ハイスクールD×D　イッセーと小猫のグルメサバイバル

　ゼファードルの眷属はワンピースのベラミー一味をイメージしていますのでお願いします。 

side:イッセー


　俺達は久しぶりに日常生活を堪能していた、俺は今料理研究部の活動にいそしんでいる。


「ゼノヴィア！イリナ！だからレシピ通りに作れって言っただろう！味噌汁を作っててなんで紫色の泡が吹きこぼれる液体になってるんだ！？」
「済まない、イッセー……教会で昔客人に提供していたというスープの素があると聞いて持ってきたんだ」
「丁重にもてなす時に出したんだって。ほら、これがその原料だよ」
「髑髏マークがついていますね、明らかに違う意味のおもてなしだと思います……」


　俺がそう言うとゼノヴィアはおかしいな……という感じで首を傾げてイリナは紫色の液体が入った瓶を見せてきた。


　その瓶には髑髏マークが書かれており、アーシアの言う通り明らかにヤバイ理由で使うものだと察した。


「ここも一応部活だから成果を出さないといけない、だから市が運営してる料理大会にでも出そうと思ったが……これじゃ死者が出るぞ」
「レシピ通りに作れば普通の料理になるのに０．１秒でも目を離すと変なものを入れてしまうんですよね……」
「余計な物を入れる……料理の下手な奴がやる基本の一つだ」


　俺とアーシアは溜息を吐きながらどうしようかと呟く。


「イッセー、ちょっといいかしら？」
「リアスさん、それにサーゼクスさんも……一体どうしたんですか？」


　すると来客が現れた、それはリアスさんとサーゼクスさんだったんだ。俺は二人を招き入れてお茶を出す。


「今日は一体どうしたんですか？サーゼクスさんまで一緒って事はもしかしてなにか重要な案件があってきたんですか？」
「急に訪ねて申し訳ない、イッセー君。今回君の元を訪れたのは悪魔側のお願いがあってきたんだ」
「悪魔側の……ですか？」


　サーゼクスさんが悪魔側からお願いがあると話を切り出してきた。


「正直忙しい君に頼るのもどうかと思ったのだが、現状君でないと解決できない案件でね……」
「それなら遠慮なく言ってくださいよ、俺達は同盟を結んでいるんですから」
「ありがとう。それでお願いと言うのは君に若手悪魔の特訓をしてほしいんだ」
「若手悪魔の特訓？」


　サーゼクスさんのお願いとは若手悪魔の特訓とのことらしい。


「実は先日の一件で君の力を知ったソーナ君やサイラオーグ君が是非君に鍛えて欲しいと要望があったんだ。こちらとしても将来悪魔の未来を背負う若者たちが強くなりたいという願いを無碍には出来なくてね、君は以前リアス達を鍛えてくれただろう？同じように彼らも鍛えてあげて欲しいんだ」
「何だ、そんな事ですか。全然かまいませんよ、強くなろうとしている奴は好きですからね」


　俺はそのお願いを快く承諾した。強くなりたいと努力しようとしている奴は好きだ、力になりたいんだ。


「そう言って貰えて嬉しいよ、イッセー君。ただね……」


　サーゼクスさんはなにか言いにくそうに表情を曇らせた。


「出来ればなんだが他にも若手悪魔を鍛えてあげて欲しいんだ」
「俺は何人でもいいですけど……なにか問題がありそうですね」
「ああ、実はその２人……ライザー君とゼファードル君なんだけど、実はこの二人は自分から志願している訳でなく僕からのお願いなんだ」


　サーゼクスさんが話したライザーという名前には聞き覚えがあった。


「ライザーって確かリアスさんの……」
「ええ、元婚約者よ」


　リアスさんに尋ねると彼女はコクッと首を縦に振った。


「ライザー君はリアスとのレーティングゲームの後に引きこもってしまってね、今ではかつての気概や闘志は失われて堕落した生活をしているらしい」
「はぁ……」
「ゼファードル君は以前サイラオーグ君とレーティングゲームをした際に完敗してね、心が折れてしまった。彼もまた引きこもってしまっている」


　サーゼクスさんは真剣な表情で俺に視線を向ける。


「彼らもまた優秀な能力と素質を持った若手だ、このまま腐らせるのはあまりに惜しい」
「なるほど、それでその二人も鍛え直して出来れば復帰してほしいって考えなんですね。うーん……」


　サーゼクスさんのお願いは分かった、でも俺はこの件に乗り気じゃなくなってしまった。


「ソーナ会長とサイラオーグは良いとしてその２人は自分から強くなりたいって言った訳じゃないんですよね？やる気がない奴を鍛えても意味はないですよ？」
「君の言う事はもっともだ、やる気がなければ向上はしないからね」
「でもどうしても今回のお願いを聞いてほしいの、イッセー。特にライザーは別の人からもお願いがあって……」
「別の人？」
「ライザーの妹のレイヴェルよ、今回の話は彼女の相談が切っ掛けなの」


　俺はやる気のない奴を鍛えても仕方ないと話す、冷たいようだが自分から強くなりたいと言ったわけでもない奴に時間を使うのは無駄でしかない。


　そもそも会った事もない２人だし……


　だがリアスさんは今回の話はライザーの妹であるレイヴェルという子が切っ掛けになったと語った。


「レイヴェルは腐って実家に引きこもっているライザーを心配して私の元に相談をしに来たの。私もかなり無茶をして婚約を破棄させたから少し責任を感じてるのよ」
「なるほど、そういう事でしたか」


　リアスさんはかつてレーティングゲームという裏技で婚約を破棄させたことが有り、それが原因でライザーが引きこもってしまった事に負い目を感じているらしい。


「うーん、そのレイヴェルって子の健気な想いとリアスさんのお願いを加味して会って話くらいはしてもいいですよ」
「ありがとう、イッセー君。彼らも悪魔だ、僕の指示なら必ず来るだろう。どうか未来ある若手悪魔たちを頼む」
「私も勿論協力するわ」


　俺はリアスさん、そしてレイヴェルという子の願いを叶える為にその案件を承諾した。


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―――


　そして俺達は現在G×Gのスイーツハウス前に集まっている、小猫ちゃんと黒歌は節乃お婆ちゃんの所に修行に行っている、アザゼル先生は堕天使の会議に行ってるから今は不在だ。


「それにしてもなつかしいわね、私達が修行を付けてもらった頃を思い出すわ」
「そうですわね、でもあの時はD×Dで修行したのに今回はG×Gなのですね」
「リアスさん達の時は隠しておかないといけなかったからな。今は悪魔と同盟を組んでるから利用できるものは使っていこうって訳だ」


　リアスさんが昔俺に鍛えてもらったことを思い出していた、朱乃も思い出に浸っていたがあの時と違って今回はG×Gで修行することを指摘して俺は理由を話した。


　あの頃はG×Gのことは隠していたからな、最も昔の俺や皆では実力不足で誰か死なせてしまっていたかもしれなかったから丁度良かったかもしれない。


「ぼ、僕が当時から先輩達と一緒にいたら逃げ出していたかもしれません……」
「最初の頃は僕達も弱くて余裕なんてなかったからね」


　ギャスパーは最初から自分がいたら逃げ出していたと語る、確かにギャスパーが介入した時はスカイプラントに挑戦する時で、俺も皆も余裕があったからフォローできたがそれより前だとそんなことしてる暇はなかったな。


　祐斗も初めて挑んだ洞窟の砂浜を思い出したのか苦笑いを浮かべていた、正直次郎さんが偶然いなかったら間違いなく誰か死んでいただろうしな……


　俺達は運の良さや誰かの助けがあってここまでこれた、だから今回若手悪魔たちに今度は俺達が導ける存在になれるといいな。


「来たみたいだな」


　すると魔法陣が現れてそこに沢山の悪魔たちが現れた。


「やあイッセー君、今日はよろしく頼むよ」
「はい、任せてください」


　サーゼクスさんに挨拶して俺は若手悪魔たちに声をかけた。


「初めましての人もいるから自己紹介をしておくぞ。俺は兵藤一誠、今代の赤龍帝でお前達を鍛えるコーチだ、よろしくな」
「この度は忙しい所を無理を言って申し訳ありません、イッセー君。どうかよろしくお願いします」
「兵藤一誠、こうして貴方に鍛えてもらえることを嬉しく思う。今日は必ず貴方の教えを受けて強くなれるように努力するつもりだ。どうかよろしくお願いする」
「ああ、よろしくな。会長、サイラオーグ」
「イッセー君、私の事はソーナと呼んでください。貴方は私の師匠になるですから」
「そうか、じゃあ改めてよろしくな。ソーナ」


　俺はソーナとサイラオーグ、そして彼らの眷属達と自己紹介をしていく。生徒会のメンバーは名前は知ってるが匙以外とはあまり話したことが無かったからな。


「初めまして、赤龍帝。私はシーグヴァイラ・アガレス、この度はこのような場を設けて頂き誠にありがとうございます」
「どうも、俺は兵藤一誠。イッセーと呼んでくれ、よろしくな」
「ええ、宜しくお願いします。イッセーさん」


　眼鏡をかけた金髪の女性と握手を交わす、彼女も若手悪魔の一人らしい。今回の話を聞いて是非参加したいとわざわざ来てくれたみたいだ。


　物腰も丁寧だし、ソーナみたいな知的な感じがするな。


「ところで……イッセーさんはオタク趣味があるとリアスから聞いています。ロボットモノなどは見ていますか？」
「機動戦士ダンガムとかゼットーロボとか見てるぞ」
「まあ……つまり同士なんですね！」
「へっ？」


　眼鏡の奥の瞳がピカッと輝きズイッと顔を近づけて興奮した様子でダンガムのどこが好きとか、どの話が好みとかさっきまでの知的な感じは消えて話を続けていく。


　どうやら彼女はロボットモノのアニメなどがとても好きでかなりのオタクレベルで入れ込んでいるみたいだ、だが若手悪魔の中にロボットモノのアニメが好きな同士などいなかったようで語りたくて仕方なかったようだ。


　後GTロボにも興味を持っているらしく、G×Gの機械技術に強い関心を持っているらしい。今度ブルマさんを紹介してみるか。


　さて、粗方挨拶も終わったかな。そろそろ次の話を……


「おいおいおい！ちょっと待ってくださいよ！サーゼクス様！？」
「どうしたんだい、ゼファードル君？」
「どうしたもこうしたもありませんよ！俺は魔王様が直々に呼んでくださったからこうして足を運んだのに家畜以下のクソ人間にコーチ？流石に貴方様の命令でも納得できませんなぁ！？」


　その時だった、ヤンキーみたいな恰好をした男……ゼファードルがそう抗議していた。彼の眷属達もブーイングをしている。


「ちょっとゼファードル！お兄様やイッセーに失礼でしょ！？」
「ああん？誰かと思えばグレモリー家を追放された哀れな女じゃねえかよ。行く当てが無いのなら俺がお前を愛人にしてやるぞ、体や顔は好みだったからな」


　怒るリアスさんを小馬鹿にして彼女の胸に手を伸ばすゼファードル、だがそれをサイラオーグが自らの手で奴の腕を掴み止めた。


「いい加減にしろ、ゼファードル。魔王様の前で恥さらしなことをするな」
「うっ……サイラオーグ！？」


　サイラオーグの顔を見た瞬間、あれだけイキっていたゼファードルは顔を真っ青にして地面に尻もちをついて怯えてしまう。


　確かサイラオーグとのレーティングゲームでボコボコにされて心を折られたんだっけ？こりゃ重症だな。


「ゼファードルだっけ？お前サイラオーグにボロ負けしたんだよな？」
「う、うるせぇ……！俺は負けたんじゃねえ……！」
「その割には滅茶苦茶ビビってんじゃん、心はもう完全に屈してしまったみたいだぞ」
「ぐっ……！」


　俺の指摘にゼファードルは何も言い返せずに俯いてしまった。


「もしお前が強くなりたいのなら俺が鍛えてやるよ、勿論お前のやる気次第だがな」
「ふざけんな！雑魚人間に教わることなんざ何もねぇよ！」
「へぇ……じゃあこれでどうだ？」


　俺は隠していた闘気をモロに放出して威嚇する、するとオカルト研究部、教会組、サーゼクスさんを除く全員が硬直したように動けなくなった。


「こ、これは……！？」
「兄貴の殺気！？や、やべぇ……動けねぇ……！」
「むぅ……俺に向けられている訳でないのに冷や汗が止まらん……！これが兵藤一誠の実力！」


　ソーナと匙は完全に動けなくなり、サイラオーグは冷や汗を流しながら腕をクロスして立っていた。


（な、なんだよコレ……！？サイラオーグなんて目じゃねえ殺意！ば、化け物だ……！？）


　ゼファードルは尻もちを付いて後ずさった、奴の眷属は全員が気を失っている。


「なかなかやるじゃないか、気を失わなかったのはお前だけだぞ」
「あっ……」


　俺は殺気を貸してゼファードルに手を差し伸べた。


「もしお前が変わる気があるなら俺についてこい、絶対に後悔させねえからよ」
（お、俺に手を差し伸べてくれた奴なんざ今まで一人もいなかった……何故かこの手を取りたくなっちまう）


　ゼファードルはおずおずと自らも手を差し伸べてきた。


「ほ、本当に強くなれるのか……？」
「さっきも言ったがお前次第だ、だがお前がその気なら俺は力を貸す」
「……分かった。俺を強くしてくれ！負けっぱなしは嫌なんだ！」
「ああ、任せろ」


　俺はゼファードルと握手を交わす、男の顔になったじゃねえか。


　その後俺はゼファードルの眷属達を起こして事情を説明した、最初は納得いかないという顔だったがゼファードルが説明すると直に納得してくれたよ。


　眷属には慕われているんだな。


「……サーゼクス様、折角のお誘いですが俺は辞退させていただきます」


　その時だった、これまで何も言わなかったライザーが急に修行を辞退すると言い出したんだ。


「お兄様！一体何を言ってるのですか！？」
「そもそも俺は魔王様に呼ばれたから来ただけで強くなりたいとは思っていない、それにリアスがいるとは聞いていないぞ。お前は俺にこれ以上に恥をさらせと言うのか？」
「だ、だとしても……」
「俺はもうあんな惨めな思いはしたくない……余計な事はしないでくれ」


　金髪の可愛らしい少女がライザーに詰め寄る、恐らく彼女がレイヴェル・フェニックスなのだろう。


　だがライザーは諦めたような眼をして惨めな思いをしたくないと呟く。


「情けない男だな」
「なにっ？」


　俺は思わずそう呟いてしまった、それを聞いたライザーがこちらに視線を向ける。


「その子はお前を助けたい一心で本来会いにくいリアスさんに頭を下げてまでこの機会を作ってくれたんだぞ？それを惨めな思いをしたくないなんて言って逃げようとするとは……今のお前が一番惨めだぞ」
「黙れ！そもそも俺は知ってるんだぞ、お前がリアス達を鍛えたと……！お前さえいなければ俺はこんな惨めな思いをしなくて済んだんだ……！」


　ライザーは俺を睨みつけて俺のせいだと叫んだ。


「フェニックス家の三男として輝かしい功績を持っていた俺は誰もが讃えた！なのにたった一回の敗北で俺の評価は地の底に落ちた！『所詮は不死身の力頼りのボンボン』だの『期待外れの大ほら吹き』だの……！俺を支持していた奴らは掌を返して俺を侮辱し始めた、今では影口ばかり叩かれて誰からも笑われる始末……！こんな生活を送る羽目になったのは全てお前のせいだ！」
「他責思考は止めろよ。まあ仮に俺がいなくてリアスさん達に勝てたとしてお前がその後順風満帆な人生を送れるとは思えないがな」
「なんだとっ！？」
「コカビエルにサイラオーグ……この世界にだって強い奴は沢山いる、お前はそのいずれかにボコボコにされて今みたいに心をへし折られてヘタレになっていたに決まっている。結局折れるのが遅いか早いかの違いしかない」
「ぐっ……！」


　俺の指摘にライザーは何も言い返せずに言葉を詰まらせる、一応自覚はあるみたいだな。


「情けないヘタレだな、お前を信じてついてきた眷属達も哀れだと思うぜ。こんなどうしようもない奴さっさと見限ってもいいのに……そんな良い女たちの期待にも応えようと思えないのか？おい」
「うっ……」
「挙句には妹に八つ当たり……お前最低にもほどがあるよ。こんなクソみたいな男初めてだ、他人の力借りてそれに溺れたディオドラもクソだったけどお前と違って最低限自分で戦おうとしたぞ？それ以下とはたまげたな」
「……」
「もういいよ、帰れよ。部屋に引きこもって一生俺への恨み言をほざきながら惨めに生きればいいだろう。お前にはそれがお似合いだよ、負け犬ならぬ負け鳥」
「ぐっ……うぅ……」


　あらら、とうとう泣き出しちゃったよ。昔の俺を見ているみたいでつい口調が荒くなってしまった。


「待て！」


　するとレイヴェル・フェニックスを除いたライザーの眷属達が俺に敵意を向けていた。


「なんだ、何か用か？」
「ライザー様をそれ以上侮辱するな！さもなくば我らが許さん！」
「おいおい、俺は事実を言っただけだぜ？お前らだってこんな情けない姿を見てたら思う事はあるだろう？」
「……確かに今のライザー様のお姿は見るに堪えない、だがそれでも私達はあの方が再起して立ち上がってくれると信じている！」
「私はライザー様に居場所を貰ったの！見限るわけ無いじゃない！」
「私だってライザー様を愛してるの！好き勝手言わないで！」
「惚れた男を侮辱されて黙っていられるほど私達は腑抜けていないわ……！」
「お前達……」


　全員がライザーを庇い信じていると話す、そんな眷属達にライザーは複雑そうな表情を浮かべていた。


「……」
『ッ！？』


　俺はライザーの眷属達に気絶しないかどうかのレベルの殺気を叩き込んで威嚇した。全員が蛇に睨まれた蛙のように動けなくなり、数人は口から泡を吐いて気を失いかけた。


「ま、負けない……！」
「倒れるものか！」


　だが全員歯を食いしばって気絶するのを耐えた、中々の根性じゃねえか。


「俺は今虫の居所が悪い、女子供でも容赦は出来ないぞ？」
「そ、それでも私達はライザー様のために戦う……！」
「……そうか、なら死んでも俺を恨むなよ？」


　俺はナイフを構えてライザーの眷属に高速で突っ込んでいく。


「や、やめろぉぉぉっ！！」


　だがそこにさっきまでヘタレていたとは思えない速さでライザーが俺達の間に割り込んできた。


　俺はライザーに直撃する寸前でナイフを止める、ライザーの顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていたがその目には強い光がともっていた。


「お、俺の大切な眷属に手を出すな！それ以上やるなら俺が相手をしてやる！」
「そんな情けない顔してか？」
「情けなくてもいい！あそこまで俺を思ってくれる眷属達を見捨てられるか！殺すなら俺を殺せ！」


　全身震えながらちょっと下半身の股のへんが若干濡れている無様な姿……だが俺はそんなライザーがさっきよりもカッコよく見えた。


「出来んじゃねーか、そういう顔」
「へっ……？あだっ！？」


　俺はライザーの額に軽くデコピンをしてやった。


「ここまでやって眷属を庇うそぶりすら見せなかったらマジで見限るつもりだったが……最後に男を見せたな」
「お、お前……まさかわざとあんなことを？」
「さあ、どうだろうな」


　困惑するライザーとその眷属達、俺は背中を向けて笑った。


「お前は少なくとも最低じゃないさ、こんだけ慕われているんだ。さっきはディオドラなんかと比べて悪かったな」
「……」
「俺はお前の気持ちが分かるぜ、最初は弱い俺を馬鹿にしてコケにしていた大人たちがいざ実績を上げたら掌を返して俺を褒めちぎった。正直それが鬱陶しいと感じた。でもさ、俺はもうなんとも思ってないよ。だって今の俺には大切な仲間がいるからな」


　俺はリアスさん達の方を向いてそう言った。


　昔美食屋として活動しだしたときは親しい人以外は全員が俺を馬鹿にしてコケにされた、失敗も何度もしてその度に侮辱されて、しまいには俺を紹介してくれた『ヘビーロッジ』のマスターであるモリ爺を耄碌したと言う奴までいた。


　そんな悔しさをバネにして俺はコツコツと実績を上げていき、今では四天王とまで呼ばれる程の地位を得た。


　だがすると今まで俺を馬鹿にしていた奴らに限って『俺は分かっていた』だの『最初から化けると信じていた』だの都合のいいことを言い始め俺に媚びを売り始めた。


　心底あきれ返ったよ、俺は……正直最初はこんな奴らの為に食材を運ぶことが馬鹿らしくなるくらいに冷めてしまった。


　でも小猫ちゃんと出会い彼女が美味しそうに食材を食べる姿を見て俺は美食屋の原点を思い出した。



　今では沢山の仲間と美味い物を分かち合うことができる、だからもうそんな小さなことは気にしなくなったよ。


「そんな直に評価をコロコロ変える奴らなんざ放っておけばいいんだよ、お前にはこんなにもお前を思ってくれる眷属がいるじゃないか。それで十分だろう」


　俺はライザーに手を差し出す。


「後はお前次第だ、変わりたいって言うならその道を先に進んだ先輩として俺が手を貸してやるぞ」
「……俺は変われるだろうか？」
「ゼファードルにも言ったがそれはお前次第だ、でも俺はお前は変われると思うぞ。あくまで感だけど」
「ならその感に俺も賭けてみよう」


　ライザーは俺の手を握り返した。


「先程は済まなかった、兵藤一誠。無礼を許してくれ」
「気にすんな、俺も言い過ぎたしお相子だ」
「……そうか」


　その後ライザーやその眷属達から謝罪を受けた俺は彼らと意気投合した、話せば良い奴らじゃないか。


「すみません、サーゼクスさん。時間をかけてしまって」
「いや寧ろお礼を言わないといけないね、彼らをその気にさせてくれてありがとう。本来は僕がそれをしないといけないんだけど立場的に僕が言っても命令にしかならないからね……」


　サーゼクスさんは俺にお礼を言ってきた。魔王という立場からアドバイスしても若手には言葉が重すぎて上手く伝わらないし、最悪命令されたと思ってしまうかもしれないからな。


　立場が出来るというのも難しいもんだな。


「さて、皆待たせちまったな。早速だが俺達はある島に向かうぞ」
　　　

　俺は改めて他のメンバーに今から行う特訓の内容を説明し始めた。


「島？それって私達も知ってる島なの？」
「いやリアスさん達も知らない島だ。『ハングリラ島』といってな、捕獲レベルも低い猛獣ばかりの丁度良い島なんだ」


　リアスさんが自分達も知っている島なのかと尋ねてきた、だがこのハングリラ島はこのメンバーの中では俺とルフェイしか知らないだろう。


「お前ら、期待していろ。今まで食った事のない美味い食材が待ってるぞ。それを食って鍛えれば嫌でも強くなる」


　俺は若手悪魔たちにそう話す。


「さあ、行こうぜ！ハングリラ島に！」


　さあ、修行の開始だ。ビシバシ鍛えてやるぜ！

 

　ソーナです、イッセー君に修行を付けてもらえることになりました。これで私達も強くなって目的を果たす為に精進できるはず……必ず強さの秘訣を知って私の糧にします。


　……えっ？まずは美味しい物を食べろって？そんなことをしている暇はないのに何故そんな事を？


　本当に彼についていって大丈夫なのかしら？


　次回第１５５話『ハングリラ島は食の宝庫！とことん味わえ、Ｇ×Ｇの食材！』で会いましょう。


　次回も美味しくいただきます……これでいいのかしら？