道を外した陰陽師
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第六話
あの後、殺女の持ち前の性格によって、クラスの人間が緊張して、という面倒な状況は消えた。
放課後になった今でもクラスの女子連中と話してるし・・・間、このまま放って帰っても・・・
「あ、カズ君!一緒に帰るんだから勝手に帰らないで!」
「・・・はぁ」
帰れなかった。
「どうするつもりだ?まさかオマエ、自分がどれだけ目立つのか理解してないわけじゃないだろうな?」
「いやいや、それはないよ~。ちゃんとウィッグと眼鏡を使って変装もするし、隠行の術もかけるから!!」
「・・・ハイハイ、了解」
席組みの使う隠行ならまずばれることはないだろう。
「でも、いいのか?そこの奴等と一緒に帰ったりするんじゃ?」
「あ~・・・それはまた後日、かな。転校してきた関係で、やることもあるし」
そのまま殺女はウィッグと眼鏡をつけ、隠行の術をかけてから話をしていた女子達に一言謝り、俺と一緒に教室を出た。
殺女を見ようと教室前に集まってたやつらもいるが・・・誰も気付いてない、な。
「ふぅ・・・結びて音絶て」
俺はまず音を外に出さないための結界を張り、早速聞くことにする。
「で、どうして転校してきたんだ?」
「一応、陰陽師課から席組みとしての私・・・『金剛力』への依頼だよ」
「内容は?」
「正体を明かすことの出来ない第三席、『型破り』の監視及び補助。カズ君が言ってた関係は、立場以外は結構あってたりするんだよね~」
まったく、いらんお節介を・・・お偉いさんが納得しないとか、そんなクソみたいな理由だったら今度一発ぶん殴る。
「で、オマエはどこに住んでるんだ?」
「え?」
「え?」
え?って何?俺、今住んでる場所を聞いただけだよな・・・
「・・・何にも決めてなかった・・・」
「・・・・・・」
「スイマセン、無言で呆れたような目を向けるのはやめてください・・・」
「ような、じゃないけどな・・・」
光也に確認を取るか・・・
『珍しいですね、電話をしてくるとは。どうしました、寺西さん?』
「いや・・・今日、任務だって殺女が転校してきたんだけど」
『はい、確かに私のほうから依頼しました』
よし、これでこいつに聞けば問題ないな。
「家とか、その他もろもろについてはどうなってるんだ?」
『そちらでお願いします』
「ふざけてるなら、俺がキレる前に訂正しといた方がいいぞ?」
『一ミリもふざけてないですよ?』
これがふざけてないってのかよ・・・
「じゃあ、どうするつもりなんだ?」
『そちらで探していただけると助かります。寺西さんの監視及び補助がやりやすい物件を。もちろん、必要なお金はこちらで払わせていただきますので』
「・・・面白がってないか?」
今になって、コイツの悪癖を思い出した。
面白い状況を、任務などのついでに作る。今回みたいな任務なら、断ることも出来ないしな。
『まさか。偶然ですよ、偶然』
「世間では俺が問題児みたいに言われてるみたいだが、光也も大概だよな・・・」
『保護者代わりの人間にそれは酷くないですかね?』
ウッセ。保護者らしいことしてから言いやがれ。
俺はそう言いながら電話を切って、殺女の方をむく。
「あのバカの悪癖だ。どうする?」
「やっぱり、コウコウか・・・うぅ、どうしよう・・・」
殺女は頭を抱えているが・・・正直、かなり面倒な問題だ。
殺女、って下の名前はまだいい。字面が珍しいが(というか、普通片方の字は使わない)、名前が被るくらいなら気にするやつはいない。
何より、字を書くということは中々ないから、そこは気にしなくていいだろう。
だが、苗字まで一緒にとなると、事態は変わってくる。
土御門殺女、という名前はコイツくらいのものだし、その名前を知らない日本人などいない。一瞬で席組みの人間だとバレる。
だからこいつの名前で部屋を借りるのはまず無理。私生活なんてものは欠片もなくなるだろう。
せっかく学校中の人間に呪術的な手段でこの情報が広がらないよう細工したのに、何の意味もなくなる。
次に、俺の名前で借りるのも無理。
俺名義なのに女子が住んでるとなると、かなり面倒な問題になる。遠慮願いたい。
今暮らしてるところはもともとの知り合いが大家さんだったから都合を話して借りれてこそいるが、そもそも借りること自体が面倒な立場なんだ、俺は。
光也の名前も、そこそこに有名だし。そんな保護者の名前を簡単に書けるか。
「とりあえず、家来るか?どこかで休みながら話したほうがいいだろうし」
「うん・・・お邪魔します」
と、そんなこんなでいったん俺の家に向かうことになった。
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「あ、一輝君。ちょっといいかしら?」
「ん?なんですか?」
で、殺女をつれて家に向かったところ、先ほどの思考の中にも出てきた大家さんに会った。
一応恩がある立場なので、使うのは敬語だ。
「お仕事用の部屋・・・他のところに移せないかしら?」
「別にいいですよ。暮らしもしないのに部屋を借りてるんですから、住む人がいるならお返しします」
「そう?ならよかったわ。ちょっとお年を召した人だから、一階のお部屋の方がよかったのよ」
なるほど・・・俺は仕事用の部屋を一階に借りているから、そう言うこともあるのか。
ちなみに、普段の部屋は最上階。出来るかぎりはなれた部屋を求めた結果、こうなった。
「じゃあ、早速で悪いんだけど、お部屋を片付けてくれるかしら?」
「はーい。どこか部屋って空いてる?」
移動先があるなら助かるんだが・・・
「今住んでるお部屋の隣なら空いてるわよ?」
「・・・ま、もういいか。じゃあそこに移動しますね」
今はもう、あのころみたいに人との繋がりを作らない気はないし、機会があれば移動したいなぁ、と考えながら今に至ってしまった。
ちょうどいい機会だと考えよう。
「ふぅ・・・荷物運び、よろしく。式神展開」
自分で運ぶ気はさらさらないし、今は殺女の問題を片付けないといけない。
そう言う理由から式神を四体ほどだし、俺と殺女の二人はひとまず俺の部屋に向かう。
「さて、まずは現状の確認から。必要最低限のことは全部聞くから、全部答えろ。いいな?」
「はい」
了承も得られたところで、ノートとペンを準備して質問を始める。
「じゃあ、まずは本当に確認の段階から。住む場所のあては?友達の家とか以外で」
「ない」
ま、これは当然だよな。
最後のは、念のために加えた。
「次。今回の任務に拒否権は?」
「ない」
となると、探すのは絶対に必要なことだ。
野宿は・・・出来そうだけど、何の問題もなくやれそうだけど、さすがにさせるわけにはいかない。
「じゃあ、こっからは俺が知らないところ。お前の家事スキルは?」
「と、いうと?」
「料理、洗濯、掃除、などなどを指す」
「・・・掃除なら、何とか・・・」
壊滅的なのかよ・・・
「いや、お願いだから言い訳くらいはさせて」
「・・・聞いてやろう」
「私はこれでも名家の生まれで、家には当然のように侍女というか、家政婦さんというか的な人がいて、ね・・・」
これだから名家は・・・それくらいは最低限出来るようにしとけよ。
「掃除は自分の私物をいじられるのがいやだったから出来たんだけど、他はからきしダメになりました、ハイ」
「雇うわけにもいかないしな・・・かなり面倒な条件になったぞ・・・」
洗濯はすぐにできるようになるだろうが、料理はどうなるか分からない。
毎回外食というわけにもいかないし。絶対に栄養バランスが大変なことになる。
「というか、そう言うカズ君はどうなのさ!鬼道の家だって名家でしょ!」
「そうだな。この部屋の現状、他の部屋の現状、夏休みの盆前から今まで何の栄養問題もなく暮らしていること、冷蔵庫の中を見れば分かるかな?」
「参りました」
殺女は確認するや否や、そう言ってきた。
ぶっちゃけてしまえば、家での修行でやることがなくなってからはひたすらそう言うことをやっていた。
家にいて何もやっていないと父さんが面倒だったし、その辺のスキルをあげていく分には、さすがに文句も言えない。
「やっぱり、料理くらいは出来るようになっといたほうが良かったなぁ・・・お婆様に止められてさえいなければ・・・」
「過保護で有名だからな、あの人」
それで前席組み第三席だったのだから、文句を言える人がいなかったのも問題の一つだ。土御門家は結構面倒な問題を抱えていたのかもしれない。
「・・・はぁ、もう少し質問するつもりだったけど、もういいや。分かったことは、かなり壊滅的な状態だってこと」
解決策が、まるで思いつかない・・・
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