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真・恋姫†無双 劉ヨウ伝

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第101話 幽州派兵

北郷の一件から二ヶ月、幽州への派兵準備が整った私は彼の地に向け出立しました。

今回、私が動員する兵数は六万三千です。

兵数の内訳は、

・騎兵一万三千

・長槍兵二万

・弓兵一万

・輜重兵二万

です。

冀州の守りには二万の兵を残します。

騎兵は表向きで、実際は弓騎兵です。

彼らは鐙を使用すれば、馬上で弓を操ることができます。

難楼との決戦までは鐙の使用を控えるつもりでいます。

私が今回の派兵に連れて来た武将は、

・周瑜(冥琳)

・趙雲(星)

・臧覇(榮菜)

・太史慈(真希)

・程昱(風)

・郭嘉(稟)

・楽進(凪)

・夏候蘭(水蓮)

・満寵(泉)

です。

烏桓族は補給線を断とうするはずなので、真希と凪を中心に夏候蘭をその補佐に据えることにしました。

彼女達の軍師を風にしたのですが、彼女は私にブーイングの嵐でした。

補給線の維持は戦前の日本でも軽く見られていましたが、かなり重要なことです。

これを立たれれば戦線は維持できず、今回の派兵も失敗してしまいます。

だからこそ、信用が置け、戦闘能力の高い武将と軍師が不可欠と思いました。

仕方なく、稟と風の交代で任務につくよう手配しました。

輜重隊の任務を稟に了承させるに当たり、褒美を要求されました。

私はその褒美の内容が気になったので、そのことを尋ねると秘密だと言われ、微妙に気になっています。





幽州へは一月程で到着し、上谷郡の国境に向かうと白蓮と程なく合流しました。

「お――――――い、正宗君――――――!」

白蓮は馬上より、笑顔で私の方を向いて手を振っていました。

彼女が率いる兵は目視で五千程でした。

その内、三千は全て白馬の騎兵です。

あれが有名な白馬義従でしょう。

しかし、あれだけの白馬を揃えるのは大変だったでしょうね。






「白蓮、久しぶり。少し疲れてそうだが、ちゃんと寝ているのかい」

私は白蓮との再会を心から喜びました。

久しぶりにあった白蓮は少々疲れているようでしたが、表情は凄く明るく元気そうでした。

彼女は人材で随分と苦労していると聞いたので、冀州を去る時に朱里に人材探しを頼んでおいたので、烏桓族討伐が一段落して、冀州に帰える頃には目ぼしい人材が集まっていることを祈ります。

「アハハハ、大丈夫! 大丈夫! 正宗君もわざわざ幽州まで、こんな大軍を率いて貰って、本当にありがとう。迷惑じゃなかったかな・・・・・・」

白蓮は私が率いて来た兵を見ながら、申し訳無さそうな表情をしていました。

「気にする必要はない。烏桓族の略奪行為は人ごとじゃない。最近では幽州と冀州の国境でも烏桓族によるそれが確認されている」

「そう言って貰えるとありがたいよ・・・・・・」

「白蓮殿、ひとまず兵を休めたいので、陣を置く場所に案内してくださいませんか?」

私と白蓮が会話をしていると、後ろに控えていた冥琳が会話に割り込んできました。

「そうだな・・・・・・。白蓮、済まないがそうして貰えないか? 陣を置いたら今後のことを話したいので、その時は白蓮も来て貰えるかい」

「正宗君、じゃあ私達に着いて来てくれ。上谷郡の大守には既に話をつけている」

私達は促されるまま白蓮と彼女の兵達に着いていきました。





白蓮に案内された場所は上谷郡の国境に近い場所で、周囲に遮蔽物がなく、見通しの良い場所でした。

水場は近くなかなか良い場所でした。

この場所に陣を置けば、難楼だけでなく、彼(彼女?)に従う上谷郡の烏桓族の部族長に対し一定の示威行為になるでしょう。

さて、まずは難楼のお手並みを拝見するとします。





陣を置く作業は冥琳が手動して、手際よく行われました。

「正宗君のお陰で、忌々しい烏桓族をやっと潰せる! 彼奴等のお陰でどれだけの幽州の民が苦しんでいるか・・・・・・」

私の隣にいる白蓮は悔しいそうに下唇を噛みながら言いました。

「私は烏桓族全て滅ぼすつもりはない。可能な限り、彼らを取り込みたいと思っている」

私は白蓮の方を向いて言いました。

「本気なのかい! 正宗君は分かってない! あの連中に話なんて通じる訳ないだろ! 彼奴等は略奪だけでなく、罪なき女子供を誘拐して、犬畜生以下だ!」

温厚な白蓮には珍しく、彼女は怒りに満ちた表情で私に語気を強めて言いました。

漢に反抗的な烏桓族がどんなことをしているかは想像がついています。

正直、彼らは山賊となんら変わらない。

ただ、山賊と異なるのは彼らは獲物である無辜の民を生かさず殺さずというこでしょう。

「生殺し」という言葉が合っています。

私も本当は白蓮と同じく、彼らは皆殺しにしてやりたい。

だが、それは私に服従の姿勢を示す烏桓族の信頼を失う可能性があります。

彼らは難楼に非であることは理解できても、同族である彼((彼女?))を惨たらしく殺せば良い気分はしない。

「私は白蓮の気持ちを理解できても、それに同調することはできない。烏桓族の中には穏健な者達もいる。彼らの立場を守ってやるには、烏桓族を滅ぼすようなことがあってはいけない」

「それは正論だろう! 現実に彼奴等の所為で苦しんでいる民が沢山いるんだよ」

白蓮は私に訴えるように言いました。

「そうだな・・・・・・。白蓮の言う通りに、烏桓族を滅ぼし、長城の外に彼らを追い出せば、苦しめられた民は救われる。だが、そのために流す血は計りしれない」

私は自分に言い聞かせるように言いました。

「幽州の民はそれを望んでいるだ!」

白蓮は心の底から叫ぶように言いました。

善良な烏桓族がいても、感情が勝り、その点を理解したくない。

いや、見ようとしない。

私がその立場なら、白蓮と同じことを言ったと思います。

烏桓族を皆殺しにしないと気が済まない。

自分の住む土地に烏桓族は居て欲しくない。

憎しみが人の正しい判断を狂わせるか・・・・・・。

私の前世でも、その命題は解消できていないです。

白蓮のような人間ですら、烏桓族を憎んでいるのに、幽州の民と烏桓族の協和を実現でるのでしょうか?

私は自分の描いた将来に自信が持てなくなりました。

いずれにせよ、今回の派兵では難楼を討ち取る、もしくは上谷郡の烏桓族の力を削ぐのが目的です。

彼女の期待には添ってやれません。

私が苛烈な方法で烏桓族を御したとして、私の代は良くても、子孫の世代に彼らを抑えつけれることができるかわかりません。

だからと言って、私は烏桓族に弱腰な態度を取るつもりはありません。

劉虞のように金で肩をつけると後々面倒なことになると思います。

なんとかして、お互いの妥協点を探る必要があります。

「白蓮、君の気持ちはよく分かった・・・・・・。烏桓族を最終的にどう扱うかはこの私に一任してくれないか?」

私は白蓮から顔を反らしたい感情を抱く気持ちを抑え、彼女を直視して言いました。

「正宗君・・・・・・。私の方こそ御免・・・・・・。でも、幽州の民は烏桓族に長い間苦しめられているんだ。それだけは気持ちの隅に置いておいてくれないかな」

白蓮は少し考えてから、私を直視して真剣な表情をして言いました。
 
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