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北が恋しいと

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第一章

            北が恋しいと
 その時私は大阪のキタで飲み屋を探していた。
 正直店は何処でもよかった、それで一緒にいる職場の同僚にこう言った。
「焼き鳥にするか」
「いつも通りか」
「ああ、そうするか?」
 こう彼に言った。
「飲めるのなら何でも何処でもいいからな」
「それで焼き鳥か」
「悪くないだろ」
 また彼に言った、もう夜になっていて周りはあらゆる店の看板の灯りで赤に青に白に随分賑やかだ、そういうものを見ているとだ。
「何か適当に入ってな」
「それで飲むか」
「焼き鳥でなくてもな」
 何処でもよかった、そこは。
「別に焼肉でも何でもいいさ」
「そうか、ただな」
「ただ。何だよ」
「実は最近面白い店を見つけたんだよ」
 彼は私に笑ってこう言って来た。
「この辺りでな」
「面白い店?」
「ああ、モンゴル料理の店でさ」
「モンゴル料理!?」
 その名前を聞いてだ、私は思わず彼に問い返した。
「そんなものがあるのか」
「ああ、珍しいだろ」
「モンゴルなあ」
 モンゴル料理と聞いてもぴんとこなかった、それで彼に返した。
「羊に乳製品か」
「ああ、どっちもあるよ」
「何かそれ以外はあまりピンとこないな」
 モンゴルといえばチンギス=ハーンにモンゴル帝国、それに遊牧だ。私のモンゴルへの知識はそれ位だった。
「お茶はよく飲むな」
「ああ、それに酒はな」
 肝心のそれの話になった、それはどういうものかというと。
「馬の乳から作るな」
「馬か」
「馬乳酒っていうんだよ」
 それがモンゴルの酒だというのだ。
「他にも日本の酒もあるけれどな」
「馬の乳から作る酒か」
 私はそちらに興味を持った、それで同僚にこう言った。
「じゃあそこに行くか」
「決めたか?そこに」
「ああ、どちらにしても飲めればいいからな」
 ついでに言えば給料日後で金も結構ある、なければコンビニで適当に買って家で帰って飲んで妻と娘に色々言われることになる。娘も二十になって私がいつも飲んでいる安い焼酎なりに親父臭いと笑って言う様になっている。妻は妻でビールを飲んだら痛風になるからそうした酒にしておけと五月蝿い。
「じゃあモンゴル料理にするか」
「決まりだな、案内するな」
「ああ」
 二人で話してそしてだった。
 私は同僚が案内した店に入った、店の外観はモンゴルよりも日本の居酒屋だった。ただ看板にはモンゴル居酒屋とある。店の名前は。
「フビライか」
「元寇の人のな」
「特撮の悪役みたいな名前だな」
 今思い出した、子供の頃観た宇宙刑事シリーズの敵だ。
「そんな名前だな」
「随分古いの出すな」
「それもそうだな」
「まあとにかく中に入ってな」
 それでだと話してだ、そして。
 二人で店の中に入った、するとだった。
 店の中も和風だった、その辺りの焼き鳥屋と変わらない、テーブルもカウンターも壁とそこにあるお品書きもだ。 
 それを全部見てだ、私は同僚に言った。
「焼き鳥屋さんか?」
「そう思うだろ」
「何処からどう見てもな」
 こう彼に言った。 
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