ソードアート・オンライン ~白の剣士~
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第七十五層攻略会議にて
「偵察隊が全滅!?」
場所は現在血盟騎士団本部、シオンたちはヒースクリフの召集メールによって集められていた。そこで聞かされたのは第七十五層の偵察隊が全滅したという知らせだった。
「昨日のことだ。七十五層迷宮区のマッピング自体は、時間は掛かったがなんとか犠牲者を出さずに終了した。だがボス戦はかなりの苦戦が予想された・・・」
「そうだな、何せこれから挑戦するのは“七十五層”だからな・・・」
「どういうこと?」
「エリー、アスナ、第二十五、五十層のボス戦は覚えているか?」
「え、えぇ・・・」
「二十五層の双頭巨人型のボスの時は、軍の精鋭がほぼ全滅。五十層の千手みたいなやつの時は勝手に緊急脱出する輩が続出、お陰で戦線が一度崩壊。こちらも全滅の危機にさらされた」
「覚えてるけどそれと何の関係が?」
「このアインクラッドは全部で百層、そのうちの1/4にあたる二十五層、五十層には他とは段違いの強さのボスモンスターが配置されていた。つまり今回の、第三のクォーター・ポイントにあたる第七十五層にはかなり厄介なヤツがいる可能性が高いってことだ」
「その通りだ・・・そこで、我々は五ギルド合同のパーティー二十人を偵察隊として送り込んだ。偵察は慎重を期して行われた。十人が後衛としてボス部屋入り口で待機し・・・最初の十人が部屋の中央に到達して、ボスが出現した瞬間、入り口の扉が閉じてしまったのだ。ここから先は後衛の十人の報告になる。扉は五分以上開かなかった。鍵開けスキルや直接の打撃等何をしても無駄だったらしい。ようやく扉が開いた時ーーー」
「その前衛の姿はなかった、と・・・」
シオンの問いにヒースクリフは目を閉じ、頷いた。
「転移脱出した形跡も無かった。彼らは帰ってこなかった・・・。念のため、基部フロアの黒鉄宮までモニュメントの名簿を確認しに行かせたが・・・」
「十、人も・・・なんでそんなことに・・・」
「結晶無効化空間・・・?」
「そうとしか考えられないな・・・」
キリトとヒースクリフが話す中、シオンは手を顎に置いていた。
「シオン・・・?」
「どうしたのかね?」
「俺としては空間よりもモンスターの方が厄介だと思ってな・・・」
「どういうことだ?」
「扉が閉まってから五分間その前衛の十人は間違いなくそのボスと交戦した、そしてその十人は五分足らずで全滅。単純計算、一人たったの三十秒で殺られていることになる。これは今までのボスの中で最も攻撃力が高いことを示している。一撃でもくらえばおしまいだ」
「ッ!!」
その言葉にキリトは息をのむ。
「いよいよ本格的なデスゲームになってきたわけだ・・・」
「だからと言って攻略を諦めることはできない」
ヒースクリフは目を閉じ、ささやいた。
「結晶による脱出が不可な上に、今回はボス出現と同時に背後の退路も絶たれてしまう構造らしい。ならば統制のとれる範囲で可能な限り大部隊をもって当たるしかない。新婚の君たちを召喚するのは本意ではなかったが、了解してくれたまえ」
「協力はさせて貰いますよ。だが、俺にとってはアスナの安全が最優先です。もし危険な状況になったら、パーティー全体よりも彼女を守ります」
「君はどうかねシオン君?」
「・・・まあ、一応同じ部隊の隊員だしな、部下の面倒を見るのも隊長の勤めだからよ」
「了解した、君たちの勇戦を期待するよ。攻略開始は三時間後。予定人数は君たちを入れて三十四人。七十五層コリニア市ゲートに午後一時集合だ。では解散」
それだけ言うと、ヒースクリフとその部下は一斉に立ち上がり、部屋を出て行った。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
「さて、どうしたものかね・・・」
俺は本部内のフロアで椅子に座り考え込んでいた。
今回の攻略は熾烈をきわめるだろう、何人かが死んでもおかしくない。
それを考えると頭を抱えたくなる。
「シオン、少しいい?」
「エリー・・・ああ、構わないよ」
エリーは俺の隣に座り、ただ黙っていた。
「ねぇ、シオン」
「ん?」
「今回の攻略、どう思う?」
「・・・かなり難儀だな」
再び沈黙、それは長く続き、
「・・・シオンの、シオンのスキルでどうにかならないの?」
その質問はいつかは聞かれるだろうと俺は覚悟していた。このような異質きわまりない力を持っていれば誰もが思うこと、それが“創造の力”ならなおさらである。しかし・・・。
「無理、だな・・・。俺もそうできるものならそうしたい、でも、それは“全開の俺”ならの話だ」
「全開、の・・・?」
「俺のこの力は無限ではないということだ」
「それって、時間制限のこと?」
俺は首を横に振った。
「もちろんそれもあるが、そんなもんは休めばなんとかなる。だが、俺が言ってるのはそういうことじゃない・・・」
「どういう・・・」
「“これを”・・・“クロス・オーダー”を使えば使うほど俺は代償を払ってる、“自ら、命を削ってるんだ”・・・」
「えっ・・・」
エリーは言葉の理解に苦しんでいるように見えた。
「驚くのも無理はないよな・・・こんなに“ピンピンしてるように見えて、内心では爆弾背負ってるんだからよ”・・・」
「そんな、どうして・・・」
「心配かけたくなかった、って言えば身勝手かもしれない。でも、言ったら止めるだろお前含めてみんなが」
「当たり前じゃない!どうして、どうして、いつも・・・」
エリーは両手で顔を覆い、泣いていた。無理もない、愛する人が目の前で今にも死にそうなのだから。
俺はエリーの頭に手をポンと置いた。
「・・・俺さ、現在世界で事故にあってさSAO(ここ)にいる今でも寝たきりなんだよ。動かせるのは頭と右腕だけ、医者にはそれだけでも奇跡だって言われたよ」
「・・・・・」
「その日の夜はすげー泣いたよ、子供の頃から続けてた野球ができないって思うと余計にな・・・。でも、そんなとき渡されたのがSAOのβテスト版なんだ。はじめはやらなかったんだ、『こんな身体になってすることはないから』ってな。でも、そん時親父に言われたんだ、『やらないよりやって後悔しろ!』って、その時以来かな、ゲームにのめり込んだのは・・・。それと同時にリハビリも死ぬ気でやってSAOに来る前までには左手が動くようにまでなった」
「・・・・・」
「俺はさエリー、お前に会えて、ハーモニーのみんなに会えてよかったと思ってる。あんなに笑ったのは本当に久しぶりだったから・・・」
「・・・・・」
「エリー、俺さ、後悔したくないんだ。親父に言われたように、“やらずに後悔したくないんだ”。こんなこと身勝手かもしれない、でも!俺はそれでも・・・」
「分かってる・・・」
エリーは立ち上がり、涙を拭った。
「シオンが無茶苦茶無理するのは、知ってるから。いまさら、どうこう言ってもしょうがない。でも、改めて、約束して・・・」
そう言ってエリーは優しく抱きしめた。
「“後悔なく生きて”・・・」
その言葉にSAOに来る前の俺はなんと答えただろう、多分、『ふざけるな』なんてこと言ったんだろうな。でも、今は違う・・・。
俺は目を閉じ、微笑みながら言った。
「はじめから、そのつもりだよ」
俺は立ち上がり、新たな決意と共に第七十五層へと向かった。
後書き
シオンの衝撃の過去、パート2!!
いかがだったでしょうか?
最近、自炊を心がけている作者でございます。
どんどん佳境に入っておりますSAO編、シオンの本名をどうしようか悩んでおります。
えっ?最初のうちに決めておけって?
そんなの分かっとるわぁあああ!!!注意:作者が壊れました。
ゴホン、失礼。
では皆さん、コメントお待ちしております。
ではでは~三( ゜∀゜)ノシ
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