ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル
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第153話 その土地の価値は無限大!?よっちとニワトラの絆!
前書き
仕事が休みで調子が良いので投稿します。いつもこれくらい早かったらいいんですけどね……
side:リアス
ビックリアップルを無事に収穫できた私達は数日間の間、美味しいリンゴ料理を堪能し続けたわ。
「はーい、『ビックリアップルとトロコンブ芋の海藻あえ』に『ビックリアップルとウインナースの炒め物』ですよー♡」
「はー、美味い!リンゴのしゃっきりとした触感にトロコンブのトロッとした粘り気と海藻のシャキッとした触感に絡んで食感が楽しいな!」
「ビックリアップルの程よい酸味がウインナースの果肉に良く絡んで美味しいね」
イッセーと祐斗は二つの料理を絶賛していたわ。私も食べたけどリンゴってスイーツ以外にもこんなに多くの料理に使えるのね。
「今度は『ビックリアップルとオニオン貝、ベーコンの葉のコンソメ煮込み』に『ビックリアップルの蟹ブタ肉巻き』でーす♡」
「んー♡リンゴのしょっぱさにオニオン貝の旨味とベーコンの葉のジューシィな味わいがマッチしてて美味しいわ♡」
「この蟹ブタの肉でビックリアップルを包んだ奴は美味いな、リンゴの力で肉が柔らかくなっている。いくらでも食べれてしまうぞ!おかわり!」
イリナはコンソメ煮込みを食べていたわ、私も食べたけど全ての食材の旨味が見事にスープに出てるのよね。
ゼノヴィアはビックリアップルを蟹ブタで包んだ肉巻きを食べているわ、リンゴの成分に肉を柔らかくする効果があるみたいでトロッとしたリンゴの果肉と肉の脂が合わさってこれがまた美味しいのよ。
「あらあら、今日もリンゴ三昧ですわね。でもこれだけ美味しい上にレパートリーも多いなんてリンゴは素晴らしい食事ですわ」
「しかもリンゴは食物繊維も多いからお通じにも効果があるのよね、お蔭でここ最近はお腹スッキリだわ!」
朱乃も美味しそうにリンゴ料理を堪能してるわね、ここの所毎日リンゴ料理だけど全然飽きないのよね。
そしてティナさんの言う通りお通じもよくなるから食べていて嬉しい食材よね、リンゴって♡
「はふぅ……今日もお腹いっぱいですぅ」
「食後のリンゴ酒もまた格別だな」
アーシアはお腹を押さえながら満足そうに笑みを浮かべていたわ、その横でアザゼルがリンゴで作ったお酒を飲んでいた。
飲み過ぎよ、まったく……
「デザートにリンゴのタルト、リンゴのシャーベット、リンゴのコンポート、パフェにクランブルもありますよー♡」
「きゃああっ♡お腹いっぱいなのにそんなに出したら駄目じゃない♡」
「甘いものは別腹ですよね♡」
沢山のリンゴのデザートに私は歓喜してルフェイも舌なめずりをしたわ。また太っちゃうじゃない……♡
「は~……マジ最高♡ビックリアップルをこんなに堪能できるなんて幸せだぁ♡」
「白音も腕を上げてきたよね、こうやって食べるだけって言うのもたまにはいいかも」
「ふふっ、いずれ姉さまを超えて見せますので」
「ほほぅ、挑戦はいつでも受けるよ」
幸せそうにお腹を撫でるイッセーに腕にくっ付いていた黒歌も小猫の料理を絶賛していたわ。
「オーフィスさんはいかがでしたか?」
「我、満足。お腹いっぱい……」
大きく膨れ上がったお腹を可愛く撫でるオーフィス、彼女も小猫のご飯を食べに来ていたの。
グレートレッドは今回は来ていないわね、次郎さんのところに行ったそうよ。
「それにしてもここ最近はこんな風にいっぱい食べる機会が無かったからつい食べ過ぎちゃったよ」
「本当ね、でもこうやって美味しい物を堪能できるのって改めて幸せな事だと思うわ」
祐斗はつい食べ過ぎたと呟き私はそんな状況に幸せを感じていたわ。
毎日こんな美味しい料理を食べれるなんて幸せね♡
「リアスさん、なんか今日はより一層幸せそうですね?」
「あら、分かっちゃう?」
「ええ、普段より顔がとろけていますので。何かあったんですか?」
「うふふ、実はね……『グルメジャンボ』に当選しちゃったの!」
「えっ、マジっすか!?」
私はイッセーや皆にグルメジャンボに当選したことを話した。気まぐれにやってみたんだけどまさか当選するとは思わなかったの!
「確か1等は100億も貰える気前のよすぎる宝くじですよね?良かったじゃないですか」
「それでいくら当たったの?」
「なんと8等の100万円が当たったの!凄いでしょ?」
イッセーとリンさんが興味深そうに聞いてきたのでわたしは笑顔でそう答えた。きっとみんな驚くでしょうね~♪
「100万ですか……」
「えっ、何その反応?大金でしょう?」
「それはそうなんですけど、このビックリアップルも先輩が取った奴で1350万円ですからイマイチ驚きにくいというか……」
「しっかりしなさい!100万円は大金よ!どうして元貴族の私の方が喜んでいるのよ!」
なぜか微妙な反応をする皆に私はそう叫んだ。
「ま、まあ確かに考えてみれば100万円も大金でしたね」
「なによその反応……まあ良いわ。それでねイッセー、私貴方に何か奢ろうかと思うの」
「いやそんな無理しなくても良いですよ」
「そんな事を言わないで、少しでもあなたに恩返しがしたいのよ」
「そこまで言ってくれるなら……う~ん、そうだな……あっ!」
イッセーは何かを思いついたかのように手を叩いた。
「リアスさん、俺土地が欲しいです!」
「土地?なにか起業でもするの?それに100万円の土地ってどんな小さな場所なのよ?」
「正しくは言値なんですけどね、上手くいけば100万円でゲットできるかもしれないんですよ」
「えっ、それってもしかして今話題になってるあの土地の事かしら?」
「はい、そうです!」
イッセーの土地が欲しいという言葉に私はこのG×Gで今最も人々が注目している土地についてニュースで見た事を思い出したの。
――――――――――
――――――
―――
「ニワトラの卵……それがその土地に関係しているんですか?」
「ああ、なにせその土地にあのニワトラが巣を作ってるんだ。だからみんな注目してるのさ」
私達は土地を購入するために荒れ地を進んでいる所よ、小猫とイッセーがニワトラという猛獣について話していたわ。
「ニワトラの卵ってそんなに有名なのか?」
「滅茶苦茶有名よ、なにせ市場には滅多に出ない幻の卵って呼ばれているんだから。場合によっては1億円で取引もされたくらいよ」
「卵一個にか?すげーなぁ……」
アザゼルが卵についてそう呟くと近くにいたティナさんが目を見開いて説明してくれたわ。余程珍しい卵なのね。
「ニワトラは虎のような見た目の鶏で決まった住処を持たないんだ。人間みたいに好きな場所が個体ごとに違ってそこに巣を作る、だから特定するのは難しい」
「しかもその実力も高くて捕獲レベルは50……普通の美食屋じゃ余程運が良くないと卵は入手できないんです」
イッセーとルフェイがニワトラについて教えてくれたわ。巣の場所はランダムでオマケに強い……分かりやすい難敵ね。
「それが人間界のそれも人が住んでいる場所に巣を作ってるからこんなにも注目されているんだね?」
「それもあるが一番の驚きはそのニワトラは人間によって飼われているんだ」
「ええっ!そうなんですか!?」
祐斗はそのニワトラの巣が人間界の安全な場所にあるからこんなにも注目をされているのかと言ったわ。
でもイッセーの口から更に驚く情報が出て小猫は大層驚いていた。
私だって驚いたわ、だって飼っているなんて思っていなかったから。
「イッセー、ニワトラは飼える生き物なのか?」
「普通は無理だし、ニワトラはその獰猛さから人間には一切懐かないの。IGOですら一度も飼育には成功したことは無いし」
「それを個人で成功させてその人が土地を売り出した……これだけ大騒ぎになるのも当然ですわね」
ゼノヴィアの質問にリンさんが代わりに答えたわ。IGOでも無理だった飼育を達成した人間、そしてその人が売ろうとしている土地にそのニワトラが住んでいる……朱乃の言う通り大騒ぎにもなるわね。
「だがよイッセー、そんだけすげぇ土地ならもう既に大手企業とかが買収したんじゃねえのか?」
「いえ大丈夫ですよ、なにせその土地の権利者であるよっちという方は真面に交渉しようとしないみたいです」
アザゼルはもう既に土地は購入されているのではないかと話す、でもルフェイの話では交渉は上手くいっていないみたいね。
「そんなに交渉が難しいのですか?」
「はい、なんでも100億出すと言った企業を一瞥したとか……」
「なんだそりゃ、どんだけ金が欲しいんだよ。そのよっちって奴は」
アーシアがルフェイにそう尋ねると彼女は苦笑しながらそう答えた。それを聞いたアザゼルはどれだけ強欲なんだとしかめっ面をしていたわ。
「イッセー、小猫、今は何処に向かってる?」
「えっと、今は土地を買いに向かってるんですよ?」
「土地を買うのか?土地は食べられる?」
「土地自体は食べ物じゃないぞ、オーフィス」
「人間って変な生き物……ペロペロ」
私達についてきたオーフィスはりんご飴を舐めながらイッセーと手を繋いでまるで家族みたいなやり取りをしていたわ、本当にあの二人が気に入ったのね。
「ねえイッセー、その大きなジュラルミンケースってやっぱり……」
「そりゃ手ぶらじゃいけませんからね」
私はイッセーが持っていた大きなジュラルミンケースを見て彼がお金を持ってきていたことに安堵した。
そんな凄い土地を100万円で買えるわけがないものね、あれはイッセーの冗談だったんだわ。
そして暫く荒れ地を進んでいると滅茶苦茶大きな行列が出来ていたわ。
「うわぁ……もしかしてここにいる人全員が土地を購入しようとしている人達ですか!?」
「全員如何にも金持ちって感じだね、あんまり好きじゃないにゃん」
アーシアはあまりの人の数に驚き黒歌は不快感を感じていたわ。悪魔の貴族に酷い目に合わされたからそう思ってしまうのかもしれないわね。
「しっかしてっきり豪邸にでも住んでるのかと思ったが随分と質素な家に住んでいるんだな、そのよっちって奴は」
「本人の趣味かもしれないね」
アザゼルは行列の先にある小さな小屋を見て首を傾げた、確かに巨万の土地とまで呼ばれる土地の権利者にしては寂れた場所に住んでるとは思うわね。
でも祐斗の言う通りそういう趣味の可能性もあるわね。
「兎に角並んでみるか、こりゃ相当待ちそうだしな」
「お弁当を作っておいてよかったです」
私達も行列に並ぶことにしたわ。
「よう、交渉はどうだい?」
「えっ……貴方は美食屋イッセー様!?」
イッセーが最後尾の人に声をかけるとそこにいた全員がイッセーを見て驚いた、飲食関係の仕事をしている人には本当に有名なのよね。
「イッセー様!この間はありがとうございました!貴方が仕入れてくれた食材のお蔭で売り上げが5%上がったんです!」
「もしよろしかったら今度仕事の依頼を……」
「悪いが今日はそう言う話は無しだ、俺は土地を買いに来たんだからな。それで調子はどうだ?」
「それが……」
土地を購入しに来た人たちは全員が苦い顔をしていたわ。
「その様子だと上手くいっていないみたいだな」
「はい。先ほど〇〇会社が500億を提示したのですが一瞥されました……」
「500億をか?相当だな」
500億もの大金でも駄目だったことを知って私は本当に土地を買えるのか不安になってきた。いくらブラックカードを持ってるイッセーでも難しいんじゃないかしら?
「あの爺さん、こっちが下手に出てるからって無茶苦茶言いやがる……」
「どこまでも釣り上げる気だ!強欲なジジイめ……」
「そもそも売る気なんてあるのか?金持ちが道楽で遊んでいるだけにしか思えない!」
土地を買いに来ていた人達はそう不満を言っていたわ。
「ふーん、なら俺に交渉させてくれよ。先に行ってもいいか?」
「え、ええ。構いません」
私達は順番を譲ってもらって一気に先頭まで行くことが出来たわ。こういう時有名人が一緒だと楽でいいわね♪
「お邪魔しまーす」
「……ん?なんじゃ、随分と若い奴が入ってきたな」
私達は初めてよっちさんと出会ったのだけど背の小さなお爺さんだったわ。家の中も質素だし贅沢は嫌いなタイプなのかしら?
「初めましてよっちさん、俺はイッセーと言います。ニワトラの卵を食べる為にここに来ました」
「……ほう、卵を食べたいのか?」
イッセーがそう言って自己紹介をすると、険しい顔をして警戒していたよっちさんは意外そうな表情を浮かべていたわ。
「土地が買いたいわけじゃないのか?」
「えっと……もしかして土地を買わないと卵を食べさせてもらえないんですか?なら急いで買いますけど……」
「いやいい、無粋な事を聞いた。ニワトラの卵を食べたいんじゃったな?良いぞ、食べさせてあげよう」
「えっ、いいんですか!?」
「ああ、良いとも。卵を食べたいと開口一番で言ったのはお主らが初めてじゃからな」
よっちさんはそう言うと外に向かおうとする。
「着いてきなさい、ワシの家族のミーコを紹介しよう」
よっちさんが外に出たので私達も付いていったわ。すると外にいた他の土地を購入しようとしていた人達に帰れと言っていたの。
「すまんが今日はもう帰ってくれ、ワシはこの子達の相手をせんといかんのでな」
「悪いな」
イッセーがすまないと手を合わせるとその人たちは小声で何かを話し始めたわ。
「どうする……?」
「よっち氏があんな対応をしたのは初めてだ」
「もしかしたらイッセー様を気に入ったのかもしれん」
「なら交渉はそっちの方がやりやすそうだな」
「今日は引くとするか」
するとその人たちは一斉に帰路について去っていったわ。
「ふん、俗物共が……」
よっちさんはそんな彼らを忌々しそうに見てそう呟いていた。
「ところでよっちさん、ニワトラなんですけど……」
「そんなかしこまった言い方はせんでいい。気楽にしなさい」
「そうか、ならよっち爺さん、ニワトラなんて狂暴な奴をどうやって手懐けたんだ?」
「ミーコは雛の時に偶然ワシの土地の一部で見つけてな、そこからずっと面倒を見ておったんじゃ」
「雛……なるほど、ココ兄のキッスと同じだな」
イッセーが狂暴なニワトラをどうやって手懐けたのか聞くと、よっちさんは雛の頃から育てたと答えた。
ココさんのキッスも本来人に懐かないエンペラークロウなんだけど、雛から育てたから懐いてくれたのよね。
でも唯育てただけじゃ懐いたりしない、きっと心から大切にして愛情をもって接したから懐いたんだと私は思うわ。
「ミーコ、客人を連れてきたぞ。仲良くしてやってくれ」
「キュウウッ」
そして私達はニワトラと対面したけど確かに強そうな見た目をしているわね、でもよっちさんには子供の様に甘えているわ。
「凄いな、あのニワトラが人に懐いてるなんてIGOの職員が知ったら目が飛び出る程驚くだろうな」
イッセーはその光景に驚いていた。余程ニワトラって人に懐かないのね、私達からしたらこれが初めて見るニワトラだからそっちの方が信じられないわ。
「ミーコ、すまんが卵を3つほど貰っていくぞ」
「キュー」
よっちさんは巣から卵を取り出して私達に見せてくれました。
「おおっ!これがニワトラの卵か!うーん、良い匂いだ……!」
「はい!まろやかで腰のある芳醇な匂いが溜まりません!」
「美味しそう……」
イッセーと小猫は卵の匂いを嗅いで涎を垂らしていたわ。私達にもすごい濃厚な黄身の匂いが感じ取れるんだから嗅覚の鋭い二人はもっと楽しみでしょうね。
オーフィスも二人の間に入って卵を見つめていたわ。
「そうだ、お礼にコイツをあげるよ」
イッセーはジュラルミンケースを開けると中からビックリアップルを取り出したわ……ってビックリアップル!?
「おお、なんじゃコイツは?美味しそうなリンゴじゃのう」
「コイツはビックリアップル、滅茶苦茶美味いからミーコも気に入ると思うぜ」
「丁度いい、ミーコは果物が大好物なんじゃ。ありがたく頂こう」
「キュー♪」
「おお、どうやら気に入ってくれたようじゃな」
「良かった」
微笑ましいやり取りをするイッセー達を尻目に私は不安に襲われていた。
「ね、ねえイッセー。土地を買うんでしょ?お金は持ってきてないの?」
「えっ、リアスさんが買ってくれるんですよね?」
「そうはいったけど本当に100万円で買える訳ないじゃない!」
「まあ何とかなりますよ」
「大丈夫かしら……」
私は不安になってしまったわ、もし冷やかしと思われて怒られたらどうしましょう……
「……まあ考えても仕方ないわね」
暗い気分だと食事も楽しくない、だから気持ちを切り替えた私はニワトラの卵を堪能することにした。
「それじゃあ厨房を借りますね」
小猫は簡単な調理器具を魔法で出してエプロンを装着する、そして手際よく料理を開始したわ。
「ほう、手際が良いのぅ。イッセー、あの子はお主の恋人か?」
「ああ、自慢の彼女さ」
「初々しいのぅ、ワシも亡くなった女房との甘い思い出がよみがえるわい」
「奥さんがいたのか?」
「うむ、もう亡くなってしまったがのう……」
「そうか……」
よっちさんには奥さんがいたみたい、でももう亡くなってしまっているみたいね。
「でも今はミーコがいてくれるから寂しくはない」
「ミーコちゃんの事、大事にしているんですね」
「ああ、あの子はワシの大切な一人娘じゃ。もう何年も一緒に暮らしておる」
「そっか、それなら寂しくないな」
アーシアの言葉に頷いたよっちさんは優しい眼差しで外のミーコを見ながらそう呟いたわ、本当にミーコが大切なのね。
(……でもなら何でそんな大事な存在がいる土地を売ろうとしているのかしら?)
私は心の中でそう思った。
だってこの短いやり取りの間でもよっちさんがミーコを大切にしているのは分かるくらい愛情を持ってるのよ?
なのに土地を売ろうとするなんておかしいじゃない、ここに来ていた人達は明らかにミーコ……ニワトラの卵を商売で使う気でいるのは目に見えているのに。
「出来ましたよー」
私がそんな考えを頭の中で広げていると、料理を持った小猫がこちらにやってきた。
「まずはシンプルにゆで卵にしました。なにもつけずにそのまま召し上がってください」
「よし、皆。この世の全ての食材に感謝を込めて……いただきます!」
『いただきます!』
私達はいただきますをしてさっそくゆで卵を齧ってみる……美味しい!
「なんて濃厚な黄身なんだ!まるで濃いプリンを食べたかのような存在感!舌の上で残り続ける濃厚な黄身がいつまでも味を感じさせる!」
「それでいてしつこくないしのど越しはアッサリしてるね。白身は弾力があって噛み応えがある」
「それでいて噛めば噛むほど味わいが奥深くなっていきますぅ。一個食べたらもっと食べたくなっちゃいますよ」
イッセー、祐斗、ギャスパーはそれぞれそんな感想を言ったわ。ゆで卵でこのインパクト、他の料理は一体どうなっちゃうのかしら……!
「次はオムレツを作りました、シンプルにバターや塩だけを使った素材の味を生かしたタイプです」
「はむっ……ん~♡トロットロで最高!口の中でトロけちゃうわ!」
「シンプルだからこそ素材の味がガツンと殴るように感じるし!こんな味の濃いオムレツは初めて食べたし!」
ニワトラの卵で作ったオムレツを食べたティナさんはトロ~ンとした顔で幸せそうに頬を抑えていたわ。
リンさんの言う通りニワトラの卵は野性的な味わいがあるのよね、だからシンプルな味わいが凄く合うのね。
「まだまだ行きますよ!ベジタブルスカイで採れた『ほうれん草と卵の炒め物』に『とろとろの卵を合わせたオムカレー』です♡」
「シャキシャキのほうれん草と甘くてふわふわの卵が良い感じ~♡」
「ハムッ!んんっ……上手い!コクのある卵がカレーのスパイスと絡んでより美味くなってるな!」
イリナはほうれん草の苦みと卵の甘みが絶妙にマッチした炒め物を絶賛した、箸が止まらなくなる美味しさね。
ゼノヴィアはスパイスの利いたカレーにかけられたふわふわの卵をかけられた卵カレーを凄い勢いで食べていたわ。
「ふんわり触感の『だし巻き卵』に「えの金魚」から取った『えのきと卵の中華風スープ』ですよー!」
「はむ……とってもフワフワしていて美味しいです!出汁は「コンブスネーク」と「カツオーガ」の鰹節ですね、風味が良いです」
「えのきの食感も良いし丁寧にダシを取っていて美味しいスープにゃん♪」
ルフェイと黒歌は出しのきいた出汁巻き卵やスープを堪能していたわ。
「アザゼル先生とよっちさんには卵を使ったカクテルをどうぞ、姉さまに作り方を教わりました」
「おっ、嬉しいね……かーッ!うめぇ!」
「こんなしゃれたモンは初めて飲んだわい、しかも美味い!」
大人のアザゼルとよっちさんは卵のカクテルを堪能していたわ、私も飲んでみたいわね。
「わたくし卵は上品な味わいの十黄卵が一番好きでしたけど、このニワトラの卵もまろやかで力強い味わいが好きですわ」
「ふふっ、私もよ」
「我もこの卵好き。リアスももっと食え、若い子は食べて強くなる」
「あら、ありがとう。オーフィス」
朱乃も美味しそうに卵料理を堪能していたわ。するとオーフィスが私に料理を渡してくれたわ、少しは心を開いてくれたのかしら?
その後も皆で楽しい時間を過ごしていったの。
「おらおらっ!じいさんまだイケるだろう?」
「当たり前じゃ!若いもんには負けんぞ!」
「お爺ちゃん、私がついであげるよ」
「おお、こりゃすまんな……ぷはーっ!別嬪さんについでもらえるなんて長生きはするもんじゃのう!」
「やだー、お上手だにゃん」
アザゼルと飲み比べをしていたよっちさん、黒歌にお酒をついでもらって喜んでいたわ。
「いや~、こんなに楽しい時間は本当に久しぶりじゃわい。女房が生きとった時以来じゃな」
「奥さんはどんな方だったんですか?」
「名前は美子といってな、ワシの住んでおった村で一番の別嬪さんじゃった。当時は結婚すると決まった男衆の羨む声がまあ多かった事じゃ」
「それってもしかしてミーコの……」
「うむ、ミーコの名は妻から貰ったんじゃ」
小猫が奥さんについて聞くとよっちさんは名前を教えてくれたわ、それを聞いたイッセーはミーコの名前に似ていた事に気が付いて聞いてみる。
するとよっちさんは頷いて妻から名前を貰ったと話してくれた。
「美子は本当によくできた妻でな、美食屋の仕事をしておったワシの帰りをいつも待っとってくれたんじゃ」
「えっ、よっち爺さんは美食屋だったのか!?」
「うむ、もうとっくに引退しとるがの」
よっちさんが元美食屋だった事にイッセーは驚いていたわ。
「一体どんな食材を取ったんだ?」
「ははっ、カリスマ美食屋のお主と比べたら大したことは無い。でも自慢できるとしたら運よくニワトラの巣を見つけてな、しかも親が餌をとりに行っていたのか不在で卵を持って帰ることが出来たんじゃ」
「マジかよ、すげーな!」
「妻はそれを大層気に入ってくれたようでな、ワシは嬉しかったよ」
「奥さんも好きな味だったんですね」
よっちさんは実に楽しそうに話してくれたわ、余程奥さんの事を愛していたのね。イッセーと小猫も熱心に話を聞いていた。
「じゃが妻は亡くなってしまった、流行り病じゃった。元々体は弱かったがその流行り病は当時の医学では治療するのに莫大な金額がかかってな、妻は寝たきりになってしまった」
「それは……」
「ワシは妻を救おうとがむしゃらに働いた、何日も家に帰らず唯々金を稼ぎ続けた。そして漸く妻の治療が出来るほどの金が集まった時じゃった、医者から妻が危篤になったと連絡が入ったのは……」
よっちさんはグラスにヒビが入る程強く握りしめていたわ。
「ワシが駆けつけた時にはもう遅かった。妻は最後にワシにこう言ったよ。『自分の為に働いてくれているのは分かっている。でもそれでももっと貴方と一緒にいたかった、もっと一緒に食事をしたかった』と……そう言って妻は亡くなったよ」
よっちさんは力なく苦笑した。
「ワシはその言葉を聞いて初めて自分が最後に妻と食事をしたのはいつだったを思い出した……ワシは、ワシはとんでもない大馬鹿モノじゃ!銭ばかり追い求めてもっとも大切な存在を蔑ろにしてしまったんじゃ……」
「よっち爺さん……」
よっちさんはそう言って後悔の涙を流したわ。美食屋はお金も稼ぐことも目的だけど一番の目的は美味しい物を食べる事……よっちさんは手段を目的にしてしまっていたのね。
「妻の葬儀を終えた後、ワシも後を追おうと思った。でもその時じゃった、妻の墓から何かの鳴き声が聞こえたんじゃ。それがミーコじゃった」
「奥さんのお墓の側にミーコが?」
「うむ、ワシはそれを見てその雛が美子の生まれ変わりだと思った。ワシは美食屋を引退してその子の面倒を見始めたんじゃ、せめて妻に与えられなかった愛情をこの子にと残りの人生全てをミーコの為に使おうと思ったんじゃ」
よっちさんの話を聞いて私達は涙を流していたわ。
「……でもそれならどうして土地を売ろうと思ったんですか?」
「簡単なことじゃ、ワシはもう長くない」
「えっ……」
アーシアの質問によっちさんは自分はもう長くないと答えた。
「ワシも病気でな、今までは気合で耐えていたがもう限界を感じたんじゃ。自分の体だから何となく分かるんじゃよ……」
「そんな……」
「じゃがワシはミーコが心残りじゃった、ワシが死ねばミーコを利用しようとする奴らが集まるのは分かっていたからな。じゃからせめて信頼できる人に土地を譲ろうと思ったんじゃ」
「そうだったんですね、そんな人が現れてくれればいいのですが……」
小猫がそういうとよっちさんはキョトンとした表情になったわ。
「なにを言っておるんじゃ、もう現れたぞ」
「えっ?」
「お主らじゃよ、お主らに土地を譲ろうと思ったんじゃ」
「爺さん、いいのか?」
「いいんじゃよ、ワシがそう決めた。この短い時間でもはっきりと分かった、お主らは人の悲しみを自分のように悲しみ、幸せを惜しみなく他者に分け与えようとする人物だとな。そんなお主らならミーコを利用しようとしたりせず卵を平等に皆に分け与えてくれると信じられるんじゃ」
「よっち爺さん……」
よっちさんは私達を信じてくれたのね……
「爺さん、俺達が必ずミーコを守っていく。そして卵を皆で味わえるように頑張っていく。美食屋の誇りにかけて誓うよ」
イッセーの言葉に私たち全員が頷いた。
「ところでイッセー、お主らはいくら持ってきたんじゃ?」
「100万円だ、リアスさんが払うぞ」
「えっ、100万じゃと?」
よっちさんは驚いたように目を見開いた。やっぱり駄目よね……!
「わっはっは!そうか100万か!よし、売った!」
「ええっ!?いいの!?最低価格でも100億って聞いていたけど!?」
大笑いしながら100万円で売るというよっちさんに私が驚いてしまった。
「ワシにとって金など最早何の価値もない、寧ろ金額を上げれば上げる程そいつに対して嫌悪感を感じるだけじゃ」
よっちさんは優しい笑みを浮かべて私達を見渡したわ。
「お主らがくれた温もりや優しさ、そしてこの楽しい時間……なによりイッセー、お前さん達が卵を褒めた言葉は妻の言ってくれた言葉そのものじゃった。ワシにとってかけがえのない大切な宝なんじゃよ。だから頼む、ミーコを守ってあげてくれ」
「……ああ、約束だ」
よっちさんの言葉に微笑みで返してイッセーは彼と力強く握手をかわすのだった。
―――――――――
――――――
―――
それから数日が過ぎたわ、私達は土地を購入する手続きを進めながらよっちさんにミーコのお世話の仕方を習っていたの。
「ミーコは気分屋じゃから肉や魚と食べたいものが毎日変わる。あとカカオは止めてやってくれ、食べれなくはないが味が嫌らしい」
「なるほどな、チョコも止めておいた方が良いな」
「ただ一日一回は絶対に果物をやってくれ、甘いリンゴや桃が好きだな。逆にすっぱいレモンなどは好かん」
「グルメなんですね、これは腕が鳴ります」
イッセーと小猫はミーコのエサの好みを聞いていたわ。私達ならどんな食材でも用意してあげれるわね。
「ミーコは背中と腹のこの部分をブラッシングしてやってほしい。熱い湯は嫌がるから必ずぬるま湯で毛を揉んで丁寧にほぐすんじゃ」
「よいしょ……よいしょ……これでいいですか?」
「ミー♪」
「あらあら、気持ちよさそうですわね」
アーシアが毛をブラシで丁寧にほぐすとミーコは嬉しそうに鳴いたわ。朱乃も魔法でぬるま湯を作りながらほほ笑んでいた。
「後散歩も連れて行ってやってくれ。近頃はワシも歳のせいで動けんくってのぅ、ストレスが溜まってるはずじゃ」
「なら私に任せろ……うわぁぁぁぁぁぁっ!?」
「ちょっと!ゼノヴィア大丈夫!?」
散歩に連れて行こうとしたゼノヴィアが勢いよく走りだしたミーコに引っ張られてしまったわ、イリナが慌てて黒い靴で追いかけていく。
「ミー」
「ぐえっ!?なんだ、顔に何か飛ばして……くっせぇ!痰じゃねえか!?」
「ああ、すまんな。ミーコは時々痰を吐くから気を付けてくれ」
「先に言え!」
アザゼルが顔に痰をかけられていたわ。
そんな風に私達はよっちさんとミーコと時間を過ごしていったの。
「よう、爺さん。今日も来たぜ」
「あれ、留守でしょうか?」
そしてある日、いつも通りよっちさんの家に上がらせてもらったんだけど彼はいなかった。ミーコの所かしら?
「ミー!ミー!」
「ミーコの鳴き声です!なんだか様子が変ですよ?」
「行ってみよう!」
ミーコの鳴き声が聞こえたんだけどいつもと様子が違ったの、それを感じ取った私達は直にミーコの巣に向かったんだけど……
「……」
「よっち爺さん!?」
なんとよっちさんがそこで倒れているのを見つけたの、私たちは直ぐにグルメ病院に彼を運んだわ。
直に集中治療室に運ばれたよっちさん、私達は廊下で待ち続けた。
「よっちさん、大丈夫でしょうか?」
「……」
アーシアが心配そうにそう呟く、でも私達は待つことしかできないわ……
そして治療室のランプが消えて医師の先生が出てきたわ。
「先生!よっちじい……よっちさんは大丈夫ですか!?」
「貴方達はよっちさんのご家族の方でしょうか?」
「いえ、友人です。奥さんは先に亡くなっていると聞いています。子供さんもいるのか分かりません」
「そうですか……では貴方達には話しておきましょう。よっちさんですが……正直もう長くないでしょう」
「ッ!?」
イッセーが代表して医師の先生によっちさんについて尋ねる、しかし返ってきたのは残酷な現実だった。
「病が進んでいて更に年齢も考えると治療しても体力が持ちません、最早手の打ちようが無いのです」
「……」
「暫くは入院してもらい様子を見ますが覚悟はしておいてください……」
私達はそれ以上何も言えず一旦帰ることにした。
「イッセー、よっちはどうした?無事なのか?」
「オーフィス、よっち爺さんは命を使い切ろうとしているんだ。これは生物として当たり前の事なんだ」
「フローゼと同じ……我、悲しい……」
オーフィスがそういって落ち込んでしまったわ。彼女は過去に大切な人の死を見て深く悲しんだ経験があるから余計に悲しいでしょうね。
「イッセー、人間はなぜ死んでしまう?我は寂しい」
「……命とはそういうものなんだ、生まれて何かを残してそして消える。そうやって受け継がれていくのが命なんだ」
「……今ならアカシアやフローゼがどうしてあそこまで命を大切にしていたのか分かる。でも我は寂しい、イッセーや小猫、皆は死なない?」
「少なくともまだ若いし俺は弱いけどしぶとさは自慢に思ってるからそんな簡単に死なないさ。グルメ細胞も持ってるし1000年は生きる気でいるからな!」
「……ふふっ、それなら安心」
イッセーはそう言ってオーフィスを撫でた、すると彼女も納得したのか笑みを浮かべる。何だかお父さんみたいね。
「俺達も覚悟はしておこう」
イッセーはそう言ってよっちさんの病室を見つめるのだった。
―――――――――
――――――
―――
そしてそれから更に3日が過ぎたわ。病院からよっちさんの意識が戻ったと聞いた私達は直に駆けつけた。
「爺さん、大丈夫か!?」
「おお、お主らか……迷惑をかけたな」
「気にすんなよ、俺達はもうダチじゃねえか」
よっちさんはベットに横たわって小さな声でそう言った。
「イッセー……どうかミーコをよろしく頼む。ワシはもうダメじゃ」
「……おいおい爺さん、そんな弱気になるなよ。俺達はまだ出会ったばかりじゃないか、もっといっぱい思い出を作ろうぜ。俺はまだまだ爺さんに食ってもらいたい食材があるんだぜ?もったいねえぞ!」
「ははっ、そうじゃな。ワシはこの年になって友人が出来た……なんて幸せなんじゃろうな」
よっちさんの声はとても弱弱しい、心配だわ……
「妻を孤独にして死なせたワシがこんな賑やかな声の中死ねるとは……妻に申し訳ない」
「よっちさん……そんな事を言わないでください。奥さんは貴方が最後まで自分のために働いてくれていたって分かっていますよ」
小猫は泣きながら美子さんは恨んではいないと言う。
「ワシの最後の心残りはお主らに引き継いでもらえた……もう十分じゃ。そろそろ妻に会いに行くとする……最後に会えて良かった、ありが……と……」
「爺さん!!」
……それがよっちさんの最後の言葉だったわ、きっと最後の力を振り絞って私達に感謝を伝えたかったのね。
その後私達はよっちさんの葬式を簡潔にして彼の骨を奥さんと同じ場所に入れてあげたわ。
「よっち爺さん、ミーコの事は俺達に任せてくれ。天国で美子さんと仲良くな」
私達はよっちさんと美子さんのお墓に手を合わせて祈りを捧げた。
「イッセー様、こちらにいられたのですね」
そこに複数人のスーツを着た人達が現れたわ。
「あんたらは土地を購入しに来てた……何の用だ?」
「イッセー様がよっち氏から土地を購入したと聞きまして……是非わが社とニワトラの卵を独占契約をしてほしいのです!」
「いえわが社と是非!今後わが社のグループ系列のレストランを全て無料とさせてもらいますので!」
「私の会社ならレアな食材を優先してイッセー様にまわします!どうでしょうか?」
「悪いが帰ってくれ。俺は独占契約なんてしない、卵は皆が食べられるようにしていく」
「しかし……」
「帰れ!ここには死者が眠ってるんだぞ!不謹慎だろうが!!」
『ヒッ……!?』
イッセーと私達に殺気を向けられた不謹慎な人達はクモの子を散らすように帰っていった。
「俺達は卵を独占なんてしない、皆に分け与えていく……それが受け継いだ責任だ」
「ん、我もここを守る」
「ははっ、そりゃ最強のボディガードだな」
イッセーはオーフィスの頭を撫でながら笑みを浮かべた。
よっちさん、ミーコとこの土地は私達が責任をもって守っていくわ。だから安心して休んでね……
後書き
イッセーだ。よっち爺さんのことは残念だったけど後は俺達が引き継いだ。いつまでも挫けてたら爺さんが心配しちまう、だから気持ちを切り替えて毎日を生きていくぜ。
そんな俺にサーゼクスさんや他の若手悪魔がやってきて……ええっ!?自分達を鍛えて欲しい!?
次回第154話『若手たちの奮起!ハングリラ島の冒険!』で会おうぜ。
次回も美味しくいただきます!
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