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北が恋しいと

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第二章

「実際に焼き鳥出るだよ」
「いや、ここは焼き鳥は出ないよ」
「羊か」
「だからモンゴル料理店だって言っただろ」
「それで何で和風なんだ?」
「何でもついこの前まで焼き鳥屋だったらしいんだよ」
 それでこの内装らしい、ついでに言えば外観もだ。
「そうなんだよ」
「それで店の中はそのままにしてか」
「料理だけ変えたんだよ」
「予算なかったんだな」
「何処でもそうだろ、お金ってのはないものだろ」
「あればあるだけ使わないといけないからな」
 私の家でもだ、妻もパートで働いて大変だ。娘だけは気楽にアルバイトをして自分が遊ぶ金を稼いでいるが。
「この店もか」
「不景気とか以前にな」
「まあ事情はわかったさ、じゃあな」
「それじゃあか」
「丁度カウンターの席が二つ空いてるぜ」
 店の中は結構お客さんがいる、それで肉料理や白い酒を食べている。どうやらあの酒がその馬乳酒らしい。
 カウンターを見れば実際に席が二つ並んで空いている、同僚はその席を指し示して私に言ってきたのだ。
「あそこに座ってな」
「飲むか」
「そうしような」
 こうやり取りをしてその席に並んで座った、同僚がカウンターの何処から見ての日本人の親父に言った。
「親父、馬乳酒にな」
「アイラグだね」
「あと肉とチーズな」
「アーロールのだね」
「ああ、それ頼むよ」
「じゃあ肉はどうするんだい?」
「前のあれ頼むよ」
 同僚は慣れた感じで親父に言っていく。
「チャナサン=マフな」
「それだね」
「ああ、それで頼むよ」
 何か聞き慣れない言葉を聞いてだった、私は同僚の注文を聞いていた、そして暫く経ってだった。
 やたら量の多い羊肉の茹でたものと四角に切ったチーズの山に白い酒が来た、まずはその白い酒を飲んでみると。
「ああ、これか」
「それが馬の乳の酒だよ」
「中々いけるな」
 私は実際の飲んでから彼に言った。
「これな」
「そうだろ、ただ高いからな」
「これ一杯だけか」
「二杯目からは他の酒にしような」
「高いのか、これ」
「モンゴル直輸入なんだよ」
 その高さの理由はこのことにあった。
「日本で普通馬の乳から酒は作らないだろ」
「それはな」
「だからだよ、高いからな」
「二杯目からはか」
「焼酎にしような」
 実は同僚も家族に痛風だの言われている、それで飲む酒は私と同じ焼酎がメインだ、
「そっちにな」
「それかワインか」
「この店ワインもあるからな」
 傍にあるメニューを見た、見ればカタカタでのモンゴルでの名前と日本語での説明がそれぞれ書かれている。
 酒のメニューもある、そこにワインもあった。
「ワインだったらいいよな」
「そっちの方がいいんじゃないか?」
 私は目の前にある肉とチーズの山を見てから彼に返した。 
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