【短編集】現実だってファンタジー
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R.O.M if もしもメリーさんがヤンデレを望まれていたら
前書き
思い付きの短編です。
①メリーさんvsテケテケ
てけてけ、てけてけ、奇妙な音が後ろからついてくる。ごくり、と唾を飲み込み後ろを振り返ると、そこには下半身が欠損し上半身だけで動く怪異、「テケテケ」が自分を追っているのが見えた。無意識に携帯に手を伸ばしかけ、少し考える。
正直、あの状態の彼女を呼び出したくはないのだが、最近妙にあのキャラにハマってるんだよなぁ、と内心ため息。しかも彼女がそのキャラに嵌ったことで林太が危険な怪異に追いかけられやすくなるという謎の逆転現象まで発生している。
正直、テケテケは恨みを持つ相手を殺す系の怪異なので林太を追いかけるのに別の可能性を辿ってわざわざ来たのだろうが、お引き取り願おう。携帯を取り出して耳元に近づけた時、何の操作もせずに、既に携帯は通話を開始していた。
「あー、しもしも?」
『私メリーさん。今……貴方の後ろを追い回す薄汚い下級霊の後ろにいるの』
その言葉が聞こえるのと、背後でゴシャッ!!と頭蓋骨が地面に衝突するような音が聞こえたのはほぼ同時だった。
「ねぇ、あなた何?なんなの?私、林太の後ろのメリーさんなのよ?林太の後ろにはメリーさんしかいちゃいけないのよ?ねぇ、分かってるの?返事しなさいよ分かってるの?」
「グ、ゥゥゥゥ………デモ、ワタシ、アノオトコヲ」
「知らないわよ。貴方がどうかなんて知る訳ないしどうでもいいし聞いてないし。分かってる?ハイごめんなさいもう近づきません、以外の回答とか存在しないから。どうせアレでしょ?林太の背中みてちょっとカッコイイかなーとか忘れたころに後ろからちょんちょんして悲鳴上げさせようとか雌豚みたいなビッチくさいこと考えてたんでしょ?はい駄目ー、もう存在自体が駄目ー。林太、イズ、マイン。林太に憑いていい怪異はメリーさんだけ。もちろん声かけていいのも触っていいのも愛していいのもメリーさんだけー」
「ソンナ……ジャアコノツキヌウラミハドコデハッサンスレバ……!」
「あれ、口答えが聞こえた気がするなー」
ドゴシャッ!!と先程より更にきつい衝突音と聞いているこっちが可哀そうになる掠れた悲鳴が聞こえた。後ろを振り向く勇気がない俺は知らないフリでもするようにその場を去っていった。
「あっ、そうかぁ。躾が足りないんだぁ。じゃあまずは貴方が私よりも林太よりも下級で下賤で意地汚いメス犬だって自覚させるところから始めないとねぇ。まずは首輪。お手も出来るようにしないと。で、最後は腹を蹴り潰しても声一つ上げないようにしつけて上下関係をしっかり決めないとねぇ。それで100%メリーさんと林太の間に入るなんて不愉快で下種で下卑た真似が出来ないようになったら、そのとき初めて林太の顔を見る許可をあげるわ!あ、もちろん許可があるまで喋ることも瞬きする事も許さないわ?もしそんなことしたら――もう一度、今度は10倍きつく躾けてあ・げ・る!」
「イ、イヤァァァァァァァァァァッ!?!?」
数日後、笑顔のメリーさんが犬用首輪を繋げたテケテケ(コーディネートを一新され化粧までしているので怖さは感じない)を連れて歩いていた。ホラーだこれ。
②メリーさんvs三本足のリカちゃん
拾って見てしまった、三本足のリカちゃん人形。こいつは一度持った相手に自分の声を聞かせ続け、ノイローゼにさせて自殺させるという精神攻撃人形である。ここで逃げてたら間違いなく呪われる。林太は逡巡の末、メリーさんを呼んだ。
「私リカちゃん。呪われてるの」
「どうでもいいけどその三本目の足気持ち悪すぎて林太が嫌そうだから折るわね」
メリーは何の躊躇いもなくリカちゃんの三本目の足をへし折った。リカちゃんは泣いた。泣いた面を「うるさい」と千切られた足でシバかれていた。もう哀れ過ぎれ林太からは何も言えなかった。
「林太の耳元でピロートークしていいのはメリーさんだけなのよ?何をヒトのオトコに唾つけようとしてる訳?もしも林太に後一言でも言葉を告げようものならあんたの口を裂いて舌ひっこぬいてあげるわよ?」
「やめて!やめてそれだけは!?」
「許可なくしゃべっちゃダーメっ!」
「ヘブゥッ!?その足で殴るのもやめてぇっ!!ごめんなさいもうしませんからっ!!」
数日後、テケテケの横に首輪で繋がれたリカちゃんが追加されていた。
③メリーさんvs隙間女
部屋の隅から、誰かがこちらを……。
「メリー姉さま、この家のゴキブリ退治と隙間掃除、全部終わりました!」
「ゴクローサン。はいこれご褒美の飴よ?」
「わぁい、あまーい!」
「雇われ都市伝説……だと……」
隙間女は既にメリーさんの舎弟(舎妹?)だった。
④メリーさんvs口裂け女
彼女は横に大きく裂けた口でニマァと笑い、林太にこう告げた。
「ねぇ、ワタシ綺麗――ヘブッ!?」
「今誘惑したよね。今メリーさんの宿主に色目使ったよね?聞いてたわよ?万死に値するけど異論とかないわよね?聞いてないからないわね。ああ、なんて苛立たしく恥知らずで白痴なのかしらこの女は?林太は私だけのオトコでお前みたいな女が気安く話しかけああ苛立つ腹立つうざい気持ち悪い死ね死ね死ね死ね死ね死ね……」
メリーさんはそのまま口裂け女に馬乗りになって顔面をボッコボコに強打し始めた。
もはやテケテケと違い反論の余地すら与えない拳の連打が終わった頃には、口裂け女は青痣だらけで女かどうかも判別できなくなっていた。林太は思わず同情の涙をこらえた。
「あははははははは!!メリーさんの林太よ!!メリーさんだけが愛していい林太なのよぉぉぉぉおおおおおっ!!」
けたけた笑いながらメリーさんは口裂け女の髪を鷲掴みにして思いっきり引きずりながらどこかに消えていった。
数秒後、その様子を木陰から見ていたらしい都市伝説「ひきこさん」(相手をひたすら引きずり回してある場所に連れていく。見たところメカクレ系女の子だ)と目が遭った。明らかにひきこさんはメリーさんの様子をみて怯えていたようで、たどたどしく「帰ります。見なかったことにして」と言ってダッシュでその場を去っていった。
ちょっとかわいいな、と林太は思った。
翌日、ひきこさんがメリーさんに引き摺りまわされているのを林太はそっと見なかったことにした。
「色目使ったんじゃないの?ちょっとイケるかもとか内心思ったでしょ?お見通しなのよ卑しいメスブタの浅はかな欲情なんて」
「してませんやってません逆らいませんからっ!!」
⑤メリーさんvs一寸ババア
一寸ババアというのは一寸法師サイズのババアで、超人的な能力で一寸法師の武器である針で人を惨殺するというやべー都市伝説である。この退治を依頼された林太は、誘き寄せる為にとトイレに籠っていた。すると窓が開く音がして――。
「あれ、林太トイレしないの?恥ずかしいの?でも恥ずかしがってる林太も可愛いし、林太のものなら裸でも排泄物でもメリーさん平気よ?遠慮なくどうぞ?」
「お前かいっ!!」
メリーさんが林太のトイレする姿を見ようとガン見していた。その手には小さな人形のようなものが握られているが、頭が親指であらぬ角度にへし折られているのは気のせいだろうか。気のせいだということにしたい。
その日から、ババアによる被害はぱったり止んだ。
⑥メリーさんvsクネクネ
「あれ、メリーさんこのところてん何?」
「獲ってきたの。おいしそうでしょ?さぁ食べて!」
結構おいしかったのだが……獲ってきたという表現はところてんには適切ではないのでは?と林太は首を傾げたが、それ以上は疑問を抱かなかった。
都市伝説とは、気付くべきときに気付けないことに本質がある。
⑦メリーさんvs猿夢
「サルの脳みそって滋養強壮の漢方になるって聞いてたんだけど、調べてみたらあんまり食べない方がよさそうだったの。残念だけど捨てたわ」
「どっから取ってきた!?」
翌日から町に「脳みそゴミ袋」という新たな都市伝説がまことしやかに囁かれるようになった。
後書き
ヤンデレのメリーさんがどんな恐怖からも守ってくれるシリーズ。
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