| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ソードアート・オンライン ~白の剣士~

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

スカル・リーパー

 
前書き
長めです、どうぞ! 

 
七十五層《コリニア》に降り立った俺とエリーは辺りを見回した。
転移門前の広場には実力派ギルドの数々が集結していた。
辺りを見回す俺とエリーに声をかけたのは馴染みのある人物だった。

「おう、シオンにエリーシャじゃねーか!!」

「クライン、それにエギル!お前らも来てたのか?」

「こんにちは」

「っと、キリトたちも来たみたいだな」

クラインとエギルに遅れてキリトとアスナも到着した。

「クライン、エギル!お前らも来てたのか!」

俺と全く同じ感想を言うと、

「今回はえらい苦戦しそうだって言うから、商売を投げ出して加勢にきたんじゃねえか。この無私無欲の精神を理解できないたぁ……」

「ほう、じゃあお前は戦利品の分配から除外するか・・・」

「えっ!?あ、いや、それは・・・」

全員が笑うなか転移門から数人の集団が現れた。
ヒースクリフをはじめとする血盟騎士団の精鋭たちである。

「コリドー、オープン!」

ヒースクリフがそう告げるとボスフロア前の扉に続く転移門特有の揺らめきが現れた。

「さあ、行こうか」

そう言って、ヒースクリフを先頭に次々と入っていった。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

転移ゲートを潜るとそこにはボス部屋へと続く大きな扉があった。いつ見ても慣れないものである、この大きな扉見るのは。
それに今回は第三クォーターポイントとなる第七十五層、いつも以上に気は抜けない。

「準備はいいかな?」

扉の前に立つヒースクリフ。

「基本的には、血盟騎士団が前衛で攻撃を食い止めるので、その間に可能な限り攻撃パターンを読み取り柔軟に反撃してほしい。厳しい戦いになるだろうが、諸君の力なら切り抜けられると信じている。解放の日のために!!」

ヒースクリフが力強く拳を掲げる、それと同時にプレイヤーからは大きな声が上がる。皆やはり気合いが入っている。

「ふぅ・・・」

深呼吸をするとエリーは俺の手を握ってきた。

「エリー・・・」

「大丈夫。行こう、一緒に」

「・・・ああ」

キリトの横に並び、剣を構える。

「死ぬなよ」

「はっ!お前こそ!!」

「今日の戦利品で一儲けするまで死ぬ気はねぇぜ!」

「久しぶりに暴れてやろーじゃないの」

大きな扉が音をたてて開く、ガタンと扉が開ききるのと同時にヒースクリフは剣を前に突き立てた。

「戦闘開始!!!」

その合図と共にプレイヤーたちは一斉にボス部屋の中へと走り出す、中に入ると部屋は薄暗く、ボスの姿が見当たらない。
後ろの扉が閉じる、俺は目を閉じ耳に意識を集中させる。

「何も、起きないぞ・・・」

俺は更に策敵範囲を広げる、フィールド上には何も引っ掛からない。

『おかしい、何処にも、いない・・・?ッ!まさかッ!!』

「上よ!!」

俺の考えが出るのとアスナの声が聞こえたのは同時だった。
上を見ると、天井に張りつく巨大なエネミーが一体、その姿は骸骨の顔にムカデのような骨の体、両腕は大きな鎌になっていた。

「スカル・・・!」

「リーパー・・・!!」

モンスターの咆哮とともに《The Skullreaper》の文字と五本のHPバーが出現する。

「固まるな!距離をとれ!!」

ヒースクリフの声と同時にスカルリーパーが天井から落下してくる。恐怖のあまり動けなくなるプレーヤーが出てくる。

「こっちだ!!」

キリトの声でやっと動けるようになり、急いでその場を離れようとする。

「走れ!!!」

その間にもスカルリーパーは地面に到達、両腕の大鎌を振るうとそれを食らった二人のプレイヤーが宙を舞った。
キリトとアスナが受け止めようとするが、次の瞬間オブジェクトの欠片となり消滅した。

「い、一撃で・・・!?」

「無茶苦茶だ・・・」

「こんなのアリかよ・・・」

冷や汗が滲み出る、さすがにここまでイレギュラーなボスははじめてだ。

「まともに近づくこともできねーぞ!!」

大型な割には動きが速く、迂闊に近づけばあの大鎌の餌食となる。
そんな中でもヒースクリフは一人果敢に攻めている。

「いくぞ、キリト!!」

「ああ!!」

スカルリーパーへと向かっていくと大鎌がキリトを目掛けて振るわれる。キリトが二刀流で受け止めるも、その重さに膝を着いてしまう。

「クソッ!!」

キリトに加勢しようとすると、もう片方の大鎌が俺を襲う。俺は直ぐ様、片手剣から両手剣に切り替え攻撃を防ぐ。

「グッ!!重ッ!!!」

パワー型の両手剣でもこれほどとは・・・。まともに食らえば体ごと吹っ飛ぶぞ!!

「シオン!!」

後ろからエリーが加勢に入り、大鎌を弾く。

「すまん、エリー・・・」

「大丈夫?」

「ああ、気を付けろ、かなり重いぞあの攻撃」

「分かってる、キリトとシオンの様子を見る限りね」

「キリト!アスナ!」

「分かってる!」

「鎌は俺たちが食い止める!!みんなは側面から攻撃してくれ!!」

俺たちが鎌を抑え、他のプレイヤーが側面から仕掛けるヒット&アウェイ戦法を地道に続けるとスカルリーパーのHPが残りわずかになる。ヒースクリフが総攻撃の指示を送ると、プレイヤーが一斉攻撃を開始、それからまもなくしてHPが0となり、スカルリーパーは倒された。
歓喜の声をあげるかと思ったが皆、疲れきっており床に座り込んだり、倒れ込んだ。

「何人やられた・・・?」

クラインが尋ねると、キリトがウィンドウを見て答えた。

「・・・十四人・・・死んだ・・・」

「嘘だろ・・・!?」

皆の顔はどんどん絶望の色へと染まっていく。

「あと二十五層もあるんだぞ・・・」

「本当に俺たちは、てっぺんまでたどり着けるのか・・・!?」

周りのプレイヤーは今後の攻略に絶望しているなか、平然と立っている男が一人。
ヒースクリフはまるで疲れを感じさせないような佇まいを見せていた。彼のHPイエローゾーンに入る寸前ところで止まっている。
普通ならば《神聖剣》の圧倒的防御力で防いだのだなと思うだろう。
しかし、それはあくまでヒースクリフの戦いを間近で見ていない者(・・・・・・)が言えることである。

「キリト君?」

キリトが立ち上がりヒースクリフに視線を向けている。

「キリト、お前まさか・・・」

キリトは走りだしヒースクリフ目掛けて片手剣の基本突進技<<レイジスパイク>>を発動していた。ヒースクリフが驚きに目を見開いて盾を使いガードしようとするがキリトの剣は途中で動きを変え、ヒースクリフに直撃した。
否、正確には直撃したように見えた。(・・・・・・)空中に姿を現す、文字。
【Immortal Object】それはシステム的不死を意味していた。

「システム的、不死・・・!?」

「どういうことですか、団長・・・?」

駆け寄ってきたアスナとエリーがそう言った。

「これが、この世界の真実ということだ・・・」

「どういうこと?」

「それをこれから言ってくれるだろーよ」

視線の先にいるキリトは俺が思っていることをそのまま言ってくれた。

「この男のHPゲージはどうあろうとイエローにまで落ちないようにシステムに保護されているのさ」

キリトは今まで思っていた疑問をぶつけた。

「この世界に来てからずっと疑問に思っていたことがあった。あいつは、今どこで俺たちを観察し、世界を調整しているんだろうって・・・だが、俺は単純な心理を忘れてたよ。どんな子供でも知ってることさ・・・」

その間に俺はキリトの横に並んだ。
そして、キリトの言葉に続けるように俺は言った。

「他人のやってる、RPGを傍から眺めるほどつまんねーものはねーよなー、だろ・・・?」

「茅場昌彦!!」

その言葉にその場にいた者は皆驚いた。
俺たちの問いに対してヒースクリフはこう答えた。

「なぜ、 気づいたのか参考までに教えてくれないか・・・」

「最初におかしいと思ったのは、デュエルの時だ。最後の一瞬だけあんたあまりにも速すぎたよ」

「やはり、そうか。あれはわたしにとっても痛恨事だったよ。君たちの動きに圧倒されてつい、システムの《オーバーアシスト》を使ってしまった・・・」

ヒースクリフは次にこう言った。

「確かに私は茅場昌彦だ!!付け加えれば、最上階で君たちを待つはずだった、このゲームの最終ボスでもある」

その言葉に周りがざわつく、無理もないだろう、今まで引っ張ってきた絶対的リーダーが最終ボスという真実をハイそうですかと受け止められる者など中々いない。

「趣味がいいとは、言えないぞ。最強のプレーヤーが一転、最悪のラスボスか」

「なかなかいいシナリオだろ。最終的にわたしの前に立つのは、キリト君と予想していた。二刀流スキルは全てのプレーヤーの中で最大の反応速度を持つ者に与えられ、そのものが魔王に対する勇者の役割を担うはずだった。だが、シオン君。君は、わたしの予測を裏切るイレギュラーな存在だったよ。まさか私の組んでいないシステムを使うとわね・・・。まぁ、この想定外の展開もネットワークRPGの醍醐味と言ったところかな」

「茅場の組んでいないシステム・・・?」

「やっぱりか・・・」

「どういうことだよ?」

キリトの問いに俺は一つの仮定を立てた。

「外部から干渉して俺に《クロス・オーダー》を与えたってことだよ。まあ、かなりとんでもねーもん寄越しやがったけどな」

「その通り、恐らく与えたのは()だろうね」

「・・・俺たちの忠誠・・・希望を・・・よくも!・・・よくも!!・・・よくもォオオオ!!!」

血盟騎士団のプレーヤーがヒースクリフに剣を向け振り下ろす。その瞬間、ヒースクリフがメニューウインドウを開き、何かを押す。すると、ヒースクリフに剣を向けた男が急に倒れこむ。HPゲージのところには麻痺の表示があった。
そこから続々と麻痺で倒れるプレイヤーが続出した。その中にはアスナとエリーも入っていた。

「ッ!キリト君!!」

「シオン!!」

やがて動けるのは俺とキリトだけになった。

「どういうつもりだ?」

「この場で全員殺して隠蔽する気か?」

「まさか、そんな理不尽な真似はしないさ。こうなっては致し方ない。私は最上層の《紅玉宮》にて君たちの訪れを待つことにするよ。ここまで育ててきた血盟騎士団、そして攻略組プレーヤーの諸君を途中で放り出すのは、不本意だが、何、君たちの力ならきっと辿り着けるさ。だが・・・その前に・・・」

茅場は剣を抜いた。

「キリト君、シオン君、君たちには、わたしの正体を看破した報酬を与えなくてはな・・・チャンスをあげよう」

「チャンス、だと?」

「今この場で私と一対一で戦うチャンスだ。無論、不死属性は解除する。私に勝てばゲームはクリアされ、全プレーヤーがこの世界からログアウトされる。どうかな・・・?」

「ダメよ、キリト君、シオン君、今は引いて」

ここで引けば多分チャンスは二度と来ない、しかも俺には時間がない。ならここで・・・。

「ふざけるな・・・」

「キリト・・・」

「いいだろう、決着をつけよう・・・」

「随分と気前がいいじゃねーか、茅場、受けてやるよ」

「キリト君!!」

「シオン!!」

「ゴメンな。ここで逃げるわけにはいかないんだ」

「それに、早く終わるに越したことはない。ここで倒そーが死のーが変わらねーよ」

「・・・死ぬつもりじゃないんだよね」

「あぁ、必ず勝つ。勝ってこの世界を終わらせる」

「終わったらまた、みんなで笑おうや♪」

「シオン・・・」

俺は茅場の方を向く、後ろからはクラインとエギルの声が聞こえてくる。
しかし、その返事はキリトに任せてある。

「エギル。今まで剣士クラスのサポートありがとな。知ってたぜ。お前が儲けのほぼ全部を中層ゾーンのプレーヤーの育成につぎ込んでたこと。クライン。あの時、お前を置いて行って、悪かった・・・」

「て、テメェ、キリト!!謝ってんじゃねぇ!!!今、謝るんじゃねぇよ!!!許さねぇぞ!!ちゃんと向こうで飯の一つでも奢ってくれねぇと許さねぇぞ!!絶対許さねぇからな!!」

「わかった、向こう側でな」

「おい、シオン!テメェもだかんな!!ぜってー死ぬんじゃねーぞ!!!」

その言葉に俺は振り向きもせず、しかし、俺は右拳を掲げて答えた。そして、クラインに聞こえないようにこう答えた。

「たりめーだ、必ず勝ってやる」

再び茅場へと視線を移す。
ここでキリトが前に出た。

「悪いが、一つだけ頼みがある」

「何か?」

「簡単に負けるつもりはないが、もし俺が死んだら・・・しばらくでいい・・・アスナが自殺出来ないように計らってほしい」

「よかろう」

「キリト君!ダメだよ!!・・・そんなの、そんなのないよ!!!」

アスナの叫びが無情に響き渡る。

「俺からも一つ頼みたい」

「何かな?」

「この勝負、俺にやらせてくれ」

「シオン!お前なに言って・・・」

「いいから黙ってろ、そして最後まで聞け!」

キリトはそこで黙る、そして俺は続けた。

「何も俺一人で殺るんじゃない、茅場、アンタなら知ってるよな?ついこの間、俺がしたこと・・・。それをやる」

「お前、まさか・・・」

「・・・いいだろう、それで相手は誰かな?」

「俺とキリト、そして・・・」

俺は首に下げられたネックレスを握りしめた。

『私だ』

ネックレスを引きちぎるとそれを茅場に見せた。恐らくアルモニーの声が聞こえたのは茅場とキリトたちだけだろう。

「・・・いいだろう」

「シオン、大丈夫か?」

「さあな、ユイのようなAIならともかく、プレイヤーとリンクするのは初だし、まだこれが二回目ってとこに不安はある、だか・・・」

『ここで死ぬわけにはいかない』

「ああ、だからキリト、お前の力、貸してくれよな」

キリトは無言のまま頷いた。そして、拳を合わせる。

「いくぞ・・・」

「ああ・・・」

これはかなり危険な行為だ、俺とユイがリンクしたときだけでも俺にはかなりの負担になっていた、それを人同士でやるとどうなるか脳の波長が狂うかもしれないというリスクだってある。
これは賭けである、それもかなりハイリスクな・・・。それでも・・・。

『それでも、勝つためにはやるしかない!!!』

「クロスオーバーシステム・・・発動!!!」

二人は光に包まれそれと同時に体に痛みが走った。

「ッ!!!」

「シオン!!」

「大丈夫だ!」

やがて光は強さを増し、静かにおさまった。
そこに立っていたのは、白と黒の剣を持った白銀の髪をした少年がいた。

「成功・・・した・・・?」

「ほう・・・」

茅場は目の色を変えた。そして感じた“強い”と・・・。
白銀の髪の少年は蒼い瞳を茅場へと向けた、そして白の剣を茅場に向けた。

『「「さあ、始めようか!!!」」』

最後の戦いが今、始まった・・・。 
 

 
後書き
はい!いかがでしたでしょうか?
最近天気が良くない日が続きます、皆さん体調には気を付けましょう。

SAO編、最終回に近づいております。
皆さんがあっと驚くようなラストに仕上げ、ALO編にも弾みをつけようと思います。
次回もお楽しみに、そして、コメントお待ちしております♪

ではでは~三( ゜∀゜)ノシ 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧