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ロウきゅーぶ ~Shiny-Frappe・真夏に咲く大輪の花~

作者:46熊
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Two

「おー、久しぶりだな三沢~」
「先生……全然変わりませんね」

慣れ親しんだ慧心学園初等部の体育館。時と共に色んな場所が老朽化していたのがとても気になる。てかこんなんで大丈夫なのか、老朽部とか言われた日にはトラウマで引き籠るぞOGとして。
彼女は篁美星(タカムラミホシ)、かつて色々お世話になった恩師だ。そしてまあ中々信用できないのだがすばるんの叔母でもある。
私自身、前のように気さくに『みーたん』と呼ぶことは無くなっていたがそれでもこの人との関係は変わらないでいた。

「だろ~、まだまだお肌もぴちぴちだぜい」
「やっぱり身長はあの時のままなんですね」
「あのな~、もう成長期は終わったっての……まあそれはおいといて」

学校行事の関係で練習時間が早まったらしく、私が来た時には既に模擬試合の練習に入っていた。

「どうだい、新生チームは。6年は先の大会で殆ど引退しちゃったから、まだまだ見せられるもんでもないけどさ」
「……さあ、現役を退いて結構経ちますし、ちらっと見ただけでは何とも」
「だってさ……お~い、うちの卒業生の三沢真帆先輩がお前らの練習にがっつり付き合ってくれるってよ~」

今まで練習をしていた生徒達の動きが一瞬静止し……
ドドドドドッと掛け込んできた。

「せんせぇせんせぇ、あたしの練習付き合って!!!」
「ちょっと、一人だけ抜け駆けしないっ!!!」
「せんせー、彼氏とか居ますか!?」
「ちょぉ待ちぃ、その質問はウチがするつもりやって言うたのに!!!」

どいつもこいつもぺちゃくちゃと……そう言えばうちらもこんなだったな、そう思うと胸がチクリと痛くなる。
あの日すばるんが初めて来てくれた日、私は部員全員にメイド服を着せてお出迎えした。突飛な思い付きだったけれど、ほんとに下らない事をしたもんだったな~……

「だーーーっもう黙れっ!!!!!! ……ガキんちょが、お前らなんて全員分見てやるよ!!!!!」
「決まりだな、Aチームローテーションで模擬試合するぞ!!!!」

おー、の掛け声と共に散らばる。中々統率力のとれたチームだ。

「笛、これくらい吹けるだろ? おい、お前らも入れ。今回は7対7でやっていいぞ」

審判等などの補欠選手もコートに入り、恐らく事前に指定していたらしいポジションに入る。先生はスコアボードの後ろに立ち、私を反対側に立たせる。


ピピーーーッ!!!!!!!


「お前ら体力無さすぎ。もっと走り込まないと、本戦の試合じゃもっとプレッシャーで疲れるんだからな!!」

はーい、と元気に返事をしてバラバラ散っていく生徒達。柄にもなく本気で色々やってしまった。まず審判の立場から欠点を指摘する時点でアウトだと思うのだけれど、まあ良いか。
……一人だけ散らない奴が居た。とても背が低い、銀髪のショートヘアで勝ち気そうな瞳をした釣り目の少女。
さっきの試合でもすこぶる動きが良かった。だがコントロールががさつで、どうしても個人プレーに走ってしまうのが気になる。

「私、千早結奈(チハヤユイナ)って言います!!!! 先輩の事は聞いてます、私と同じPFで無敵の強さを誇ってたって……」
「無敵って……昔の事だし。それにあの時でもそんな上手くいっちゃいなかったよ」
「それでもあの的確な指導……私の気がつかない所まで指導して下さって本当に感謝してます……あの、私は今後どうしたらいいでしょうか?」

基礎ステータスは多分誰よりも高い。それに加えて最近伸び悩んでいる事は休憩時間に先生から聞いていた。足も速い、誰よりも走り続けられる。だからその練習、普段の走り込みなどの基礎練習以外に何か欲しいのだろう。

「結奈、だっけか。あんたのその俊足と体力の高さは立派な武器だ。それに私もそんな背が高いわけじゃなかったし体格面でも問題無い。だから自分の武器を精一杯活かすんだ。しっかり走り込んで、パス回しの精度上げて、それから」
「そんなんじゃっ!!!! 今のままじゃ絶対来月の試合には間に合わない、私がもっと皆を引っ張っていかないといけないのにそんなk」

乾いた音と共に結奈が黙り込む。私も結構酷いなと思いながらもその険しい顔を崩さなかった。

「うぬぼれんな」
「うぬぼれてなんか……私は、今のままじゃ駄目だって思ってるからもっと強くなりたくて」
「じゃあ何で他のやつらと一緒の練習が嫌なんだ。お前らなんて所詮大差ないんだよ。確かにお前は上手い、だけどお前みたいな奴が集団に居ても邪魔なだけだ」
「なん、で……っ……何でだよっ!!!!? 折角こっちが下手に出てんのにそんな上から目線で物言いやがって!!!!!!」

涙でうるんだ瞳を最後に彼女は走り去って行った。どうせ彼女は誰にも見られていない所で人知れず泣くのだろう。自分もそうだった、だから別に同情はしない。

「あらら……大分厳しい事言ってくれるじゃん。かつての自分見た気がしてキレちゃった?」
「別に……指導者に牙をむく選手は要らないんじゃないかなと思っただけで」
「それがキミの本意かい? 三沢真帆」

変に作った言葉が紡ぎ出される。先生はにやりと笑い声のする方を向いた。

「随分遅かったんだね……袴田ひなた」
「ヒナ……っ!!!?」
「何も君の本質は変わっていないと見える。少しくらい大人になったと思っていたボクがバカを見たよ」

そこに居たのはかつての仲間だった。看護学の実習が終わって着替える間もなくやって来たらしくナース服のような物を着ている。 
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