徒然なるバカに
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小学校の遠足の前日って、なぜが寝れないよね
時は流れ、深夜。
「遅い!」
予定よりも10分早く到着したはずなのだが、もうすでに生徒会長桂雛菊は待ち合わせの場所にいた。
「おいおい、遅いって言ったって10分前だぜ?」
待ち合わせの時刻は深夜12時、今現在の時刻は、
「11時50分だぞ?別に時間には遅れちゃいないって」
「それでも女の子を待たせたということは事実よ」
「だからおまえみたいな暴力ゴリラはーー」
言うや否や、桂の鉄拳が飛んできた。
「皆まで言ったら殴る」
「……皆まで言う前に殴らないでください」
殴られた場所、顔の中心、顔面を抑えながおれは言う。
ったく、なにも間違っちゃいねえだろ。言葉より先にすぐ手がでる暴力ゴリラじゃねえかよ。それに予定時刻よりも遥か前に来てるのはおまえの都合だろうが、小学校遠足じゃねえんだから時刻丁度にこいや。
ちなみに今のは心の声。さすがにおれと言えど、もう一度あの鉄拳をくらいたいとは思わない。痛いのは嫌いだ。
「ところでーー」
桂は視線をおれから、その後ろに移し、言う。
「なんであなたたちもいるのよ……」
「やあ、ヒナ」
「やあ♪」
「うわッ!優太くん!鼻血がでているぞ!」
生徒会役員の3人組。通称3バカトリオの花菱、瀬川、朝風が各々にいう。
「いや、やっぱりこういうイベントは人数いた方が盛り上がると思ってな」
鼻を摘まみながらいう。
「イベントって……、これは遊びじゃないのよ?」
怒りを通り越して呆れたのだろう。怪訝な表情の桂。
「まあ、猫の手も借りたいっていうしさ」
「まあいいわ」
さあ行きましょ、と言うとスタスタと歩き出す。
「ねえねえ、優太くん?」
と、後ろついてくる瀬川はいつもと変らない声色で尋ねてくる。
「なんでこんなところに集合したの?集まるのなら学校内、時計塔とかの方が良くない?」
「あ、それわたしも思った。なんでわざわざ白皇から離れたコンビニで待ち合わせなのよ」
先頭を切って歩いている桂も話に乗っかる。
「いや、端から白皇の中にいたら本末転倒だろうが」
「え、なんでよ」
「あのな、仮にも、仮にもあの事件の真相をつかむための行動だろ?それを、なにひとつ目星のついてない生徒会長と、話の先端しかかじってない生徒会役員3人組を、各自各々この時間に集合させたら、誰かしらの目に付くだろうが」
なるほどねぇ〜、と呑気な相槌を返す泉とは裏腹に、
「ってことは、優人くん、あなたは、今日もその犯人が白皇内にいるって言いたいの?」
桂は歩いている足を止め、顔を引きつらせる。
「まあ、な。お?なんだ?ビビってんのか?」
十中八九怖気付いているであろう桂の横を通り過ぎる途中に、からかいの意を込め嫌みたらしく言う。
「べ、別にビビってなんかないわよ!」
「へいへい」
気に障ったのか、止まっていた足を再度動かし始める。
「優太くん。先ほどの物言いから、粗方犯人については目星がついている、と受け取ってもいいのか?」
「そうだな。優太くんの物言いからそう感じられたぞ」
「犯人……ねぇ」
花菱、朝風の問いに言葉を濁す。
「なんだその言いぐさは。はっきりしないな」
「花菱よ。手掛かりはなにも映っていない防犯カメラの録画記録、それひとつしかないんだぞ?そんなのはっきりするわけないだろ」
「それはそうだが……」
「まあ、目星がついてるっちやついてるし、ついてないっちゃついてる。本当に粗方、だけどな。それに、犯人って、人じゃないかもしれないしな」
「人じゃないーーって、なにを言っているのだ君は」
「だから花菱にも言っただろ、朝風。おれも、粗方、って言っているだろ」
花菱と朝風はおれが、なにを言っているのかわからないといった様子。
「犯人が人じゃないって、なにをいっているのよあなたは。そんなことありえやしないじゃない。まさか、霊的な仕業、とでも言うわけじゃないでしょうね」
話を聞いていたのだろう、まあ意図して小声で話していたわけでもないし、この距離で聞こえないはずがない。馬鹿馬鹿しい、と人を小馬鹿にしながら桂が言う。
「そうだよ優太くん。幽霊なんているわけないじゃん♪」
「おいおい、それは言い過ぎじゃないか?別におれも幽霊だとは言わないけど、そんな端から端まで全部否定することなんて出来るのか?おまえの頭で」
「そこは優太くんに同意だな」
「だな」
「ひ、ひどいよぉ〜」
と、後ろからは賑やかな声が入り乱れる。
「本当に幽霊の仕業、なんて言うわけじゃないでしょうね」
そんな彼女の言葉を他所に、おれたちは白皇へ向かう。
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