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真・恋姫†無双 劉ヨウ伝

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第50話 盧植先生

「はじめまして、盧植先生。私は劉ヨウ、字を正礼と申します」

私の目の前には盧植がいます。

盧植は中年の男性をイメージしていましたが、予想に反し奇麗な女性でした。

歳の頃は30歳前半だと思います。

灰色の髪でストレートヘアです。

温和な風貌ですが、隙が全くありません。

恋姫の世界の有名な武将は皆美女なのでしょうか?

そう疑いたくなります。

「あなたが『山陽郡の麒麟児』で勇名を轟かせている劉ヨウ殿ですか」

今、私は白蓮に案内され盧植の私塾の一室にいます。

白蓮、麗羽、揚羽も同席しています。

「ふふ、意外ですね・・・・・・」

盧植は私の顔を黙って見ていたかと思うと口を開き呟きました。

「盧植先生、何がでしょうか?」

「巷であなたのことを『地獄の獄吏』と呼ぶ者がいます。その異名から、あなたがもっと厳つい人物なのかと思っていました」

私の思いとは裏腹に「地獄の獄吏」の異名はメジャーに成りつつあります。

「良く言われます。ですが、外見と内面が一致するとは限りません」

「そうですね・・・・・・。劉ヨウ殿、ごめんなさい。それで、今日はわざわざ私の所に何用です」

盧植はひとこと謝ると、話題を変えてきました。

「高名な盧植先生に一度お会いしたいと思っていました。幸い、白蓮が先生の門下と知り、会えるように頼んだのです」

「私もあなたに会うことが出来て嬉しいです」

盧植は温和な表情で返事しました。

「白蓮から劉ヨウ殿は旅をしていると聞きました。劉ヨウ殿は何故旅をしているのですか?あなたなら孝廉にて郎中になるのは簡単でしょう」

盧植は私が旅をしている理由を聞いてきました。

彼女の言うことは最もです。

乱世が来ないのなら私も無難な道を選んだでしょう。

しかし、乱世が訪れるのが確定している以上、人材集めに奔走する必要があります。

その旅も後三ヶ月ほど終わります。

洛陽に帰れば袁逢殿の用意した役職につくことになるでしょう。

折を見て青州のどこぞの郡大守になり、黄巾の乱が起こるまで力を蓄えるつもりです。

麗羽も同様です。

私には麗羽と揚羽がいます。

力を合わせこの乱世を生き抜いてみせます。

「最近、世が乱れて来ていると見受けられます。私はその現状を自分の目で見たかったのです」

私は自分の本当の目的は伏せて、私がこの旅で感じたことを含めてもっともらしく言いました。

「世の乱れですか・・・・・・」

盧植は憂いを帯びた表情で私の言った言葉を反芻した。

「嘆かわしいことです。劉ヨウ殿の仰る通りです。官卑の横行で民の暮らしは苦しくなるばかり。民が貧困に喘げば、彼らは賊に身を落とすしかありません」

盧植という人物が少し分かりました。

彼女は常日頃から世の中のことを憂いているのでしょう。

史実、三国志でも人格者な盧植らしいと思いました。

これなら麗羽に士官することになっても問題ないと思います。

盧植が病に伏したときは私の能力で必ず救ってみせます。





「劉ヨウ殿、私ばかりが聞いて申し訳ないが、あなたにもう一つ聞いてもいいかしら」

盧植は私にまだ聞きたいことがあるようです。

「盧植先生、私に答えられる内容であれば喜んで」

「そうですか。では、遠慮せずに聞きますね」

盧植はひと呼吸置くと先ほどの和やかな雰囲気と違い、真剣な表情になりました。

「あなたは幼少の頃より賊退治に明け暮れていたと聞きます。あなたは何故幼少のころより賊狩りなどをしているのですか?自分の行っている行為を危険だとは思わなかったのですか?」

彼女は私に賊狩りをする理由を聞いてきました。

賊狩りを始めた理由は孫策に負けて悲惨な末路を味わいたくないと思ったからです。

自分の置かれた状況に戸惑い、ただ闇雲に武術の腕を磨くことにばかり傾倒しました。

一重に悲惨な最後を迎えたくありませんでした。

そんな私に変化が訪れたのは麗羽との出会いでした。

初めは望まぬ出会いでした。

しかし、今は麗羽との出会いに感謝しています。

麗羽に秘密を打ち明けたとき、凄く気が楽になりました。

彼女との出会いを皮切りに、自分の運命を変えることができる実感が湧いてきました。

お陰で心に余裕が出来ました。

「賊狩りを始めたのは個人的な理由からです。ですが、今は違います」

「今は違うというのはどういう意味です」

盧植は空かさず私に聞いてきました。

「盧植先生に『個人的な理由』をお教えすることはできません。ただ、私は誰よりも強くなりたかったのです。初めて私が賊を殺したときのことは今でも忘れません」

私は初めて賊狩りをしたときのことを思い出しながら話を続けました。

「賊といえど人です。殺すことに二の足を踏みます。しかし、賊を殺さなければ、見逃した賊が、罪のない民を手にかけます。そう思うと私は武器を手放せなかった。私がしなくても誰かがすると思えば楽でした。ですが、現実は無情です。誰かがすると思っている間にも賊の被害に遭う民が大勢いました。私はそれを無視することはできませんでした。力が正義とはいいません。ですが、正義を成すためには力がいります。力無き者がいくら正義を語ろうと誰も耳を傾けはしません。私は力で賊を殺し、賊の被害から民を守ることに何の躊躇いもありません。民を害すものはいかな身分のものでも私は許さない」

「・・・・・・。劉ヨウ殿、あなたは本当に強い人間です。現実を直視し、目を背けることなく行動しています。あなたのような若者がまだこの国にはいるのですね」

盧植は私の言葉に感動しているようです。

彼女は目に薄らと涙を浮かべています。

横を見やると麗羽達も感動しているようです。

「盧植先生、私はまだまだ力はありません。だから、助けることが出来る人間も多くはありません」

「気に病むことはありません。あなたなら必ず大志を実現できるでしょう。これからも焦らずに前に進みなさい」

盧植は私に微笑んで諭しました。

「そうです!劉ヨウ殿、真名を交換してもらえないですか?」

彼女は急に相づちを打つと真名を交換しようといいました。

「それは是非お願いします。盧植先生と真名の交換できるとは光栄です。私の真名は正宗です」

私は願ったり叶ったりなので、盧植と真名を交換しました。

「正宗殿、私は月華といいます。これからもよしなにお願いしますね」

その後、一刻ほど盧植と歓談しました。

私塾が始まるということで、私達は私塾を後にすることにしました。

月華と白蓮と別れの挨拶をしていると、桃香が現れてました。

私は桃香と別れの挨拶を済ませ、私と麗羽達は凪達を探して見つけると荷物を纏めて常山郡への旅へ出ました。
 
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