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真・恋姫†無双 劉ヨウ伝

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第38話 泰山脱出

「もう駄目なのーーーーーー。正宗様ぁ。休みたいのーーーーーー」

沙和が疲れきった声で私に休憩を催促してきました。

これで何度目だろうか・・・・・・沙和の休憩の催促を聞くのは・・・・・・。

私達は榮奈達と別れた後、青州へ強行軍を行っています。

泰山大守の追手を警戒してのことです。

榮奈達も無事に逃げきって欲しいと思います。

「後少し頑張ってくれ。青州に入ればゆっくりと休める宿を探すつもりだ。沙和だって大守に捕まって牢屋に入りたくはないだろ」

「牢屋は嫌なのーーーーーー。はぁ。頑張るの」

沙和は元気無く返事をしました。

「疲れているのはみんな一緒だ。もう少し頑張るんだ。沙和」

凪が沙和を元気づけていました。

「沙和さんの言い分も最もですわ。ここ数日、馬を休める為に最低限の休憩しか取っていませんわ。こんな状況で何者かに襲撃されたら満足に反撃できませんわ」

麗羽が私に尤もなことを言いました。

今の私達は強行軍の疲れで疲労困憊です。

「そうですね・・・・・・。正宗様。ここで一度少し休憩を取りましょう。国境はもうすぐそこです。これまで大守の追手もしくは付けられる気配はありません。これなら少し休憩をとっても問題ないでしょう。碌に休憩を取らない状態では冷静な判断も取れません」

揚羽は私に休憩を取るように言いました。

「追手のことは本当に大丈夫なのか?」

私は念のために揚羽に休憩を取る事に問題がないか確認しました。

「大丈夫と思います。追手が来るなら、もう遭遇していてもおかしくないです。これは推測ですが大守は榮奈の元に追手を差し向けたものと思います。正宗様を始末するより、榮奈達を始末した方が楽と考えたのでしょう。正宗様を始末するには小規模の軍では無意味だと大守も思っていると思います。自ずと大規模な軍を動かさなければいけません。そんなことをすれば時間が掛かる上に目立ち過ぎます。榮奈の話では大守は榮奈の父親を山中で亡き者にしようとしていたそうです。その大守がわざわざ正宗様に追手を差し向ける訳はないです。確証はありませんでしたが、今の状況から判断して確信できます」

揚羽は私に榮奈達の方に追手が向かった可能性が高いと言いました。

それ以前にいつのまに揚羽は榮奈とそんなことを話していたのでしょう。

揚羽は榮奈達の方に追手が行くことを分っていたということです。

「それを榮奈は知っているのか?」

「はい。榮奈には伝えております」

揚羽はいつもの淡々とした態度で言いました。

「榮奈達は無事に逃げ仰せることはできるのか?」

私は榮奈達のことが心配になり揚羽に聞きました。

「問題ありません。あの場所から徐州へは目の鼻の先です。榮奈は徐州に逃げることを想定して、あの場所で大守の軍を襲撃したのでしょう。大守の追手が追いつく前に彼女達は徐州に入るでしょう。徐州に入れば大守も派手に動くことはできません。後の事は正宗様のお義父様と麗羽殿の叔父様にお任せすればよろしいでしょう。あの親子が無事逃げ仰せれば、大守は窮地に立つ事に成ります。それに正宗様が証人ともなれば信用度も高くなると思います。正宗様はご自身で思っておられる以上に民の信頼は厚いです。特にこのエン州に置いては絶大です。正宗様が無位無官の身であれ、朝廷もそのことを鑑みると思います。それに朝廷には正宗様の義姉上と麗羽の叔父様が居ることをお忘れですか?」

揚羽は自信有り気に私に言いました。

「今回のことでは随分周りの者に迷惑を掛けてしまったな・・・・・・」

私は父上、姉上、袁逢殿の顔を想い浮かべ心の中で深く詫びました。

旅が終わり再開したら今回のことを謝ろうと思いました。

「正宗様。後悔なされるなら早く偉くお成りください」

「気にすることはありませんわ。正宗様は何も間違ったことはしてませんもの」

「そうやで。気にすることないで」

「そうです。正宗様は間違っていません!」

「気にする事無いのーーーーーー」

みんなが私を慰めてくれました。

そうだな・・・・・・。

早く偉くならなければ・・・・・・。

前回のことで、正しいことを為すにも権力が必要だと実感しました。

こんなことでくよくよしていては麗羽達と幸せに暮らせる世を実現するなんて無理です。

「みんなありがとう。揚羽の言う通り、青州に入る前に少し休憩を取ろう」

「はあぁ。良かったのーーーーーー」

「ホンマか。はぁあ。早う湯浴みしたいわ」

「そうですわね。私の美しい髪と肌が荒れますわ」

「正宗様。私は追手がこないか念の為に見張りをします」

「凪。私も少し休んだら見張りを変わります。追手が現れた時、正宗様の武力が有効ですので、正宗様はゆっくり休憩をお取りください」

「すまない。凪。揚羽。少し休んだら交代しよう」

私達は青州に入る前に、しばしの休憩を取る事にしました。
 
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