徒然なるバカに
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
勉強できるできないって少なからず顔も関係している気がする
「ーーで、おれを拉致ったこいつらの目的はなによ」
ソファーに腰掛け、だるそうに言う彼、高橋優人。彼は先程ここ、生徒会に来たーー否、拉致られてきた。
「勉強しよ♪」
「てめえさっきからその言葉の一点張りじゃねえかよォォォオオ!?」
彼の隣に座っている泉が、ニコッと笑みを浮かべていう反面、彼の表情はなんとも形容しがたい。
「それに勉強なんてガラじゃねえだろ、おまえらは」
「ガラじゃなくたってしなきゃいけないの!だってもうすぐ学力試験だよ!?」
「ああ……そういえば」
すっかり忘れてた、といった感じの声色の彼。
「ね?だから一緒勉強しよー!」
「いやいいよ、遠慮しとく。それにおれは間に合ってるしーー」
隣に座っている泉にそう言い、立ち上がーーれない。泉とは真逆、彼のとなり、左側にいる理紗が逃げられないようにホールドしている。
「逃がさんーーッ!」
「……離れろ、朝風」
「いやだ」
「……おい」
「私たちを見捨てると言うのかッ!」
「……普段おまえらはおれのこと見捨てるよな」
「人聞きがわるいッ!見捨ててるのではない!端から囮だ!」
「最初から捨て駒かよッ!見捨てるよタチ悪りぃわァァァアア!」
それからしばらくーー数分言い合いをしていたが、この状態の理紗を説得出来ないのは彼も理解しており、彼が折れる形に。
「わかったわかった。勉強すればいいんだろ!」
と言ってドカッと、席に座る。
「諦めが良いことは良いことだ。赤点回避を目指すもの同志、仲良くやろうではない」
彼の目の前に座っている美希がいう。
「赤点って……おれをおまえらと一緒にするな。赤点なんかひとつもありゃしねえよ」
ブスッと言う彼。
「はっ!エイプリルフールでもないのにそんな冗談を言うでない!」
「そうだよ、そんな惨めな冗談、笑えないよ♪」
「いや……だから冗談とかじゃねえから……」
「しつこい男は嫌われるぞ?」
そんな会話が交わされる。
どうやら本当にこの子たちは知らないのだ。彼の成績を。
「あなたたち、なにか勘違いしてると思うけど……。彼、頭良いわよ?」
私よりーーというか、ここにいるだれよりも。
「……は?」
唖然とする美希。
「いや、ヒナ。だってこんな顔だぞ?」
「どんな顔だよ!」
「年中お正月みたいなヘラヘラ顏」
「ふざけんなよッ!どこに年中お正月みたいなヘラヘラした顔のやついるってんだよォォォオオ!?」
「いや、私の目の前に」
「そういうこと言ってんじゃねえよォォォオオ!!」
美希の言っていることはわからないでもない。むしろ美希の言い分のほうが正しい。この場合正しい、という言葉があっているの疑問だが。彼のあの行動、あの一般教養の微塵のカケラも感じさせない、あの行動を身近で見ているのならそう思い込んでしまっても仕方が無い。
「でも、ヒナより頭良いってことはないんじゃないのか?だって、ヒナは学年トップクラスだぞ!?」
理沙の言い分も理にかなっている。
わたしはこの白皇学院で成績優秀なほうだ。言い方を変えるならトップクラス、というわけだーーが。トップ、学年一位、というわけではない。良くて2、3位止まりだ。白皇に入学してから一度たりとも一位になったことがない、一度もだ。その代わりーーといってもなんだが、白皇学院のトップに陣取っている人は、入学してからずっとトップを維持している。それが誰かというと、
「ああ、それな。だっておれだもん、学年一位」
と、彼は言う。平然とした顔で。
「桂も頭は良いけどな」
皮肉にしか聞こえない。
そう。なにを隠そう彼、優人くんがこの学年、白皇学院の学年主席なのだ。
「なッ!?そんなバカな話があるかッ!!」
「バカでもアホでもねえんだって。だって、事実だし」
「世界中のカラスが白くなった、と言われてるほうがまだ信じれるわ!」
「超常現象かよッ!そっちの方が信じられねえよッ!」
「そうよ、理沙。彼の行っていることは間違いじゃないわ。事実よ、事実」
「な……ッ」
信じられない、といった表情。まさに驚愕している。
わたしも初めて知ったときは驚きを隠せなかった。いや、隠さなかった、と言うほうが正しいか。なぜなら、わたしも理沙同様、信じていなかったのだ。
「でも信じられないよねえ……。優太くんがそんなに頭が良かったなんて」
ごもっともである。
「瀬川に言われちゃおしまいだな」
色々と終わっている人に言われてもおしまいだ。
「そんなことより!ほら!勉強よ勉強!」
彼の話で危うく本来の目的を見失う所だった。あぶないあぶない。
わたしのその一言に、しぶしぶ、皆が教科書に目をやり始める。時刻は午後4時を回ったところ。
ページ上へ戻る