少年少女の戦極時代Ⅱ
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禁断の果実編
第68話 翼、翻し
マリカのすぐ横の壁に、ダンデライナーが操縦者ごとぶつかり爆発した。マリカは爆発の衝撃で地べたを転がった。
《地上部隊。包囲網が機能していないぞ》
『これ以上の戦闘続行は不可能です……っ』
だが返った答えは非情だった。
《多少の犠牲は構わない。オーバーロードの捕獲を最優先しろ》
『……はい』
マリカは弓を杖代わりに、よろめきながら立ち上がった。
湊耀子には戦極凌馬が理解できない。彼の考えは難解に過ぎて、力は強くとも感性は人並みの彼女には度し難い。
それでも、ただ一つ分かる。
凌馬は多くのものを一時に喪いすぎた。
理解者だったはずの貴虎を自ら切り捨て、直後にシドは離反。サガラはそもそもユグドラシル側ではなかった。今の彼には湊だけ――
否、その認識さえ甘いかもしれない。今の凌馬は果てしなく孤独で、寂しい人なのかもしれない。
(そんなあの人のそばにいることになった時点で、私も詰んでたってわけね)
仮面の下に誰にも知れない自嘲を浮かべた。
マリカは痛みに震える指で弓にソニックアローを番えた。以前、あの赤いオーバーロードにマリカのソニックアローは通用した。ゲネシスドライバーの性能であれば通る。
『――っふ!』
桃色のソニックアローを立て続けに3本、放った。ソニックアローは狙い違わず赤いオーバーロードに着弾した。
だがそれは赤いオーバーロードに標的として定められることも同時に意味していた。
『調子に乗るな!!』
赤いオーバーロードが霧状と化した。赤い霧はマリカと、近くにいた量産型黒影の数人を巻き込んで激しく渦巻いた。
『あう…!!』
赤い霧から放り出され、再び地面に叩きつけられたマリカ。気力だけでもう一度立ち上がる。凌馬の命令はまだ解除されていない。
立つのがやっとのマリカに、赤いオーバーロードは杖剣を振り上げた。
防御が間に合わない。終わる――そう確信したのに。
ガッ……キィィン!
『あ……』
それは人類の原初の夢。天へ至りたい――空を飛びたいというユメを、形にした存在。
ヒマワリアームズの機動翼を盾にしマリカを守る、アーマードライダー月花だった。
『ジュグロンデョだと!?』
『よくもあたしたちの街、めちゃくちゃにしてくれたね。ぜったい、ゆるしてなんかあげない』
三対の機動翼が赤いオーバーロードを跳ね返した。
『ケガしてない? おねーさん』
心配げに問う幼い声。ひまわり色の翼を広げる姿は、まるで天の使いのようで。
自分らしくもなく、安堵が体に出たのか。足がもつれて倒れ――――なかった。
「やはり手こずっていたか」
傾いだマリカを駆紋戒斗が抱き止めて支えていたのだ。
『ゼッタイ来るって信じてた』
きっと笑っているであろう声音で、月花は戒斗をふり返る。
「もういいんだな?」
『いい。ヘキサがだいじょうぶになったから。ありがとう、戒斗くん』
戒斗はゆっくりとマリカを地面に座らせ、自らはゲネシスドライバーを装着した。
彼の隣には、彼と同じユニフォームを着た男がいる。彼もまた量産型ドライバーを装着している。
「室井。この女は任せた」
『うん、まかされましたっ』
マリカを支える手が戒斗から月花に代わる。戒斗が立ち上がり、赤と黒の二人の男が並んだ。
「「変身!」」
後書き
ちょっと飛びましたがユグドラ組vsデェムシュです。
この頃はまだ湊さんが本気で凌馬に尽くしてるんだと思ってたんだよなー…(遠い目)
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