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リリカルなのは~優しき狂王~

作者:レスト
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第五十七話~Pray~

 
前書き

更新遅くなってスイマセン。

最近寒くなったり、忙しくなったりで大変です。皆さんもお体に気をつけてください。

では本編どうぞm(_ _)m 

 


 そもそも、疑問に感じたのはフェイトと初めて出会った時の会話にあった。

『特異な魔法の残滓』

 その時は魔法についての知識をほとんど持ち合わせていなかったライにとって、特に気にするような事柄ではなかった。
 だが、魔法についての知識を得ていく内にそれは疑問となって浮き出てくる。
 声帯に残っていたとされる魔法の残滓。それは簡潔に言えば魔力が残っていたということである。
 ギアスを得ることでリンカーコアが生まれるのかどうかは定かではないが、少なくともライの体内にはリンカーコアが存在し、ミッドチルダ若しくは次元世界で共通認識されている魔力運用がギアスを使ったことで行われたことになる。
 ならばそれは、ギアスを使用することは次元世界共通の魔法行使と同じように、ギアスという魔法が魔力を消費して行われているということと同義である。
 そしてここで疑問が出てくる。ギアスを使用すればする程起こりやすくなる暴走。任意でのギアスのON、OFFができなくなる、それ。もしギアスが魔力を消費して行われるのであれば、ギアスは連続して使うほど弱くなる、若しくは魔力が枯渇し使えなくなるはずだ。
 だが、実際にはその逆。使用できなくなるどころか、常に使用していなければならなくなる。
 ならば、考えられるのは『ギアスを一度使うときに消費されている魔力と使用している魔力の量が違う』ということ。
 単純に言えば、ギアスの一度の使用に9の魔力を消費するのに対し、その時に使用される魔力が10ということである。その際の差し引きである1という魔力が貯まり、一定量を越す事で暴走という形になるとライは一度予測する。
 だが、ライはその仮定を否定する材料を思い出す。
 常時発動型のギアス、読心能力を持ったマオの存在である。彼はギアスを手に入れてから、その能力をOFFにすることが全くできなかった。その結果心を壊すことになったのだが、そこは今関係ないので割愛する。
 重要なのは、『常に魔力を消費していたはずなのに枯渇することがなかった』という点である。
 マオが次元世界でも極めて珍しい程の魔力を有していた?
 否、例えそうであったとしても、幼い頃から十数年間常に魔力を消費し続けられるはずがない。
 ならば答えは簡単である。ギアス保有者にそれだけの魔力がないのなら、魔力のある場所から供給、または補填されているということだ。
 ならば、どこからその魔力が送られているのか?
 ギアス所有者の共通点、それはCの世界に対して干渉できるという点だ。だが、それがもし、所有者からの干渉だけでなく、『Cの世界からの干渉』も含まれているとしたら。
 それの意味するところはCの世界は集合無意識のみで構成されているだけでなく、魔力を含むということ。更に運用において魔力を使用しているということになる。
 そして、平行世界の観測さえ可能にする莫大な力を持つシステムを運用する程の魔力がそれの運用だけでなく、ギアス所有者のギアスの使用を行う上で魔力を供給しているとしたら。
 そしてもし、その魔力の供給をギアスの使用以外の目的で、使用者の“任意”で行えることができるとしたら……



ゆりかご・聖王の間


 『ACS』
 正式名称、Accelerate Charge System(瞬間突撃システム)。これはデバイスに送られる魔導師の余剰魔力を展開し、それを推進力にすると言うシステムである。
 それは基本的に魔力で編まれた翼のような物を展開する。そしてその翼は魔導師の魔力で編まれているため、その色はその魔導師の魔力光と同じになる。
 それはACSを幼い頃から使用しているなのは然り、改良したデバイスに組み込まれた物を使用しているスバル然り。
 ならば何故、ライの使用するACSは彼の魔力光である白銀ではなくライトグリーンなのか?
 それはライがカートリッジ一発分の魔力の消費を最適化し、ACSをライにとって使いやすいように調整した結果そうなったのである。
 であるならば、使用者であるライの保有魔力が外部からの供給により、潤沢に使用出来るようになったとしたら――――

「……蒼月、パラディン、何分保つ?」

『ソフト面に問題無し。行けます』

『ハード面に高負荷。限界機動を行った場足、最大稼働は11分27秒』

 背中の翼から白銀の魔力が微細の粒子となって空間に散っていく。その翼の持ち主は静かに相対するべき相手を見据える。

「……貴方はなんなの?」

 ライを睨みながら、ヴィヴィオは自然と疑問を溢す。
 自分が“何故か”憎んでいる彼に。
 自分にとって得体の知れない彼に。

「全てを狂わす狂王だよ、聖王」

「……」

 自分の求めた答えとは思えないが、何故かその返答は彼女の中でストンと落ちるように受け入れられた。そしてそれと同時に彼に『聖王』と呼ばれる事で、少しだけ悲しみが増す。

「「……」」

 無言で2人はお互いに構え、そして再び光が交差する。



ゆりかご・祭壇区画


 その部屋にいる全員がモニターを注視していた。
 彼らの目に映るのは先ほどよりも速く、破壊的な銀と虹の交差。
 そのどこまでも幻想的で、どこまでも苛烈な光景にその場にいる全員が魅せられていた。そんな中、ジェイルが話始める。

「……これ程彼のいた世界に興味を惹かれるとは思わなかった。彼の世界にはこれほどの力を創り出すものが存在するのか」

 子供が新しいおもちゃに憧れを抱くような表情を浮かべながら、ジェイルは語る。だがそれはどこか歪な喜悦。見ていて寒気を感じる“何か”であった。
 ライを画面越しに眺めていたジェイルであったが、何を思ったのかフェイトの方に視線を向ける。
 その彼の視線に気付いたフェイトは一瞬身構えるが、彼はそんな彼女に落胆のため息とガッカリしたような視線で答える。
 これにはフェイトも流石に困惑した。

「……プロジェクトFでは彼のような良質な規格外を生み出すことはできなかった。それどころか、完全なクローン1つ作ることができない。であるのであれば、その計画もそれによって生み出されたモノも結局は失敗作であったということか」

 ジェイルの言葉にフェイトは頭が真っ白になる。彼女はジェイルの言葉を一瞬認識出来なかった。だが、頭は理解していたのかフェイトの叫びの声が自然と口に付いて出た。

「一方的に生み出しておいて、それを否定するな!私たちをモノ扱いするな!!自分勝手な物言いをするな!!!」

「?」

 そのフェイトの言葉が心底不思議なのか、ジェイルは眉を寄せて不可解なものを見たような表情を浮かべる。

「君は人為的な生み出されたモノである事に変わりは無いはずだが?」

「よくもそんな―――」

「それに自分勝手なのは君もだろう?自分と似た境遇の者を集め、自分だけが酷い境遇ではないと思おうとする。そして集めた者が力を持っていたのなら、自分の目的を果たすために利用する。十分身勝手だと思うがね?」

「?!違う!私は――」

「違わないさ。君がなんと言おうと、それは所詮君の主観だ。他人が見ればそれは客観的な事実だ。現に君が私を捉えようとするために、地上で君が保護したという2人の幼子が戦っている」

「っ違う!違う!違う!」

「ふむ、君はどう思うかね、ライ君?」

「!」

 ジェイルの言葉に今度こそフェイトの頭は真っ白になった。
 聞かれていた、知られた、晒してしまった。自分の出自を、自分の秘密を、知られたくない人に。それを意識してしまったフェイトの顔から血の気が失せる。
 彼女はどこか、定まらない視線をライの映るモニターに向ける。そこには一旦様子見をしているライとヴィヴィオが写っている。
 そんなライをどこか怯えた表情でフェイトは見る。
 彼女は恐れていた。普通の人間とは違う生まれ方をした自分を知ったライがどんな反応をするのかが。
 彼の事を信頼している。だが、だからこそ今の関係が心地よくて、それを壊してしまうのが怖かった。
 しかし、フェイトは心のどこかでこうも思う。「きっと、ライは自分を受け入れて優しい言葉をかけてくれる」と。そんなことを考えてしまう自分が酷く醜く思えて彼女は泣きそうになった。
 フェイトがふさぎ込みそうになったとき、とうとうライが口を開く。

『別にどうも思わない』

 そのどんな風にも受け止められる言葉にフェイトはビクリと肩を震わす。

『フェイト、君は誰かに認められるために生きているのか?』

 ライの瞳が画像越しにフェイトを射抜く。

『これまでの自分に後悔がないのなら、顔を上げろ、前を向け』

 その言葉は慰めや応援ではなく、叱咤の言葉。

『自分が成すべきことを成せ。それをしようとするのが“人”だろう』

 それだけ言うと、ライは再びヴィヴィオと交戦に入る。
 ライの言葉を受け取ったフェイトは俯く。そんな彼女を隣に立つなのは心配そうに、ジェイルはどこか観察するように見ていた。

「……なのは」

 ポツポツと床に雫が落ちる。その雫を拭うことなく、フェイトは口を開く。

「ライはとっても厳しいね」

「フェイトちゃん……」

「でも……そんなライを好きになれて良かった」

 そしてフェイトは顔を上げる。そこには頬に濡れ跡を残しながらも、とても力強い表情を浮かべるフェイトの顔があった。

「行くよ、バルディッシュ」

『イエッサー』

 了承の意と共に、バルディッシュのカートリッジが小気味よい音を立て、消費される。すると、これまで大剣の形を取っていたザンバーフォームが刀身を二つに分け、日本刀を彷彿とするふた振りの剣となる。

「真・ソニックフォーム」

 フェイトの口から紡がれる言葉に合わせ、彼女のバリアジャケットも変化する。これまでの制服を連想させるような服ではなく、レオタードのような薄着。それはバリアジャケットの装甲を限りなく減らし、それと引き換えに自らが出し得る最高のスピードを使う為のものである。
 その、装甲とのトレードオフを行うとフェイトは静かに構える。

「ジェイル・スカリエッティ、貴方を逮捕します」

 静かに、だが確かに紡がれた言葉にはフェイトの覚悟が込められる。
 そんな彼女にジェイルは満足そうな笑みを持って答えた。『できるのならやってみたまえ』という意味を込めて。











 
 

 
後書き

と言う訳で、ライのレアスキル的な何かでした。ツッコミどころ満載な気がしますが、これぐらいのチートがないとライに勝ち目がないと思いまして(^_^;)

後、二話か三話ぐらいでヴィヴィオとの戦闘は終了すると思います。

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