リメイク版FF3・短編集
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会いにゆくよ
前書き
イングズ、15才前後? ルーネス、13才前後?
「友のために」の、何年か後の話。
定かではないが、この1、2年後にあの旅が始まる……のかも。
────お、居た居た。
「おーい、イングズ~……!」
真夜中にサスーン城に忍び込もうとしてるおれは、かがり火の焚かれた見張り塔で警備中のあいつを見つけて、囁き声で精一杯呼びかける。
「 ──── ルーネス? お前……、こんな時間帯に何しに来た」
頭上から、呆れたような落ち着いた声が返ってくる。
「なんかロープとかない~?」
「あるにはあるが……、少し待っていろ。────ほら」
お、分かってんじゃんあいつ。おれに向けて長いロープの先を投げてよこした。
「よっと……、そっちしっかり持っててくれよっ」
「……足元、気をつけろよ」
おれは石壁を縄伝いにひょいひょい登ってくけど……、見張り塔上まで登りきる直前、足を滑らしちまった。
「うぉわっと……?!」
「馬鹿、何やってる……!」
そんなおれの片腕を、とっさにあいつが掴んで引き上げてくれた。
「ふぃ~、危なかった~。さんきゅー、イングズっ」
「……相変わらず、危なっかしい奴だ」
「てか、わりと久しぶりだよなー! 最近めっきり姫さんと町とか村に来ないからさ~」
「だからといって、お前の方から真夜中に来るやつがあるか。……私はこれでも、正式な兵士になったばかりなんだ」
「へっ、マジで? いつの間に見習い卒業してたんだよ! しかも……、おまえ今"わたし"っつった? わっ、女みてぇ! おまえ自分のことは"自分"っつってたのに、"そっち"いっちまったのかっ? ───あ゙いだ!?」
ゲンコツ、食らったっ。
「からかうなッ。見習いからの卒業のひとつのようなもで………私、とてまだ、慣れないんだ」
「"おれ"じゃダメなのかよ、その方が男らしいじゃん!」
「いや……、それでは陛下や姫様に対して礼儀になっていない。────城に仕える者として、普段から礼節に沿って振る舞わなければならないんだ」
「うわっ、メンド! おれ兵士じゃなくてマジよかった……」
「お前には、到底務まらんさ」
「あっ、おまえそれジマンしてんだろー! ……しかも何だよ、ペンダントなんかしちゃって? やっぱ"そっち"いってんじゃね~の……っでぇ?!」
また、ゲンコツっ。
「こ、これは………姫様からの、"賜り物"だ」
「たまわりっ……? 割ったのか、玉。───殴んなって!」
今度は何とか、よけてやった。
────胸元のシズク型のペンダントに、イングズは片手を添えて大事そうにしてる。
「正式な兵士になった記念に……、頂いたんだ。────次は、"騎士"を目指さなければ。サラ姫様の為に」
そう云いきるイングズに、おれはちょっとした寂しさ、みたいなのを感じる。
「おっ、そしたら今度はどんな褒美もらえるんだろうなぁ? 姫さんからの、ちゅ~とかっ?」
「そ、そんなものは望んでいない」
「つーかさ……、たまにはカズスやウルに来いよ。正式な兵士になってたのも知らなかったのは────なんか、さみしいっ」
つい本音が出た。……それでもイングズは、あまり表情を変えてくれない。
「もう見習いの頃のようにはいかないさ、いつまでも子供のままではいられないしな」
「じゃあおれはガキのまんまでいいかな~? 大人ってメンドそうだしぃ」
ちょっとおどけた感じでそう云って、おれは両手を頭の後ろに組んだ。……今はちょっと、反発してやりたい。
「 ────そう云った所で、嫌でも大人にさせられるさ」
そこでなぜかイングズは、おれの頭に片手をのばしてぽんぽんしてきやがった。
「お……、おまえにゃガキ扱いされたかないねっ!?」
「フ……どっちなんだ、結局」
あ、笑った……? こいつが笑うのは、めずらしい。……といっても、ほんの一瞬だけど。
「夜明けが、近いな……。で、結局何しに来たんだ、お前」
「いや、だからその……どうしてんのかな~と思って、おまえが」
「そうか、なら話は済んだろう。もう帰れ」
冷てっ?! せっかく一人でここまで来たのに………
「それとも────少し寝ていくか」
「はぁ!? どういうつもっ……」
「私はまだ仕事があるが……、寝られる場所でそうしていってもいいぞ」
な、何だ………オドかすなよ。
「いいよ、もう帰る。母さんとアルクゥ、心配させちまうし」
「そうか、気をつけてな。───近い内に許可を取って、カズスやウルに顔を出しレフィアやアルクゥ、お前にも会いにゆくよ」
「えっ、マジで!? それ約束……ぜったいな!!」
おれは急に、自分でも驚くくらいの声になった。
「判ったから大きな声を上げるな。────約束だ」
また……笑ってくれた。こいつ、やっぱキライになれない、かも。
END
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