少年少女の戦極時代
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第9話 みんなは一人のために
ダダン! 最後の踏み込みから、決めのポーズ。
同じ年頃の観客の拍手喝采を浴びて、ヘキサは汗だくのまま笑っていた。
「ありがとーございましたー! これからもリトルスターマインをヨロシクねー!」
センターの咲が笑って手を振る。
いつのまにか、このチームはヘキサだけでなく、咲たちにも大切なものになっていた。
自分が望んだものを好きな人たちも望んでくれる。共感できる時間。これほど嬉しいものが人生であるだろうか。
ステージを終えてぞろぞろとちびっこ観客が帰っていく中、ヘキサたちは片付けに勤しむ。
手作りの「Now Dancing♪」の看板を片付け、ちょっぴりマナーがなっていない客が置いていったジュースの空き缶や菓子袋を集めてまとめる。ラジカセを回収し、舞台の上をホウキで掃いておしまいだ。
ヘキサが学生鞄を持ったところで、先にカラフルなランドセルをしょってタブレットをいじっていたトモが声を上げた。
「どうしたの?」
すでに咲とナッツが来ていた女子の輪にヘキサも声をかける。
「あ、ヘキサ! ねえこれ観て」
トモがタブレットを見やすい位置にどいてくれたので、その隙間に入る。ランドセルと学生鞄がぶつかり合いながらも、ヘキサは映像を覗き込んだ。
――チーム鎧武から新しいアーマードライダーがデビューした時の映像だった。緑のライドウェアの上にブドウ色の中華鎧を重ねたアーマードライダー。
彼はチームインヴィットとの一戦を終えて変身を解除した。
ヘキサの手から鞄が床に落ち、砂利を鳴らした。
変身を解除したアーマードライダーは、ヘキサの次兄、呉島光実だった。
《新たな戦士は、チャイニーズテイストのGun Stringer! 決め技が火を噴く様はまさにドラゴンの息吹。名付けて、アーマードライダー――龍玄と行こうじゃないか!》
そこでネットラジオの配信は終わった。
咲はひそかにほぞを噛んだ。元々の想定敵はチームバロンだけだったのに、二人もアーマードライダーを擁したチーム鎧武。彼らもチームバロンのように咲たちの舞台を奪いに来るかもしれない。大のオトナが二人もいては、咲にはほぼ勝機がない――考えていた時だった。
「ヘキサ、だいじょうぶ?」
トモがおそるおそるヘキサの顔を覗き込んでいる。蒼白だった。
「…なの」
「え?」
「わたしの…兄さんなの…!」
咲は他の仲間たちと顔を見合わせた。
「兄さんって…この龍玄が?」
ヘキサがスマートホンを取り出し、猛然と液晶にタッチして耳に当てた。このタイミングで電話する相手となれば、彼女の兄であるアーマードライダー龍玄に他ならない。
「――出ない」
「お兄さん?」
ヘキサは沈痛に肯いた。
「兄さんに何かあったらどうしよう……」
咲はすっくと立ち上がった。
「行こう」
「え。咲、行くってまさか」
「お兄さん。今のラジオでチーム鎧武の人だってわかったから。ナッツ、鎧武のキョテンって、西のステージの近くだったわよね」
「ん。ウラとってないけど」
ナッツはトモのタブレットを借りて、画面を近辺の地図に切り替え、指である一帯を丸く囲った。
「ねらージョーホーによるとこの辺の空きガレージ」
「よし。みんな、いい?」
チームメイトの誰も、チーム鎧武を尋ねることに反対意見を言わなかった。
「じゃ、このキカイに、あたしたちもチーム鎧武とナカヨシになりに行きましょ」
皆がどやどやとランドセルを持ち準備する中、ヘキサが咲のトレーナーの裾を指先で摘まんだ。
「――ごめんなさい。またメーワク、かけて」
咲は苦笑してヘキサの手を取った。
「いいよ。トモダチのことだもん。チームワークは助け合い。だからヘキサも、あたしたちのだれかが大変だったら助けてね」
「うん! ぜったいぜったい助けるからっ」
後書き
ついに本格的に本編とのクロスに向けて動き出しました。原作では3話~4話にかかります。先に光実とヒロイン②の兄妹関係を出したのはこのためだったりします。
ちょっとだけ若者の人間離れをやってみました。スマホ・タブレット世代の子ならこのくらいはできるよね?ね? って感じで。後片付けとかランドセルとかで小学生感はなくさずに。というかまず会う理由を決めずに勢いで行こう! となる辺り、まだまだ幼いですね。
今更ですが劇中歌は原作での挿入歌を使用させていただきました。大丈夫ですかねコレ?
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