真・恋姫†無双 劉ヨウ伝
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第39話 太史慈
「オヤジ。ラーメン1杯」
アタイは賊退治で報奨金を稼いだ帰り道に行きつけの食堂に入った。
今日の成果は上々だった。
久しぶりに母さんに美味いものでも食べさせてやれる。
「おい。エン州の泰山で軍が襲撃されたらしいぞ」
「泰山?あの碌でなし大守の処の軍が襲撃されたのか?一体誰の仕業だ」
「山陽郡の麒麟児らしいぞ」
「えええーーーーーー!」
「声がでけえよ!馬鹿!」
飯が出来るのを待っていたら、山陽郡の麒麟児が大守の軍を襲撃したという話が聞こえた。
彼がそんな真似をした理由が気になった。
彼はエン州では英雄のような存在だ。
若い頃から金を受け取らずに賊退治に明け暮れていたらしい。
アタイとは正反対の奴だ。
それでも好感を持てる奴だと思う。
「おい。おっさん達。その話詳しく教えてくんない」
彼が大守の軍を襲撃した理由に興味が湧いたアタイはおっさん達の会話に割り込んだ。
「うっ!お、お前は太史慈・・・・・・」
「お、お前みたいな奴に、は、話すことなんてない!」
おっさん達は私に及び腰で怒鳴った。
「なんだとっ!テメエ等。誰のお陰で賊に襲撃されないで居られると思ってんだ!殺されたくなかったらさっさと話しな!」
アタイはおっさん達の舐めた態度に腹を立てた。
「ひぃぃいいーーーーーー。わ、分った。話す。話すから勘弁してくれ!」
「最初から素直に話せば良いんだっ!」
「すいませんでした!」
おっさん達の態度に少し傷ついた。
そこまで怖がらなくてもいいじゃないか。
私が悪人みたいだ。
「太史慈さん。山陽郡の麒麟児が大守の軍を襲撃した理由は人を助け出す為らしいです」
自分より一回りも歳の違うおっさんが敬語で話し出した。
こいつは豚みたいで禿ているから禿豚と命名しよう。
隣のおっさんは亀みたいな顔だから亀でいいや。
おっさん達に適当に名前を付けた。
「人を助け出す為?」
「はい。何でも大守の不正を糾弾した役人が居て、その役人は大守が派遣した軍に拘束されたそうです」
「それで山陽郡の麒麟児は軍を襲撃したのか?」
「襲撃したのはその役人の娘らしいんです。山陽郡の麒麟児はそれに助成したんです」
「へえぇ。山陽郡の麒麟児も良い奴じゃない」
「俺もその話を聞いた時は胸の空く様な思いでしたよ。流石は山陽郡の麒麟児です」
「それでその娘と山陽郡の麒麟児はどうなったんだ」
「大守の軍から役人と娘を助け出し逃げたみたいです」
「大守は血眼になって追手を差し向けてるらしいです。でも、大守の野郎は表立っては行動してないみたいなんです」
泰山の大守は良い噂は無いからな。
自分が気に入らない人間を濡れ衣で殺したりする酷い奴だ。
他にも叩けば幾らでも埃が出る悪徳大守だ。
そんな奴が派手に動けば自分の首を締めるに決まっている。
「それで山陽郡の麒麟児は何処に逃げたんだ」
「え!まさか山陽郡の麒麟児を捕まえるなんて言わないでしょうね。太史慈さん。そんなことしたらエン州の民に恨まれますよ」
「馬鹿野郎!そんなことする訳ないだろ。私だって泰山の大守のやり方は気に入らなかったんだ」
舐めた連中だ。
アタイのことをなんだと思っているんだ!
「山陽郡の麒麟児はこの青州に逃げ込んだという話です」
「まじか!」
アタイは禿豚の首を締め上げた。
「く、苦じいいぃーーーーーー」
「あ。済まねえ」
「はあ、はあ。死ぬかと思った・・・・・・」
「それで山陽郡の麒麟児がこの青州に逃げ込んだという話は本当か?」
「正確な情報じゃないですけど・・・・・・。多分、逃げ込んだと思います」
「多分だぁ!」
アタイは禿豚のいい加減な言い方に腹が立って怒鳴った。
「ひぃいいいーーーーーー。俺だって又聞きなんです。ゆ、許してください」
禿豚が恐怖した表情で謝ってきた。
「はあーーーーーー。じゃあ山陽郡の麒麟児が本当に青州に居るか分らないんだな」
アタイは山陽郡の麒麟児に会えるかもと期待して損した。
「太史慈さん。そう言えばこの街に数日位前から余所者を見かけましたよ」
「それがどうしたんだ。余所者位居るだろう。この街は街道沿いなんだから・・・・・・」
アタイは禿豚を睨み付けた。
「睨まないで下さい。その連中エン州方面の街道から来たみたいなんですよ。それに身形も確りとしてました。だから、山陽郡の麒麟児のことも何か知っているかもしれないです」
身形の確りした奴ら・・・・・・。
泰山の大守の配下じゃないな。
追手ならわざわざ目立つ格好はしない。
「そいつら何処に居るんだ」
「街の宿に泊まってると思います」
「どこの宿に泊まっているか聞いているんだよ!」
「すいません。知りません。多分、虱潰しに宿を訪ねていけば会えると思います」
禿豚はこの街の宿を全部訪ねれば会えるだろうと舐めたことを言い出した。
「お前!舐めてんのか!」
山陽郡の麒麟児に会う機会なんてそうそうないから駄目元でやってみる。
「ひぃいいいーーーーーー。ゆ、許してください」
禿豚が頭を抱えて震えているのを無視して、エン州方面から来た余所者を探すことにした。
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