少年少女の戦極時代
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第34話 知りたくなかったこと
『あれがヘキサとミッチくんのお兄さん、かもしれない人――?』
龍玄は無言で肯き、ブドウ龍砲を構えた。月花もDFバトンを両手に構えて腰を落とした。
『――行くぞ』
機先を制したのは龍玄だった。
龍玄はブドウ龍砲を白いアーマードライダーの足元に撃つ。本人を狙っていないのでもちろん白いアーマードライダーにダメージはない。
『どこを狙っている』
一気に距離を詰めてきた白いアーマードライダーの無双セイバーを、月花がDFバトンを交差して受け止めた。
もちろん幼女と男ではパワーからして違うので、DFバトンの防御はすぐに解かれて胴を狙われる。月花は腕の筋肉を総動員し、再びDFバトンでガードした。あえて後ろに飛ばされることでダメージを逃がした。
龍玄がその隙を活かして、今度は本人に向けてブドウ龍砲を撃った。だが白いアーマードライダーは盾であっさり防いでしまった。
(コーボーイッタイなんてズルイ!)
月花は龍玄に迫る白いアーマードライダーにバトンを振り被り飛びかかった。
月花のDFバトンを白いアーマードライダーがいなす間、龍玄はまた距離を取ってブドウ龍砲を撃つ。
徐々に彼らは、近接を月花、遠距離を龍玄で引き受けるようになっていった。
『ええい――小賢しい!』
白いアーマードライダーは無双セイバーをチャージし、撃った。龍玄の手からブドウ龍砲を弾かれ、本人も被弾した。
『くあっ!』
『ミッチくん!!』
龍玄に気を取られた隙を突かれた。白いアーマードライダーに、無防備になった頭を盾で殴られた。
よろめいた月花に追い打ちをかけるように、1度、2度と腹を蹴られ、月花は地面に転がった。
『咲ちゃん…!』
はっとする。龍玄がこちらに助けに来ようとしている。いけない。
白いアーマードライダーは立ち上がった龍玄に盾を投げた。盾はブーメランのように跳んで龍玄に直撃した。龍玄は再び倒れた。
月花は傷を押して、倒れ悶える龍玄の傍らへ這って行った。
起き上がり、龍玄を両手で揺さぶる。
『ミッチ…くん…! ミッチくんッ!』
影が差した。月花は顔を上げた。すぐ後ろに――白いアーマードライダーが立っていた。
『――ぁ』
『喚くな。耳障りだ』
白いアーマードライダーが剣を振り被った。このままでは自分も光実も殺される。
(ころされないためには、どうすればいい?)
その瞬間、月花は、白いアーマードライダーのがら空きの懐にタックルした。両手に持てるだけの、DFボムを持って。
『――ゃぁああああああああっっ!』
『何、だと!?』
月花と白いアーマードライダー、二人を巻き込んで、手榴弾の果実が爆発した。
「かっは――!」
「ぐは…っ!」
月花は地面に転がり、その拍子に変身が解けて咲に戻った。
「う、く……ゲホッ」
自爆戦法。それしか白いアーマードライダーを退ける方法が思いつかなかった。我ながら神懸かったタイミングで懐に潜り込めた。
咲は未発育の胸と腹を押さえた。思った以上のダメージだ。
だが無駄ではなかった。咲と同じく胸部にダメージを受けた白いアーマードライダーもまた、その変身が解けていた。
戦極ドライバーを装着したスーツ姿の男が、その場でよろめいている。
「――兄、さん――」
龍玄が呆然と呟いた声は、男には届かなかったらしい。男は数歩下がり、背中を向けてこの場を走り去った。
後書き
はい兄さん身バレ! 弟君限定で身バレしちゃいました! しかも顔出し! 呉島家にはこれくらいやらないと信じないんじゃね? というネタを各所で見かけたもので(実際は兄のほうがですが)、ならばやってやろうと作者燃えました。
少女の特攻により兄が知らず知らずの内に弟を殺すフラグ回避です(ここはベースキャンプ襲撃はもうちょい後で起きた想定です)。
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