VONGOLA TAIL
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第3話 火竜とタコヘッドと猿と牛
クエストに行ったっきり1週間も帰って来ないロメオの父親、マカオを探しに行くために、ナツとハッピーとツナの3人はマカオの仕事先のハコベ山に馬車で向かっていた。
「でね!あたし今度ミラさんの家に遊びに行く事になったの~」
「下着とか盗んじゃダメだよ」
「盗むかー!」
「てか、どうしててめぇがいるんだよ、新入り」
マカオを探しに行くメンバーに何故かルーシィがいることで少し不機嫌になる獄寺。
「何よ?何か文句あるの?」
「大有りだな。役立たずは別に来なくてもいいぜ」
「役立たずって何よ!私の実力を知らないくせに」
「けっ、どうせ大した魔法じゃねえんだろ」
「あぁ、もう!ムカつく。何なのよこいつは!」
ルーシィが獄寺を指差して言う。溜息をして今度はナツの方へ向いた。
「それにしてもアンタ本当に乗り物ダメなのね。何か…色々かわいそう…」
「は?」
ガタンッ
いきなり馬車が止まった。
「止まった!」
馬車が止まったと同時に復活するナツ。外に出るとそこは……
「す…すんません…これ以上は馬車じゃ進めませんわ」
猛吹雪が吹きさらす雪山であった。
「何コレ!?山の方とは言え今は夏季でしょ!?こんな吹雪おかしいわ!さ…寒っ!!」
「そんな薄着してっからだ」
「あんたも似たようなモンじゃないっ!!」
「そんな薄着してるからだ」
「あんたいつの間にコートとか着たのよ!」
ナツは裸の上からジャケットを着ており首にはマフラーを巻いている。ハッピーは何も着ていない。獄寺はいつの間にかコートを着ていた。
「そんじゃオラは街に戻りますよ」
そう言い残しておじさんは馬車と共に去って行った。
「ちょっとぉ!帰りはどーすんのよ!キィー!!」
「あいつ…本当うるさいな」
「あい」
「やっぱ役立たずじゃねえか」
去っていく馬車に向かって叫ぶルーシィを見て、3人は口々にそう言っただった。
その後4人はマカオを探して山を歩き始めた。
「その毛布貸して…」
「ぬお」
いきなり、ルーシィはナツが持ってきていた毛布を借りて身に纏う。そして1本の鍵を取り出す。
「ひひ…ひ…開け……ととと…時計座の扉『ホロロギウム』!!」
魔法陣から置時計の姿をした星霊が現れた。
「おお!」
「時計だぁ!」
「……精霊魔法か。まぁ、珍しい魔法ではあるな」
獄寺がふと呟く。
ホロロギウムを召喚したルーシィはホロロギウムの体内に入った。
「『あたしここにいる』と申しております」
「何しに来たんだよ」
「使えねえな」
「『うるさいわよ!………何しに来たといえば、マカオさんはこんな場所に何の仕事をしに来たのよ!?』と申しております」
「知らねえでついてきたのか?凶悪モンスター〝バルカン〟の討伐だよ」
「!!!」
ナツの説明を聞いたルーシィは驚愕で目を見開く。
「『あたし帰りたい』と申しております」
「はいどうぞと申しております」
「勝手にしろと申しております」
「あい」
そんなルーシィを気にもかけず、3人はまた歩き出した。
「マカオーー!いるかー!!」
「いたら返事しやがれー!!」
「バルカンにやられちまったのかーー!」
「マカオーーー!!」
ナツと獄寺はマカオの名を呼びながら彼を探す。すると、何かが飛び出してきて、2人に攻撃を仕掛けてきた。
「あぶねぇ!」
「よっと」
獄寺は横っ飛びで。ナツはバク転で躱した。
「バルカンだーー!!」
攻撃を仕掛けて来たのは、猿のような生き物『バルカン』だった。
「ウホ!」
「ぬお!?」
「何だ!」
バルカンは臨戦態勢をとったナツ達を飛び越えた。その先には……
「人間の女だ!」
「!?」
ルーシィ(ホロロギウム)がいた。
「うほほーーー!」
そしてそのままバルカンはホロロギウムごとルーシィを連れ去って行った。
「おお、しゃべれんのか」
「ちっ!あの金髪、あっさり連れ去られやがって……」
ナツは特に慌てた様子もなく手のひらに拳を打ち付けて気合を入れる。
獄寺はめんどくさそうに溜息をつく。
「『てか助けなさいよォオオオ!!』と申しております」
そのままバルカンにルーシィは攫われた。
その後、ルーシィはバルカンの住家である洞窟に連れて来られていた。
「なんでこんな事に……なってる分けーーー!!」
「…と申されましても」
「ウッホウホホ!ウホホホ~」
「なんかあの猿テンション高いし!!」
ホロロギウムの中で叫ぶルーシィと
そのルーシィの周りを踊って回るバルカン。
「ここってあの猿の住家かしら? ……てか、ナツと隼人はどうしちゃったのよー!」
「女」
「!!!」
ルーシィの目の前にバルカンが近づいていた。すると……
ポウン
「!!」
ホロロギウムが消えてしまった。
「ちょ……ちょっと!!ホロロギウム!消えないでよ!」
「時間です。ごきげんよう」
「延長よ、延長!ねぇっ!!」
ルーシィは消えたホロロギウムに叫ぶが何も反応がない。
「んふ、んふ……」
「…………!」
震えるルーシィにバルカンが近寄る。
「うおおおっ!!やっと追いついたーっ!」
「ナツ!」
「ったく。無事か、新入り!」
「隼人も!」
状況がやばかったルーシィの元にナツと獄寺が来る。
「オイ、サル!マカオはどこだ!」
「ウホ?」
バルカンは首を傾げる。
「言葉わかるんだろ?マカオだよ! 人間の男だ!」
「男?」
「そうだ。どこに隠した!!」
「うわー!『隠した』って決め付けてるし!」
ナツの話しを聞いたバルカンは笑みを浮かべた。
「ウホホ」
そしてナツと手招きする。
「おおっ!通じた!!」
何の疑いもなくそれに着いて行くナツ。バルカンは一つの穴を指した。その中を覗き込むナツ。だが……
ドンッ!
「あ?」
ナツはバルカンに突き飛ばされた。
「あぁぁぁぁぁぁあああ!」
「ナツー!!」
「てめぇ、この雪ゴリラ!」
それを見たルーシィは慌てて穴の中に駆け寄り、獄寺はバルカンを睨みつける。
「やだっ!ちょっと…死んでないわよね!あいつ、あー見えてすごい魔導士だもんね!」
「あぁ…別にナツの心配ならしなくていい。あいつは大丈夫だ。それより俺達の相手はあいつだろ」
獄寺とルーシィはバルカンを睨む。
「男いらん、男いらん!女~女~!ウッホホホ~」
「女!女ってさっきからこのエロザル」
「どいてろ、新入り。こいつの相手は俺がする」
そう言って獄寺は懐からダイナマイトを取り出す。
「てか、あんたなにやろうとしてんのよ!」
「あん?見ればわかんだろ。こいつは俺が倒すんだよ!」
「ここは洞窟よ!!そんなもの使ったらどうなるかくらいわかるでしょ!」
「うっ……」
ルーシィが獄寺に怒鳴る。だが、ルーシィが正論を言ったため獄寺言い返せない。
「隼人は下がってて。ここはあたしがやる」
そう言ってルーシィを一本の金色の鍵を出した。
「開け…金牛宮の扉…『タウロス』!」
「MO---!!」
魔法陣からルーシィの前に斧を背負った巨体の牛が現れる。
「牛!?」
「あたしが契約している星霊の中で1番パワーがあるタウロスが相手よ!エロザル!」
「少しは強そうじゃねえか」
獄寺はタウロスを見てそう呟く。
「ルーシィさん!相変わらずいい乳してますなぁ、MOーステキです」
「そうだ…こいつもエロかった」
「前言撤回だ。こいつ大丈夫か?」
タウロスとバルカンはあまり変わらないようだ。
「ウホッ、オデの女取るな!!」
「オレの女?」
バルカンの言葉にタウロスが反応する。
「それは聞き捨てなりませんなぁ」
「そうよタウロス!あいつをやっちゃって!」
「オレの女ではなく、オレの乳と言ってもらいたい」
「もらいたくないわよっ!!」
タウロスの的外れな発言にツッコミを入れるルーシィ。それを見た獄寺は溜息をついた。
「MO準備OKー!」
「ウホォ!!」
斧を構えて突進するタウロスとそれを恐れず突撃するバルカン。
「よ~く~も落としてくれたなぁ…」
すると、ナツが落ちた穴から声が聞こえる。
「あ~ぶ~な~かった~…」
「ナツ!よかった!!」
「おせぇよ、炎バカ」
ルーシィはナツの無事を喜び、獄寺は腰に手を当てて言う。
「なんか怪物増えてるじゃねーか!」
「MOふっ!!」
「きゃああああっ!」
ナツは味方であるはずのタウロスを敵と勘違いしして蹴り飛ばした。
「MO…ダメっぽいですな……」
そのままタウロスは戦闘不能になってしまった。獄寺がルーシィの後ろで合掌していた。
「弱ーー!!人がせっかく心配してあげたっていうのに何すんのよー!てゆーかどうやって助かったの!?」
ルーシィの問いにナツは笑って答える。
「ハッピーのおかげさ。ありがとな」
「どーいたしまして」
ナツの頭上に羽を生やしたハッピーが飛んでいた。
「そっか…ハッピー羽があったわねそういえば…」
「あい。能力系魔法の一つ、エーラです」
「へぇ~…それはそうとアンタ乗り物ダメなのにハッピーは平気なのね」
ルーシィが何気無くいった。
「何言ってんだオメェ……」
獄寺が溜息をつく。
「ハッピーは乗り物じゃねえだろ。仲間だ」
「「ひくわー」」
「そ、そうね。ごめんなさい」
ナツと獄寺に引かれた。
「ウホホォッ!!」
痺れを切らしたバルカンナツと獄寺に襲いかかる。
「いいか?フェアリーテイルのメンバーは全員仲間だ。じっちゃんも、ミラも…」
「来たわよっ!!」
ルーシィは叫ぶが、ナツは気にせず話し続ける。
「うぜぇ奴だが、グレイやエルフマンも…」
「もちろん、10代目や認めたくねえが山本もだ」
「わかったわよ!わかったから!後ろ!!」
2人のすぐ後ろにバルカンが迫ってくる。
「ハッピーもルーシィも仲間だ!
だから…」
ナツはすぐさま後ろをむいて
「オレはマカオを連れて帰るんだ!!」
ドゴォォン!!
バルカンの突進を躱しながらナツは炎の拳でバルカンを思いっきり殴った。
「早くマカオの居場所を言わねえと黒コゲになるぞ」
「ほら、さっさとこいよ。雪ゴリラ」
そう言って獄寺は指に炎を灯して1つの箱を炎を注入する。
「な、何あれ!?」
獄寺の左腕に髑髏の武器が装着された。
「あれは隼人専用の武器だよ。隼人はあのリングに死ぬ気の炎って言う炎を出すんだ」
「死ぬ気の炎……聞いたことない炎だわ」
「おいらも隼人達が入ってきて初めて知ったんだ。だからおいらも詳しい事はわからない。それで、隼人は
腰に巻いている箱にその炎を注入することで自分専用の武器を出すんだよ」
「………強いの?」
「強いよ。ナツに初めて勝負を挑まれた時に苦戦はしたけれど勝ったのは隼人だったから…」
「ナツより強いの!?」
ルーシィは驚き獄寺を見る。獄寺はバルカンをじっと見つめていた。
「ウホホッ!」
そして、洞窟の天井に生えていた氷柱を折り、ナツに向かって投げつける。
「火にはそんなモン効かーん!」
「ウホ」
バルカンは近くに落ちていたタウロスの斧を拾う。
「それは痛そうだ!」
その斧をバルカンは容赦無く振るう。
「わっ!」
何とか避けて行くナツ。しかし……
つるん!
「なっ!?」
ナツが床にある氷で滑ってこけてしまった。
「ウホォーーーー!!」
それをチャンスと思ったバルカンはナツに向かって思いっきり斧を振り下ろした。
「くっ!!」
ナツはそれを何とか受け止める。
力込めてナツに斬りかかろうとバルカンとそれを阻止するナツ。すると……
「チビボム!」
獄寺がバルカンを蹴り飛ばす。
「しっかりしやがれ、炎バカ!これやったらイテェんだよ!」
「……今なにしたの?」
「隼人はあの武器の他にもダイナマイトも武器にして使うんだよ。今のは『チビボム』っていうのを自分の背中に放って自分を加速させたんだ。その勢いでバルカンを蹴り飛ばしたんだよ」
「なるほど……」
ハッピーの解説に納得するルーシィ。
「隼人!」
「おう!」
ナツは左拳に炎を纏い、獄寺は普通サイズのダイナマイトを取り出し、
それを自分の武器の髑髏の口に差し込む。
「火竜の…鉄拳!」
ナツはバルカンの腹に拳をいれる。
そうして、バルカンは吹き飛んだ!」
「とどめだ!果てろ、『フレイムアロー!!』
獄寺はレーザーのようなものでバルカンを吹き飛ばした。喰らったバルカンは吹き飛ばされ、壁に叩きつけられ、そのまま気絶した。
「あーあ…この猿にマカオさんの居場所聞くんじゃなかったの?」
「あ!そうだった…」
「しまった、やりすぎたな……」
吹き飛ばした後に後悔する2人。
みみみみみ…
突然バルカンの身体が輝き出し、ナツと獄寺は身構える。
ボウゥン
すると、音を立ててバルカンは男性に姿を変えた。
「あぁ!!」
「雪ゴリラがマカオになりやがった…」
「えっ!?」」
バルカンから男性になった人は、ナツ達が探していたマカオだった。
「バルカンに『テイクオーバー』されてたんだ!」
「テイクオーバー?」
「身体を乗っ取る魔法だよ」
探していた仲間が見つかって安心する4人。だが、2人が吹き飛ばした先はさっきナツがバルカンに落とされた穴だった。
「「あーーーー!!」」
穴から落ちそうになるマカオを見て、ナツと獄寺とハッピーが走る。
がっ!
ナツはマカオの足をとり、獄寺はナツの体を。ハッピーは獄寺の足を掴む。
「3人は無理だよっ!羽も消えそう!!」
「くっそぉぉぉぉお!!」
徐々に落ちていく4人。
「んっ!!」
ルーシィがハッピーの尻尾を掴んだ。
「「ルーシィ(新入り)!」」
「重い…」
しかし、ルーシィは4人も持ち上げる程の力がない。
その時、ルーシィの後ろから誰かがルーシィの手を掴む。
「MO大丈夫ですぞ」
「タウロス!」
そいつは、ナツに殴られて気絶していたルーシィの星霊、タウロスだった。
「牛ーーーー!!いい奴だったのかぁーー!」
「新入りの精霊………助かったぜ」
ナツは自分が気絶させてしまったタウロスに涙を流しながら感謝して、
獄寺は安堵の溜息をついた。
その後、タウロスに引き上げられた4人はは傷ついたマカオの治療をしていた。
「テイクオーバーされる前に相当激しく戦ったみたい」
「酷い傷だわ」
「くそ!このままじゃヤベェ。せめて芝生頭がいたら……」
「マカオ! しっかりしろよ!」
「バルカンは人間をテイクオーバーすることで生きつなぐモンスターだったんだ……」
「わき腹の傷が深すぎる…持ってきた応急セットじゃどうにもならないわ」
と言うより、もう助からない……とルーシィは心の中で諦めかけた。だが、ナツは諦めず手に火を纏い、それをマカオのわき腹の傷に押し当てた。
「ぐああああっ!!」
「ナツ!?」
「何してんだよ、炎バカ!!」
「今はこれしかしてやれねえ!ガマンしろよ! マカオ!!」
「ぐああああっ!!」
「ルーシィ!隼人!マカオを押さえろ!」
ナツは火傷させて傷を塞ぎ、止血をしようとした。ナツのしようとしていることがわかったナツと獄寺はマカオを押さえつける。
「死ぬんじゃねえぞ!ロメオが待ってんだ!!」
ナツの叫びを聞いたマカオは僅かだが、意識を取り戻した。
「ハァハァ…くそ、情けねえ……19匹……は倒し…たん…だ」
「え?」
「20匹目にテイクオーバー…され……ぐはっ」
「わかったからもうしゃべんな!傷口開くぞ!」
「ムカつくぜ…ちくしょぉ…これ…じゃ……ロメオに…会わす顔が…ね……くそっ」
「黙れっての!!殴るぞ!」
マカオは傷の痛みに耐えながら、己の不甲斐なさををずっと嘆いていた。
「ロメオーー!!」
「!!」
名前を呼ばれたロメオはバッと顔を上げる。そこには、ナツと獄寺とルーシィとハッピー。それに申し訳なさそうにしているマカオがいた。
「父ちゃん…ゴメン…オレ……!」
ロメオは涙を流す。
「心配かけたな。スマネェ」
涙を流すロメオをマカオを力強く抱きしめる。
「いいんだ…オレは魔導士の息子だから……」
「今度クソガキ共にからまれたら言ってやれ。テメェの親父は怪物19匹倒せんのか!?ってよ」
マカオは笑って言う。それを聞いたロメオは涙を流しながら笑った。そして、帰ろうとしているナツ達の方を向く。
「ナツ兄ーー!隼人兄ー!!ハッピー!ありがとぉーー!」
「おー」
「気にすんなー」
「あい」
「それと…ルーシィ姉もありがとぉっ!!」
ロメオのお礼の言葉に、4人は笑って帰っていった。
「おい、新入り」
獄寺はルーシィに話しかける。
「何よ。てか、その新入りっていい加減に……」
「今日は助かったぜ」
「えっ!?」
素直に礼を言われて驚くルーシィ。
「お前がいなかったらマカオを助けられなかったかもしれねぇ。だから………」
獄寺はルーシィに背を向けていった。
「ありがとよ、『ルーシィ』」
そう言って獄寺はルーシィと反対側の方へ歩いていった。
その時、ルーシィの顔を少し赤くなったが、クスッと笑って歩いていった。
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