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ソードアート・オンライン ~白の剣士~

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最後の戦。そして───。

ガキンッ!、ガッ!!
戦いが始まってからどのくらいたっただろうか、先ほどからずっと刃同士がぶつかる音が響いている。十字架の盾で攻撃を防ぐ団長、白と黒の二刀流で攻めるシオンたち、私はただその姿を見ることしかできない。

「シオン・・・」

もどかしかった、自分があそこで戦えていないのが・・・。

「はぁあああ!!!」

「ふんッ!!!」

ガキンッ!!

再び剣と盾がぶつかり火花を散らす。二人とも一歩も譲らない展開が続いている。一旦距離をとる二人、その顔は疲労に満ちていた。

「はぁ、はぁ、クソッ、硬ぇなやっぱり・・・」

『あぁ、あの盾をどうにかしないと』

「だな、グッ・・・!」

シオンが膝を着く、鼻からは出るはずのない血が出ていた。

「クソッ、こんなときに・・・。アルモニー、残りは?」

『あと一分半だ』

「どうした、もう終わりかね?」

「うるせぇ、テメェも疲れきってるじゃねーかよ!」

「そう、だな・・・私もそろそろ限界だ・・・」

二人とも剣を構える。

『こいつは・・・』

『俺たちが・・・』

『『殺す・・・!!』』

「『うぁあああ!!!』」

両者共に接近する、刃同士がぶつかる。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

「『うぁあああ!!!』」

俺は地面を蹴った。正直、ここまでよくやったと思っていた。こんな怪物相手にここまで戦えたのだから、それでも剣を振る。あの体に刃を届かせるために。

「こんのぉおおお!!!」

ガキンッ!!

しかし、その一振りは無情にも十字架の盾の前に阻まれる。
二刀流最上位剣技《ジ・イクリプス》、太陽コロナのごとく全方向から噴出した剣尖が茅場を襲う。しかし、それは茅場のシステム内で作られたもの、当然分かっていた。しかし、俺は焦っていたのだ、勝負を。リミットが近づくことに、死へと近づくことへの恐怖に・・・。
これはまさしく、俺が人生で犯した最大のミスである。

『すまん、キリト・・・』

「うぁあああ!!!」

二十七連撃最後の一撃はその硬い十字架に奇しくも止められ、白き剣は砕け散った。

「さらばだ・・・キリト君、シオン君」

茅場は長剣を掲げ、血の色に光を迸らせる。そして剣を、降り下ろす・・・。

『俺は、死ぬのか・・・』

俺は降ってくる剣を見ながらそう思った。その時はやけに剣が遅く見えていた。

『ここで・・・終わる・・・?』

この刃が俺の身体を切り裂く時、俺は死ぬのだ。ならば、最後くらい・・・。

『俺らしく、死のうじゃねーか』

俺は口を開き、言った。




「・・・リンク・・・リリース・・・」




直後、俺とキリトはラグと共に分離。そして・・・。
ザシュッ・・・。
俺の身体に茅場の刃が下ろされた・・・。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

「シ、オン・・・」

「シオン、君・・・」

「そんな・・・シオン!!」

切られたシオンは床に膝を着いた。シオンは動く気配がなく、HPがどんどん減っていく。

「おい、シオン!!しっかりしろ!!!」

「シオン君!!!」

「シオン!!!」

キリトたちの声はただフィールドに響くだけでなにも返ってこない。
その時・・・。

「うる・・・せえよ・・・」

「シオン!!」

「騒ぐんじゃ・・・ねぇよ・・・ゴフッ・・・!」

彼は既に限界だった、目からは光が消え、話すのがやっとである。

「シオン君!!」

「安心・・・しろ・・・俺、は・・・ただじゃ・・・終わらねぇ・・・」

「シオン・・・!」

エリーシャの目からは大粒の涙が溢れていた、シオンはゆっくりと立ち上がろうとする。

「なッ!!」

茅場は驚愕した、確実に仕留めた。そう思っていたのだから。
シオンは自分に刺さっている刃を握りしめた。

「これが・・・俺の・・・」

その時、シオンの目に僅かながら光が宿った。

「ラストオーダーだ!!!」

次の瞬間、シオンの髪は白銀へと変化し、七十四層とエリーシャとの戦いで見せたあの白銀のオーラを放った。
やがてそのオーラは二人を包みだした。

「なにッ!?」

「シオン!」

「シオン君!!」

「うぉおおおおおッ!!!!!」

光は強さを増し、フィールドを包んでいく。

「シオン!!!」

その時、エリーシャが見たものは・・・。
優しい微笑みをしたシオンの顔だった。そして、シオンは口だけ動かして最後に何が言った。

そして、

『11月7日14時55分、ゲームはクリアされました。ゲームはクリアされました。ゲームは・・・』

最後に聞こえたのは無機質なアナウンスの声だった・・・

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

俺が目を覚ましたとき、そこにはあのフィールドがなかった。
床は水晶の板、辺り一面夕焼けに染まった空、何とも不思議な空間だった。
視線を下に向けると、そこには見慣れたものがあった。

「アインクラッド・・・」

浮遊城アインクラッド、それは今、徐々に崩れている。

「そうか、終わったのか・・・」

俺はその城をただ眺めていた。二年もの間俺はあそこに閉じ込められていたのだと思うと何だか今までのことが懐かしくなっていた。
と、干渉に浸っていると

「なかなかに絶景だな」

傍らから声がして目を向けると白衣らしきものを着た男が一人立っていた。

「茅場、晶彦・・・」

「現在、アーガス本社地下五階に設置されたSAOメインフレームの全記憶装置でデータの完全消去作業を行っている。あと十分ほどでこの世界の何もかもが消滅するだろう」

「残りの奴等は?」

「心配には及ばない。先程・・・」

茅場はウインドウを眺めて言った。

「生き残った全プレイヤー、6147人のログアウトが完了した」

「やはり、死んだ連中は戻らんか・・・」

「彼らの意識は帰ってこない。死者が消え去るのはどこの世界でも一緒さ。君とは、最後に少しだけ話をしたくて、この時間を作らせてもらった」

「ほう、ならいい機会だから聞かせてもらおうか。なぜこんなことをした?」

茅場は少し黙ってから答えた。

「何故、か。私も長い間忘れていたよ。なぜだろうな。フルダイブ環境システムの開発を知った時、いやその遥か以前から、私はあの城を、現実世界のあらゆる枠や法則を超越した世界を創りだすことだけを欲して生きてきた。そして私は・・・私の世界の法則をも越えるものを見ることができた・・・。子供は次から次へといろいろな夢想をするだろう。空に浮かぶ鉄の城の空想に私が取りつかれたのは何歳の頃だったかな・・・。その情景だけは、いつまで経っても私の中から去ろうとしなかった。年を経るごとにどんどんリアルに、大きく広がっていった。この地上から飛び立って、あの城に行きたい・・・長い、長い間、それが私の唯一の欲求だった。私はね、シオン君。まだ信じているのだよ・・・どこか別の世界には、本当にあの城が存在するのだと・・・」

「そうだな、俺もそんな気がする・・・」

俺はただ曖昧に答えた。

「・・・言い忘れていたな。ゲームクリアおめでとう、シオン君、キリト君、アスナ君、エリーシャ君。さて、私はそろそろ行くよ」

「ちょっと待て、後半聞き捨てならないことを聞いたんだが・・・」

茅場は振り返ると穏やかな顔で答えた。

「はて、何のことかな?」

その言葉を残し、茅場は消えていった。取り残された俺はため息を着いた。

「ったくあの野郎、最後の最後まで・・・」

そう言ってもう一度アインクラッドを見ると、もう半分くらい崩壊が進んでいた。

『シオン・・・』

ふと、聞きなれた声がした。しかし俺は驚きはしなかった。

「いたのかアルモニー・・・」

「まあね・・・」

白銀の髪、蒼い瞳、黒い服装。彼は初めて会った時と同じ格好をしていた。

「お客さんがいるんだけど」

「客か、まあ、あいつ(・・・)だろうな・・・」

アルモニーの後ろには扉が出現し、開く彼女(・・)がいた。

「シオン・・・」

「どうした、お化けでも見たか?」

扉の向こうにいたのは、俺が愛した人だった。

「エリー・・・」

「シオン!!」

エリーは俺に抱きついた。

「バカッ!心配したんだから!!」

「ハイハイ、悪い悪い・・・」

俺はいつも通りエリーをなだめた後、アインクラッドを見る。
崩壊はもう七割ほど終わっていた。

「エリー、最後までありがとな・・・」

エリーの頭を撫でながら言った。
エリーも俺の頬に手を添えて言った。

「私もシオンにお礼が言いたい、でも、それは感謝してもしきれないから・・・」

エリーは俺の唇にキスをした。

「これで、全部にしてあげる♪」

その笑顔は本当にいとおしいものだった。

「ああ、そういうことにしといてやるよ」

そして、次にエリーに問う。

「最後に聞かせてくれ、君の名前を」

エリーはこう答えた。

「私の、名前は・・・」

その名前は───。

雪宮(ゆきみや)・・・(しずく)。今年で18歳よ」

「そっか・・・」

「シオンの本当の名前は?」

その問いに俺は思う。
ある時はグラウンドで走り回っていた少年、時が経てば病院のベッドで黄昏て、死ぬ気でリハビリしている自分、そしてここで過ごした二年間・・・。
そのすべてが俺であり、これからも変わらない。

そう、俺の名前は───。











「───雪羅(せつら)高嶺(たかみね)雪羅(せつら)18だ」

「高嶺・・・雪羅・・・ふふっ。まさか、両方とも名前に“雪”が付くなんてね」

「それに、まさか同い年とはな。てっきり年上かと・・・」

「・・・ありがとね、私シオンに、雪羅に会えてよかった。この二年間は無駄にならなかったよ」

「俺もだ、お前に会えて、本当に良かった」

そう言って、俺はエリーを、雫を抱きしめた。

「・・・愛してる」

「うん・・・」

俺は雫から離れると、アルモニーの方へ歩み寄った。

「いいのかい、彼女と一緒じゃなくて?」

「最後にお前に言っておきたくてな・・・。アルモニー、お前───」

俺の言ったことにアルモニーは少し驚きの表情を浮かべたが、またいつもの表情に戻った。

「どうやら、気づかれてたようだね」

「まあな、でも、俺をここまで導いたのはお前の助けあってこそだ、感謝してる・・・」

「よしてくれ、私はそんな・・・」

お前は拳を前に突き出した。

「またな、アルモニー・・・」

「・・・ああ、またどこかで」

俺たちが拳を合わせたと同時に、俺たちは光に包まれた。

「どうやらお別れだ」

「だな・・・」

「次は新たな舞台で会おう、シオン・・・」

「ああ・・・」

その言葉を最後にアルモニーは姿を消した。

「エリー、今度は向こうで会おう」

「うん、私が迎えに行くから」

「ああ、よろしく頼む・・・」

最後に口づけを交わし、抱き締めあった。

そして、消える直前に────。













「愛してる・・・」













そして、俺たちはSAOから去った・・・。

約束を連れて・・・。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

「─────」

とある病院の一室、彼は静かに目を覚ました。

『ここ、は・・・』

周りには医療器具の数々が置かれていた。
体が思うように動かない、両腕が何とか動く程度。
頭に触れると、そこには頭を覆うナーヴギアがそこにあった。

『─────』

すると、部屋の扉から一人の看護師が入ってきた。

「せ、雪羅さん!?目を覚ましたんですね!」

よく聞こえないが、何やら驚いている様子。

「大丈夫ですか?どこか痛むところは?」

「あ、の・・・」

彼は声を振り絞り、何かを言おうとしている。

「どうしました?」

看護師が尋ねる、そして彼が発したのは───。

















 
 


「私、は・・・誰、です、か?」

物語は終わりを告げた、しかし、また新たな物語が始まろうとしていた───。
 
 

 
後書き
はい、これにてSAO編は終了です!皆さん、いかがだったでしょうか?
ラストがまさかの事態に・・・。
これからどうなるか、楽しみに待っていてください!

コメントお待ちしております!

ではでは~三( ゜∀゜)ノシ 
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