真・恋姫†無双 劉ヨウ伝
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第51話 常山の龍と蘭
私は常山郡の山中にいます。
麗羽達も当然一緒です。
私達は周囲を山賊に囲まれています。
「おい、兄ちゃん。女、馬、金目のものを置いていけば命だけは助けてやるぜ!」
「そうなんだな。大人しく置いていくんだな」
「おい、お前!さっさとアニキの言う通りしやがれ!」
私の目の前にはアニキと呼ばれる中年の男がいます。
彼の両脇を巨漢の肥満体男と小男が固め、彼らの後方には賊が大勢おり私達の周囲を囲むようにいます。
完全に囲まれています。
数はざっと数百です。
この旅で遭遇した山賊との戦闘回数は数えきれないくらいです。
黄巾の乱が近づいているということだと思います。
山賊との戦闘のお陰で戦闘経験の浅い麗羽を鍛える効果があったのは嬉しい誤算でした。
「小僧、俺を無視するんじゃねえ!」
中年の男は私が無視したことに腹を立てているようです。
彼らが凄んでいるのは自分達が絶対優勢だと思い込んでいるからでしょう。
確かに、普通の兵士なら、この数で囲めば勝利は絶対と思います。
私にとって彼らは羽虫と一緒です。
憂慮すべきは麗羽です。
麗羽も剣術の腕は上がっています。
如何せん彼女は戦闘向きではありません。
今の彼女に背水の陣のような白兵戦をさせるのは無理です。
そうなると方法は限られてきます。
まず、頭を潰して敵中を突破し、この囲いを抜けます。
その後、体制を立て直して山賊を殲滅します。
それには山賊達に隙を作らせる必要があります。
一瞬でいいです。
誰かが一瞬だけ気を反らしてくれれば、前方を突破できます。
私は麗羽と揚羽に前方を突くという目配せをしました。
揚羽は凪達に同じ様に目配せをしました。
「いい加減しろよ!この俺を怒らしたらどうなるかわかってんのか!」
いよいよ中年の男は怒り狂っています。
「別に無視をした訳じゃない。私が何故お前の命令に従わなければいけないのか戸惑っただけだ」
「お前!命が惜しくねえみたいだな!アニキ、こいつをさっさと殺しちまいましょう!」
「そ、そうなんだな。さっさと生意気なこいつを殺すんだな」
「それでもそうだな。へへ、折角心やさしい俺様が命だけは助けてやると言ったのに馬鹿な奴だぜ。てめえの連れをお前の前で犯してやるぜ」
中年の男は下卑た笑いをしました。
山賊はどうしてこう不快な連中ばかりなのでしょうか。
情けを掛ける気分にもなりません。
「ちょっと、まてぇぇ――――――!」
中年の男が号令を出す瞬間、彼の後方から大きな声が聞こえた。
見覚えのある白いミニスカなチャイナドレスです。
あれは正しく恋姫の趙雲です。
「この山賊共、群れを成して罪なき者に害をなそうとは不届き千万!この常山の昇り龍、趙子龍が成敗してくれる! 」
槍を向け凛々しく啖呵を切りました。
趙雲の横に彼女と同じ年端の女の子がいます。
「不肖、この夏侯蘭も助太刀いたす!」
彼女も片に掛けていた大剣を抜き放ちます。
これはチャンスです。
山賊達の視線が彼女達に向いています。
彼女達に当たらない様に振雷・零式の出力を押さえます。
前方の地面を山賊ごと陥没させては私達も逃げれません。
「振雷・零式」
私は双天戟の切っ先を中年の男がいる前方に向け、必殺の一撃を放ちました。
私の攻撃により全面の山賊は胴から上が消し飛んでいます。
「前面を突破するぞ!」
私は大声を上げ麗羽達に檄を飛ばしました。
麗羽達が突破を終えるのを確認して私は囲みを抜けました。
山賊達は突然の異常な光景に呆然と立ち尽くしていました。
「お、御主。な、何をしたのです・・・・・・」
私が趙雲達の元に駆け寄り、前方の山賊に向き直ると趙雲が声をかけてきました。
彼女の表情は混乱しているようです。
対峙していた目前の山賊の上半身がいきなりなくなっているので動揺しているのでしょう。
「話は後だ。まずは生き残っている山賊を殲滅する。生かして逃がせば罪のない者に害をなすだけだ」
私は彼女の質問を遮り、敵中に斬り込みました。
私につづき麗羽達も攻撃にはいります。
動揺が解けていない山賊は私達に狩られるままです。
中には逃げ出そうとする者もいましたがもう遅いです。
「ギャァァ――――――!」
「貴殿が何者かは存じませんが、ここは山賊を討ち取るのが先決。加勢させていただく」
私達が賊を掃討していると趙雲も私の近くで山賊を狩りだしました。
あの夏侯蘭と名乗った女の子も一緒です。
武芸の腕はなかなかだと思います。
趙雲には劣るようですが。
夏侯蘭といえば趙雲の同郷で、三国志にも出ています。
でも、マイナーでしたね。
確か蜀漢で軍正を任されていたと思います。
「加勢ありがたい。礼を言う。私の名は劉ヨウだ」
私が素直に礼を言うと、二人とも私の名前に驚いたが直ぐに山賊との戦闘に戻った。
あれから数刻の後、私達は山賊を全て殲滅しました。
私達は趙雲の案内で彼女の住む村に案内して貰うことになりました。
趙雲と夏侯蘭が道すがら私をチラチラと見ていました。
私が名前を名乗ったときも凄く驚いていました。
まさか、『地獄の獄吏』と呼ばれている私を恐れているのでしょうか?
それはないと思いたいです。
私は山賊などの民を害す者以外に暴力を振るうことはしていません。
逆に、山賊の被害を受けた村に見舞金として金を渡したこともあります。
そんな私が一般の人に怖がられる訳がないと思います。
今もあの二人は私のことを見ています。
「あなた達、さっきから何ですの。正宗様に言いたいことがあるならはっきりいいなさい」
麗羽が趙雲と夏侯蘭に声をかけました。
「い、いえ特に何もござらんよ・・・・・・」
「な、何もないです・・・・・・」
二人は歯切れ悪く言いました。
「そうですの?そうは見えませんわ。まあ、あなた達には助けて貰った恩もありますし、あなた達の村に着いたらゆっくり話でもしましょう」
麗羽は彼女達に言いました。
私も彼女達とゆっくり話がしたいと思っていました。
できれば二人ともスカウトしたいです。
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