真・恋姫†無双 劉ヨウ伝
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第52話 共闘
趙雲と夏侯蘭の二人に案内され、彼女達の村に来ました。
着いた早々私と麗羽達は村長の家に案内されました。
夏侯蘭は村長に私達を泊めて貰えるように頼みに行きました。
私は迷惑がかかると心苦しいので止めようとしましたが、私を無視して行きました。
この村には宿以前に店がなく、自給自足の生活のようです。
村長に泊めて貰えないなら、今日は野宿になります。
慣れているので別に構いませんが、できることなら雨風防げる場所で寝たいです。
私はこの村に入って気づいたことがあります。
血の臭いがします。
この感じからして数刻は立っていないと思います。
私を襲ったあの山賊の仕業でしょうか?
麗羽達も気づいているようですが何も言いません。
村の中は比較的被害が少ないので、山賊の襲撃は撃退できたのでしょう。
ここは僻地なので、こんな村を襲うのは山賊くらいです。
略奪を受けた直後の者達の表情ではないです。
その証拠に、この村の者の表情は疲労が見て取れますが、目に生気を感じます。
私の目の前には村長の家がありました。
村長の家は周囲の家に比べ比較的大きいですが六畳間が三部屋くらいの間取りです。
趙雲に案内され村長の家に入ると、好々爺然とした老人が私達を迎えてくれました。
「村長、劉ヨウ様を案内した」
「夏侯蘭から聞いておる」
趙雲にひとこと言い、村長は私の前に進みでて挨拶をしてきました。
「これは劉正礼様。あなた様の勇名はこの冀州でも聞き及んでおります。この辺りには宿はありません。宜しければ私の家にて体をお休めください」
ありがたい話だがここで皆と一夜を過ごすには狭いと思いました。
もう少し広い家と期待していたので迷惑を掛けるのではないかと気が引けます。
「村長、気持ちはありがたい。しかし、私達は人数も多い。迷惑を掛けるのも忍びない。本当に迷惑でないのか?」
私は村長に確認の意味でもう一度尋ねた。
この村の様子が少し気になるので出来ることなら滞在したい気持ちが少しあります。
それに、この村には趙雲と夏侯蘭がいます。
みすみす逸材を見逃す訳にはいきません。
「そのようなことお気になさらないでください。どうぞ中へ」
私と麗羽達は村長の家に泊まることになりました。
趙雲は後ほどと言って去っていきました。
後ほどということはまた尋ねてくるのでしょう。
そのときにでも士官の話を持ちかけてみることにします。
あれから数刻して村長に夕飯をご馳走になりました。
あまり美味しくはありませんでした。
しかし、久しぶりの暖かいご飯だったのでありがたかったです。
風呂がないのが残念ですが、贅沢は言えないです。
「劉正礼様、少々お話したいことがあるのですがよろしいでしょうか?」
私達が繕いで談笑をしていると村長が真剣な顔で私に声をかけてきました。
「構わない。何です?」
私は快く返事をしました。
麗羽と揚羽、凪達も談笑を止め長老の話を聞くことにしました。
鈴々は麗羽の膝枕で寝ています。
「お前達、入って来なさい」
長老は家の入り口の方向に声を掛けると何人かの村人がぞろぞろと入ってきました。
入って来た村人は十数人です。
その中には昼間会った趙雲、夏侯蘭もいました。
気になったのが趙雲を大人びさせた感じの女性です。
趙雲の母親でしょうか?
この三人以外は大したことはないと思います。
一般的な村人です。
しかし、どういうことでしょうか。
私を脅迫する気でしょうか?
それはないと思います。
趙雲がそんな真似をするとは思いません。
彼らの行動がわかりません。
「劉正礼様、お願いがございます。我らにお力をお貸し願えないでしょうか?」
長老は私にいきなり平伏してきました。
「頭を上げてもらえないか?力を貸せと言われても内容を聞かなければどうしようもない」
私は長老に頭を上げるように言いました。
「実はこの村は賊の襲撃に悩まされています。先日、劉正礼様が皆殺しにした山賊もその悩みの一つでした」
長老は口を開き私に山賊の殲滅を願い出てきました。
彼に大まかな説明を受けました。
今日、私が殲滅した山賊はこの村を襲う賊の一つで、あと2つの山賊がいるとのことです。
賊の規模は300、1500の順です。
後の方の賊は随分と大所帯です。
そんな大所帯がこの村を襲うとはおかしな話です。
この村の住人の数はどう見積もっても600くらいでしょう。
彼らの腹を満たすには少々少ないと思います。
どこかの大守の軍に駆逐され逃げ延びて、この村周辺に住みついたというところでしょう。
「劉正礼様、お引き受け願えますか?私達はもう劉正礼様だけが頼みなのです。これまでは何とか撃退してきましたが、このままでは何れこの村は山賊達の餌食になります」
村長は私に再び必死な形相で懇願してきました。
「わかった。引き受けよう。・・・・・・困っているのであれば、もっと早く言って欲しかった」
私は村長の手を取り言いました。
この村に残って正解でした。
山賊は総勢1800人です。
私一人でも十分な数です。
「あ、ありがとうございます。劉正礼様、本当に感謝申し上げます」
「顔を上げて。困っている者を助けるのは力を持つ者の努めです。それにこの村には腕の立つ人間が何人かいるようだし賊の殲滅は問題ない」
私は趙雲、夏侯蘭を見ました。
「我らも劉ヨウ様と共に賊退治を参加させていただきます!」
二人とも拱手をして私に言いました。
昼間私をチラチラと見ていたとき印象が違います。
「二人とも期待しているぞ」
「少しいいかい」
趙雲に似た女性が私に声をかけてきました。
「あたしの娘と水蓮の話では相当の腕らしいね。そんな御仁が酔狂に何の見返りもなく私達に力を貸す理由はなんだい」
話し振りからして、この女性は趙雲の母に間違いないと思いました。
私を見定める目つきで見ています。
この手の視線は私は嫌いです。
何もやましいことは無いのに緊張してしまいます。
私を自称劉ヨウとでも思っているのでしょうか?
趙雲の母親は随分と疑り深いようです。
「理由が無ければ人を助けてはいけないのですか?あなたは自分の娘が死にそうなら助けるでしょう。私も同じです。確かに私の例は極端ですが、人が人を助けるなどそんなものでしょう」
私は随分無理のある故実けで答えました。
力を貸す理由と言われても困ります。
私は欲得で人を助けている訳ではありません。
この女性はなんて失礼なんでしょう。
趙雲の母親でも許せません。
「あなた何なんですの!正宗様は善意で力を貸していますのよ!あなたに何がわかりますの!」
麗羽が趙雲の母親に怒りをぶつけました。
「母上、口が過ぎますぞ!」
「趙覇さん、言い方をもう少し考えてください」
趙雲も怒っています。
夏侯蘭は趙雲の母親と同じ気持ちなのでしょうか?
私は少し傷つきました。
「全然、答えになっていないよ。人は多かれ少なかれ行動には理由が伴うものだ。確かにあなたの言う通りそんな奇特な人間もいるかもしれない。が、この世の大半の人間は前者の方が殆どだよ」
趙雲の母親は私を猛禽のような目つきで見ています。
彼女は私に喧嘩を売っているのでしょうか?
「・・・・・・わかりました。私は山賊というものが大嫌いです。理不尽な理由で罪の無い者を凶刃の餌食とします。私が山賊を狩る理由は私の目の前で不快な真似をさせないためです。それは山賊だけに限ったことではない。私の目の前で罪無き者を苦しめる者を誰一人して生かしておくつもりはない」
私はしつこく食い下がる趙雲の母親に本音を話しました。
この女性は私の本音を聞くまで諦めないでしょう。
「ちゃんと本音を言えるじゃない。その理由の方がよっぽど信用できるわ。劉正礼様、先ほどまでの無礼の段お許しください。そして、この村を救うべくお力をお貸しください」
趙雲の母は軽く微笑むと拱手し、私への失礼な発言を謝罪してきました。
こう下手に出られると私も強気に出れません。
彼女は私が信用できるか私を煽ったようです。
私もまだまだです。
でも、揚羽のような態度では彼女を信用させることはできなかったと思います。
「正直、頭に来ました。しかし、水に流しましょう。この村にとって私は素性の解らぬ者。私が劉ヨウと名乗ろうとそれを証明する術は持たない。あなたのように用心深くとも致し方ない」
私は溜息をつきいいました。
今後の山賊との戦いはこの村の住人全ての生命が関わることだ。
うかつなことはできないです。
彼女のような人がいたからこの村も何とか守れたのでしょう。
「寛大な計らい感謝いたします。私は趙覇と申します。趙雲は我が不肖の娘ですが、山賊討伐の末席にお加えください」
史実で趙雲の父と兄の名前は不詳になっています。
歴史のミステリーに触れ少し得した気分になりました。
兄もしくは姉がいるか山賊狩りが終わってから聞いてみましょう。
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