一からWeb小説を書いてみる
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第01回 書き出し
前書き
前回で大体の設定を作ったので今回はいよいよ書き出しです。書き出し自体はそこまで難しくはありませんが、人を引きつける書き出しを書くのは一番難しいのではないかと感じます。ですので最初はこだわらずに書き出してしまうのが一番です。
もし、それでもこだわってみたいという方がいたら少しだけ読んでみてください。
一番最初の地雷が導入部といわれるプロローグから第一話にかけてです。意識せずに書き出してさらっと流す分には簡単なのですが、一度こだわり出すと際限がなくなり、しかも失敗することが多いという、難易度に中間がない珍しい部分です。
主要な事例として以下のパターンをあげます。
・失敗パターン① ラストバトル! ……続きは?
まず前者の中の一例としてラストバトル的な演出過剰の描写を書いたら普通の続きが書けないというものがあります。
極端な言い回しをすれば一番書きたいシーンを描いてしまったばかりにもういいやと投げ出してしまうパターンです。実は短編に登録しておけば何の問題もないのですが、逆に誰にも読まれないという事になりかねないのでそういう書き方は避けるのが無難です。
・失敗パターン② 設定説明……本筋はどうした?
その世界の歴史や主人公の過去などを延々と記すパターンで、同じく前者に属します。一昔前であれば舞台を紹介すると読者が勝手に世界や人物に思いを馳せてくれていましたが、ライトノベル全盛期にそんな想像力と忍耐力を読者に求めてはいけません。まして我々が書き出すのは読者に読んで「もらう」Web小説。一瞬つまらないと思われたらそれでおしまいです。
ちなみに、なぜつまらないのかは歴史の授業が面白いと感じたかどうかを考えれば自ずとわかるでしょう。事前に覚えろと提示されるものは、後から面白くなることが保証されていても退屈なのです。
・要注意パターン 鉄板テンプレ……またかよ(AA略
テンプレと化している鉄板パターンを導入して平凡な内容で誤魔化す、というよくあるものです。本来ならこれが一番書きやすく、同時に主人公の属性の説明に用いることができます。このパターンならこんな主人公だというものを何となく察してくれるのです。
一方、特定のテンプレを毛嫌いする人がおり、そのパターンを選んだ場合には非難に晒されるということがあります。その代表例が神様転生で、特に転生者が傲慢で神様が平身低頭なんて場合には完全に地雷扱いです。そのテンプレが好かれているかどうか、特に希望する読者層に受け入れられているかを意識しなければなりません。
1-1. 書き出しに必要なもの
ところで、そもそも書き出しには何が必要なのかと疑問に思った方はいませんか? 受け入れられるられないを決める要素は何なんだと思ったりしませんでしたか?
実は残念ながら、決まった要素は存在しません。そのため、巷では物語のテーマが出ていなければならないとか、読者の意表をついていないといけないとか様々な考え方が存在しています。私は個人的に以下の様な内容が必要になると考えています。
・主要(視点)人物の紹介
・当面の目的の明示
前者は言うまでもなく主人公やヒロインの存在を読者に知らせることです。この先にどんな人が出るかわからないのでは物語の紹介になるとは思えません。少なくとも主要人物が一人もいない序章は成り立たないと私は信じています。
後者は全体ではなくこの先10話程度の問題です。極端な話、主人公が最初に迎える冒険の目標だけ書いてあれば事足りると思います。例えば最終的に世界を救う英雄がヒロインと一緒に冒険に出るのは買い物かもしれません。これを無理やり英雄譚の序章に仕立てあげようとしたらそれはそれで不味いと思います。
1-2. 導入部カットによるショートカット
先程述べた通り失敗したり反発を受けたりする書き出しが多々あるのに対して、一様に受け入れられる書き出しのパターンはありません。
そこで、プロローグを意識しないで最初のストーリーを動かす場面まで飛ばしてしまうという方法を提唱してみます。
(例)よくある話としてのシナリオ展開
トラック事故
神様謝罪(主人公スキル作成)
転生(新世界の登場)
幼年期(ヒロインと知り合う)
修行①(主人公スキル強化、ヒロインフラグ①構築)
冒険に出る(書きたいストーリーの開始)
花形騎士の登場(恋愛上のライバル登場、主人公恋愛感情自覚)
模擬戦と敗北(主人公と対立が表面化)
修行②(スキル以外での能力確保)
主人公の告白(ヒロインフラグ②構築、ヒロイン恋愛感情自覚)
ヒロインを賭けた決闘(決戦)
勝利(ライバル退場)
ヒロインの返事(恋愛関係の成立)
結婚式
上の例は一昔前に流行した神様転生モノのプロットもどきです。内容としては主人公が恋敵である優れた騎士を破り、ヒロインの心を掴むものです。前回の5行説明を使用すると以下のようになります。
「目的」:ヒロインを振り向かせる
「理由」:???(未設定:なぜヒロインを好きかが理由になる)
「最大の壁」:花形騎士
「理由」:同じヒロインを好きになり、かつその力が主人公の生まれつきの能力を上回っているのをヒロインに見せつけられた(ヒロインが取られる危機を招いた)から
「乗り越える方法」:スキル以外の能力を生み出して再戦する
この5行(一部未設定)の中には神様転生や修行は主要要素に入っていません。ヒロインを攻略するためにライバルを倒すだけなので、それこそ主人公とヒロイン、ライバルの花形騎士の3人だけいれば話を回すことが出来ます。実は設定とシナリオの中核には関連性がないということも多いのです。
そこで、ここでは「ヒロインと冒険に出る」ことが一番重要であり、他の要素がそれほどではないと仮定して書き出しを作ります。すると転生などと言った嫌われやすい要素を含みつつ記述内容から排除することができます。
書き出し、プロローグの文章の必要性を考えたときに、最初に必要なのは主人公などの人物の顔見せです。テンプレ的な背景説明や盛り上がる決戦は必要ないでしょう。
この必要な最初の「動き」から書き出す方法なら、書きたい物に近いところから始められ、嫌われる要素を後出しにでき、しかも新鮮さがつくれます。結構おいしい書き出しだと個人的には思っています。
○オマケ 書き出しで見せられるもの
書き出しというのは読者がもっとも注意深く読んでくれる部分です。ですので、印象づける要素を強調した書き出しというものが一定以上の割合で存在します。
例えば上の神様転生モノのプロローグでも、注意深く読むと以下の様な意味が発生すると思われます。
・旅立ちが書き出しになっている
家族との別離やその際の主人公たちの心情がメインになりますので、人間関係を主軸とした部分が印象に残ります。ここでヒロインが未練タラタラなのにそれでも主人公についていくと言っていたりしたら、その時点で彼女に重大な理由があると推測されるでしょう。
・もし決闘(2回目)からスタートしたら
二回目の決闘だったら主人公とライバルの関係性が印象の中心になるでしょう。三角関係の恋愛モノと見るよりは女を取り合った男のぶつかり合いとして見られる可能性が高いです。
・もし決闘(1回目)からスタートしたら
敗北に触れた場合に限りますが、相手であった花形騎士の強さが際立ちますので、壁を乗り越える成長物語と見ることができるようになります。
同じストーリーでも取られる意味合いが変わってくる場合がありますので、プロローグは余裕が出てきてから書き換えるという形でこだわっていくとよいでしょう。
(商業作品中の例)機動戦士ガンダム 逆襲のシャア
フィフス・ルナと呼ばれる小惑星の攻防戦が舞台(戦争作品であることを強調付ける)
アムロが強化人間を圧倒したところでシャアと交戦+舌戦(主人公は最初から強いことを明示からシャアの目的の明示=アムロと対立する理由の説明)
互角の戦いの中で強化人間が「なぜファンネルを使わないんです!」と叫ぶ(シャアは本気出してないアピール=壁としての役割がある存在であると示す)
決着を着けること無く両者とも帰還(山場ではないことを示す+その時点において戦局を同行する存在でないことの説明)
……込めようと思えば一気に複雑な説明を終わらせることもできます(おすすめはしません)。
後書き
結局のところ書き出しとは難しいのに定形はなく、時間はかかるのに評価はされないというハイリスクローリターンな部分です。エタるほど未熟な私としてはあまり悩まずに簡単に作成して本編に進んでしまいましょう、としか言えません。
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