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願いを叶える者(旧リリカルなのは 願いを叶えし者)

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いざゲームの世界へ

ここはゲーム、ソードアート・オンラインの世界。

「ふう…こんなもんかね?」

俺、ユウジはそんなため息をはいて隣を見る。

そこにはおなじみ、蒼也改めソウヤが猪のようなモンスターを切り裂いていた。

「いやあ、ゲームの世界とはいえ現実に限りなく近いね」

剣を腰に収めながら言ったソウヤはどことなく楽しんでいるようだった。

「とりあえずもっと強い敵を所望する」

そう、ユウジやソウヤからして見れば現実の敵とは違いモンスターの動きが単調すぎているのだ。

今倒したフレンジーボアでも、ただ突っ込んでくるしか脳が無いようで一瞬でポリゴンにできる。

「うーん…じゃあ迷宮区に行ってみる?」

「そこは強いやつがいるのか?」

「まあここよりはずっとましだと思うんだけど」

「んじゃまあ行くか?さあ道案内頼むよ若者君!」

「いやいや、ちゃんとマップに載ってるからね?確認しようよ」

「はあ…なんと面倒なことか…」

そう言いつつもしぶしぶやる。

「…競争開始!」

ズドドドドと走り出すユウジに慌てて追いかけるソウヤ。

迷宮区にたどり着いたのは数分後だった。












サイド  キリト

「あの二人はもう来てるのかな…」

桐ヶ谷和人改めキリトは昨日出会った二人を思いうかべる。

「…よし!負けないようにレベルアップに励むか!」

戻ってきたこの世界。

うれしさと期待に胸が膨らみ駆け出した。

「おおーーいそこのにいちゃーん!」

走っている途中、後方から声をかけられて立ち止まる。

振り向くと赤毛にバンダナをした男がいた。

「兄ちゃん、その迷いの無い走り、βテスト出身だろ?
頼む!序盤のレクチャーしてくれ!」

パンっと手を合わせて頼み込む男はクラインと名乗った。

「俺はキリトだ」












サイド  ユウジ&ソウヤ

「ふむ、いまいち」

「そう言わないでさ。
一応レベルは上がってるんだし」

この迷宮区に来たときはレベル1。

今はレベル9。

今この世界にいるどのプレイヤーよりも高いといえる。

「弱すぎ、遅すぎ、キモ過ぎ、あと臭そう」

「最初の3つには同感だけど、最後のはどうなんだろうね?」

だって来るやつのほとんどが涎たらして襲ってくるし。

二足歩行してるやつにしたら風呂入ってなさそうだもん。

「しかし結構上がったね、レベル」

「経験値的には満足なんだろうが、運動的には満足行かんな」

「もっと上の層に行ければ敵も強くなってくるよ」

「やれやれ、ボスとご対面したいんだがな」



話題休暇




「ほっ」

”ズシャア!”

パアンと音を立ててポリゴン化するモンスター。

もうすでに一撃で殺ることができている。

「なあ、もうちょっとこうどっさり出てくるとか無いのか?」

「まあ、少数しか出ないって言うのも考え物だよね」

あれから1時間ほどがたち、二人のレベルは12になっていた。

「あー、大声出せば寄ってくるかな?」

「……やってみれば?」

「ふむ、手前ら全員かかってこいやあーー!!」

ピロリンと音が鳴り、目の前に表示されるメッセージ。

否、クエスト表示。

「あ?『産出された大群』?クエストか?」

「うっそ、隠しクエだよ。
成功条件は?」

「ん?開始直後から出現しはじめる敵を百体倒す、だとさ」

「…大丈夫かな?」

「let's tray」

問答無用でイエスのボタンをタッチ。

瞬間、数十体のモンスターがポップし、襲ってきた。

「うえええええい!?」

「ほれほれ!よええぞ!」

スパスパと敵を切り裂きまくるユウジ。

いきなりの事に慌てながらも敵を倒すソウヤ。



98体目まで倒し、99体目に切りかかったとき、

「”バキイン”んなあ!?」

敵に振った剣が音を立ててポリゴン化し破壊された。

「うそお!?」

どうやらソウヤも同じようだ。

「ふ!わっ!と!」

一応ながら距離をとった二人だが武器が無い。

アイテムストレージになら敵の落とした武器が入っているがあいにくと取り出している暇は無い。

ならばどうするか、決まっている。

「肉弾戦だ!行くぞ!」

「うおおおおおおお!」

敵が横に振ったこん棒をしゃがんで回避し、アッパーで敵を打ち上げる。

空中に浮かんだ敵は身動きがとれず、…

「おおおおおららららららららら!!!」

ラッシュをお見舞いし与えているダメージは少ないものの確実にHPを減らしていく。

「これで終わりだ!」「くらえええええ!」

二人同時に胴回し蹴りを放ち敵を倒した。







「いや、あせあったー…」

「まあ、武器に耐久値があるなんて知らなかったぜ」

「あ、そういえば……うおお…」

「何だ?ああそういうことか」

レベルの確認。なんと12レベルから18レベルまで上がっていた。

「いやーやってみるもんだね」

「そうだな、結構楽しめたぜ」

時間にして約15分。

100いる敵を15分で倒したのだ。

はたから見ればものすごくチートに見えるだろう。

「そろそろ帰ろうか?」

「そうだな、町にでも行くか」

「ん、転移始まりの町!」












到着した始まりの町ではすでにプレイヤーたちが集まっており、鐘が大きな音を立てていた。

「あ、強制収集」

「?始まりか?」

転移の光が収まり、空には警告の表示が。

「お、おい、何だあれ!」

警告表示が空全体に広がり、空を紅く染め上げる。

それにちなんで紅い液体が降り注ぐ形で人型が形成されローブをまとった巨人となった。

周りでは

「GMか?」

「手の込んだイベントだな」

などといっている。

『私の名前は茅場明彦。この世界を管理できる唯一の人間だ。
もう気づいている者もいることだろう。
メニュー画面からログアウトボタンが消えていることに…
これはバグでも事故でもない。
正真正銘このゲームの仕様である』

茅場と名乗った巨人はそのまま話を続け、プレゼントを贈ったと言った。

手鏡だった。

それを見た全プレイヤーの姿が変わり激しく目立った格好、(おもにネカマ)一時期におけるパニックをおこした。

『さて、では最後に、この世界に招かれざる客がいるようだ。
そのものを排除したプレイヤーには私直々にアイテムを送ろう。
もちろん、そのプレイヤーの希望にもこたえる。
そのプレイヤーたちはそれぞれ目立つ容姿をしているようだ。
ふるって討伐してくれたたまえ。
それではこれにて「おーーい!」…何かな?』

チュートリアルを終了、と言いかける茅場にユウジが声をかけた。

周りの視線が集まる中、何食わぬ顔で言葉を続ける。

「あんたって人のスキルをいじくれるのか?」

『無論だ、がそれが何か?』

「それなら俺のスキルいじくってほしいんだけど」

他人から見ればチートを所望しているように見えるだろう。

しかしユウジの思惑は違うところにあった。

「鍛冶、裁縫におけるデザインの組み換えをしたい」

『ふむ、装備のデザインが気に入らなかったかな?』

「それもあるけど、自分で作ってみたいじゃん?」

『いいだろう、しかし対価は払ってもらおう』

「ふむ、対価…ね。
なあ、このゲームで重要なのってなに?」

『…いろいろあるが、一番はソード・スキルだろう』

「んじゃあそれ使えなくしていいからいじくってくれ」

『正気かね?言っては何だが攻略には必須と言ってもいい物だぞ?』

「いいんだよ、その代わり作った物はそれに見合うだけの能力が追加されるようにしてくれよ?」

『……いいだろう。
ほかにはいないかね?今なら皆平等に改変をしてやろう。
もちろん、それに見合う対価を払ってもらうがね』

ーーー誰も何も言わない。

当たり前だろう。

攻略の要であるソード・スキルをなくすことは自殺に等しいのだから。

『ではこれにて正式サービースのチュートリアルを終了する。
今後の検討を祈っている。』

そういって崩れ落ちるように消え去った茅場。

跡に残されたプレイヤーたちは皆唖然としている。

「ソウヤ、行くぞ」

「了解」

小声でやりとりして裏路地へと走り去る。

しかし先客がいた。

「お、路頭少年!」

「誰が路頭だ!ってお前ら!」

「よっ
どうしたんだ?こんなところで」

「あ、いや…そうだ!お前らレベルは?」

「ん?二人とも18だな」

「「はあ!?」」

「何でそんなに高いんだよ!?」

「いや、迷宮区?ってところで狩まくってたらいつの間にか」

「まあ、ちょうどいい!クライン、今すぐその仲間を呼んで来い!すぐにこの町を出るぞ!」

「お、おう」

何も言えない感じに走っていくバンダナの青年。

「そういや名前は何にしたんだ?」

「ユウジ」「ソウヤ」

「リアルネーム!?マジかよ、勇気あるなあ」

「そういうお前さんは?」

「キリトだ」

「キリト…桐ヶ谷、なるほどね」

「とりあえずさっきのやつとその仲間を次の町に送る。
それに手伝ってほしいんだ」

「まあ了解だ」

「いいよ」

「ありがとう、っと、きたみたいだ」

「すまん待たしちまったな」

「いや、大丈夫だ。
それよりも急ぐぞ、早くパーティ組むぞ」

「おう!俺はクライン、よろしくな!」

「俺はユウジ」

「ソウヤ」

「俺、カズな」

「リオウだ」

「ゲンですよろしく」

それぞれに自己紹介しながらパーティを組んでいく。

やがてそれも終わり

「よし、いくぞ!」

その号令に皆いっせいに走り出す。

目指すは次の町。

暗くなってきた道を走り、ポップするモンスターを倒す。

キリトの叫びがうるさかったのは言わないでおいた。

 
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