徒然なるバカに
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3バカトリオってさ、2人でペア組む時とかどうしてんだろうな
生徒会会長専用の卓上では机をバンバン叩いて奇声を上げる輩が1名。おれのクラスメイトの桂雛菊だ。
「あなたはいっつもそう!人の話を聞かないで!だから今回の件だって疑われても仕方ないじゃないの!」
へいへい……。
こいつには去年から耳にタコができるほど説教染みた小言を聞かされている。別に桂だけに迷惑をかけてるわけじゃないんだから構わないで欲しい。まあ、そんなことを言うのであれば、自覚してるなら行動のひとつやふたつ慎みなさいよ!と、言われそうだから言わないが。
「ちょっと……聞いてる?」
さっきまで奇声を上げていた桂は今度は額に青筋までも浮かべている。さすがに堪忍袋の尾が緩んできたか……。
「聞いてるって。なんでい、せっかくの年明けなのになーんでそんなイライラしてるかな。カルシウム足りてないんじゃねえの?おぉ!てか知ってたか?牛乳飲んでたら胸大きくなるらしいぞ!」
「……」
「まあ、牛乳は最低、妥協案としてだ。豆乳のほうがいいらしいが」
「……」
「でも、やっぱり胸って異性に揉んでもらうほうがいいらしいな。なんかホルモンがどうたらこうたら……。あ、でもお前みたいな暴力単細胞ゴリラには男なんてできねぇか。あっはは、わりわーー」
昨晩何気なーくみていたテレビでやっていた豆知識を披露していたら桂の鉄拳が飛んできた。
「これ以上余計なこと言ったら殴るわよ」
「殴った後に言わないでください……」
堪忍袋の尾が緩んだを通り越してキレた桂はメキメキっと聞こえるがごとく握りこぶしを作りながらそんな冗談を言ってきた。
そうやって言葉よりもすぐ手が出るから単細胞ゴリラなんだって。
おれは殴られた左頬をさすりながらもといた席へと戻り、座る。
「おぉー、いてぇー。まじで女の力とは思えんなぁ。殴るなら殴るでもーちょい加減ってもんをしてくれんのか」
「いやよ。それに殴られるようなことをしたのはあなたの問題じゃない」
「いや、おれは事実を言ったまでであってだな」
そう言うと桂は、また殴るわよ。と言って、握りこぶしを前に出す。
「そうそう。そうして先に行ってくれればーー」
ーー心構えができる。と言おうとした矢先。桂の鉄拳のほうが早くおれの頭を捉える。
「いってぇぇ!!舌噛んだ!」
話している途中ということもあり、おれの舌は上顎と下顎に見事に挟まれたの手間あった。
「うるさいわねぇ。殴るわよ、って言ったじゃない」
こいつは悪魔か。先に言えばそれでいいのか、万事解決か、この暴力単細胞ゴリラが。
「なにバカなことしてるんだ、お前たちは」
前方にいる桂の口は閉じたままなのに声が聞こえた。てことは……。
「桂……、おまえいつから腹話術なんか使えるようになった」
「なにバカなこと言ってんのよ」
桂は呆れ顔でそういい、目線をおれがいるところよりも奥へとうつした。
「美希?どうした?それに泉や理沙まで……。まだ冬休み期間のはずよ?それに、講習だってまだのはず……」
そういいながら卓上にあるカレンダーを手にする。
「いや、これといって用はないんのだが。いかんせん暇だったものでな」
「でな♪」
「それでヒナの家に遊びに行ったら、おまえがいないと親御さんに言われて、もしや?と思いここまで足を運んだわけだ」
花菱、瀬川、朝風の順に話を返してくる。
「あぁ、誰かと思ったら。3バカトリオか」
右端にいるのが花菱美希。白皇学院生徒会役員のひとりで政治家の娘らしい。この3人の中ではまとめ役に位置する感じのやつだ。
真ん中にいるのは瀬川泉。こいつも生徒会役員のひとりで、親はたしか機械関係の仕事だったはず。位置的にはバカだ。
で、左にいるのは朝風理沙。こいつも2人同様生徒会の役員で、たしか家は神社関係だったはず。そしておれはこいつが苦手だ。何事にも冷静無頓着で食えないやつ。
「3バカトリオは失礼じゃないか?優太くん」
「失礼にもほどがあるよ、優太くん」
「そうだよ♪優太くん♪」
3バカトリオはいつも通り、マイペースな返答をする。おい、あとおれは優人だ。
「ところで、ヒナと優太くんは2人でなにをしているんだ?昼間と言っても男女が2人っきりでいたら怪しいぞ?」
「朝風……、聞いてくれるな。おれはこいつに誘われてーー」
「説教していたところよ」
おれがことを言うよりも早く、桂は言葉を遮り、返答する。
「説教?」
「そう。美希だって見てたでしょ?年末のアレ」
桂は3つのマグカップを用意し、花菱の疑問を明かすかのごとくそういう。
「あ〜、あれね!あれすごかったねぇ〜。やっぱりあれ優太くんの仕業だったの?」
ええ、そうよ。と言いながら、3つのマグカップにコーヒーメーカーからコーヒーをそそぐ桂。
「あ、桂。おれも」
「あなたの分はありません!」
桂はソファーに座っている3人にコーヒーの注がれたマグカップを差し出す。
「ありがとな、ヒナ」
残りの2人も花菱と同じように感謝の意を述べ、マグカップに口をする。
「たしかにすごかったのは認めるけど、タイミングと規模がねぇ……」
はぁ……、とため息をつき、桂はもうひとつのマグカップにコーヒーを注ぐ。
「まあ、優太くんのやることは最初から小規模なんてありえんのだから」
「それもそうよね」
桂はマグカップに口を付け、一呼吸置く。
このクソゴリラ。おれの分はねえくせに自分の分はあんのかよ。
「でも、ヒナちゃん?規模はわかるけどタイミングって?年末だったから悪かったの?それとも夜遅くだったから?」
手元のシュガースティックを弄びながら瀬川は頭にハテナを浮かべ、聞いてきた。
「あぁ……、そういえばこのこと、生徒は誰も知らなかったわねぇ」
あちゃー、と言わんばかりにバツの悪そうな顔でコーヒーを飲む桂。
おまえにドジっ子属性は似合わん。
「なにやら随分面白そうな話だな。聞かせろ!ヒナ!」
朝風の一言に他の2人が乗っかり、聞かせろ聞かせろの大復唱。
「あーあ、言うなって言われてたのに。どうすんの?桂さん」
「あー!もう!わかったわよ!言う!言うから!静かにしなさーい!」
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