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徒然なるバカに

作者:節子
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勉強会って、絶対に勉強しないよね


暦も1月から2月へと代わり、高校1年生という位置付けも終わりを迎えようとしている。

そのような状況に危機感を覚えず、まだ冬休み気分が抜けていないのは、学生の特権だろう。そのような学生はごまんといる。それはわたしたちの通う学校にもいる、と言えること。




2月5日、今日を含めた5日後、つまりは週明けの月曜日に学力試験がある。あるのだが……。

「……あなたたち……勉強する気ある?」

わたしはそう言い、生徒会室内を端から端まで見渡す。

ソファに腰を掛け、教科書とにらめっこをしている彼。

教科書を出している所までは良いのだが、出しているだけ。机に突っ伏している彼女。

ビデオカメラ片手にこの状況を撮影している彼女。

携帯をカチカチと弄っている彼女。

小型ゲーム機を持ち込み、やっている彼女。


「あなたたちーーッ!」

無論、言わざるを得ない。

「なんのために集まったと思ってるの!!綾先くん!教科書とにらめっこしてても理解出来ることも出来ないわよッ!泉ッ!突っ伏してないで身体を起こしなさいッ!美希!理紗!ナギッ!あなたたちはまず勉強道具を出しなさいッ!」

バンッ!と机を叩き怒鳴る。


「す、すいません!」

すぐさま謝罪をするのは綾先くん。だが、しかし、他の4人はしぶしぶ、といった表情だ。

「だってわかんないものはわかんないだもん……」

「ヒナ……。時には背中を向ける、ということも生きる上では必要なこと……」

「そう……、現実逃避だ……」

「私は別に今更切羽詰まって勉強する必要がない」

ナギはともかく、3人は何処か虚ろな目をしている。


「そんなの自分たちが招いたことでしょう!?補講だってサボっていたんだからわからないのは当たり前。今からやるやらないじゃちがうわよ!」

「自業自得だな」

ナギは再びゲーム機に目を移すが、

「ナギ?ゲームをするなら家でしなさい。ここは学校よ?取り上げられたくなかったらしまいなさい」

そんなことわたしが許さない。

ナギもわたしの剣幕に気圧されたのか、しぶしぶ了承し、ゲーム機をしまう。


「自業自得って言ったってな!放課後は忙しいし、補講なんて受けるヒマなんかないのだよ!」

まだグチグチ言うか。

「美希?放課後忙しいのは遊んでるからであって、その遊びを我慢すれば、補講を受ける時間くらい簡単に作れるじゃない」

「なッ!?ヒナ!おまえは私たちに死ねと言うのかッ!!」

「そうだ!学生の本分は遊びだ!遊ぶことだ!」

「そうだそうだ!」

……相変わらずである。

「大袈裟ねえ……。それに理紗?学生の本分は『勉強』よ?自分の都合の良いように変えないでくれるかしら?泉も」


まったく……、根っからの捻くれものたちだわ。たかが今日から4日間我慢すれば良いだけの話じゃない。

「言い訳はもういいかしら?ほら、教科書出して」

私はそう言い、教科書を出していない2人を催促させる。

「ところでヒナギクさん」

と、綾先くんが私に話しかけてくる。

「なに?綾先くん。わからない問題でもあった?」

「あっ、いえ、そういう訳ではないのですが。優人さんは今日来られないんですか?」

「えっ?」

なんとも拍子抜けた声が出てしまった。

そっか。綾先くんは知らないんだ。彼の成績のこと。

まだ白皇に来て間もない彼なら事情も事情。しかもきちんとした交友関係を結んだのはつい最近の出来事だ、という話。知らないで当然だ。

「そうだよヒナちゃん!優太くん!優太くんも勉強させないと!」

と、泉が綾先くんの言ったことに乗っかって来たではないか。

「いや、泉よ。優太くんが自ら進んで勉強するとでも思うか?」

「そうだな。あの唯我独尊傍若無人自由気ままな彼がこのような集まりに来るとは到底思えない」

「あはは……、それもそうだね」

苦笑いの泉。

まあ、普通はそう捉えても間違いはないわよね。彼の性格上。ーーというか、美希たち、彼の成績のこと知らないじゃ……。

わたしがそう心の中で思った矢先。


ーーバンッ!


美希が机を叩き、勢い良く立ち上がる。

「納得がいかないッ!」

そして、

「なぜ優太くんが!あの彼が!この勉強会はまだしも!補講すら来ていないのことにおまえはそんなにも無関心なんだ!ヒナッ!」

と、いきなりわたしに向けて指を差してきた。

「えっ……!?わ、わたし?」

いきなりのことに驚きを隠せないわたしに続けて言う。

「そう!おまえだッ!あの優太くんが!この勉強会はおろか、補講すらサボっているのだぞ!ただ見ているだけではらしくないではないか!それともあれか!?あの年中お正月みたいなヘラヘラしたバカ面の彼が赤点を回避しているとでも言うのかッ!?」

美希が言い分に他の2人も立ち上がり、加わる。

「そうだヒナ!あの年中お正月みたいなヘラヘラしたバカ面の優太くんが赤点じゃないわけないだろうッ!」

「そうだそうだッ!」

「こうなったら意地でも連れてきてやるッ!」

と言って、生徒会室を出て行く美希。

すぐさまその後を追って出て行く理紗と、泉。

あまりの急な出来事に静止の言葉すらかけれなかったわたし。

あはは、と苦笑いを浮かべている綾先くん。

そして、全くもって関心の意を抱かないナギ。

十人十色百人百様千差万別とはまさにこのこと。


 
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