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絶対の正義

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第八章


第八章

「何処であいつを知ったんですか?」
「一体」
「まあ少し」
 自分の勤めている会社にいるとは言わない。ここはオブラートに包んで言ったのだった。これもあえてであり考えあってのことである。
「学校で名前を聞いたので」
「そいつがリーダーだったんですよ」
「そのいじめグループの」
「あいつがですか」
「はい、そうです」
 渡辺はこれまで以上に顰めさせた顔ではっきりと答えた。
「あいつが考えて中心になっていたんですよ」
「殆どあいつがですね。他にその古館入れて合わせて三人」
「小笠原を入れて四人ですね」
「その四人が主犯だったんですよ」
 渡辺は言ったのだった。
「あの連中がだったんですよ」
「あれだけのいじめのですか」
「それで耐え切れなくて自殺したんです。僕はですね」
 ここで渡辺はその顔を暗くさせた。そのうえで言うのであった。
「そのいじめられていた奴の友達だったんですよ」
「僕もです」
 渡辺でなく星井も顔を伏せてしまった。
「実はですね。中学が同じで」
「三人一緒のクラスだったこともあります」
「そうだったんですか」
「庇ったりもしましたし励ましたりもしました」
「けれど。それを表でやらなかったから」
 二人は俯き暗い顔で述べだした。
「いじめの標的にされるのが僕達も怖くて」
「それで。表立って動けなかったから」
「そこなのですよね」
 岩清水は確かにいじめを憎んでいる。そしてその厄介なことも知っている。だから今の二人の言いたいことも気持ちもわかった。そのうえでの言葉だった。
「いじめの厄介なことは。自分のやられたら怖い、嫌だって思いますよね」
「はい、本当に」
「それは」
 二人は今にも泣きそうな顔で彼の言葉に頷いた。
「あの時そうでした」
「それであいつは耐えられなくなって」
「任せて下さい」
 岩清水ははっきりと言った。
「これから貴方達には関係ないことですが」
「関係ないとは」
「それは」
「まあ後はですね」
「後は?」
「私のことで貴方達は今日のこともお話しなかったし私とも会ってはいない」
 秘密にしようということであった。
「そういうことで御願いします」
「そうですか」
「それで、ですか」
「はい、それでは」
 これで話がまとまった。岩清水は二人に最後にとあるものをメールで自分のサイトに送ってくれるよう頼んでからそのうえで別れた。そうして次の日会社で。
 また総務部に用があるということで来た。そうしてであった。
「あっ、小笠原君」
 彼に声をかけたのである。
「あのさ、仕事頼みたいけれど」
「仕事って?」
「調達っていうかさ、営業部で欲しいものがあってそれ貰えるかな」
「調達?」
「うん、それはね」
 ここで言うのだった。さりげなく。
「バスケットボールね」
「バスケットボール?」
「うん。ちょっと息抜きの時に皆で遊びたくてね」
 そうだというのである。
「それは駄目かな」
「ちょっと娯楽とかのやつだと」
 小笠原は彼の言葉に仕事として応えて言葉を返した。
 
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