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もしもこんなチート能力を手に入れたら・・・多分後悔するんじゃね?

作者:海戦型
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12番目のサイコドライバー

 
前書き
部屋のエアコンが壊れて朝の体温がエターナルフォースブリザード。執筆意欲は死ぬ。
今週中に修理してもらおう・・・ 

 
通路を埋め尽くす傀儡、傀儡、傀儡。傀儡の兵の大行列に猛然と正面突破をかける5人の人影があった。
アカシックレコードから色々と貰い過ぎた5人はもう色々とアレであり、いろいろと凄い事になっている。

「魔拳爆連打!!うりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃあ!!!」
「サンダー・・・クラァァーーーッシュ!!!」
「ウフフ・・・私に魅入られたら、終わりよ?」
「あなたα世界では『フォフォフォ』って笑うプロトデビルン役で出てましたよね?何で急にレビのパク・・・」
「メタい発言はお止し!アンタなんてαどころかシリーズ通して御呼ばれされたことないでしょ!」
「失礼な、クロスゾーンには呼ばれましたよ!」
「さあ退いた退いた!悪いけど時間が無いからおふざけも突っ込みも無しだよ!!」

アルフの拳が光って唸り、どっかの修羅の如く無数に分裂して見える拳で敵を薙ぎ払う。恐らく今のアルフなら地球がリングなファイトでもそこそこいいところまで行けるだろう。アルフの開けた穴の周囲にいる傀儡兵はフェイトが開発したオリジナル魔法で消し炭にする。敵味方識別機能付き、ホーミング機能付き、広範囲攻撃の鬼畜3拍子が揃った究極電撃魔法は次々に傀儡兵を飲み込み埃を息で吹き飛ばすように簡単に敵を蹴散らしてゆく。戦闘のプロも吃驚だね。チャージなど必要ないと言わんばかりだ。

バルディッシュは大丈夫なのかと一瞬考えたが、プレシアとリニスが色々改造してたのを見たのできっと大丈夫。二人が暴れる中アカシックレコードに触れ過ぎて電場受信しまくりのプレシアとリニスが適当に射撃魔法を使って進路上の隔壁を木端微塵に吹き飛ばしていく。・・・鬼や、鬼がおる。そんな4人と一緒に符術ぶっぱしてる俺も人のこと言えないけど。



~ 12番目のサイコドライバー ~



現在僕たちテスタロッサ一家は偽・時の庭園(プレシア命名)に殴り込みを仕掛けている。どうもあれこそが俺がこの世界に来なければなっていたはずの「原作のラスボス」とその居城・・・を再現したもののようだ。その再現をしたのはこの城の主。主にここを作るだけの力を与えた者こそが今回の黒幕だ。ただ、それを実際に為した方法がはっきりしないが。

なお、実は彼女たち以外にもいくらか残滓が町に出現しているが逸般市民たちの手で討伐されているようだ。この町危機管理能力高すぎだろ。海鳴少年自警団が白黒のクマやら黒いマモノやら奇天烈な敵たちを蹴散らす様を見ると、この国の未来は向こう200年くらい大丈夫な気がしてくる。

我が家の暴れん坊二名が前線をズタズタにしている間に後方の俺達は状況をより正しく理解するために意見を出し合っていた。マルチタスクって便利だな。

「さしずめ”悪霊の帝王”ミニマム版と言った所か・・・原作における”闇の書・防衛プログラム”の怨念が中核を成したみたいだが・・・ちっ、先手を取られた!もう町に手を出してるなんてね・・・!」
「防衛プログラムは原作で大きな役割を果たし、沢山の因果を抱えた存在だったようです」
「それと原作の歪みが塊となって現実世界に復讐・・・って筋書き?」
「・・・難しいな。おそらく連中にも思考や行動が”あるはずだった未来”と切れない関係なんだろう」

並行しながら得た情報では悪ケンリッターはシグナムとヴィータのみが戦闘を行っている。相手は原作と同じなのはで、ついでにクロエ少年も巻き込まれている(?)ようだ。闇の書の意思は一直線に原作で戦ったなのはの所に向かっており、偽フェイトはジュエルシードを得るという目的のために苗女史をご所望のようだ。それぞれがあった筈の未来という”くびき”に惹かれて原作に近い行動を取ろうとしている。
悪プレシアはまったく原作通りなのか9つのジュエルシードであるハザードへの扉を開こうとしているようだ。

「悪フェイトからジュエルシードを受け取れば全部で29個になるはずだけど、それはならないのね。流石にそれをやられるとこっちもきついわ」
「たぶん、悪プレシアも悪フェイトもそれぞれ独立した行動をとってるんでしょう。互いに最重要目的の”くびき”から逸脱した行動がとれない、若しくはそういった思考が無いのかもしれません」

逆に悪マテリアル連中は戦う理由がないせいか目立ったアクションは起こさず、悪リインフォース・ツヴァイもそれっぽい行動をとった後は大人しくしている。彼女たちの”くびき”が最終的に味方というポジションに辿り着くが故か・・・

「ではフェイトの残滓はどうして?」
「母親に尽くせなかった無念を晴らす、かな。多分高町なのはに負けて母親に裏切られたときに消滅した母親への愛だろう・・・それとも、オリジナルがこの世界に存在することも原因かもね」
「・・・・・・」
「・・・プレシア?」

唐突に黙り込んだプレシアに不審がって声をかけるが、返事は返ってこない。
あぁー・・・残滓とはいえフェイトであることに変わりはないしねぇ。それ関連だろうね。きっと原作でプレシアがフェイトに真実を明かした時、原作フェイトは哲学的な意味で一度死んだのだろう。あれはそう言った類のものかもしれない。

「皆急いで!さっさと倒して海鳴市に行かないと!」
「ゴメンねぇ、どうしてもあの町で出来たお友達が心配みたいでさ・・・鋼鉄粉砕!ブラストナッコォ!!」

また一体、ひときわ大きな傀儡兵が魔力を纏わせた拳によって吹き飛ばされた。
既にこの一家はリンカーコアに魔力素ではなく気合とか勇気とかを取り込んで力に変えつつある。さり気なくアルフが一番化けており、リュウセイ病の進行も止まっていない。遅すぎたんだ・・・

わんさか傀儡兵が湧いて出る中全く息を乱さずノンストップで突き抜け(ついでに階層と壁もいつくか突き抜け)た俺達は既にプレシアの残滓の目の前まで来ていた。
不意に、さっきから黙り込んでいたプレシアが口を開く。

「ねえ、この先は私一人で行かせてもらえないかしら?」

「・・・母さん?」
「貴方達は先に海鳴市にいって状況を収拾しなさい。ここから先は私一人で片を付けるわ」
「ちょっと!?突然どうしたんだい!?」

そう宣言したプレシアは大きく一歩前へ出る。戸惑いを隠せないフェイトとアルフ。しかしその二人をリニスが両手を広げて押し止めた。俺も二人の肩を掴んで前へ進むのと止めた。

プレシアは”殺された未来”の自分について、いろいろと考えることがあるんだろう。和解もせず、あらゆるものを切り捨てた挙句にその命を散らした哀れなプレシア。自分がひょっとして至っていたかもしれない未来なのだ。
関係ないと目を逸らすのは簡単だが、受け止めずにはいられないのだろう。愛深きゆえに。

「自分の起こしたことは自分で、か?」
「いいえ・・・でも、原作では私にフェイトの言葉は届かなかったんでしょ?なら―――私を救ってやれるのは私しかいないんじゃないかしら?」
「・・・分かんないよお母さん!どうして一人で行こうとするの!?」
「そうねぇ・・・言葉にまとめるのは難しいわ。感覚的なものだし・・・でも、この先にいる私はきっとアリシアに会えなかったことだけを苦にずっと存在していたんだと思うの」

アリシア。フェイトではなく本物の娘、愛しのアリシア。それに会うために悪霊とも知れない存在に成り果てた。あのまま未来が進んでいれば会えたかもしれないのに、というありもしない可能性を未だに捨てきれないのだ。
その気持ちは分かる。自分だってそうなっていたかもしれないという未来は容易に想像できた。しかしそれは常に”無駄だろう”という恐ろしい現実から永遠に逃げ続けなければならないという終わりのない苦行を意味している。冷めない悪夢を終らせてあげられるのは、今を生きる人しかいない。

「だから私本人が教えてあげなきゃいけないの。その現実って奴を。だからフェイト・・・貴方は貴方の残滓に会いなさい。そして、あったかもしれない私の子供と自分自身を救ってあげなさい。終わりの無い苦しみから・・・」
「私自身を、救う・・・?」

そっとフェイトの顔を包むように持ち上げたプレシアはいつものように優しい母親の顔をしていた。そこで彼女は気付く。
そうか―――フェイトの残滓もまた彼女にとっての娘であることに変わりはない。それを救うのが本人出なくともできるならば、プレシアは一刻も早く自分の娘を地獄のような逃避から救いに向かうはずである。

「そうよ。街にいるあなたの残滓は、私の残滓と同じく永遠にたどり着けない一方通行の門をこじ開けようとしている。それを間違っていると言えるのは、きっと貴方しかいないから―――」


「盛り上がってる所悪いけど、それってアンタが一人で行かなきゃいけ理由にはならないんじゃないの?」

雰囲気を崩すように不満げな顔が割って入る。アルフだ。先ほどから黙っていたリニスも、そして俺もいう事を言うために前へ出る。

「いえ、心配無用です。私が見届け人としてついていくので」
「全く今更気取っちゃって・・・ほらこれ、万が一の時のための護陣符。もっときなよ」
「ちょっと、何よそれ。私の実力が信頼できないワケ?」
「信頼してるから万が一が起きてほしくないんだよ。お・か・あ・さ・ん?」

人って奴はいつ死ぬか分からない。例えプレシアが無限力を理解しそれを引き出す術を持っているからと言って、それで無敵になるわけではない。ほぼ治っているとはいえ体も心配だし、思わぬ油断で深手を負ってしまうかもしれない。
IFのことなんていちいち考えていてもきりがないが、それでも心配になる物は心配になるのだ。だって―――

「家族として、心配すんのは当たり前だろ」
「そうですよ、プレシア。例え誰ひとり血が繋がっていなくとも、私達は家族です」
「最初はちょっと抵抗あったけど・・・今ならあたしもアンタを心配する気持ちくらいは持ち合わせてるんだよ」
「だからお母さん。私たちの気持ちも少しは分かってよ。ね?」

口々に放たれた言葉にプレシアはしばし沈黙し、すこし呆れたように溜息をついた。

「・・・うん。分かった、その代り貴方達も怪我しないようにね?・・・さ、行くわよリニス」
「はい」

俺、フェイト、アルフはそれぞれ顔を見合わせ、転送魔法で海鳴市へと行く準備を始める。
俺はこの件の元凶を断つために。フェイトは自分の残滓を救うために。アルフは・・・付添い?
とにかく、それぞれがそれぞれのやるべきことに向けて進む。
皆それから発した言葉はたった一言だった。

「「「「「行ってきます」」」」」

とっとと用事を終らせて帰ろう。そんな思いを胸に抱き。




・・・冷静に考えたらいつぶりか分からないほど久しぶりの外出だ。母ちゃん、俺外に出てみるよ・・・ 
 

 
後書き
物語通算2回目の外出である。未だかつてここまで出不精なチート主人公が居たであろうか? 
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