SIREN2-End Of Destiny-
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夜見島と怪異
絶望の始まり
須田恭也 10年前 『消失』 羽生蛇村
全ての発端は3日前のサイレンだった。
昭和78年8月3日、午前0時。
とある県に存在する小さな村・羽生蛇村に事件は起きた。
何処からともなく鳴り響くサイレン、謎の赤い水、そして大地震で起きた土砂災害。
村は取り込まれた。
現実では有り得ない者が存在する世界、異界へと。
「約束したんだ……全部消すって……」
須田恭也は羽生蛇村の怪異で生き残った、数少ない人間だった。
高校生だが、勇気ある行動と恭也が守ってきた少女が彼を生存へと導いた。
死ねない体、不死の呪いを受けて……。
彼は異界に残り続けた。
怪異、化け物、その全てを消すため。
彼女との約束を守るため。
恭也は刀と猟銃を携えて、羽生蛇村の中をひたすら歩いていた。
赤い水を体内に蓄え死んだ者のなれの果て・屍人は殆ど浄化され、村は静寂に包まれていた。
「これで……終わったのか?」
『恭也、これだけでは異界は消えないよ』
「美耶子!!」
恭也の左隣で寄り添う少女。
その姿は、恭也でしか見ることができない。
彼女もまた不死の体。
しかしその体は炎に焼かれ、その意識をとどめる器を失ってしまっていた。
だが死ぬことは許されない。
それが魂だけ存在するという奇妙な結果を生んでしまったのだ。
「異界はバラバラだけど、いろいろなところに存在する」
「それじゃあどうすれば……」
「アタシの力を使って。アタシなら、恭也を飛ばせるかもしれない」
不意に恭也の手に温もりが触れる。
あの時の懐かしい、二人一緒に居た頃の温もりが。
その感覚を感じている間に、風景が様変わりしてる事に気が付いた。
荒廃した村から一転、暗闇に包まれた学校前にいた。
見覚えのない校舎に、見覚えのない……
「誰だ……?」
恭也の視線の先には、一人の少女が立っている。
一瞬美耶子だと思ったが、中学生くらいの背丈にセーラー服のその姿は美耶子ではなかった。
顔は右半分包帯で巻かれていて、あまりにも痛々しい。
「君っ!」
大声をあげ、少女を呼び止める。
少女は声に気付き、足を止め恭也を見た。
近寄る恭也も、一瞬思わず足を止めてしまう。
その目に生気が無い。
禍々しい、どす黒い目。
たじろいだ恭也だが、それでも少女に駆け寄った。
「こんな所うろついて……って言っても俺ここ知らないんだよね。ここどこかな?」
恭也は笑顔で聞いた。
だが少女の表情は変わらず、ジッと恭也を見つめる。
「ど……どうしたのかな?君は……」
「……こ……」
「え?」
少女は小声だが、確かに言った。
「市子……矢倉市子」
少女は市子という名らしい。
その言葉を聞いて恭也はとりあえず一安心する。
少し屍人ではないかと疑ってはいたが、どうやら違う様でほっと胸を撫で下ろす。
「俺は須田恭也。恭也って呼んでくれていいよ」
「きょう……や……?」
「そう!」
手を出し、握手を促した恭也。
市子も少しは安心したのか、恭也の握手に応じ手を握った。
「さて……と。ここはどこだー」
恭也は市子の手を握りながら周囲を見渡した。
ボロい木造の建物と、広いようで狭い広場を見る限り学校だと悟る。
「学校……ってわかってもねぇー。少し周囲を見て回るか」
そう言って市子の手を引っ張って突然歩き出した。
思わぬ行動に市子は当然の様に驚き、引っ張り返す。
市子がなったように、恭也も後ろによろめいた。
「びっくりした、どうしたの?」
「手……握りっぱなし」
「あ、嫌だった?危険だと思ったから一緒に連れて行った方が安全かと思って……」
かつて美耶子とそうしたように、彼女を守りたかった。
美耶子の様にさせたくない、もう二度と人が死ぬのは見たくない。
ただそんな一心で手をつないでいた。
美耶子は各地に散らばる異界を繋いで、恭也をここまで飛ばした。
それならここも異界であり、同時に不浄の者・屍人だってここにいるはずだ。
ならなおさらここに人間が居るのは危ない。
「行こう、ここは危ない」
その言葉に、市子は握っていた手を握り返した。
恭也の気持ちを悟ってくれたのか、それとも単純に怖かったのか。
どちらでもよかった。
今はとにかく周囲を探索するしかなかった。
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