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問題児と最強のデビルハンターが異世界からやってくるそうですよ?

作者:Neverleave
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Mission2 ~新世界~

 
前書き
現在問題児シリーズ読んでいます。
今まで二次創作ものやWiki、アニメだけで知識を得てたけど、やっぱり知識を得るなら原作が一番だよなぁ。
ま、それが当然だけど。
 

 
「――あ、あり得ない。あり得ないのですよ。まさか話を聞いてもらうために小一時間も消費してしまうとは。学級崩壊とはきっとこのような状況を言うに違いないのデス」
「学級崩壊か。いいね、ウサギちゃんみたいな先生がいたら真っ先に俺が口説いちまうな。相当愉快な学校になりそうだ」
「そんなことはいいからさっさと話を続けさせようぜダンテ」
「おっと、わりぃなイザヨイ」

 なんとかして話を聞いてもらう状況を作り出すことに成功した黒ウサギだったが、そのために使った労力と時間は馬鹿にならないものだった。
 問題児などという枠にこの者達は当てはまらない。超超超超問題児だ。
 特に十六夜という名の少年とダンテという銀髪の男は、その中でもトップクラス。エリートの道を我が物顔で真っ直ぐつっ走っている。
 これから先のことを思うと頭が痛くなってくるが、黒ウサギは自分を叱責してなんとか気持ちを切り替えた。

「それではいいですか、御四人方。定例文で言いますよ? 言いますよ? さあ言います! ようこそ、゛箱庭の世界″へ! 我々は御四人方にギフトを与えられた者達だけが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼントさせていただこうかと召喚いたしました!」

 まるでどこかのテーマパークの入口で行われるアナウンスのように、黒ウサギはダンテ達に向かって言った。

「ギフトゲーム?」
「そうです! 既に気づいていらっしゃるでしょうが、御四人方は皆、普通の人間ではございません! その特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた恩恵でございます。『ギフトゲーム』はその゛恩恵″を用いて競い合う為のゲーム。そしてこの箱庭の世界は強大な力を持つギフト保持者がオモシロオカシク生活できるために造られたステージなのでございますよ!」

 説明とともに、箱庭をアピールするために両手を広げる黒ウサギ。
 そのとき、『悪魔』という言葉を聞いたダンテの表情が一瞬だけ変わったのを、黒ウサギは見逃さなかった。
 やはり彼は何かしら『悪魔』と縁のある人物であるらしい。その気配などから推測してみたところ、おそらくは悪魔から何らかの力を授かった者であるだとかで何らかの関係を持っているのだろう。
 しかし、黒ウサギはそんなことを考えている素振りなど一切見せなかった。
 ダンテ一人のことを気にしているだけの余裕はこちらもないし、そんなことよりも優先すべきことというものがあるのだから。

(まぁ、我々のコミュニティに誘うことができれば、そこらへんのことも差し支えなければ教えてもらいましょうか)

 そこで飛鳥が質問をすべく挙手をしたので、「どうぞ!」と発言の許可を与える。

「まず初歩的な質問からしていい? あなたのいう゛我々″とは、あなたを含めた誰かなの?」
「YES! 異世界から呼び出されたギフト保持者は箱庭で生活するにあたって、数多とある゛コミュニティ″に必ず所属していただきます♪」
「嫌だね」
「属していただきます! そして『ギフトゲーム』の勝者はゲームの゛主催者ホスト″が提示した賞品をゲットできるというとってもシンプルな構造になっております」
「…………〝主催者″って誰?」
「様々ですね、暇を持て余した修羅神仏が人を試すための試練と称して開催されるゲームもあれば、コミュニティの力を誇示するために独自開催するグループもございます。特徴として、前者は自由参加が多いですが〝主催者″が修羅神仏なだけあって凶悪かつ難解なものが多く、命の危険もあるでしょう。しかし、見返りは大きいです。〝主催者″次第ですが、新たな〝恩恵ギフト″を手にすることも夢ではありません」

 ヒュウ♪ と口笛を吹き、嬉しそうに身体を揺さぶるダンテ。

「そいつは楽しみだな。スリリングで楽しいゲームに、新しい力も手に入るってか……おお、わりぃわりぃ。続けてくれ」

 説明の途中であったということもあって、飛鳥や耀からジト目で見られたダンテは黒ウサギに説明の続きを促す。
 それに従い、黒ウサギは中断させていた説明を再開した。

「それでは説明に戻ります。後者は参加のためにチップを用意する必要があります。参加者が敗退すればそれらはすべて〝主催者″のコミュニティに寄贈されるシステムです」
「後者は結構俗物ね……チップには何を?」
「それも様々ですね。金品・土地・利権・名誉・人間……そしてギフトを賭けあうことも可能です。新たな才能を他人から奪えばより高度なギフトゲームに挑むことも可能でしょう。ただし、ギフトを賭けた戦いに負ければ当然――ご自身の才能も失われるのであしからず」

 黒ウサギは、愛嬌たっぷりの笑顔に黒い影を見せる。
 挑発ともとれるその笑顔を見てダンテもニヤリと笑うが、同じく挑発的な声音で飛鳥が問う。

「そう。なら最後にもう一つだけ質問させてもらっていいかしら?」
「どうぞどうぞ♪」
「ゲームそのものはどうやったら始められるの?」
「コミュニティ同士のゲームを除けば、それぞれの期日内に登録していただければOK! 商店街でも商店が小規模のゲームを開催しているのでよかったら参加していってくださいな」

 飛鳥は黒ウサギの発言に片眉をピクリとあげる。

「……つまり『ギフトゲーム』とはこの世界の法そのもの、と考えてもいいのかしら?」

 お? と驚く黒ウサギ。
 一部であるとはいえこの段階でもう新世界の核心を理解するとは、なかなかに頭の回転が速いようだ。
 問題児であるにしても、これは評価できるところだろう。

「ふふん? 中々鋭いですね。しかしそれは八割方正解の二割間違いです。我々の世界でも強盗や
窃盗は禁止ですし、金品による物々交換も存在します。ギフトを用いた犯罪などもってのほか! そんな不逞な輩は悉く処罰します――が、しかし! 『ギフトゲーム』の本質は全くの逆! 一方の勝者だけが全てを手にするシステムです。店頭に置かれている商品も、店側が提示したゲームをクリアすればタダで手にすることも可能だということですね」

 タダ、という言葉にダンテは心ひそかに喰い付いた。
 彼は何でも屋の事務所、デビルメイクライを開いてはいるのだが、経営は赤字続きで金にとても困っているのだ。
 まぁ原因は、ダンテが仕事を選り好みするところただ一つに尽きるのだが。どれだけ大金を積まれようが、ダンテは依頼主や仕事の内容が気に入らなければ絶対に受け入れないし、逆にどれだけ収入が入らなくとも面白そうであれば喜んで受ける。ハッキリ言って気まぐれなのだ。
 そのため多くの費用もツケでなんとかしているし、最近ではそれを拒否され始めていた。
 だが、この世界ではゲームさえクリアすればなんでも手に入るという。
 まさに夢のようなシステムである。こっちに本拠を移してもいいかもしれないと、一瞬だけダンテは考えた。

「そう、中々野蛮ね」
「ごもっとも。しかし〝主催者″は全て自己責任でゲームを開催しております。つまり奪われるのが嫌な腰抜けは初めからゲームに参加しなければいいだけの話でございます」

 黒ウサギは一通りの説明を終えたのか、一枚の封書を取り出した。

「さて。皆さんの召喚を依頼した黒ウサギには、箱庭の世界における全ての質問に答える義務がございます。が、それらすべてを語るには少々お時間がかかるでしょう。新たな同士候補である皆さんをいつまでも野外に出して奥のは忍びない。ここから先は我らのコミュニティでお話させていただきたいのですが……よろしいです?」

 全員に問いかける黒ウサギ。
 飛鳥と耀は特に何もないらしく、それで構わないというように首を縦に振った。
 だが、ダンテと十六夜は違った。

「「まてよ。まだ俺が質問してないだろ」」

 同時に。全く同じ言葉で、二人は黒ウサギを呼び止めた。
 その場にいる全員が二人に注目し、そしてダンテと十六夜も互いを見てクックと笑う。
 まるでそれは、仲の良いイタズラ好きな兄弟を彷彿とさせる光景だった。

「なんだ、お前も聞きたいことがあったのかよダンテ」
「奇遇だな。おまえもかイザヨイ。いいぜ、おまえが全部しゃべりな、どうせ同じこと聞くんだからよ」

 と言って、ダンテは手を差し出して「どうぞ」と質問するのを十六夜に任せた。
 任された十六夜はよしきたとばかりに頷き、続いて黒ウサギへと視線を移した。
 ずっと二人に刻まれていたはずの敬白な笑顔がなくなっていることに気付いた黒ウサギは、構えるように聞き返す。

「……どういった質問です? ルールですか? ゲームそのものですか?」
「そんなものはどうでもいい。腹の底からどうでもいいぜ、黒ウサギ。ここでオマエに向かってルールを問いただしたところで何かが変わるわけじゃねぇんだ。世界のルールを変えようとするのは革命家の仕事であって、プレイヤーの仕事じゃねぇ。俺が聞きたいのは…………たった一つ、手紙に書いてあったことだけだ」

 十六夜は、視線を黒ウサギから外すと飛鳥、耀、続いてダンテと他の者を見回し、巨大な天幕によって覆われた都市に向ける。
 彼は何もかもを見下すような視線で一言、


「この世界は…………面白いか?」

「――――――――――」

 他の三人も、無言で返事を待つ。
 それも当然であろう。なにせ彼らを呼んだ手紙には、こう書かれていたのだから。
『家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨てて箱庭に来い』と。
それに見合うだけの催し物があるのかどうかこそ、その場にいる三人にとって一番大事なことだった。
 まぁダンテ自身は、やがてはこの世界から離れなければならないということを考えていた。彼は自分の世界である人界を悪魔から守るという信念があるし、あそこには父スパーダが残した最強の魔剣だって残っている。そうそうここで暇つぶしを続けているわけにもいかないだろう。
 とはいっても、やはりこの世界がとても刺激的で、彼にとって魅力が豊富な場所であるということに変わりはない。
 それに、黒ウサギの説明によればここには悪魔もいる。
 何かしら、彼の出番となることが……もしかしたら、あるかもしれないのだ。
 それだけではない。ひょっとしたら……彼の父親のことも。ここで、知ることができるかもしれない。
 それだけでもここにいる価値はある。
 あとは、黒ウサギの返答次第だ。
 やがて、黒ウサギは重い口を開くと、

「――――――YES。『ギフトゲーム』は人を超えた者達だけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外の世界よりも格段に面白いと、黒ウサギは保証いたします♪」

 ハッキリと。そう、言い切った。

***********

「ふう……しかし、ちょいとまた遠いなこりゃ」

 ダンテ達は黒ウサギの導きのもと、彼女が所属するコミュニティを目指して歩いていた。
 周りを見渡せば、どれもこれも彼の好奇心を刺激するようなものばかりで、全く飽きない。それはどうやら他の者達も同じだったようで、ひっきりなしに全員が首と目を動かしていた。
 だが、そうしているうちにダンテの中ではもう一つの欲求が大きくなっていく。

(ああ……世界の果てとやらにまで、ここいらを探検したいもんだな!)

 きっと、彼が上空で見た世界の果てにはもっとたくさんの面白いものがあるに違いない。
 こんな都市(だよな?)近くなんかとは全く違った、素晴らしい景観や遊戯があるのだろう。
 そう思うと、ここからさっさと飛び出したくて仕方がない。
 そんなことを考えていると、背後から十六夜がダンテに声をかけてきた。

「なぁダンテ……世界の果てまで行ってみねぇか?」


 そう言うと十六夜は無邪気で輝かしいほどの笑みを浮かべ、期待の眼差しをダンテに向ける。
 するとダンテも待ってましたとばかりに口を横に広げ、さっそくヒソヒソ話を二人ですることとなった。
 ついさっき会ったばかりとは思えない程の意気投合ぶりである。
 その様子をしっかりと見ていた飛鳥と耀は、面倒なことに巻き込まれたくないためか最初から無視を決め込んでいた。二人にとってそれはむしろありがたかったが。

「(よぉ、やっぱりおまえも行きたいと思うか?)」
「(当たり前だろ? 見たこともない新世界に、神様や悪魔までいると来たもんだ。そんな面白おかしい不思議世界を探検したいって思うのは、男なら誰でもそうだろ?)」
「(同感だね。やっぱり俺はおまえが好きだわ。飛鳥や耀はともかく、おまえとはこれからもよくやってけるよ、絶対)」
「(OK, brother, Let’s play and enjoy.(いいぜ兄弟。思いっきり楽しもうや))」
「(Why not?(もちろん))」

 堪え切れず、声を出して笑ってしまうダンテと十六夜。
 振り返り、どうしたのかと訊ねる黒ウサギだったが、二人はまた同じタイミングで「「なんでもない」」と返事をする。
 訝しげな表情を浮かべる黒ウサギだったが、とにかくコミュニティへと皆を招くことを優先したいのかそのまま先導を再開した。

「(で、どうする? このまま抜けてもいいが、今のでちょいと疑われたかもよ)」
「(俺は問題ない。裏ワザがあるんでね、このまま何の疑いもなくあいつは進んでくれるよ)」
「(なにそれ、超気になる。教えてくれよ)」
「(悪いな兄弟、こいつは俺だけの秘密兵器だ)」
「(チクショウ、ずりぃな全く……まぁいいや、とにかく行こうぜ、善は急げだ)」

 善ではなく、思いっきり悪なのだが、そんなところはダンテもツッコミはしない。
 ダンテも十六夜も、そのまま黒ウサギの目を盗んで抜け出そうとした。

 そのときだった。

 ゾクッ、と。

(ッ!?)

 突然の悪寒に襲われ、ダンテの全身が、大きく震える。
 どこからか、自分に向けて殺意が放たれたのだ。
 それはまるで剣のように鋭く、そして冷たい気配。
 明らかな強者が、ダンテに自身の存在を示すべく敵意を放ったのだ。
 思わずダンテは身体がこわばり、その場で立ち尽くす。

「……ダンテ?」

 不意に、十六夜がダンテに言葉をかけた。
 先ほどから様子が急変した友人を目の当たりにすれば、誰でもそれは気にするものだろう。
 やがてダンテは顔をあげると、十六夜を見て、

「……わりぃ。気が変わった。一人で行っといてくれるか?」
「えっ?」

 そう言い放った。
 十六夜からしてみれば、さっきまでノリノリだったというのに突然断られたものだから驚きだろう。
 しかしダンテは、これまで十六夜に見せたことのないような真剣なまなざしで彼を見据えた。
 それを見た十六夜も、何かがあったのだろうと推測する。

「安心しろ。俺の裏ワザをお前に使わせといてやる。バレやしねぇよ」
「……わかったよ。ま、気が変わったらすぐにでもこっちこいや。早くしねぇと見せ場は全部もらっちまうぜ?」

 十六夜は、何も詮索することなくダンテの言葉を受け入れた。
 そのまま十六夜は凄まじい速度で走りだし、数瞬後にはもう点のように小さくなり、やがて見えなくなった。


(……いったいどこのどいつだ? 俺に『だけ向けて』敵意を剥きだしてくるヤツねぇ……普通に考えりゃあ、クソッタレの悪魔どもなんだろうが……)


 もう、殺意は感じられない。
 だが、それはとても奇妙なことだ。
 ダンテはまだこの世界に来て間もない。ほんの数時間しか、ここへとやってきてから時間が経っていないのだ。
 なのに敵意を向けてきたそいつはダンテが来るのをまるで予知していたかのように、自らの存在をアピールしてきた。
 いったい、誰がどうやって?
 そして、何のために?

(……どっちにしろ、こいつはまた面白くなってきやがったなぁ……)

 本当に、この世界は退屈しない。
 これから先で相まみえるであろうその強敵に、ダンテは胸躍らせた。


 
 

 
後書き
鬼いちゃんが書きたいのにまだ書けぬだと……!? 
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