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生還者†無双

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突貫

孫策軍本陣の天幕では軍義が行われていた
新たに軍師陸遜と物見から戻った周泰が加わり
其処でも暁は「やはり女か……」とぼやく
もう馴れたのかすぐに気持ちを切り替え
周瑜の話に耳を傾けた

「敵は隊を2つに別けて布陣している、大将は将軍崩れの波才、賊頭程遠志だ」
「しかし何故、隊を2つに別けているのじゃ?」
「波才の軍勢は空き城を根城にしているがいかんせん数が多すぎて収まりきれないみたいだ」
「規模は代々2万位だと思います~対して私達はどう頑張っても7千が良い所ですねぇ」
「くくっ、圧倒的に不利だなこりゃ」

皆表情が強ばる中で一人笑いながら答える暁
正気の人間ならば震え上がるような状況でだ
大量破壊兵器や近代武器の恩恵も無い戦で
頼みの人員の数も敵よりも圧倒的に少ない
愚策ならば孫家再興の前に滅亡してしまうだろう
しかし何処か他人事の様な態度に周りの空気は一気に冷めた

「笑い事じゃないっ!もっと真剣になれ馬鹿者!」
「何だよ思春、まさか臆病風に吹かれたか?」
「なっ……そんな事はないっ!」
「どいつもこいつも始まってもいねぇのに負けた様な顔してやがる、まるで分かっちゃいねぇ」
「何が分かっていなのかしら?」

明らかに怒気と殺気を孕んだ孫策の問い
並の人間ならば腰を抜かしてしまうだろう
だが暁は相変わらずの態度……いや寧ろ嬉しそうである
まさかの陣内での一触即発の雰囲気に誰もが息を飲んだ

「状況は不利、撤退も出来ねぇ、最高じゃあないか」
「「「「はい?」」」」
一堂は暁の豪快……あるは身の程知らずな発言にぽかんとなる
一体何を考えてるのか?そんな事お構い無しに持論を続ける

「人間いつか死ぬ、いつ死ぬかは解らん……だが死に方は選べるじゃねぇか」

!!!!!

「お前等の御家再興の一戦なんだろ?命を賭けるには最高の舞台じゃあないのか?」

辺りを見回しながら言う
最初は怒りや侮蔑の眼差しを向けていた者達も
暁の言いたい事が伝わったらしく皆納得したようで
それまで黙っていた将兵から次々と声が上がった

「暁の旦那言う通りだ……此処で死力を出さないでいつ出すんだっ」
「そうだ……何せ俺達には天の御使いが居るんだ!」

波状効果で兵士達から御使いコールが沸き上がる
満足そうに辺りを見ると孫策に暁から声をかけた

「野郎共はあんた等よりは賢いみたいだな?」
「くくっ、アッハハハ!これは一本取られたわね!」
「確かにわし達も少々考え過ぎてたようじゃな」
「全然笑い事じゃないのだがな、だが不思議と笑えてくる」
「流石暁ね、私達とは一味違うわ」
「蓮華も言う様になったじゃねぇか」

そんな騒動があったのだが孫策達の士気は上がり
あらためて作戦が周瑜から説明された
まず陽動の少数の部隊が敵を引き付ける
そのまま陣地近くの森に誘導し火計をもって間引き
混乱した敵を包囲殲滅する
いかに多くの敵を引き付けるかが勝利の鍵となる

「さて……この殿だが「俺がやるぜ」え?」
「本気で言っているのか?暁殿」
「おうよ、ただし兵隊をちょっとばかし借りるぜ?流石に一人だとくたびれちまう」
「あら?なら私もご一緒するわ」
「お姉様っ!いけません!危険過ぎます!」
「わしも反対じゃ策殿、敵の数が多すぎる」
「大丈夫よ、暁が献身的に守ってくれるわよね♪」
「そうゆう事は後で個人的に聞きたいもんだ、俺は別にかまわんぞ」

暁の片腕にぴったりとくっつく孫策
それを見て蓮華が激しく引き離そうとしている
先ほどまでのぴりぴりした雰囲気はなんだったのか
半ば諦めた表情で立っていると周瑜が近付いてきた
真剣な表情で暁に話しかけた

「雪蓮の事だ言い出したら止めようがない、どうか守ってやってくれ……頼む」
「まぁやるだけやってみるさ」
「私の真名は冥琳だ、今はこれしか託せんが……」
「確かに預かった冥琳、俺は約束は守る男だぜ」

自分に向けて親指を突き立てウィンクすると天幕から出ていく
バキバキとスーツが膨張し只でさえでかい体躯をより大きくする
冥琳は見た、振り向き様の瞬間の狂的に歪んだ顔を

その表情は主であり親友でもある雪蓮と同じ様な顔だった
そして厳選された少数の兵を引き連れ本陣から出陣した



出陣し目標地点まで後1里程の所まで進み
少数精鋭の決死隊は風の如く進撃をしていた
雪蓮は直ぐ隣で走る暁の顔を見てクスリと笑う
一緒に出陣するのは初めての筈なのに
不思議と何年も共に戦った戦友の様に思えてくる
(本当に不思議な男ね……暁って 蓮華が惚れるのも解る気がするわ)

「暁って中々兵士の扱いが巧いわね?」
「まぁこれでも傭兵部隊隊長だったからな」

馬上で孫策と会話している暁だがぶっちゃけあんまり余裕はなっかった
重心のバランスを取りつつ速度も維持しなければならない
乗馬初心者には難易度が高過ぎる……が
この馬も主の事を良く分かっているようで上手に乗せている
そんな事露知らず調子乗る暁だがいつか痛い目をみる事になるだろう

「孫策さんよ、敵さんが見えてきたぜ?」
「本当ね、さて何か皆に言ってくれるかしら?天の御使い様♪」
「全く……調子の良い女だぜ……」

部隊は敵方が見渡せる小高い丘の稜線に停止し暁の言葉に耳を傾けた
皆、覚悟を決めた顔をし今か今かと突撃の号令を待つ
戦前とは思えない静けさが辺りを包む
めんどくさそうな顔から一変し戦士の顔になる暁
まさかこんな所で昔の武将の真似事するとはな……
一介の隊長がこんな演説なんてした事ねぇよ
まぁ……やらなきゃならんのだが

「今さら俺から言う事なんざ何もねぇ」
「ちょっと……暁」
「俺達兵士は消耗品だ!平等に価値はねぇ!敵をぶち殺せ!価値は自分で上げろ!生き残ったら共に乾杯だ!」
「「「応っ!」」」
「(やっぱり面白いわ暁♪ )勇敢なる孫家の兵士よ!決戦の時だ!全軍抜刀!突撃ぃ!」

暁のいまいち良く分からない訓示と孫策の号令で約1千騎が突撃を開始した
中でも先頭の暁は馬がやる気を出して信じられない速度で走り出す
後続をぐんぐん引き離し半ば単騎で突っ込んでいる
突然の奇襲で散発的に弓矢が飛んでくるがそれすら置き去りにし
頃合いを見て暁は馬から飛びおり速度と重力に物をいわせた肉弾戦車と化して
賊の密集地帯にズドンと着弾した
着弾地点の賊はミンチよりひでぇ状態になり小さなクレーターが出来ている
砂ほこりが舞い視界を遮り良く見えない
風が吹き抜けると血だまりの窪みの中心部に暁はいた
首をひねり肩を回して辺りを見回すとニヤリと笑う

「さて……始めようか」

その一言を呟くと大地を力強く蹴りだすと
呆気に取られたていた先頭の奴の顔が砕けた

バキャ

音が置き去りにされてか後から聞こえた
断末魔の声を上げる事もなく絶命する賊
仲間の死を考える暇もなく後ろの奴のすい月に蹴りが突き刺さる
腹の中ほどまで爪先がめり込み白眼を向き、抜いた脚で強烈な回し蹴りを叩き込む
腕の骨が砕けた音と共に切りもみ回転して身体は吹き飛んだ
剣で切りつけた奴の胸ぐらをつかみそのままヘッドバット
顔面がつぶれ力の抜けた身体を遠心力を生かし放り投げ
目の前で勢い良く突き出された槍を軽く手で弾き入り身交差でぶん殴る
掴んだ槍を力任せに横に一閃
錆び付いた矛先だが前方の数人の首が強引に千切れた
流石にここまでくると賊達も気が付く
目の前の男はただ者ではない、尋常ではないと
ガチガチと歯が音をたて身体が震える

「敵は一人だぞっ!ささっさと殺せ!」

死の恐怖に支配された雑兵をよそに安全地帯から指示をしている奴を暁は見逃さなかった

「気に食わねぇな」

ふんっ!と持っていた槍を投げた
弾丸の如く空気を切り裂き槍が馬上の男に迫る
間抜けな指揮官とおぼしき男は自分の死を自覚する事なく
上半身と下半身が泣き別れて絶命した
ドチャと馬上から身体の一部が落ちると周りの賊は皆腰を抜かした
チャンスとばかりに背中のナイフを抜き一気に駆け出した暁
躊躇いなく豪腕を振るい賊の首や四肢を切り裂いていった
オリハルコンのナイフで刀や粗末な甲冑ごと身体をぶった切る
必死に刀で避けようとするが残念ながら無駄だ、切れ味が違う
目の前の敵を容赦なく駆除していると後ろから馬が突っ込んできた

「もう暁!置いて行くなんてひどい!」
「すまねぇすまねぇ、久々だったもんでついな」
「まぁ良いわ、私もご一緒しても良いかしら?」
「別嬪な女性のエスコートは専門分野だぜ、背中は任せな」

チンと南海覇王とナイフの刃を軽く重ねる
戦闘狂の二人の宴が開幕した
 
 

 
後書き
戦闘は苦手です……精進します 
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