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一からWeb小説を書いてみる

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基本的な書き方
  第00回 設定を作る

 
前書き
 小説を書いていくと長編になればなるほど矛盾が目立つようになる一般的な傾向があります。これは設定を考えていなかったからという場合と、設定自体に矛盾が紛れていた場合の2つに分かれますが、適切な設定を構築することである程度回避することが出来ます。
 無理ではない範囲で設定を考えて執筆する際の不安点を解消しておきましょう。

追記
現在基本的な書き方を掲載し終え、順次改訂しています。一部文言を改訂しました(2014年7月5日改訂) 

 
 正直、設定という文字を見て不満を感じた人は多いのではないかと思います。面倒な手間やハードルを回避するための文章の最初が、なぜ設定という高いことで有名なハードルなのか疑問に感じているのではないでしょうか。
 ですが、設定の意味を正しく捉えて書けば思ったより書きやすくなります。
 あまり多くなると大変になってしまうため、工程として省略したものを紹介していきますが、最初に一般的な小説の書き方に触れておきましょう。


1-00-0 正しい小説の書き方とは

 商業などで展開される小説の、理想的な執筆方法は以下のようになっています(あくまで一例です)。

設定・構築
①書きたい主題(テーマ)を設定
②作品の設定(世界観)を構築
③作品の展開(ストーリー)を設定
人物(キャラクター)を設定
⑤矛盾しないようにあらすじ(プロット)を作成
執筆
⑥本文執筆(全話)
完結後
⑦推敲・修正
⑧投稿

 という気の遠くなるような手順です。これほどの手順をかけてから公開される作品に、どうしようもない駄作は存在しないでしょう。
 プロの書いている商業作品は編集者による助言、推敲、批評がさらに加わっているわけです。一山幾らのラノベですらこの手順を経て書かれているのですから、ネット小説のハズレ作品とは次元が違います。「原作よりおもしろい二次創作」の著者は、十中八九その原作に相当するものを作ることができません。
 ですのできちんとした作品を作りたい人は、主題から順番に考えていきましょう。

 ですが、シンプルに書くにはちょっと作業量が多すぎるのではないかと思います。そこで、「ストーリー」「人物」「関係」の3点だけ抑えて設定を簡易的に作っていきたいと思います。


1-00-1 ストーリーの構築

 まず最初に自戒をかねて厳しめの一言を。

『一番書きたいシーンが浮かんだ()()では小説は成立しません』

 他の形式(漫画、アニメ、ゲームなど)の作品と比べて理屈を求めてくる読者が多く、物語(人物、世界の変遷)を主としたものを描こうとする限りこれはおかしいあれはおかしいと突っ込みが入ってきます(私も以前とある方にそんな話をして双方がろくでもない事態に陥ったことはあります)。
 また、中立の読者が納得が一切できない超展開でストーリーが完結する場合には、見せたかったものまで読んで貰えないといった事態もあるでしょう。
 そこで、最低限のシナリオを作りましょう。ゲームのイベント一覧と成長要素を引っ張って逆算する形で簡単に作れます。

(例)恋愛ものだった場合
・一番書きたい場面
 ヒロインが告白を受け入れキスしてくれるシーン

 恋愛の成就の瞬間が描きたいものであるとすれば、極端な話、恋愛以外の要素は一切いりません。主人公のスペックや世界観など無くてもいいのです。

・最低限必要な場面
 出会い
 恋愛感情の自覚
 告白
 「ヒロインが告白を受け入れキスしてくれるシーン」(恋愛の成就)

 以上の要素が用意されていればまず問題なく筋が通るでしょう。「起承転結」や「序論本論結論」などの文章の構造を説明する言葉を考えればわかりますが、大体三つか四つの要素があれば一通りのストーリーは成立しますので、多少は考えてみてから本編を書き出してください。この時、理由について本文で説明できるようにしましょう。


 他にも、冒険物などで気軽に書く場合には「目的」、その「理由」、「最大の壁」とその「理由」、「乗り越える方法」の順に考えることで山場の理屈を簡単に構築することもできます。


(例)ドラクエ的な魔王撃破物の一例
「目的」:世界を救う
「理由」:故郷のヒロインを殺さないため
「最大の壁」:魔王
「理由」:敵の総司令だから
「乗り越える方法」:聖剣で浄化する


 実は大半の物語はこの5行で大体説明が付いてしまいます。最初の目的は冒険の理由そのものですし、2番目の理由は「主人公の動機」です。「最大の壁」はゲームで言うラスボスで、「乗り越える方法」はクリア条件となるキークエストです。
 「目的」のために「乗り越える方法」を取り合い、「最大の壁」を乗り越えて達成する。これなら5分で達成できる簡単なテンプレートになるでしょう。


1-00-2 登場人物の設定

 続いて、いわゆる主人公やヒロイン、ライバルなどの登場人物の設定を行っていきます。必要な要素は多々ありますが、同時に必要でない項目も多々あります。自分用に作った人物設定用テンプレから一般的な要素を抜き出しました。それぞれについて解説していきます。


・基本情報
名前
性別
年齢
(人種)
(国籍)
(出身地)

 これは言うまでもなく絶対に欠かせない項目です。主要人物でも、一話限りのゲストでも、名無しのモブでない限りは必ず設定しましょう。
 名前は読者が人物を覚える最大の記号ですし、性別がイメージに与える影響も大きいです。年齢は主に少年少女、青年、壮年などの見た目にでる大体のイメージを決めるものです。ですので細かく23と25で変えても違いは殆どないです(社会的立ち位置が変わるなら別ですが)。
 ここでの注意点は、「キラキラ(DQN)ネーム」や「男の娘」を避けることです。確かに特徴的で印象に残る要素ですが、悪いイメージを纏ってもいるので導入する利点はあまりないと思います。実際、「四六四九くん」とか言われてもいいイメージはわかないでしょう?
 また、後者は性別という特徴を殺しにかかる要素ですので、女装を物語で有効的に活用しないとイメージの確立を妨げる害悪になります。
 重大な理由がない場合は上記のものや「歳をとらない」などという「一般的な設定と容姿を切り離す」特別な設定を構築するのは避けたほうがいいと思われます。読者が人物をイメージする際の妨げになりうるからです。
 もし、そういう方向に調整する場合は「異常」である理由を考えましょう。


 括弧綴じになっている「人種」、「国籍」、「出身地」はそれらが大きな意味を持つ作品の場合のみ意味を持ちます。
 例えばファンタジーでエルフが迫害されているときに人間とエルフの関係を結ぶ場合は難しさを孕みます。両方から迫害されて湖に心中という話はドラクエの背景にさえあったものです。
 一期一会ならまだしも、かつての敵国人はビジネスパートナーや結婚相手としては最悪でしょう。個人的に友人や家族が戦争で死んでいたら尚更です。
 お姫様と勇者の恋愛でも勇者が外国人傭兵では結ばれるのはほぼ不可能ですね。国王としては国家の宝を投げ捨てるわけにはいきませんし、傭兵としても国を敵に回す危険は大きすぎます。
 ですが某ギャルゲーの「神にも悪魔にもなれる凡人」のような場合では殆ど意味を持ちません。本当に必要でなければ考えないで放置しておくことも一つの手段です。


・社会的地位or所属、階級
所属
階級or役職


 その人物がどこに所属しているのか、あるいはフリーランスなのかでできる行動の幅が大幅に変化します。


 例えば商家のお嬢さまでは、親の意向には逆らえなかったり、本人が奔放な冒険には出られないなど、行動範囲に制限がかかりますが、逆に商取引などの冒険者ではどうしようもない規模の事象に資金力から介入することができます。人脈も意外なところまで広がっているかも知れません。
 提督や将軍は個人で戦いに介入することは(ほぼ)できませんが、戦略面に影響を与えることは可能です。
 海軍軍人は内陸数百キロでの戦争には影響力を行使できません。逆もまた然りです。


(商業作品中の例)艦娘「明石」の場合(艦隊これくしょん)
工作艦としての修理・改修技能が高い、戦闘能力はほぼない(実艦艇はむしろ護衛される側だった)
⇒ヒーラーとして(後方で)仲間を支えられる+鍛冶屋の真似事で仲間の武装等の強化可能
⇒戦闘では無力、護衛目標扱い(前線に出してはいけないタイプ)


 このように「できること」「できないこと」がはっきりとしておくと便利ですし、どこかに所属することは必ずこの二者を作ることになります。当然、ストーリーもこの要素に縛られます。
 完全無欠で万能ほど物語から起伏を奪う要素はありません(それを実現してしまったのが某ガンダムのスーパーコーディネーターさんだったりします)。必ず意識して主要人物には「できないことを作り」ましょう。


・特技、能力、戦闘スタイル
得意な能力(特技)
苦手な能力(弱点)
戦闘スタイル

 これらは戦闘面や具体的な行動で「できること」「できないこと」を作る項目です。一般的には戦闘に強い人は頭が弱く、速い人は脆いなどと定義されています。ここでも意識して主要人物には「できないことを作り」ましょう。弱点を突く戦い方や、弱点を突かれて苦戦すること、それを仲間や知恵によって乗り越えるなど物語のスパイスになります。
 ただし、こちらは使い捨てモブには必要ありません。弱点を突かれたり長所を発揮する前に物語から退場しているはずだからです。


・経歴
 端的に言えばそのような能力や性格になった理由付けです。ですので「幼少期」「重大な過去のイベント」「人間関係のきっかけ」程度を記しておけば十分でしょう。
 生年月日やら家族構成、本編に関わらない幼少期の設定を考えても仕方ないというのは忘れないでください。
 もちろんモブには必要ありません。


(商業作品中の例)シン・アスカの場合(ガンダムSEED Destiny)
中立宣言を出していた国で戦争に巻き込まれ、両親と妹を失う
⇒キレイ事を嫌う(言葉のみによる平和がありえないことを知っている)
⇒戦争に対応できる環境にいようとする(巻き込まれるリスクの把握or能動的なアクションを目指す)
⇒年下の少女に対して特別な感情を抱きやすい(もともとあった兄としての属性+喪失した妹を重ねてしまう)


・性格
 今まで設定した特徴を裏付ける心理的な要素です。あまり設定内容と矛盾しないようにしましょう。
 こちらは行動に直結する可能性が高いので、行動にあう要素としてモブにも設定してあげましょう。

(矛盾例)
誰にでも甘い性格──敵は容赦なく皆殺し
割り切りがいい──ヒロインを選べなくてgdgdハーレム

(モブの例)
迷子の捜索依頼を出す──心配性など


・容姿、身体的特徴
容姿
(身長)
(体重)
(顔)
(髪の色)

 正直に言えばこのあたりはどうでもいいです。表現の中で人物を印象づけられる一つの要素に過ぎません。
 文中で上手く表現しきって以下の程度です。正直主要人物にさえなくても大丈夫だと思います。

(表現例)
 ……彼が声をかけると少女がピクリと震え、ゆっくりと振り向いた。栗色のポニーテールがそよ風にあおられ、束から外れた数本が白い首筋に張り付く。
 髪と同じ色の大きな瞳を見開き、淡い桃色に染まった頬には汗が浮かんでいた。明らかに見られたくないところを見られたという態度だった。……

 以上で様々な人物設定を説明しましたが、とりあえず人物に必要な要素は以下の要素に集約することができます。しかも、この内のかぎ括弧のある8つだけ埋めれば人物の行動の骨ができるでしょう。

・基本個人情報
「名前」
「性別」
「年齢」
(人種)
(国籍)
(出身地)
・社会的地位or所属、階級
(所属)
(階級or役職)
「そこでできること」
「そこでできないこと」
・特技、戦闘スタイル、能力
「得意な能力」
「苦手な能力」
・性格
「行動の動機となる特性」


1-00-3 人間関係

 世界には国があり、町や村があり、そこには当然人が住んでいます。個人で社会が成り立つことはなく、農業ですら個人で完結することは不可能です。往々にして自由の象徴として語られることも多い冒険者にしても、商店の主や依頼者、冒険者仲間などと関わりを持っています。
 ですので物語において人間関係というものは重要な要素になります。そもそも、主人公とヒロインの関係に触れずに交流は書けません。ということで主要人物の関係を書いておくと後からストーリーを作る際に役に立ちます。
 最低限、主要人物それぞれに「所属するコミュニティ」「友人」「恋愛」の3点を考えてください。
 「所属するコミュニティ」では義務を中心とする強固な契約が、「友人」では信頼などの利益が絡まない関係が発生します。「恋愛」も動機として大きなものであり、場合によっては命すら投げ捨てる切っ掛けになるでしょう。
 また、余裕があれば「血縁」「憎悪」についても触れてみるといいでしょう。「血縁」では決して切れない関係性が、「憎悪」では負の方向の動機が発生します。
 複数人の関係を同時に把握するには、キャラクター相関図と呼ばれるものを紙に起こしてみると便利です。


オマケ 登場人物の人数と個性

 作品を作る際に必ず当たる壁が人物を人数的に扱いきれないことです。多すぎる場合には純粋に人数が多すぎた場合と、同じ特徴の人物がたまたま余った場合に分かれます。前者は人数を整理して減らすしかありませんが、後者は相反する特徴を用意することで緩和することができます。つまり組む相手を用意して凸凹コンビ化するわけですね。
 この場合、身体的な特徴と精神的な特徴の2点で差別化することができます。身体的とはたとえば背の高さであったり、容姿の整い方であり、胸の大きさなどイラストに起こすと露骨に見える点です。特に一方がコンプレックスのようなものを抱いていると強調できてよいでしょう。
 精神的な特徴では勇敢さや慎重さなどの戦闘などシリアスな部分で目立つものや、女好きや趣味嗜好などの日常で現れるものに分かれます。
 同じように性格面でも勇敢と臆病でコンビを組ませるなど違う面が目立つことで扱いやすくなる可能性はあります。

(商業作品中の例)オリビエ・ポプランとイワン・コーネフ(銀河英雄伝説)
 女好きで陽気、冗談好きなポプラン⇔物静かで知的なコーネフ(両者ともにエースパイロット)

 こうした工夫によって、人物の組み合わせを人数単位からチーム、ユニット単位で扱い、総数を疑似的に減少させることができます。といってもヒロイン10人とかやったら絶対に目立たない娘がでるので、主要キャストはある程度抑えて取り組みましょう。リリカルなのはstsで前線部隊が10人ちょっとしかいないのは扱いきれる人数がその程度だったということです。
 個人的には主人公1人、ヒロイン2人、他2、3人で主要キャスト6人+ゲストで回せれば一番やりやすいと思います。
 
 

 
後書き
 以上で設定は終了です。人物設定は複雑かも知れませんが、それでも30分未満で大体の設定は用意できると思います。これをテキストなりで保存して、書く際に見ながら取り組むようにするだけで大幅に書きやすくなります。騙されたと思って試してみてください。 
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