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絶対の正義

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第五章


第五章

「そうか。二組か」
 そう、その二組であった。間違いなかった。
「それに教師の体罰も噂されているのか」
 これは寄せられた情報からであった。
「あの先生も二組だったな。それでか」
 古館がしきりに表情を強張らせていた理由も察した。そして体育館の倉庫は。
「その生徒が自殺した場所だったな」
 このこともチェックしているのだった。
「ここまではわかった」
 彼はチェックし終えてから一人で述べた。
 そうしてであった。次の日彼は何気なく会社の総務部を訪れた。白く奇麗な部屋の中に机が向かい合って座っている。その向かい合う机のところに部長や課長の席もある。そして小笠原もそこにいた。
 だが彼は小笠原には一瞥しただけだった。同期としてのにこやかな挨拶は交えたがそれだけであった。そうしてそのうえでこう総務部のOLの一人に対して告げるのだった。
「二組下さい」
 ここをあえて『にくみ』と言ってみせたのである。小笠原に聞こえるようにして。
「二組。ノートのセットを」
「はい、どうぞ」
 そのOLは何も考えずにそのままノートを手渡した。しかしであった。
 岩清水は小笠原を見ていた。彼は『にくみ』と聞いてその顔を青くさせた。一瞬であるが青くさせた。そして岩清水はそれを見逃さなかった。
(やっぱりな)
 彼はそれを見て確信したのだった。
(関わっているのは間違いない)
 彼は小笠原がいじめに関わっていたと断定した。その二組において。しかし彼はまだ動かなかった。彼は家に帰るとすぐにパソコンの電源を入れた。そうして己のサイトとメールボックスをチェックした。
 するとだった。そこには多くのメールが届いていた。彼のサイトへの情報提供である。それがかなりの数で届いているのだった。
 様々な事件に関するメールが届いていた。そして彼が今最も力を入れているその事件についても。それがとりわけ多くなっていた。
「成程。いじめだけじゃないんだな」
 彼はこのこともわかったのだった。
「何、この情報提供者は」
 ここで一人のメールに気付いたのだった。その情報提供者は。
「そうか。当時修和高校にいた生徒だったのか」
 彼が最も欲していた情報提供者であった。その人からのメールだったのだ。
 そこには体罰があったとも書かれていた。体育教師からの体罰だと。ただし今は名前ははっきりとは書かれてはいなかった。
 彼は送られてきたメールにはこちらから返信できるように設定していた。そしてその彼に対してさらに情報を提供してくれるように頼んだのだった。
 とりあえず今までわかったことをサイトに載せた。体罰もあったらしいということに。この日はこれで終わった。しかしその次の日だった。
 家に帰るとあの情報提供者からメールが届いていた。そこには詳しい内容まで書かれていた。
「酷いものだな」
 その内容はこうした糾弾サイトを開いていていじめについて熟知している彼をしてもこう言わさしめるに充分なものであった。
「ここまでしたのか」
 まずはその内容に眉を顰めさせた。それと共にある決意をするのだった。
「それならこちらも徹底的にやるか」
 こう決意したのである。そのうえで、であった。
 メールの内容を詳しく読んでいく。そしてそのうえで。自分からその提供者に対して会いたいと申し出たのであった。
 その話は順調に進んだ。彼はある喫茶店でその情報提供者と待ち合わせた。彼はすらりとした美男子であり如何にも優しそうな外見であった。その彼が来たのである。
「はじめまして」
「はい、私は岩清水といいます」
 まずは立って彼に挨拶をするのだった。
「あのサイトの管理人です」
「どうも、星井です」
 彼は微笑んでこう名乗ってきた。
「あの学園の生徒でした。そして今は博物館で学芸員をしています」
「メールで自己紹介されていた通りですね」
「はい、そうです」
 穏やかな笑みで答えてきた。その笑みとそして目から岩清水は彼が信用できる人物だと即座に見抜いた。彼にはそうした眼力が備わっていた。
「あの学校では一組にいました」
「一組ですか」
「隣のクラスです」
 そこだというのである。
「二組に行くことが多くてその現場をよく見ました」
「そうなのですか」
「クラスに中学校からの友人がいまして」
 だからその二組に行くことが多かったというのである。
「それでなのです」
「それでですか」
「はい、そしてその友人ですが」
 ここで席に着いていた。そうして向かい合って座りそれぞれホットティーを飲みながら話をしていた。
「彼はいじめには参加していません」
「その友人はなのですね」
「それは誓って言います」
 その情報提供者である星井の言葉が強いものになっていた。それが決して演技ではないということは岩清水の見抜いているところだった。
 
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