その巨人の大きさは20メートル以上はあった。背中に翼を生やし右腕を天に翳している。暗闇のせいでシルエットしか見えないが明らかにそれは機械の巨人を思わせる作りであった。それを見た三人はギョッとする。マジンガーZにしてはあれは大きい。第一、マジンガーZが此処に来るなら事前に甲児から連絡が来る筈だ。それがないとなるとあれは自分達の知らない存在となる。もしや機械獣では?

「き、ききき機械獣だぁぁ!」
「な、何馬鹿な事言ってんだよお前! Dr.ヘルは死んじまってもう機械獣なんて居ないだろうが!」
「でもでも、それじゃあれは一体…」

 三人が再び巨大な影を見る。三人の前では未だに巨大な影が雷を発する雲に右腕を突き出して構えている。一向に動き出す気配がない。緊張する中見守る三人。その時、巨大な影から眩い閃光が発せられる。視界を閃光で覆い尽くすどころじゃない。そのまま直視していたら網膜を焼かれてしまう程の強烈な閃光だった。それを見た三人は思わず目が眩み、そのまま倒れこんでしまった。
 どれ程時間が経った後だろうか。目を覚ますと既に嵐は過ぎ去っており、それと一緒に巨大な人影も消え去っていた。
 外に出てみるとあの時出ていた巨人の姿は綺麗さっぱりになくなっていた。どうやら幻でも見ていたのだろう。安堵するボスだったが、巨大な影のあった箇所には例の巨人ではなく一人の老人の姿があった。
 薄汚い布を体に纏い岩の様な肌をした瞳のない不気味な老人であった。白髪の髪は肩まで伸びており手入れの行き届いていない髭は伸び切っている。明らかに怪しい感じの老人であった。

「間も無くこの世の終わりが来る!」

 老人の口から不気味な言葉が放たれる。それはとてつもなく不気味な言葉であった。急に出てきて何を言うかと思えばそんな事だった。明らかにこの老人は普通じゃない。もしや新たな侵略者なのでは?

「この世の終わりが来るだとぉ! どう言う事だ!?」
「遥か地底から凶悪な七つの軍団と鬼の化身。そして遥か古代から現れた異形達が現れ、星の宇宙から異なる星の怪人達までもがこの青き星を狙っている。奴等の前に余りにも無力な人類は成す術もなく滅ぼされるだろう」

 老人が言っている言葉はとても不気味な事ばかりであった。地底から、果ては宇宙から侵略者が現れて人類を滅ぼそうと言うのだから。しかし冗談ではない。そう簡単に滅ぼされて溜まる物か。
 ボスは腹が煮えくり返る思いがした。確かに脅威は来るかも知れない。だが人類にはそれを迎え撃つ力がある。そう簡単に滅ぼされて溜まるか。

「やいやい! それじゃ俺達人類に待っているのは破滅だけだってのかよぉ!」
「それを決めるのはお前達よ」
「はぁ?」
「人は運命の波に逆らう力を持っている。その運命の波に身を任せるも良し、また運命の波に逆らうも良し。生き残りたくば運命の波に抗ってみるがよい!」

 老人が言い終え持っていた杖を天空に翳す。するとさっきまでどんよりと曇っていた空が一気に晴れ渡り日の光が差し込む。またしても閃光で目を眩ませてしまった三人。
 視界が回復した頃にはその老人の姿は忽然と消え去ってしまっていた。まるで神隠しであった。幻でも見ていたのだろうか。嫌、それにしてはあの幻は嫌にリアル過ぎる。

「き、消えた…」
「何だったんでしょうねぇ? 今のは…」
「さぁ…」

 何がなんだかさっぱり分からなかった。だが、あの老人の言っている事が本当ならそれは恐ろしい事の起こる前触れでもあったのだ。




     ***




「ははははは……」

 富士山麓にある此処光子力研究所で盛大な笑い声が聞こえてきた。言わずもかなこれは数日前に起こったPT事件の功労者の一人である兜甲児の笑い声である。彼は今束の間の平和を楽しむかの用にベランダに添えてあったベンチに座り体一杯に日の光を浴びていた。Dr.ヘル亡き今、マジンガーZを動かす機会も減ってしまった為こうして夏休みを謳歌しているのである。侵略者達の影響で町が復興作業で忙しい為学校も休校状態となっており少しだけ長い夏休みであった。それを楽しんでいた矢先にボスのこれである。これはもう笑うしかなかった。

「笑い事じゃねぇんだよぉ兜ぉ! あの預言者の言った通りだともうすぐとんでもない事が起こるって言うんだからよぉ!」
「何言ってんだよぉボス。空はこんなに晴れ渡ってて小鳥は歌を歌ってるんだぜぇ。何処が世界の終わりを予言するだよ。与太話を信じるにも程があるぜ」

 甲児は天空の青空を見上げてそう言っていた。今日も空は雲ひとつない快晴の空である。相変わらずの猛暑日ではあるが平和である事に変わりはない。誰もが待ち望んだ平和が其処にあったのだ。多くの死闘を制して得た限りなく貴重な平和。それを今甲児達は噛み締めているのだ。

「そうそう、今日だってあんまり平和なもんだから甲児君なんか私がシャワー浴びてる時に入ってきたんだからねぇ」
「何!?」
「ちょっ、さやかさぁん、あれは故意じゃないんだよ。俺だってこんな糞暑い日にはシャワー位浴びたいしさあ」

 そう言って甲児は隣で座っている弓さやかに対し愚痴る。ボスは見てなかったようだが実はつい数刻前、甲児がシャワーを浴びようとシャワー室に入ってきた際、使用中であったさやかとばったり出くわしてしまったのだ。
 その結果は勿論甲児の右頬が紅葉色に晴れ上がってしまう結果に終わったのだが。

「別に好き好んでさやかさんのヌードを見に来た訳じゃないんだぜ」
「当然よ。もしそうだったら今頃鼻っ柱にパンチ入れてるわよ!」
「うへぇ、怖い怖い…」

 何気ない会話を楽しむ風景が其処にあった。だが、そうしている間にも、新たな脅威の牙は着々と研がれつつあった事を、此処に居るメンバーは誰一人知らないで居た。少なくとも、今この時、此処に居るメンバーだけは、だが……




     ***




 所変わり、此処は喫茶店アミーゴ。気の優しいマスターと美味いコーヒーが自慢の人気の喫茶店だ。最近では喫茶店ランキングの上位にランクインした程であり。その為遠方からの客が増えだした溜めに以前以上忙しくなった。
 しかし、今日は生憎客は二人しか来ていなかった。
 その客と言うのは最早御馴染みとも言える本郷猛と一文字隼人の二人だ。二人はマスターである立花籐兵衛が煎れてくれたコーヒーの前に座っている。しかし二人共余り美味しそうにコーヒーを飲んでいない。それは、単に二人がコーヒーを飲みに来たからじゃ無い為だ。

「それは本当かぁ?」
「えぇ。間違いありません! この目で見てきましたから」

 立花の質問に本郷は答える。二人共重苦しい顔でカウンターに座っていた。

「しかし、一体何がどうなってるんだぁ? 行く先々のショッカーアジト内に残っていたのはショッカー残党の無残な死体だなんて」
「俺達もさっぱりです。もう殆どのショッカーアジトを見て回りましたが、その何処でもショッカー残党が皆殺されているんです」
「しかも殺し方が人間のやり方じゃねぇ。まるで化け物が殺ったみたいな風になってたんだ。こりゃ、何かあるな…」

 カメラマンの鋭い直感であろう。そう呟きながら一文字がコーヒーを啜る。

「ショッカーを超える新たな悪…そんなのが現れた、と言うんでしょうか?」
「何とも言えんなぁ…あ、そう言えば本郷。お前この後此処で待ち合わせだろう?」

 何かを思い出したかの様に立花のが手を叩く。どうやら本郷は誰かと待ち合わせをしていたようだ。

「何だ何だぁ。女かぁ? 普段はクールを装っている本郷さんにしては随分と珍しい事で御座いますねぇ」
「茶化すなよ一文字。そうじゃない。俺の通っている大学の後輩だ。今日はそいつとツーリングする約束をしてたんだ…そう言えば、あいつ遅いなぁ…」

 腕時計をチラリと見ながら本郷は呟いた。既に待ち合わせの時間を30分も過ぎている。10分やそこ等であれば気にしないが30分は少し遅れすぎだ。
 時計の時刻を眺めながら、本郷はボソリと呟いた。

「何処で油売ってんだ? 風見の奴…」




     ***




 此処は某所にある山中。険しい道が多く余り人の出入りが少ない山道であった。勿論登山客などが顔を出すだろうが生憎こんな炎天下にそんな中を登ろうとする物好きは少ない。その中を私立探偵早川健は一人歩いていた。肩にギターを担ぎ復讐を求めてフラリフラリの一人旅であった。以前は助手が一人居たのだがその助手も既に帰るべき巣へ帰って行った為に実質早川一人である。

「やれやれ、助手が居なくなったお陰で肩の荷が下りて楽になったぜ。さぁてと、そろそろ腹も空いてきた事だし今日の飯でも探しに――」

 言葉を言い切る前に早川は何かを感じ取った。長年私立探偵をやっていた為に身についた事件の直感。と言う奴である。
 大概はトラブルに巻き込まれる事が多いのだが、彼の場合寧ろお望みでもある。
 直感に身を任せるように音を立てず歩んでいくと、其処にはやはりトラブルの元があった。
 一人の女性が一体の怪人と複数の戦闘員に取り囲まれていたのだ。薄茶色の長い髪に見慣れない制服を着た女性だ。スラリと細身の体を持っており、生憎早川の方に対し背を向けていた為に顔は見えないが恐らく美人だろうと彼は読んだ。

「何処のどいつかは知らんが我等の姿を見た者は生かしては置かん! 此処で死ぬが良い、シィィィザァァァァス!!」

 真ん中に居たのは猫科、恐らくジャガーの類の姿をした怪人が両手に取り付けられた刃物を振り上げて女性を襲おうとしていたのだ。
 その女性と言えば全くその場から動こうとしない。
 恐らく恐怖で足が動かないのだろう。そう早川は見ていた。実際女性が恐怖で動けないかどうかは分からない。だが、男としてこんな場面を見逃す訳にはいかない。

(おぉっと、こりゃまた偉い場面に出くわしちまったみたいだな。ま、俺みたいな良い男がこんな場面を知らん振り出来る訳ないし、ちょっくら助けに行くか)

 颯爽とあの中に飛び込もうとしたその時、近くでバイクの失踪する音が聞こえた。すぐ近くだった。その姿はすぐに現れた。怪人達と女性の間を割って入るかの様に一台のバイクに跨った青年が姿を現す。その腕を見る限りかなりの腕前だ。青年は怪人達などには目もくれず女性だけを見る。

「君、大丈夫か?」
「貴方は?」
「話は後だ! 早く乗って!」

 半ば無理やり青年は女性の手を引っ張りバイクの後ろに乗せる。女性もそれには逆らわず青年の後ろに跨り両手で青年の腰に手を回して自身を固定させる。フルスピードで走った際に転げ落ちない為にだ。青年はそれを確認してからアクセルを全開まで回す。バイクの後輪が高速で回転し、その場を猛スピードで走り去っていく。余りにも唐突に起こった出来事の為に怪人と戦闘員達はすっかり出遅れてしまった。思考が元に戻った後では既に青年も女性も遠くへ逃げてしまっていた。

「しまった! 追え、追うのだぁ!」
「ギィー! 無理ですハサミジャガー様! 幾ら何でもバイクと足では追いつけません」
「おのれぇ、すぐにあの男の身元を確認しろ!」
「ギィー!」

 怪人の周囲に居た戦闘員達が奇声を上げる。そして直ちにその場から立ち去っていく。そんな中、一人その場で立ち尽くす早川健の姿があった。

「やれやれ、良い所を取られちまったみたいだな。にしてもあの男…俺にそっくりな声してたなぁ…世の中顔がそっくりな奴が数人居るとは聞いてたが、声まで同じ奴なんて居るのかねぇ?」

 先ほどの青年の声を思い出し、微妙な気持ちになった早川はその気持ちを隠すかの様に苦笑いを浮かべながら先ほど怪人が居た周囲を調べまわった。明らかにあの怪人達は始めて見る怪人だ。だが、ショッカーの怪人とは何処か違う。あの怪人の体には機械が混ざっていた。そんなのは初めてだ。今までの怪人と言えば動物や昆虫、果ては植物などの優れた能力を人間に付加させる程度でしかなかった。それが今度のアレには機械が混ざっている。一体どうなっているのか?

「それにしてもさっきのあの怪人達。ショッカーのそれとは違った姿をしていた……一体奴等は何者なんだ?」




      ***




 山道から道路に移動した辺りで青年が後ろを確認する。どうやら先ほどの怪人達は追って来ないようだ。ホッと安堵して青年がバイクを止める。

「どうやら追って来ないみたいだな。とりあえず一安心だな」
「有難う御座います。お陰で助かりました」

 女性が青年に助けて貰った礼を言う。すると青年が恥ずかしそうに頭を摩る。頬がうっすら紅くなっていたのが見える。どうやら彼自身少々初心な気があるようだ。

「いやぁ、偶々あのコースを走ってたら変な叫びを聞いて飛び出しただけなんですよ」
「コース?」
「知りませんか? あのコースは僕の大学のメンバーの中じゃ良い練習コースになってるんですよ。おっと!」

 まだ自己紹介をしていない事に気づき、青年は鼻を摩りながら女性の方を向いた。

「僕の名前は風見。風見志郎と言います。城南大学在学の学生です」
「私はリーゼ。リーゼアリアと言います」
「リーゼアリアさんかぁ…素敵な名前だなぁ。所で、何であんな場所に居たんです?」
「え!? えぇっと…し、自然観察をしてたんですよ。この辺の自然の調査を兼ねて…なんです」
「へぇ、研究熱心なんですねぇ。僕の先輩と話しが会いそうだ」

 二人して何気ない会話をしている。だが、今はこんな話をしている場合じゃない。そうこうしている間にも先ほどの怪人が追ってくるかもしれない。此処に長居するのは得策ではなさそうだ。だが、二人で余りぶらぶらしているのも目立ち過ぎる。

「此処に居ちゃ危険だ。とにかく、近くに僕の家があるんで、其処で少しの間身を隠して下さい」
「え? でも、それじゃ迷惑になりますよ。私なら大丈夫ですから」
「なぁに、家の家族もきっと分かってくれますよ。心配しなくて大丈夫です」
「家族……分かりました、少し、ご厄介になります」

 そう言うと再び風見はバイクに跨り、アリアもまたその後ろに乗る。今度は振り落とされないように風見にしっかりしがみ付いてであるのだが。
 しかし、その途端風見の頬が赤く染まり出していた。やはり彼も男な様だ。背中から感じられる女性特有の感触に思わず固唾を呑んでしまった。気づかれなかったかと少々心配気味になる辺り彼は女性付き合いが浅いと見える。

(ま、参ったなぁ…こう言う時先輩ならどうするんだろうなぁ? 俺経験ないからなぁ…)

 等と考えながら風見はバイクを走らせた。今はこの女性を少しでも安心出来る場所に連れて行かねばならない。しかし、彼が出会った怪人達。彼等の恐ろしさを風見志郎が知るのはすぐ後の事でもあった。




     つづく 
 

 
後書き
次回予告

謎の女性を助けた風見志郎。
しかし、怪人達はそんな風見と女性を追って来た。
彼女の身が危ない。その時、仮面の戦士が現れる。

次回「新組織、デストロン」お楽しみに 
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