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ロウきゅーぶ ~Shiny-Frappe・真夏に咲く大輪の花~

作者:46熊
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One

One


『行ける……行けるよマホっ!!!!』
『おー、そこでシュートだ~』
『大丈夫、出来るよっ!!!!』
『決めちゃいなよ、マホ……!!!』

時間が逆行する。幻想が現実へと姿を変える。あれは中学校最後の県大会決勝、勝敗を分かつフリースロー。
汗を吸ったウェアはとても重くて、それでも足を曲げる。左手を添える。目線の先はゴールを見据えて。

『頑張れ、マホ……っ!!!!!!』



『おうっ、任せとけ!!!!!』


そして5年後……

「な~アイリ~ン……」
「もう……どしたの、マホちゃん?」
「なんつーかさー……』」



「暇じゃね?」



ロウきゅーぶ! 真帆アフター ~Shiny-Frappe・真夏に咲く大輪の花~


うだるような暑さの中棒付きアイスをペロペロしながら、大学2年になった私こと三沢真帆(ミサワマホ)はぐでーんと背もたれに寄りかかっていた。
一応バスケのサークルに入ってはいるがその実は飲みサー、ちゃんとした部室はあるのだけれど何代か前の先輩でまともな活動はほとんど中止されている。
アイリーンこと香椎愛莉(カシイアイリ)は私の嫁なのでこうして一緒に居てくれているが、この前彼氏が出来たらしい。まあ今まで出来なかったのは彼女が可愛すぎるのと背が高すぎるからだろうけれど。最近ではヒールなんか履いたりして、昔のおどおどした小動物的な要素は何処へ行ったのやら。
ついでにこの嫁は腕っ節がやばい。本気で怒らせると台風の如く暴れる。私はもう一本アイスを冷蔵庫から取り出すと(素敵な事に冷蔵庫まであるんだぜ)またもしゃもしゃし始める。

「まあそうだけど……律儀に顔出してるよね、マホちゃん」
「そりゃあそこにアイリーンが居るかr……ん、もう時間?」
「うん……最近忙しくて」

この娘は何時からだったかモデル業に手を出し始めた。その抜群のプロポーションを業界が放っておく訳もなく、大学一年の春にスカウトされ今に至る。

「今度誰かのサインでも貰ってこようか?」
「あーいいよ、最近のアイドルはアイリーン以外興味無いし」
「そっか……うん、それじゃあ行くね」

カツカツと言う音を立ててアイリーンは部室を後にする。ガタガタと鳴っていた窓がその震えを止めた。建てつけが悪いせいで微風でもガタガタ言うこの窓だがそれすらならないと言う事は風が吹いていないと言うわけで、となるとちょっと困る。熱い。
ただでさえ湿度の高い季節に気流が流れないとなると汗もだらだらで……と思いきや食べていたアイスの棒の先端が姿を現す。何とそこには『ア』の文字が。
なんか暑さも吹っ飛んだ。帰る途中で引き換えよ~……と、思いきや。

「おいおいなんだよこれ……」



何と言うかまあ、棒には『アッカリーン』と書かれていた訳で。とりあえず棒をへし折りゴミ箱へ投げ捨てる。淵に棒が引っ掛かる(何かすげえ)が別にそのままにしておいて、私は部室を後にしようと椅子を立つ。
その時だった。何の振動を察知したか知らないが棚に積まれていたバスケットボールが落ちてくる。バン、と言う独特の音が鳴る。

「っ……!!!!!!!!」

全身が逆立つ。体中の汗がより周囲の空気の流れを鋭敏にし、一気に血液が全身を巡る。

「……………」

下らない、本当に下らない。自分はバスケを辞めた身なのだ。アイリーンも、ヒナも、サキも別々の道を歩んでいる。もっかんだって日本には居ないし……それぞれ別の道を歩み出した。もう自分達はあの頃には戻れない、過去にとらわれていてどうする。
パーリラ、パリラパーリラ(注:着信音です)……メールだ。この着信音が鳴ると言う事は……

「みーたんか……」

嘗ての恩師、篁美星(タカムラミホシ)先生からだ。そういやあの人今何歳なのだろう。とりあえずメールの内容は単純明快。『暇だったらうちのバスケ部に来ない?』だった。
大学生は夏休み長いけどそんなに暇じゃないんだよ……などと思ったりもしたが、さっき自分で暇だ~とか言ってしまったのでどうにも引く訳にも行かず、溜息を大きく一つついて返事を返した。

『すぐに行きます、練習時間はうちらがやってた時と同じで良いんですよね?』 
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