徒然なるバカに
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どこの学校でもいるよね、説教好きなやつ
「なあ、だから言ってんだろ?おれは花火こそは上げたけど、泥棒なんてやってねえって」
高橋優人は椅子の背もたれに寄り掛かりギコギコと鳴らしなが呑気に言葉を発した。
話は遡ること3日前の12月31日、大晦日。
あと数分で今年も終わる、と皆が今年1年を振り返り、また明日から始まる新たな1年を思い描く時間。
私自身も今年1年を振り返り、明日から始まる新たな年のスタートに期待すべく、友達の美希、泉、理沙と初詣に繰り出していた。そのときーー
ーー事件は起きた。
私が通う母校、白皇学院の時計塔から辺り一面に聞こえる爆音。皆誰しも聞いたことのある音。夏の風物詩。
花火が打ち上げられていた。
なにごと!?と辺りを見渡すも見えるのは何発も打ち上げられている花火だけ、誰が打ち上げているかなんて見えず、検討もつかない。いや、検討はついていたんだと思う。私も、皆も。
「ほぇ〜!?な、なにごとー!?」
「これはたまげたな。このような時期に花火を打ち上げるとは……」
「そんな関心してる場合じゃないだろ理沙。時期に驚くよりまず時間に驚け」
「いや、時間も驚くが。まさか冬にしかも大晦日に花火を上げるとは……」
「あっはは〜♪ほんっとたまげたねぇ〜。こんな凄いことする人は一体どこのどなたなんだろねぇ〜♪」
「泉よ、こんなことするやつ我々の知り合いにいるか?」
「いるだろう、1人」
美希の発言に額に汗を流しながら答える理沙は、いやいやまさか。といっている。
まさかと思った。さすがに彼も、12月31日、大晦日までこのようなおおごとを起こすつもりはないだろう、と。
「完全に油断してたわ……」
私は額に手を当て、はぁ……、とため息が出るのを隠せないでいた。
「事件って、大袈裟だなぁ。おれはこの雪降る聖なる夜をもっと盛り上げようとだな」
ことの元凶、高橋優人はなに食わぬかをでそう言った。
「なにが聖なる夜をもっと盛り上げようとだな、よ!あなたがやったことは犯罪よ!犯罪!」
目の前の机をバンッ!と叩きながら目の前の彼に言う。
「だから泥棒なんてしてねえって」
「いや、免許もないのに花火を打ち上げることも犯罪よ……」
その一言に、彼は、ええ!?まじかよ!?と言った。
「はぁ……呆れてなにも言えないわ……」
乗り出していた身を引っ込ませ、私も椅子に座り、始末書に目を通す。
彼が先ほど言った、泥棒、という単語。そう、彼が花火を打ち上げると同時刻、この白皇学院に泥棒が入ったのだ。盗まれたものは金品少数だけで対した額にはならないが、立派な犯罪だ。……花火の件も犯罪なんだけどね?
「本当にあなたじゃないの?」
私は行き場のない右手のシャープペンシルをくるくる回しながら聞く。
「だからおれじゃねえって。何度も言ってんだろーよ」
「まぁ、何度も聞いてるけど……。疑われるのはしょうがないのよ?だってあの時間に白皇に入って花火を打ち上げているんだもの」
「泥棒したやつが花火なんか打ち上げるかよ」
それも一理あるわね。
彼が泥棒なんて真似、するともおもえないし、ましてや母校の教師から盗みを働くなんて。彼の言う美学に反することよね……。
雛菊はわかっていたのだ、優人が盗みなんてするわけないと。
でも……面倒なのはここの教師たちなのよねぇ……。まあ、彼の今までやってきたことから、100%否定しろって言うほうが無理でしょうけど。
「はぁ……」
本日何度目かわからないため息がこぼれる。
「あー?なしたんだお前、ため息ばっかりついて。そんなため息ばっかついてたら幸せ逃げるぞ、幸せ」
「あなたのせいでしょーが!あなたの!」
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