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願いを叶える者(旧リリカルなのは 願いを叶えし者)

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チーターって聞いてみると動物って感じがするよね

ー迷宮区・ボスの部屋の扉前

全員で44人のプレイヤーの大行進。

そんな大勢の耳障りな足音も止まり巨大な扉の前に来た。

その群生を率いている青髪の青年、ディアベルが全員に向き直り剣を地面に突き刺した。

「ここがボスの部屋だ!
俺から言うことはただ一つ!
勝とうぜ!」

「……[これ死亡フラグじゃねぇの?」

「……[その通りなんだよね……」

「……[ふざけた事考えてる奴は大抵自滅してくんだよな…」

「……[違いないよ…ははっ」

「それじゃあ作戦通りに行こう。
俺達はボスの取り巻きを相手にする…いいな?」

キリトが最終確認のために俺達を見回した。

「無問題だ」

「わかった」

「緊張しすぎると却って動きずらくなるよキリト」

「ああ、分かってるさ」

キリトは真剣な表情で扉を見つめた。

「皆!行くぞ!」

"ガコォォン"とディアベルが扉を開き、暗かった大部屋に明かりが点った。

それと同時に小さい鎧を着たルインコボルト・センチネルが3体に
巨大な熊?みたいなモンスター、イルファング・ザ・コボルト・ロードが現れた。

「総員、戦闘開始!」

「「「「「「うおおおおおお!」」」」」」

ディアベルの号令により、プレイヤー全員が突撃を開始する。

…………ユウジ達を除いて。

「なぁ、これって俺ら必要なくね?」

ユウジ達は横一列になりながら戦闘の行く末をみている。

「明らかに僕たちの任された仕事盗られてるよね?」

そう、キリトに通達された取り巻きの相手は他のパーティーとバッティングを起こし
4人の仕事が無くなっているのだ。

「……どういう事?」

赤いフードを着たプレイヤーが不満をのべる。

「……聞いていた話と全然違う、あのプレイヤー達はボスの対応だったはずだ。
作戦無視?それとも途中変更なのか…?」

キリトが思考に潜り始めた。

「……ふむ、まぁ攻略されれば良いんじゃないか?」

「お気楽だなぁ…」

ユウジとソウヤは通常運転だ。

と、そこへ……

「へん!お前らはそこで大人しくしとくんやな!」

ローテーションの回復で後退した…………誰だっけ?

「キバオウや!………ゴホン!まぁええ、お前さんらは兎も角
ソコのガキは戦闘に参加せんでええで。
指加えてディアベルはんが活躍する様を見とればええんや」

そう言って作戦に戻っていったキバオウ。

あー成る程、詰まりあれだ。

「これは偶然のバッティングではなく、故意に図られた
ボッチパーティーの作成だったわけだ」

「ボッチに拘るね……でもまぁ、それで間違いは無いみたいだけど」

「え?どういう事なんだ?」

「……説明して」

キリトと赤フードは分かっていないようだ。

「詰まりはだ、このバッティングは図られたもので、
キリトは何らかの繋がりでβテスターだってバレたって事だよ。
まぁ、そんなのはどうでも良いとして、奴さんは俺達に経験値等を分けない算段なんだろうな。」

「……そんな…」

「……醜い」

「まぁ、経験値貰えなくても後でレベリング手伝ってやるよ」

「そう言えば二人は今何レベル?」

「俺は11だ」

「……9」

「まぁ、上々だな。
…………………………………観戦するか」

「「「(コクッ)」」」









ーーーボスの体力ゲージの一本が赤くなり、武器を投げ捨てた。

「下がれ!後は俺がやる!」

ディアベルがそう言いながらボスに向けて走り出した。

「な!?ここはパーティー全員で止めを指すのがセオリーだろ!
何を考えて……………」

キリトが発言していて急に止まった。

ボスは近づいてくるディアベルに向かって腰にあったタルワール…
ではなくて野太刀を振りかざした。

「……!ダメだ!全力で後ろに飛べ!」

キリトが叫んだが遅かった。

壁や柱をうさぎ跳したボスは一直線にディアベルを切り裂いた。

「うわああああああ!」

ディアベルが吹き飛んだのを見てキリトが駆け寄った。

… …ソウヤも一緒に。

………何やら言い合って……あ、ソウヤがディアベルの口にポーション突っ込んだ。

そう言えば回復アイテム買い込んでたな。
成る程、そういうことか。

「だけど、な……」

"ガキィンッ!"

「敵の目の前で茶番劇広げるような暇は有っても無いと知れ」

ソウヤ達に降り下ろされた太刀をユウジは受け止めてそう言った。

「………私もやる」

赤いフード…もう、アスナで良いや…が俺の横に立った。

「ディアベル、お前は休んでろ。
後は俺たちがやる!」

ディアベルに意気込んで立ち上がるキリト。

「さっさと終わらせよ…行こうかユウジ」

ソウヤは剣を抜き、何時でも行けると体勢で語る。

「そんじゃ、3、2、1…GO!」

"バッ"と一斉に走り出した。

最初はキリト。

他のプレイヤーに降られた野太刀を剣で弾いた。

「スイッチ!」

キリトの叫びにアスナが懐に入り【リニアー】を放った。

ボスの体力ゲージの減りは微妙だったがダメージはしっかり与えている。

「合わせろ!ソウヤ!」「オーライ、ユウジ!」

ボスを視点に二人は走り、突き抜けた。

「「瞬塵、十文字!」」

実際のものとは違うがエフェクトが掛かり体力ゲージを大幅に削った。

「キリト!」

「うおぉあぁぁぁぁぁぁ!!」

最後の一閃に全力を込めるかのように切り裂きながら走り抜けた
キリトの周辺にポリゴンが散らばる。

頭上にはCongratulations!の表示が現れ、討伐成功を知らせた。

「やっ……た」

キリトの呟きに続いて参加したプレイヤーが歓声をあげた。

「お疲れさん、よくやったな」

とりあえず労いの言葉を言っておく。

すると色黒の男、エギルが歩いてきた。

「Congratulations!この勝利はあんたらのもんだ」

「いや、勝てたのは皆の…「何でや!」……え?」

叫びの方を向いてみると怒り剥き出しの表情でキバオウが睨んでいる。

「何でディアベルはんを助けんかったんや!」

因みにディアベルは死んではいない。

「そりゃ、お前さんが参加せんでええでなんて言うからじゃないのか?」

「その通りだね。
結果、助けられた状況を不意にしてしまった。
初期の作戦を崩壊させ、バッティングやらの企てをした奴が悪いんじゃないの?」

俺とソウヤの正論にキバオウが罰の悪そうな顔をしたが

「そのガキはボスの情報もっとったやないか!
何で最初から知らせんかったんや!
知らせとったらディアベルはんも斬られずにすんだんやで!」

「…それは…」

「お前らはもうちょい観察眼を身に付けようね?
ボスの野太刀は腰に携帯されていた。
戦っている間にもそれを見ることができたはずだぜ?
タルワールではなく、野太刀だと言うことが」

「あんな土壇場でわかるかぃ!
ワイの言いたいことは何でもっと早く教えんかったかって事や!」

「それこそ、俺達を萱の外にした上に参加するなと言われた故に、
俺達は宛にしていない、俺達より優れている、俺達がいると邪魔だ。
そんな解釈が出来るわけだ。
何か間違っているか?
それにな、俺は兎も角、キリトはそのときになって初めて気が付いたんだぜ?
それを攻めあげるのは、大人としてどうなのかねぇ?」


キバオウはたじたじになりながら何とか言葉を絞りだし、とうとう告げた。

「わ、わいは知っとるんや!お前、元βテスターやろが!」

その言葉にキリトがいち早く反応を見せたが、誰の目にも止まらなかったようだ。

「そ、そうだ!βテスターだからボスの情報を隠してたんだ!
何て汚い奴だ!どうせ報酬狙いなんだろ!」

元βテスター。

その発言に便乗してキバオウの近くにいたプレイヤーが参戦してくる。

「……残念なことに俺は元βテスターじゃないし、仮にそうだとして、
デスゲームになったこの世界で、クリアの為に重要な事隠す必要が
どこにあるんだよ?
状況悪けりゃ死んでるぜ?」

死。

全員が固まる中、口を開く者がいた。

「じゃあ、じやあさっきの技は何だったんだよ!
どうせチートでも使ってんだろ!
あんな技、ソードスキルには載ってないぞ!」

「チート…全てのゲームにおいて最も嫌われる行為の一つ。
まぁ、仮に出来るとしてこんな状況下でどうやって弄くるんだ?
ましてやこの状況下でチートを使ったとして、何が悪い?」

全員が は?何言ってんの? みたいな顔してる。

「チートなんて卑怯だろ!最低だ!ふざけんなよ!」

「はぁ、お前がふざけんな。
て言うかデスゲームなこの世界で真面目なんて通用しないぜ?
チートがあればそれだけ早く攻略できる。
誰も死なず、すぐさまリアルにゴールインだ。
ま、俺は使ってないけど」

あぁ、成る程とうなずく奴も居れば額に青筋うかべるやつもいた。

「嘘付くな!だったらさっきの技が何か説明してみろよ!」

「「現実の技ですが何か」」

「そんなの剣道じゃ聞いたことねぇぞ!」

は?何言っちゃってんのコイツ。

「スポーツと実戦を一緒にしないでくれないかな?
剣術と剣道の違いも解らないの?
バカなの?死ぬの?」

「あ………」

アスナは気付いたな。

「リアルで出来る動きはこの世界でも出来る。
そう言うことね?」

「御名答♪」

「俺しってるぜ!それって人殺しの技術だろ!
人殺し!」

「……………もう良いや。
俺達はチートは使ってない。
あの動きは制限された中で行った剣術。
んでもって……俺はソードスキルは使えない。
俺からはこんだけ。じゃな」

いい終えると俺とソウヤは次の層へと続く階段を上り始めた。

ソードスキルが使えない。

ここにいるプレイヤー全員が知っていること。

始まりの町で唯一茅場に担架を切ったプレイヤー。

たかがコーディネイトの為にソードスキルを捨てたプレイヤーの事。

「あいつが…そうだったんだ……」

「チートなんて使えるはずがない」

少しは理解する奴も現れ始めたのかもしれない。

だがそれでも納得しないやつだっている。

「騙されるな皆!アイツは間違いなくチートを使ってる!
チーターだ!卑劣な奴なんだ!」

やれやれ、ここまで来ると清々しく思えるよ。

そう思いながら扉をくぐり、第2層へと足を踏み入れた。






後から聞いた話だとキリトが俺達を庇う発言をした上に元βテスターだと皆にバレて
ビーターという称号を受けたそうだ。

アスナは去り際にキリトに名前を呼ばれ、どうして知っているのかと
詰め寄った結果、パーティーカソールに印されていた事をしり、笑ったそうだ。
その時改めて自己紹介をして来ていたフードを取ったそうだ。

キバオウ達反抗派はディアベルが気絶から回復したのを確認し、
会議を行った町へ転移したらしい。

これから待ち受ける事態にディアベルは不安を余儀無くされたが
これから先もプレイヤー達を導いていけるよう頑張っていくと決意を新たにしたようだ。

因みにソウヤがディアベルの死に際に言った言葉は
『自分で集めた集団を他人に擦り付けようとするな。
集めた責任は最後まで果たせ』だった。

ディアベルが決意を新たにする切欠になった一言だった。 
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