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少年少女の戦極時代

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第17話 炸裂! New・カマー

 ヘキサがやりたいと言ったから――リトルスターマイン結成の動機を、咲はそう答えた。

「ヘキサ? ミッチの妹さんの?」

 呉島光実は、チーム鎧武では「ミッチ」で通っているらしい。

「うん。そのミッチくんの妹。ヘキサはわがまま言わないし、自分のキモチはとじこめちゃうタイプだから。そんなヘキサがはじめて『やってみたい』って口にしたの。だからあたしもみんなも、全力でかなえてあげたかった」
「――咲ちゃんもリトルスターマインもいい子だな。友達想いで」

 咲はランドセルのベルトを握りしめた。

「そんなことない。あたし、全然イイコなんかじゃなかったもん」

 きらきらと反照する大川に目を流す。まぶしい。

「あたしだけじゃない。みんな。でも、そんなあたしたちが『イイコ』になれた。ヘキサと会えたから。だから今度はあたしたちが、ヘキサのしたいこと、何でも叶えるの」

 紘汰が何か言いたげに口を開きかける。もし尋ねられても、咲は答えていい気がしていた。

 だが、そうはならなかった。
 咲と紘汰を追い抜いて、咲と同じ年頃の子供らが走って行ったからだ。

「なんかこの先でインベスゲームが始まるんだって」
「変なおっさんが言ってたんだけどさ」

 咲はつい子供らを目で追い、紘汰を見上げた。

「インベスゲーム?」
「行ってみよう!」

 走り出す紘汰に咲も続いた。





 ギャラリーが出来上がっていたのは高架下の河原だった。ギャラリーは笑っている。笑いの対象は、アーマードライダー黒影とグリドンだった。

『何だお前ら! 見せもんじゃねえぞ!』

 黒影が影松の石附を地面に突き立てると、囃し立てる声はやんだ。

「いや、だって、ここでインベスゲームが始まるって聞いたぞ。なあ?」
「うん、聞いた」
『はあ?』
『おい、誰だ! そんなデマ流した奴は』

 城之内と初瀬も全く与り知らぬところらしかった。そうなると咲も紘汰と共に首を傾げざるをえない。


 するとギャラリーが割れて後ろから、妙にマッチョで背が高い男が前に現れた。

「ワテクシがギャラリーの皆様をお招きしましたの。記念すべき初舞台ですから」

 マッチョで背が高いのに、オネエ言葉。11歳女子にはインパクトがありすぎるオトナだった。

「ワテクシはアナタたちの下らないお遊戯に風雲を巻き起こす者。凰蓮・ピエール・アルフォンゾ」

 凰蓮はサングラスを取って優雅に一礼した。そして、懐から取り出したのは、戦極ドライバー。

 咲は紘汰と顔を見合わせ、同時に凰蓮をまた見た。

『あ、それ、確かレッドホットの園村が!』
「ああ。あの格闘技のイロハも知らない子? あんまりマナーがなってないものだから、ドルチェセットのお代にこちらを頂いたの」
『マジかよ…』

 凰蓮はさらにロックシードまで取り出した。遠目で視えないが、刺々しい果実のようだ。

「変・身♡」

《ドリアンアームズ! Mister Dangerous!》

 派手なポーズを決めながら凰蓮が変身した。

 ライドウェアは黄緑。全身トゲだらけで、両手に持った鋸のような武器も突起で埋め尽くされている。見ているだけで痛そうで、咲はつい一歩下がった。


 さあ戦いが始まるという寸で、紘汰がギャラリーの前に出た。

「おい! あんた、ビートライダーズでもないのにインベスゲームに参加しようってのか」
『ん~? あら、誰かと思えばこの間のダサ男くん! 文句があるの~?』
「――紘汰くん、ダサくないし」

 独り言のつもりだったが、ドリアンのアーマードライダーは聞き逃さなかったようで。

『そちらのmademoiselleも! よーくお聞きなさい。古来より戦いとはエンターテイメント。時のローマ皇帝は、コロシアムで剣闘士を戦わせ、市民に娯楽の興奮を提供したものよぉ? 今からここで、最っ高のショーを披露してあげるわぁん♡』

 わあっとギャラリーが沸いた。

 こうなってしまっては、咲にも紘汰にも、これから始まる理不尽な闘争を止める術はなかった。 
 

 
後書き
 ヒロイン①や彼女のチームの子たちの過去に何かあったようなフラグを立てたのは何となくです。
 この先まだまだ原作が3クールも残っていますから、きっとどこかで回収できる……はずだと信じます。 
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