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SIREN2-End Of Destiny-

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夜見島と怪異
絶望の始まり
  斉藤閖 -24:00  『到着』  中迂半島/三逗港

夏の日差しは、どこに居ても暑い。
例え都会から田舎に来ても、暑さと気怠(けだる)さは同じだと1人の女性は思った。

斉藤(さいとう)(ゆり)

東京のとある新聞社で働く記者だ。
だが記者だからといって、取材でここに来たわけではない。
今回は長期有給を取り、1人私情での捜査の為ここに来たのだ。

彼女の目的も、三逗港から見える夜見島だった。

しかしどこの漁港からも船は出ておらず、唯一頼りにしていたこの三逗港も船を出せない人しかいなかった。
夜見島は昔に消失事件が起こってから、誰も寄りつかなくなったという。


「最悪……」


重い荷物を抱え、苛立つ気持ちを吐き捨てる。
知り合いの雑誌社から教えてもらった夜見島行きの漁船も、今は出港中で居ないらしい。
近くに泊まれそうな宿も無く、もはや八方塞(はっぽうふさ)がりである。

そんな彼女に、誰かが背中を叩いた。
驚いて振り返ると、髪が長く片目しか見えない女性が立っていた。


「この辺の人……ですか?」


女性は首を横に振った。
どうやらこの地の人ではなさそうだ。
だが女性の荷物を見ると、同じように遠出してきたように見える。

何かを思いついたのか、閖は水平線の向こうに見える夜見島を指さした。


「もしかして貴方も夜見島に行くんですか?」


その言葉を聞いた途端、女性は激しく頷いた。
前髪の隙間から覗かせる目が、とても怪しく輝いている。


「わ……私、夜見島に行こうとしたら、船が無くて……」


偶然にも閖と同じ境遇に出くわしていた様だ。
そこで彷徨っているところ閖を見かけたという。


「じゃあアタシと一緒に行きません?ここで出会ったのも偶然ですし、今から夜見島行きの船を出してる人の所行こうとしていたんです」


近所に宿が無いか、とりあえず聞きたかった。
だが港には誰も居ない。
夏休みだからといって漁港は休みになるはずはないのだが。
女性は頷き、荷物を持ち直す。


「あ、そうだ。アタシ、斉藤閖と言います。お名前聞かせてください」


少しの間を置いてから女性は振り返った。


「わ……私は恵……安田恵(やすだめぐみ)といいます」




夜9時。
閖と恵の2人は、とある家にいた。
漁港で出会った1人の女性の家だ。


「この辺じゃ夜見島行きの船も出してないから、私の所の船じゃないとね」


その女性・木船(きふね)郁子(いくこ)は微笑みながら、2人に晩御飯を出していた。
閖は軽くお辞儀をして「ありがとう」と呟いた。

木船もこの漁港で働いており、漁港仲間の島田優助《しまだゆうすけ》が夜見島行きの船を唯一出しているという。
だが恵がなかなか引き下がらず交渉した結果、木船が特別に船を出してくれる事になった。
その前に夕ご飯を食べて行く事を勧められ、2人は家に来たのだ。


「狭い部屋だけど、ゆっくりしてね。私は船の準備してくるわ」
「あ、あの!荷物、この家に置いて行っていいですか?」


2人の後ろに積まれた荷物は、少し触れれば崩れそうな程あった。
木船はそれも笑顔で返事をした。


「夜見島に調査?」
「え?えぇ、まぁそうですけど……」
「この辺じゃ泊まれる宿は無いからねー。良ければここ、拠点に使っていいよ」
「ほ、本当ですか!?」


喋っていた閖を押しのけ、静かに食べていたはずの恵が木船に喰いつく。


「もちろんよ。じゃあ私、準備があるから」


そう言って部屋を出ようとした木船。
だが木船は扉を開けたまま、動かなくなってしまった。


「貴方達、本当に夜見島に行くの……?」


先程までとは違った、重く暗い声で2人に問いかける。
驚いた閖が木船を見ると、彼女の顔はさっきまでの笑顔とは違い暗く沈んだ顔だった。


「や……夜見島には、悲惨な事件があったとき……聞きます。一番夜見島にち……近いこの漁港も、何かあったのですか?」


恵の質問に、木船は振り返って答える。


「もう10年前になるわ……」






午前0時前に、木船達3人は夜見島に着いた。
少し海が荒れていたが無事に辿り着き、小さな港に降り立った。

3人は船に乗る間、一言も喋らなかった。
木船は運転に集中していたが、恵と閖は先程聞いた木船の話を考えていたからだ。


「ここが夜見島……」
「い……意外と、39年経ってるわりにき……綺麗ですね」


そんな考えを一旦忘れ港に降りた2人は、無人島とは思えない程しっかり残った港に目を丸くする。
木船は既に船に戻り、帰る準備を始めていた。


「私は三逗港に戻るわ。ここには居たくないし……」
「き……木船さん、あり……ありがとうございます!」
「また教えた番号に連絡してね。ここまで迎えに来るから」


島に残った2人はお辞儀をすると、船は島を離れる。
そのまま遠ざかる船を、見えなくなるまで見送った。
閖は恵を方を見て
「行こうか」
そう小さく呟いた。 
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