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リリカルなのは~優しき狂王~

作者:レスト
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第五十二話~開戦と黒幕~

 
前書き

なんとかアップです。
週一ペースを維持するために頑張ります!

さていよいよクライマックスに近づいてきました!
このまま作者のモチベーションは続くのでしょうか?!(おいっ!)

では本編どうぞ
 

 



 その日、戦端は開かれた。
 先の襲撃事件の主犯を名乗る、ジェイル・スカリエッティがミッドチルダ全域に宣言したのだ。彼らの切り札、聖王のゆりかごを使いミッドチルダを爆撃すると。
 彼は、誰かに挑むように説明する。聖王のゆりかごが衛星軌道上に上がり、2つの月からの魔力を得ることで、多種多様な殲滅兵器が使用できるようになることを。そしてそれの機動キーとなっているのが、かつてのベルカの聖王の血を引き、レリックを埋め込まれたヴィヴィオであるということを。
 そして粗方の説明が終わると、ミッドチルダ郊外の森林区域から全長数キロの大きさを誇る船が姿を表す。それこそが彼が語っていた聖王のゆりかごである。
 聖王のゆりかごが姿を現すと同時に、ガジェットとナイトメアフレームの進行も始まる。その機械仕掛けの軍勢はゆりかごの上昇を止めようとする管理局の部隊と交戦し、彼らを足止めしていた。
 活動拠点を次元航行艦船アースラに移していた機動六課メンバーも、この放送を聞いていた。彼らは廃棄されるはずであった船を回収することで即席の移動式拠点を構えることに成功する。だが、それ以降は事件の手がかりもあまり掴めず、八方塞がりであったのだ。
 そんな時、自分たちにとっての目的が向こうから現れ、そして分かり易い目標までしめしたことで、彼女たちはその目に力強い闘士を宿らせ、その戦場に赴こうとしていた。



 そんな中、ある場所では1つの幕引きが行われようとしていた。



管理局・本部中枢


 机も椅子もない、そして薄暗い。大凡人が使われることが想定されていないその部屋には、あるものが置かれていた。それは3本の円柱のシリンダー。それが部屋の中央、横一列に綺麗に並べられているのである。
 奇妙と言うよりは異様なその光景の中に、もう1つの異様な部分があった。
 オブジェの様に並ぶそのシリンダーは、ガラス張りになっている。そしてその中には何かの溶液とその溶液に浮かべられるようにあるものが存在した。
 そのあるものとは、人の脳髄。人間がいるのには相応しくないその部屋に人間の中枢たる部分が存在した。

「予定とは違ったが、あれの暴走を止めることで管理局の優位性を更に高いものにすることができる」

 部屋に声が響く。その肉声にも機械音声にも聞こえる声が、部屋の暗闇へ浸透するように反響する。

「だが、ガジェットのみならず、ナイトメアフレームとかいう兵器まで駆り出されては今の局員ではちと厳しくはないか?」

「問題はない。いくら犠牲が出ようと我らが残っているのであれば、あれの抑止力を製造することもできる」

「確かに……そう言えば、ここ最近我らのシンパが幾人か失踪しているがそれについては?」

「使える駒が減った事は気になるが、所詮は欲に目がくらんだ俗物だ。消えたところで痛手ではない」

「ああ、我らという存在が残る限り、次元世界の平和は維持される。そう――」

「「「全ては次元世界の秩序の為に」」」

 3つの声が唱和を奏でる。
 この3つの声の主は、シリンダー内に収められた脳髄である。そして彼らを表す脳髄以外の言葉は“管理局最高評議会”であった。
 彼らは約150年前に管理局と言う組織を作り上げた、ある意味管理局の始祖である。当初は次元世界に平和をもたらそうと活動していた彼らであったが、その志はいつからか歪み、『自分たちがいなければ、平和が乱れてしまう』と想うようになってしまった。
 そしていつからか、目的と手段を履き違え、管理局を維持するために違法研究等の公にすれば断じられるような犯罪行為も、平和を維持するためと唱い実行し続けるようになっていた。
 そして、人間としての寿命は短いすぎると判断した彼らは、脳髄だけを延命するようになり、そんな姿になっても尚管理局と次元世界を影から操り続けていた。
 彼らが今回の事件の後の事を話し始めようとすると、部屋の出入口から来客を告げる音が鳴り響く。
 彼ら、いやそもそもこの部屋の存在を知る者は数える程しかいないため、彼ら3人は来客者が自分達の延命装置を点検する秘書が来たと思い込む。
 そして部屋に入ってきた人物を確認すると3人は誰何の声をあげた。

「誰だ、貴様?」

 入ってきたのは学生服と思われる黒字に黄色のラインが入っている青年であった。
 いきなりの闖入者に驚く彼らであったが、青年のデータがあることに気付き、冷静さを取り戻した。

「データがある。貴様はライ・ランペルージだな」

「ジェイルと六課から報告のあったイレギュラーとやらか」

「貴様のようなものが何のようだ?」

 どこまでも人を見下したような言葉を放つ彼らに青年、ライは苛立ちを抑えながら口を開いた。

「最高評議会、貴様たちのその存在はこの世界には必要ない。ここで退場していただく」

「はっ、何を言い出すかと思えば。我らがいなくなれば次元世界の平和は消え去る。そんな事も分からない小僧が何を偉そうに」

 ライはその根拠のない自身と自らの存在意義を語る彼らに、呆れを通り越して憐れみの感情すら湧き上がりそうになった。
 彼らの存在は既に怨念の域だとライは悟る。そこまでしなければ平和を作ることが出来なかったと思われる、当時の次元世界をライは知らない。だが、ある意味ここまで大きな治安維持の為の組織を維持できた一因として、彼らの手腕もあったのだろうと予想はできる。
 だが、平和や治安を維持する為のシステムを保つために、自らが人の道徳を捨て、それを侵す行為をするのは本末転倒であるライは考える。
 そして、彼らによってそれこそ次元世界単位の人間が犠牲になっていることも事実であるため、ライは彼らを断罪するために自分の中の引き金を引いた。
 それはルルーシュとは違い、聴覚に働きかけるギアスを持つライだからできること。

「ライ・ズィ・ブリタニアが命ずる。貴様らは終わらない悪夢を見続けろ」

 ライの命令に反応し、その目に赤き印が浮かび上がる。そして命じられて数秒後、3つの絶叫がその部屋を埋め尽くした。
 ライは3つのシリンダーに近づき、備え付けのパネルを操作し始める。パネルに表示されたのは、『設定音量』という言葉とそれを表す数値。

「耳障りだ」

 ボソリと呟き。ライはその数値を0にした。
 もはや、恐怖と言う人間らしい感情を出力するしかできなくなった、3つのシリンダーには目もくれず、ライはその部屋を退室する。
 そして次の目的地に向かおうとするのだが、ライの表情は沈んでいた。

(はやて……約束、守れなくてごめん)

 内心で、ライは守りたいと想っている人達の内の、1人の少女に謝っていた。



ミッドチルダ・市街地


 民間人の避難が終了し、戦場になったその場所で、機械の軍勢と魔導師との戦闘は続いていた。
 しかし、ガジェットだけならまだしも、ナイトメアフレームと言う驚異には流石に対処しきれずに防戦一方になっている部隊が大半であった。
 そしてそんな部隊の内の1つ。敵のガジェットとナイトメアフレームの混成部隊を引き付ける役目を、押し付けられた部隊があった。
 その部隊は基本的に出世とは無縁、言うなれば管理局と言う組織の中でも掃き溜めと揶揄されるような部隊であった。だが、それはあくまで表向きの評価である。実際のところは、管理局の上層部にとっては扱い難い局員を集めて、いつでも切り捨てる事が出来るようにしている部隊であった。
 そして逆に言えば、上から危険視されるほどの才能、若しくは実績を持った人員の集まりでもあった。

閑話休題

 敵の一団を引き付けることに成功はしたものの、そこからどうすればいいのか思いつかなかった隊長は走りながら呟いた。

「俺、この作戦を無事に生き残ったら告白する」

「ちょっ!隊長、無意味に死亡フラグを立てないでください!」

 いきなりの発言に隊長の隣を走っていた部下が声を上げる。

「ん?そうか、お前は俺に死んで欲しくないのか。俺は上司想いのいい部下を――」

「この場合、部下である自分たちも巻き込まれるんですから!死ぬなら部下を守るために特攻でもしてください!アンタは陸戦AAだろう!」

「よし!お前減俸一年な。あと後ろで頷いた奴らも」

 軽口を叩き合っているが、状況は変わらない。その隊長は自分たちがどんな状況に置かれているのかを冷静に分析を続けようとする。

(とうとう、俺らが切り捨てられる番が来たか。しかもどこに敵をおびき寄せるかの詳細なデータまで寄越してきやがって)

 数分前に受領した命令には、敵のガジェットとナイトメアフレームを指定した建築物の中に追い込むように指示がされていた。しかも、それは中に入れる時刻やどのルートを使うかまで細かく指定されていた。
 隊長である彼も決して無能な人間ではない。その為、その命令書が自分達の部隊を捨て駒にしようとする指示であると察していた。

(だが、ただ捨てられるだけの人間だと思うなよ。生き残ることに関しちゃ、お高い椅子に座っている上の連中よりも優秀ってことを見せてやる)

 その隊長の目には生き残ろうとする強い意志がありありと浮かんでいた。
 そして、その部隊は指定された建物である工場に入り込む。そこは何年か前に閉鎖されたのか、壁に人が通れる程度の亀裂が幾つも入っていた。そして天井は剥がれ落ちたのか、無骨な鉄骨が幾つも見え隠れしていた。
 部隊員が全員入りこんで数十秒後、彼らを追うように敵部隊が入ってくる。陸地ではその機動力を最大限活かせていたのか、ナイトメアフレームがガジェットよりも先に入ってくる。

「隊長!」

「慌てるな!」

 部下にそう叫び声を返すが、打つ手なしの状況に隊長は歯噛みする。
 そして、敵が攻撃態勢を取ろうとした瞬間、閉鎖されていた筈の工場が急に稼働し出入口を塞ぎ始める。それと同時に外から何かが着弾の音が聞こえてきたため、隊長は周りの部下たちに大声で叫んだ。

「周りの亀裂から脱出しろ!!潰れるぞ!!」

 命令を受けた部下たちは、隊長のその言葉が言い終わる前に既に外に出ようとしていた。
 そして亀裂から最後に隊長が脱出した瞬間、工場は中にいた敵もろとも潰れることになった。
 部下たちは自分たちが生き残ったことに喜びを感じ、笑みを浮かべていたが、隊長は1人浮かない顔であった。

(消しに来たにしては杜撰すぎる。どういうことだ?)

 彼の疑問に答えられる人物はその場にはいなかった。



 一方、そこから少し離れた位置には、公式には存在しない部隊がいた。彼らはある意味、管理局上層部の私兵のような存在で、その任務内容は主に管理局員の“間引き”であった。
 そして今回も指定された『脱出不能』の工場内にターゲットがいるため、外からの攻撃で彼らを消すようにと言う命令書をもらっていた。

「これで今回の仕事は一段落、か……世間は一大事だってのに、何をやってんのかねぇ~、俺らは」

 ぼやく様なその言葉に、彼の横にいた上官は口を開いた。

「其の辺にしておけよ。消される側に立ちたくないのであればな」

「へいへい、分かってますよ。俺らに必要なのは感情なくて、上司に振る尻尾ってことはね」

 彼らも元々はまともな管理局の局員であった。だが、組織の闇に触れてからは、他人の命を消して自分の命を守ると言う選択を取り続けていた。そこに嫌悪感がないわけではないが、全ては自分の命があってこそと考え割り切っていた。

「にしても、今回は口頭じゃなくて命令書を使ったことになんか意味あったんすかね?」

「全ては上の意向だ。俺たちが考えることじゃない」

「ま、そっすね」

 そんな会話を最後に、転移魔法を使ったのか、彼らの姿は数秒後にはそこにはなかった。





 
 

 
後書き

こんな感じで開戦です。
予定では、ライが戦場に姿を見せるところまで書こうと思っていたのですが、キリがよくないので次回に持ち越しにしました。

それと最終決戦は基本ライ視点になります。主に作者の技量的なものが原因で……(ーー;)

それでは次回も頑張りますm(_ _)m

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