リメイク版FF3・短編集
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やめてしまえ、光の戦士なんて
前書き
白魔レフィア視点。
────そんなっ、みんなが……!?
それは、突然の出来事だった。わたし達はある森の中の開けた湖畔で一休みしていた。
そこへ突然、周りの木々から蔓のように細長い枝がわたし達めがけて幾つも襲い掛かり、白魔道師のわたしは真っ先に捕まってそのまま一本の木に縛り付けられ、
そんなわたしを助けようとした学者のアルクゥ、戦士のルーネス、赤魔道師のイングズの順に、細い枝に胴体と腕を絡め捕られてしまい、中空に持ち上げられた。
『ウフフフフ────』
そして何故か、女のような笑い声が木霊してきた。………森の奥から現れたそれは、簡単に云っちゃえば女に化けた、木のお化け? でもその時、学者のアルクゥに云わせると────
「トレントだよ……! 古木が闇の力で、モンスター化したんだ!」
そうね、でも何で胴体が女のハダカみたいなのかしら……。手足は完全に木の根っぽいけど。
『やぁネ~古木なんテ……。アタイは目覚めたばかりなんダ、ニンゲンの"精力"がほしくテたまらないのサ……! けどアタイ、メスはキライでネ……、オスの精力だけほしいのサァ?』
どうりでわたしだけ木に縛り付けた訳ね。しかも何こいつ、よく喋るモンスターね……。たまにいるのよね、こういうの。
「あ゙~くそ、放せよ化けもん! 精力なんてやれるかー!!って、何だそれ??」
「気力……お前に判り易く云うと、元気の源だ」
「あー、なるほど! 元気なくしたら色々できないもんなっ!」
ルーネスにイングズ……、あんた達ある意味のんきね。
『そこんとこワ大丈夫ヨ~? 代わりにアタイの"特殊な力"注いデあげるからネェ……!』
「ま、まずいよ僕達、操られちゃうかも……?!」
「へ? アルクゥ、そりゃどういう……うあ゙っ!?」
「 ぐ……ッ! 」
胴体に絡んでいた蔓のような枝から針のように鋭い枝先が突き出てきて、3人の後ろ首を刺した……!?
「ルーネス、アルクゥ、イングズ!!」
わたしは思わず名前を叫ぶ。────けど3人は力なく項垂れてしまって、声は届かない。
『あはァ~、オスの精力ワうるおうわァ~! さ~テ……ゲボクになったアタイのオモチャで、そこのメスを遊んでやろうかしらァ~?』
なに……、どういう事……!? 蔓のような細い枝から胴と腕を放された3人は地面に落とされた。
────動かない。今すぐ回復してあげなきゃいけないのに、木の幹に縛り付けられたままのわたしは助けに行けない……!
『さァ、起きナ? アタイのゲボクたち……』
トレントがそう呼び掛けると、3人は項垂れたままおもむろに立ち上がる。
────そういえば、アルクゥが何か云ってた。操られちゃうかもって……、まさか……?!
『そこのハリツケのメスを、八つ裂きにしておヤリ!!』
「 ────させるものかッ!」
羽付き帽子は脱げているイングズが、<ファイラ>を放って虚ろな目の据わったルーネスとアルクゥの動きを牽制した……!
『おやアンタ……、アタイのコントロールが効かないのカイ』
「悪いが………日頃の鍛練の違いかな」
不敵な笑みを浮かべちゃってるのが、かっこいい……。って見とれてる場合じゃないわ、ならルーネスとアルクゥはトレントに操られちゃたわけ……!?
『フ~ン、まァいいワ……。先にそこのアカイのヲやっちゃいナ!』
あっ、アルクゥとルーネスが、イングズに向かって……!? アルクゥはアイテムの[南極の風]を使って<ブリザラ>を放ってきた。イングズはそれを避けたけど、直後にルーネスが二刀流で踏み込んできて、イングズはそれを片手剣だけで受け止めた……!
す、すごいわ、さすがお城の兵士を務めてるだけあるわね……。わたしも、何とかしないと…! でも、蔓のような枝にすごくキツく腕と胴を巻き付かれてて、抜け出せない……っ。
「 ────すまない、アルクゥ!」
あ、イングズがアルクゥの隙を突いて腹部を拳で強打……! アルクゥ、倒れたわ。気を失わせたのね……。
『ヤルじゃないの~、気に入ったヨ~? アタイも遊びタくなってきたワ~。ソ~レ、<木の葉乱舞>!!』
「 ゔ…… ッ !?」
幾つもの木の葉が鋭利な刃になって、イングズを襲ってる……!
そこへさらに操られているルーネスが追い討ちを掛けるように踏み込んできた。
────これじゃ、赤魔道師のイングズでも回復する暇さえ、与えられない……!
『フフフ~、いいじゃな~イ、オスをイタぶるのも楽しいワァ! さァ、アタイのムチもくらいなヨ~!!』
あいつ……、許せない! すぐにでも回復してあげたいのに……っ。────あ、イングズが、剣にすがるように跪いた。
そこにルーネスが近づいて、容赦なく蹴り倒した……?! イングズが、仰向けに倒れて……っ
「やめてルーネス! 正気に戻って!! それ以上の事したらあんた、イングズを────」
わたしの叫びも虚しく、ルーネスは馬乗りになって片方の剣の柄を逆手にイングズへ振りかざす────いやっ、そんなの、見たくない………!!
「まだ………まだだな、ルーネス────」
え? イングズが、ルーネスに話し掛けてる……?
「トレントに、マインドコントロールされるようでは……。お前は、その程度………だったか。私を、失望させるな………」
ルーネスの、動きが止まってる────
『ナニしてんのサ! ドコでもいいカラ、突き刺してやんナ!!』
「光の……戦士など、やめてしまえ。お前には所詮、無理だったんだ………。ウル村で、無邪気な子供のまま、遊んでいろ。お前には、その方が、似合っている──── 」
あっ、ルーネスが剣を振り降ろして………!?
────え、自分の、腿に────?
「舐め、んなよ、イングズ………。おれは、やめない────あんな奴にも、負けねぇ!!」
自分で傷付けた脚で立ち上がったルーネスは、振り向き様電光石火の二刀流でトレントに踏み込んだ。
『ギヤアアァ?!!』
更にそこへ追い撃ちを掛けて、いつの間にか意識を戻していたアルクゥがアイテムの[ボムのかけら]を投げつけて<ファイラ>を引き起こし、トレントは激しい炎に巻かれ、奇声を上げながら燃え尽きてゆく─────
「………ルーネス、アルクゥ、イングズ!!」
トレントが倒されたと同時に、わたしにキツく巻き付いていた蔓のような細い枝も力を失って自然に解け、すぐに3人へ………一番ダメージを負っているイングズへ駆け寄る。
「ごめんなさい! わたし、捕まってるだけで何も出来なくて……! <ケアルラ>!」
「僕も、ごめんねイングズ……。あの一撃で、何とか正気に戻れたよ。これ……、ハイポーションも使って」
「あぁ………二人共、ありがとう。大分、回復したよ」
「ルーネス、あんたは────?」
あいつったら背を向けたままでいる。気まずいのは分かるけど……。わたしが傍に行って回復させようとしたら、イングズが引き止めてきた。
「待て、レフィア。────私が行こう」
そう云って立ち上がったイングズは、後ろ向きのルーネスに近寄って行った。
「片方の脚………見せろ、回復する」
「 ─────いい 」
「良くない。そのままでいたら、足手まといだろう」
「どうせそうだよ! イングズは強くて、操られもしないで………おれはどうせ、ガキだよ」
「 ────"やめない"と云ったのは、嘘だったのか」
「"やめろ"って云ったの、そっちだろ!?」
いつの間にかルーネスは、イングズに向かい合って反発してる。
「本気でやめて欲しくて云ったんじゃない。だが……、お前を傷付けたのなら謝るよ。────すまなかったな」
「な……? 何で、イングズが謝るんだよ……、おかしいだろ! 謝らなきゃいけないのは、おれの、方なのに────い゙っつ……!」
ルーネスは立っていられなくなって、身を屈めちゃった。
そこへイングズは有無を云わせず、跪いて片足に<ケアルラ>を掛けてあげる。
「 ────ごめん。ありがとう、イングズ」
「さぁ、行くぞ。私達の旅は、まだまだこれからだ」
イングズが先に立ち上がって、微笑みを交えてルーネスに片手を差し伸べた。
ルーネスはどこか気恥ずかしそうにその手を取る。
………何だかんだ云ってこの二人、いいコンビなのよね。
END
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