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少年少女の戦極時代Ⅱ

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禁断の果実編
  第69話 新旧リーダータッグ!


 “森”を出た咲たちが立っていたのは、どこかの公園の広場のモニュメントの上だった。
 サガラのことだから、てっきり紘汰のいる場所に直行すると思ったのに。

「ユグドラシルっ?」
「大方、戦極凌馬が捕獲命令を出したんだろう」

 上から見ていれば、劣勢は一目瞭然。マリカ率いる黒影トルーパー隊は、次々と赤いオーバーロードにやられて倒れていった。マリカ自身も苦戦していた。

「どうする? Super Girl」
「……わかってるくせに」

 思い出を作っていく場所、沢芽の街を壊させない。それが室井咲が己に定めた理由。
 そして、あの赤い怪人は、咲の大事な場所を壊すモノだ。

「そうだろうとも」

 サガラが咲の頭に手を置いた。すると、ヒマワリアームズを使ってから取れなかった、痺れるような痛みが、ふっと消えた。
 理屈は分からないが、サガラが何かしら助けてくれたのは確かだった。

 咲は勇んで戦極ドライバーを装着し、ヒマワリの錠前を開錠してセットした。

「変身!」
《 ヒマワリアームズ  Take off 》

 ライドウェアの上から機動翼付きのヒマワリの鎧が装着される。月花はその感触を確かめ、モニュメントを蹴って戦場に降り立った。


『ケガしてない? おねーさん』

 そして、まずダメージ著しいマリカを守ったのだ。




 戒斗とザックの到着タイミングは、示し合わせてもいないのに、ぴったりだった。

「もういいんだな?」
『いい。ヘキサがだいじょうぶになったから。ありがとう、戒斗くん』

 そういえば、戒斗に純粋に礼を言うのはこれが2度目だ。こんなに助けられてきたのに。

 戒斗は月花にマリカを任せると、ザックと共に変身した。
 ゲネシスバロンとナックルは迷いなく赤いオーバーロードのいる戦場に飛び込んだ。

『無茶よ……ゲネシスドライバーならまだしも、量産型じゃ』

 マリカの台詞は、まるで心から戒斗とザックを案じているように聞こえた。だから咲は、自分の中の精一杯の誠実さで応えた。


『だいじょうぶ。戒斗くんとザックくんなら、負けないから』




 バロンとナックルは、互いのロングレンジとショートレンジの特性を生かしながら、順々に、間髪入れず赤いオーバーロードに攻撃する。この息の合い方は、何年も一緒に踊ってきた彼らだからこそできるコンビネーションだ。

 加えて、赤いオーバーロード自身が、ユグドラシル勢力との戦いで消耗しているのもあり、彼らの攻撃は常より通りやすくなっていた。
 それに気づいてか、バロンも弓をソニックアローから近接攻撃に切り替えた。

『鬱陶しイ! いズれまタ、遊んデヤル』

 言うや、赤いオーバーロードから巨大な火のドームが広がった。

『おねーさん!』

 月花はマリカを抱えて空へと飛び上がり、火のドームを回避した。

 火が晴れたそこには、直撃を免れなかったバロンとナックルが倒れていた。




『何て、力なの……』
『――――』

 月花は飛行高度を下げ、マリカをそっと地面に下ろした。そして、バロンとナックルに飛び寄った。

『生きてる?』
『死ねるかっ』

 ナックルがすぐさま起き上がった。バロンもだ。二人とも思ったよりはダメージが少なかったらしく、月花は胸を撫で下ろした。

『つうかお前、そのアーマー……空、飛べるのか?』
『うん。おぼえてる? あたしたちがはじめてインベスゲームした時。あの時、戒斗くんからもらったロックシードだよ』

 月花はふわりと、バロンの前で着地した。

『ありがとう。戒斗くん』

 胸に手を当てる。ヒマワリアームズの感触を噛みしめる。

『戒斗くんが一番さいしょにくれた力が、あたしと、ヘキサと貴虎お兄さんをたすけてくれたよ』
『――礼を言われる筋合いはない』

 戒斗が変身を解いた。それに続いてザックと咲もロックシードを畳んだ。それぞれの色の粒子が空気に消え、姿があらわになった。

「それより、奴を逃がしたのはまずかった。もし奴の体の仕組みがインベスと同じだったら――」
「「あっ」」

 インベスはヘルヘイムの果実を食べてパワーアップする。オーバーロードもそれが同じなら。

 咲たちはとんでもないバケモノを街に放ってしまったのかもしれない。 
 

 
後書き
 あえて紘汰に直行ではなく、一度デェムシュと戦うルートにしました。
 ここで思い出していただきたいのは咲の戦う理由です。
 咲の理由はあくまで「思い出を作っていく場所を守るため」です。紘汰一人を守るのがそれに繋がるとは限らないパターンもあります。今回がそれです。
 なので咲には街を壊すデェムシュと戦うのが優先順位が上なのです。 
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