dark of exorcist ~穢れた聖職者~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第13話「眠れない悪魔狩り」
―――【"ルークス・ソーリエ" 大聖堂 2階】
"ルークス・ソーリエ"の大聖堂の2階にあたる部分は、悪魔狩り達の部屋になっている。
2階に上がると、長い廊下が続いている。廊下の両端には大きな窓が並んでおり、明るく開放感がある。
部屋は全部で8部屋ある。
アイリスら5人と、まだ帰還していない3人の部屋だ。
ちなみに、アルバートは大聖堂の長椅子で寝ているため、自分の部屋を持っていない。
―――深夜 2:45
少女は夢を見た。
それは過去の記憶。
"銀髪の子供"と呼ばれ、忌み嫌われ続けた………死にたくなるような毎日。
"銀髪の子供"………………それは悪魔の末裔の証。
…………………………
……………ここは、どこ?
…………………痛い…………
………………………痛いよ………
『悪魔の末裔め!!』
『女の子に化けるなんて、ずる賢い悪魔ね!!』
『あの銀髪見ろよ………悪魔の末裔の証だぞ!』
………………違うよ……
……………私は人間だよ………?
………………………………皆と同じ、人間だよ……?
……………なんで、こんな暗い場所に閉じ込めるの………………?
『悪魔の末裔め…………悪魔の血は、絶やさねばならんのだ!!!』
…………………神父さんが、棍棒を振り上げてる…………
棍棒が降り下ろされる瞬間……………
「ひっ………………きゃあぁっ!!!」
アイリスは毛布を取りはらい、飛び起きた。
「ハァ………ハァ………ハァ………」
眼には涙を溜め、自身の細い両腕を抱き、震えていた。
「………思い出したくないのに………なんで夢に出てきちゃうのかな………」
アイリスはパジャマ姿で廊下に出た。
少しでも夢を忘れるために外の空気が吸いたかった。
長い廊下は月明かりに照らされ、真夜中なのに明るい。
「………ん?」
廊下の窓際に誰かが立っていた。
その人物は、窓を背にして立っている。そのせいで顔がよく見えない。
しかし、アイリスはその人物の背格好と、手に持っていた日本刀で誰か分かった。
「………キリシマ君?」
名前を呼ばれ、キリシマはアイリスの方に顔を向けた。
「……………………眠れないのか?」
「うん……ちょっと嫌な夢見ちゃってね……」
「………………そうか」
「キリシマ君も眠れないの?」
アイリスにそう聞かれたキリシマは、うつむいて黙ってしまった。
そんなキリシマの様子を見たアイリスは、気まずそうな表情を浮かべキリシマに謝る。
「ごめんね……聞いちゃいけないことだった?」
「………………構わない」
しばらく沈黙が続いた。しかし、お互い気まずいとは思っていない。
その沈黙を破ったのはキリシマだった。
「……………夜は嫌いだ。俺の家族が殺された時も夜だった」
「……………………その日から………夜に眠れたことなんて無い」
「キリシマ君………」
それを聞いたアイリスは、キリシマの真横まで移動し、そのままキリシマの真横で体育座りした。
「………………?」
「眠れないなら、朝が来るまで隣にいるよ。………私も眠れそうにないから」
「………………………好きにしろ」
眠れない2人の悪魔狩りは、月明かりが射し込む廊下で静かに朝を待った。
―――朝 6:04
「…………うぅん……」
「……………ぅん………………あれ?」
目が覚めたアイリスの隣には、キリシマの姿はなかった。
「(いつの間にか寝ちゃった………あれ?)」
アイリスは自分にかけられていた毛布の存在に気がつく。
その毛布は、自分の部屋のものではないことも。
「…………優しいなぁ、キリシマ君……」
「あら、おはようアイリスちゃん♪」
黒いズボンに白Yシャツ姿のアリシアが部屋から出てきた。
「あ、おはようアリシアさん♪」
「ん? ねぇアイリスちゃん、あなたまさかここで寝てたの?」
アリシアが見たのは、廊下の隅で毛布にくるまっているパジャマ姿のアイリスだった。
アリシアは凄まじく心配そうな表情を浮かべている。
「ちょっと嫌な夢見ちゃって……キリシマ君と廊下で話してたら……いつの間にか寝ちゃってた」
「なぁ!? キリシマ!? アイリスちゃん! あの無表情野郎に何かされなかった!?」
「え?」
キョトンとした表情を浮かべるアイリスの目の前で、アリシアがブツブツと何か呟いている。
「…………あんの野郎……アイリスちゃんと真夜中に二人きりで………」
「……………俺がなんだって? アリシア」
キリシマが大聖堂の階段を上がって廊下に姿を現した。
それを見たアリシアは、まるで弾丸のような勢いでキリシマに詰め寄った。
「キリシマァァァ!! アイリスちゃんと二人きりで羨ま………じゃなくて、何してやがったのよ!?」
「……………本音が出たな。別に………眠れない者同士話し込んでいただけだ」
「……………誤魔化そうってんなら、あたしの拳でアンタの顔潰すわよ?」
「そこまでにしてください。アリシアさん、難癖つけないでさっさと下行きますよ」
部屋から出てきたクリスが、アリシアのYシャツを引っ張って下の大聖堂に引き摺っていった。
「…………………………アリシアは相当お前を気に入っているようだな」
「う~ん………」
「………………お前も早く着替えてこい」
「うん……あ、キリシマ君!」
「…………………なんだ?」
「毛布、ありがとね」
「………………………あぁ」
キリシマは毛布を受け取らず、そのまま下の大聖堂に降りていった。
アイリスはキリシマの毛布を部屋に入れ、畳んで置いておいた。
「今日も頑張ろう!」
ページ上へ戻る