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絶対の正義

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第七章


第七章

「それだと」
「御存知だったんですか」
「はい、御会いしまして」
 これは偶然だったが確かにそうなったものである。
「そうですか。あの人だったのですか」
 ここでは自分が確信したことは隠してみせたのだった。己の心の動きは。
「そうだったのですか」
「ええ。あいつ学校の先生になったんですね」
「母校の」
「それでですが」
 あらためて二人に尋ねる岩清水だった。紅茶には今は口をつけてはいない。
「あの人はいじめグループでは」
「中心の一人だったな」
「そうだったな」
 星井と渡辺は顔を見合わせてこのことを確認し合った。
「四人のうちのな」
「ああ、確かにな」
「中心にいたのは四人だったんですね」
「はい、他にも結構いましたけれど」
「どれ位いた?」
 星井はそのことをそのクラスにいた渡辺に尋ねた。やはり彼はクラスが違っていたせいでこのことを詳しくは知らないのであった。
「いじめていた奴等」
「四人以外に八人位だったか?」
 渡辺は考えてからその数を思い出した。左手の指が自然にその数を数えている。
「確かな」
「全部で十二人ですか」
「それとですね」
 渡辺はここで言わなくてもいいことを言ってしまった。それは犠牲者を増やすことになるのだったが神でない彼にはそれがわからなかったのである。
「体罰もあったんですよ」
「体罰もですか」
「それはですね」
 目を光らせた岩清水に対して目を顰めさせた渡辺、二人は実に対比的になっていた。その中でさらに話されていくのであった。
「体育の先生で」
「体育のですか」
「宮崎先生っていうんですけれどね」
 彼はその名前を出した。すると岩清水の脳裏でその名前が浮かび出て来たのであった。それは古館が言っていた名前であった。
「僕達の学年主任で」
「あまりいい人じゃなかったな」
 星井もまた顔を顰めさせていた。
「どうもな」
「いつも竹刀持っていたしな」
「竹刀をですか」
「そうなんですよ」
 このことを岩清水に話す渡辺だった。
「先を分かれさせた竹刀持ってですね。それで壁とか床叩いて生徒を脅して」
「それで体罰をですか?」
「ああ、それは流石に首になりますから」
 それはなかったというのである。
「ただですね。そのいじめられていた奴を目の仇にしていまして」
「しつこくですか」
「余分に動かしたり何かマンツーマンで教えていましたね」
「マンツーマンで、ですか」
「そうです」
 ここで岩清水の目がさらに光ったのだった。それも剣呑に。
「マンツーマンで。二人だけで」
「ではその時に」
「そうだったと思います」
 真顔で答える渡辺だった。
「確かなことはわかりませんけれどね」
「そうですか。それでもですね」
「かなり怪しいですね」
「わかりました」
 このことも頭に入れておく彼であった。
「あとですね」
「まだ誰かいますか?」
「小笠原という人間がいますけれど」
「あいつですか」
 その名前を聞いた渡辺の表情が一変した。星井もであった。
 
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